ぺぺ

いつか貴方を愛するだろう

いつか貴方を愛するだろう
宮尾節子

いつか貴方を愛するだろう
そのいつかが
今ではないことを悲しむのをやめよう
もうわたしは。

いつか貴方を愛するだろう
そのいつかが
今ではないことで苦しませるのはやめよう
もうわたしを。

乳飲み子が
乳を探すように わたしの暗い懐に居場所を探してすがりつき
育ちたがっているものを 抱くわけにはいかない
もう貴方を 抱いて乳をやるわけにはいかない。

砲弾のように胸に抱えて 育てるわけにはいかない
もうわたしは 憎しみを。

いつか貴方を愛するだろう
そのいつかへ 見えない鳩のように今の貴方を高くときはなつ
オレンジ色の朝焼けが美しい
東の空に。

Jアラートが鳴って
今朝
にっぽんじょうくうを弾道ミサイルが通過したことを知らせる。
ヒナンシテ、クダサイ、避難、シテ。
――ナオ、破壊措置ノ実施ハアリマセン。

いつか貴方を愛する――だろう
そのいつかが
今ではないその距離を、もうわたしは憎しみと呼びはしない。
愛と呼びたい――かいはつとじょうの

愛の飛距離と呼んで、ふっとうする脳裏から
妄想のかく弾頭を放棄した
あかつきの空の下で、わたしはいつか貴方を愛するだろう。

たとえ、貴方がわたしを愛さなくても
この戦いを
この愛をぜったいに憎しみで、終わらせはしない。

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