SINGularity

 人生で初めて、独りでライブハウスに行った。西川貴教のSINGularityというツアーである。
自分が鑑賞したのは広島の狭いライブハウスで、チケットは完売、それはもうおしくらまんじゅう状態である。こういうスタンディング形式のライブは本当に苦手なのだが、2階部分のゆったり鑑賞できる場所はほとんど埋まっていて、仕方なくステージのなるべく近くのスタンディング位置に場所を取った。もみくちゃにされながら西川貴教を観ながら死ねるならそれもまあいいか、と思った。開場から開演まで1時間、立ちっぱなしで待機した。独りなので、待っている1時間はめちゃくちゃに寂しかった。周りの皆さんは2人組で来ていたりして、疎外感がすごかった。その日はちょうど鬱病がひどくて、ライブすら面倒くさいと感じていたくらいだったから。
そんな自分に気合を入れたくて、一昔前のゴシックアンドロリータ(V系のファン)みたいな恰好をして臨んだ。黒地に繊細なピンタック、スクエアネック、白いフリルがあしらわれた半袖のワンピースと、お洋服とセットのヘッドドレス。わたしの大好きなAngelic Pretty。お洋服がわたしを護ってくれることを祈って。

 話は変わるが、私は西川貴教初心者である。TMRevolution時代をほとんど知らない。TMネットワークとの分別すらできていなかった。(さすがにそれはヤバイと今は思う。)そんな自分が西川貴教を知ったのは、澤野博之とのコラボ楽曲がきっかけだった。ガンダムUCを好んで観ていたので、澤野氏の音楽が好きで、その中に西川貴教がいた。NOISEofRAINという楽曲が、それはもう美しすぎて、澤野氏の楽曲、西川貴教の演技力、歌唱力が力強く、身体中に響き渡る。悲しみ、怒り、苦しみのような、自分が今まで抱いてきた様々な負の感情を、西川貴教は見事に音楽によって表現しきっている。
自分は西川貴教にハマった。すぐにファンクラブに入会した。今回のツアーアルバムも予約をした。
 そんな新参者の私だったが、西川貴教も「TMRevolution」としてではなく、「西川貴教」としてのはじめてのライブツアーだったようなので、自称、新人歌手、と言っていたのが親近感がわいた。

 前置きが長くなったが、1時間待っていると、ついにサポートメンバーの登場、そして、主役の西川貴教の登場。1曲目は、Roll The Diceだ。
わたしは、泣いた。大号泣した。目の前に、ほんの数メートル先に、西川貴教がいる。全身から、魂から、声を出して歌っている。いや、もはや「歌う」という動詞では言い表せない。「叫び」でもない。「魂の放出」とでも言うべきか。とにかく、そのようにしか感じられなかった。心が震えた。周りがノリノリで拳を突き上げている中で、わたしだけ独り、棒立ちで、泣いていた。Roll The Diceが終わるまで、涙が止まらなかった。
一人の人間が、これだけのエネルギー、興奮、感動を観客に与えられることが、信じられなかった。今まで歌手やアイドルの熱心なファン活動などをやってこなかったわたしにとって、それは新鮮すぎる体験だった。

 前半、どのあたりだったか忘れたが、西川貴教が何度か目元を拭うシーンがあった。おそらく感動して泣いていたのだと思う。今まで20年(?)くらい歌手活動をやってきた人間が、広島の、こんなちっぽけなライブ会場で、涙を流せる。なんて純粋な人間なんだろうと感じた。
 週刊誌や何かは、西川貴教のスクープ記事だの、ヤリ捨て男だの、散々書いているが、それが事実だろうがなかろうが、彼の音楽と、ファンに対する姿勢は本物だと感じた。誰かの為に流せる涙は、美しいものだと思う。

 ライブの全容をすべて書いていると長くなるので省略するが、とにかく、本当に行ってよかった。しかも、広島の狭いライブハウスだったことが功を奏した。
 ライブの終わりに、西川貴教は言った。「僕を応援してくれるみんなのことを、本当に家族だと思っている。僕はこの命を、声を、みんなに捧げる。そうしてみんなのつながりの輪で、もっと家族を増やしていこう。」
神よ、西川貴教よ、ありがとう。

 東京での追加公演が決定したらしいので、ファンクラブ先行枠で、わたしは早々に応募をした。
西川貴教、ありがとう。人生が苦しくて、死にたいとき、西川貴教の写真を見ていると、死から逃れることができる。

 西川貴教のことしか書いていないが、読んでくれた方、ありがとう。

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