映画刀剣乱舞面白かったな〜というダラダラした感想③

※ネタバレしてます


今回の映画で良かったのは、刀剣男士達の扱いというか刀剣男士とは、敵である遡行軍とは、果ては刀剣乱舞とは、どういうものであるか、ということに初見の人でも分かる一つの形を物語としてちゃんと見せてくれてるとこかなと思いました。

例えば漫画は読むがオタでも腐でもないうちの妹とか「擬人化って機関車トーマスみたいなのでしょ?」と思ってるそういう層にも刀剣男士とは日本刀の付喪神が人の肉体を持ったもの...つまりはどういうことだ?なるほど、こういうことか!ってのが分かったとも思う。


見た目は人間のようだが人間ではない。

人間以上の身体能力を持ち、物であり神でもある刀剣男士だから出来ること、だが人に作られ使われた彼らだから持つ感情、想い、ただのモノだった時とは違う、それゆえ生まれる葛藤、痛み、意志…

それが刀剣男士の醍醐味だと思うんだがそれを初見の人にも分からせてくれたことが何気にすごいなと思うんですよ

安土城で信長になぜお前がそれを知っていると問われた三日月、その答を聞いた信長の気づき、

つまりおまえは…「三日月宗近.....!!」


ってあの刀...ってえっ宗近ってマジあの宗近なん???ええあええええ??お前刀なのかよ!いやただの人間じゃないっぽかったけど!!

そうかこれが刀剣男士...!!すげー刀剣男士...!!刀剣男士ってこういうことじゃん!そうかこれ刀剣男士じゃないと出来ないことだわ!

ってのを説得力あるエピソードをもってして見てるこっちにも分からせてくれた、あの心地良さよ...

まさにいま面白い物語を見ている!その快感を味あわせてくれた瞬間であり、それが体験できた事が素晴らしかった。

物が語るから物語、まさにそれな!である


あの瞬間は「信長が自害したのは実は安土城だった」と三日月以外の刀剣男士皆が知ったシーンと並ぶ、なるほど!な瞬間であり、

まさに“薬研が忘れていたこと=もう一つの正しい歴史”を見ている我々も追体験できた訳で、そう思えたこと即ち、もう我々も物語の中にいる…

今いる…!!!みたいな、まさに映画を、物語を見ている醍醐味を味あわせてもらった感で爽快ですらあった。

しかも物語も終盤に入った、いよいよ安土城であの瞬間にわからせてくれる…そこがまた粋である。

そう靖子さんの脚本、ところどころ粋よな〜、野暮なことや余計なことだらだらと喋らせない、無駄のないエピソードと短い台詞で効果的に伝えるし密かに張ってた伏線は投げっぱなしにせず見事に回収する、

そこが粋…靖子かっこいい…ていうか構成がうまい!!!お見事…ありがとう…ってなる


秀吉にしろ信長にしろ、いきなりでてきたどう見ても人間じゃないよ?的な時間遡行軍に対しても「なっなんだお前らは!」みたいに突っ込まない。

それが逆に天下人たる只者ではない戦国武将としての器のデカさ流石さにつながるし納得できるから、そこで余計なこと言わせなくてもいいんだな…

特に必要ない台詞は極力切る、その手腕が粋でありすげえ。

靖子さんがもし同人誌出したらキャプションに長々と注意書き書かないであろう、それが確かに分かるというかそれが逆に信頼できるぞこの人…!みたくなる(伝わって)

あと個人的に良かったのが三日月がとうらぶの顔だから、人気だから、とかでなく「三日月でしか知り得なく、出来なかったことだから」主人公なんだというのがすごく良かったと思う。

今回の話は、信長の話でもあり、秀吉の話でもあり、明智の話でもあり、でも何より三日月を始めとする刀剣男士たちの、とある本丸の話だったことがすごく良かった。

やはり審神者的には刀剣男士たちが活躍する話が見たい。

前の主の運命を覆せない葛藤、辛さ、それが物語のスパイスになっててもいいがいつまでもそれがメインだとこっちも辟易するというか正直飽きる…

いやこちとらもう四年近く審神者やってるんですけど?

歴史を変えてはなぜいけないのか?大好きな前の主をなぜ助けちゃいけないのか?そんなん泣き叫ばれても困るというか、話が広がらないんだよ…

ならなんで戦ってんだよ、お前ら!みたくなってくるじゃん!辛さは否定しないがいつまでもそんな気持ちで戦ってたら殺られちゃうよ!大体そのテーマ、今剣と岩融の回想である意味答え出てるし!それ以上突っ込んでどうするんだよ!という思いが強かったので、

昔の主の無念の死や自分が燃えるという過去に葛藤や辛さはありつつも、そこをふまえた上でどんな覚悟で戦っているのか?守りたいものは何なのか?なぜ歴史を守るために戦っているのか?見せてほしいのはそこなんだよな…って欲求に今回の映画は存分に答えてくれて、それが嬉しかった。

三日月がいう「歴史とは人、俺は人を守りたい」なら儂も人ぞと答える信長に、「だからこそ守りたい、ここで散ったあなたを…」と答える三日月…(台詞うろ覚えだが)

かっこいい…かっこいいつーかそれは三日月にしか、刀剣男士にしか言えない台詞であり、なぜ彼らが歴史を守るために時にボロボロになりながら戦っているのか、その答えでもある。

「天下を掠め取りおってと秀吉を笑った、天晴でしたぞ」と続ける三日月

「だがいまの貴方様はすこし格好悪くございますな」と

すげ〜!靖子すげええ!!こんなん言われたら信長的にもう引き下がるしか無いだろ。まさにやられたな、である。

これだけの短い台詞のやり取りで信長に対しても、見てる我々に対しても粋と説得力という最大の効果を発揮する手腕…お見事!と心の拍手が鳴り止まない…これこれ!こういうのが見たかったんだよ!

例えばここで「それが正しい歴史なのです、あなたも天下人なら己が命運を見定めるがよい」とか言い募るバージョンもあるのかもしれないがそれを取らないその手法よ

それは先代審神者と三日月との会話にも現れてて、多くを語らなくても2人の今までの関係が、審神者の人となりが、三日月の審神者への思いが伝わるのがすごいな〜と思う…

というか正直いままで審神者と刀剣男士をそんな主従関係でみてなかったんだが、今回の三日月と審神者はそこに友情もみえつつも主と従、主と刀剣男士っていうのがより感じられて新鮮だった。

だから三日月が自分のせいで主に謝らせてしまったこと、近侍を降りようとおもってること、そこまでの思いも分かるな…に繋がったというか


本丸に戻り、大太刀に対しながら主に最後の挨拶をする三日月…

あの短いやり取りだけで伝わる三日月の心…鈴木さんもだがまさにお見事であり、そこに萌えや感動が生まれる…そう萌えなんて良質の物語に勝手に宿るもの、書き手が読み手に媚びたりサービスでチラつかせるものではないんだよ…ってのが伝わってくる説得力がある

(ちなみにここでいう萌とは腐関係じゃなくブロマンス的なそれというか、単に主従関係とかそういうのでもいい)

あと刀剣男士の活躍がみたいのにいつの間にか昔の主中心の話になられてもな…その武将とかに興味があるならまだしも、そこまでさほど興味ない時は困るというか、いやこれ刀剣男士つーか前の主の人生の話になってますやん…と困惑して集中してみれないんだよな…

そして2.5に推しは出て欲しいが、なんとなく出てはいるが正直この話に出る意味あった??みたいな扱いや役どころになると悲しさが増す。

いやでもまだ出てないキャラもいるのに贅沢言っちゃ...みたいな複雑さが生まれてきたりするので、今回の映画みたいにちゃんと三日月が三日月としてメイン張ってるの納得という物語は見ててすごくストレスがなくていい(というか今回の映画この、ストレスの無さに尽きるかも)


刀剣乱舞という面白い世界観で、設定で、ただ面白い話が見たいんだよな、それに尽きる


それは時としてすごく難しいのがわかるから、たまに普通に面白い話見ると面白いじゃないか!ありがとう!ってなるんですよ

あと物語において脚本っていうのは本当に大事なんだな…と今まで何度か思ったことを今回改めて痛感した。

例えば花丸一期より、脚本とか変わった二期のほうが断然面白かったし、活撃にしろ絵はめっっちゃきれいなのに話がなあああああああって思いがあったんだが、脚本変わったむっちゃんと竜馬の回はすごく良かったし、もちろん話の方向性としての個人的な好みはあるとは思うがでも今回の映画の靖子脚本はやはり上手かったんだな…と思いましたね。それはとうらぶ知らん初見の人が面白いって言ってるのが証明になってると思う。

逆に長年審神者やってて二次とか見てると自分の中で解釈こじらせてきたりするので、難しいとこもあるのかもしれんし、特撮っぽいんが苦手な人には合わないかもだが。

映画という、舞台とかより多くの人に見られて気軽に見やすい、新規層を取り込みやすい媒体であの物語はある意味タイムトラベラーもの、歴史もの、時代劇もの、としてもよく出来ていて成功したんじゃないかなと思います。もちろん監督もありがとう…

あと2.5で見慣れてきた気がしてるけど、みんな殺陣がすごいんだよね…あれだけできるってのはやはりすごいんだろうな。

刀剣男士を戦闘のプロとして描いてくれたことも嬉しかったですね、最後のみんなの殺陣シーンはまさにサービスショットよな

というわけで、靖子さん脚本でまた映画が見たい…続きがみたい…

それに尽きる

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