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性別違和は一つではない

この記事は4thWaveNowのサイトに掲載されたもので、最初の論文「自殺か性別移行か」につづくものです。「性自認至上主義」イデオロギーが現実にもたらす最も深刻な被害を、女性とともに、何よりも子供たちが被っています。私たちは取り返しのつかない被害を防ぐために、的確な情報を共有したいと思っています。(*二人の性科学、心理学の専門家レイ・ブランチャードとマイケル・ベイリーによる文書は、情報も豊富で内容も深いので、私たちには、理解が不十分な箇所、確認できていない箇所、必ずしも同意できない箇所もあるだろうと思っています。後に、修正やコメントが付け加えられることを了承してください。翻訳の責任は私たちグループにあります。) 

4thWaveNowは2015年に設立され、性別違和を抱える子どもたちの問題に取り組んでいる親たちを含むコミュニティです。コミュニティの一員である多くの親は、思春期に突然発症する性別違和のプロファイルに合致する娘を抱えています。この現象については、最初の2つのタイプの解説の後に、「突発性性別違和(ほとんどが、思春期または初期青年期の女性)」という項目で詳しく述べられています。

 著者紹介
マイケル・ベイリー ノースウェスタン大学教授(心理学)。著書『The Man Who Would Be Queen』は、生得的な男性に見られる2種類の性別違和について読みやすい科学的説明をしており、ここから無料でダウンロードできる。
レイ・ブランチャードは1967年ペンシルバニア大学で心理学の学士号を、1973年イリノイ大学で博士号を取得。1980年から1995年までトロントのアディクション・精神衛生センター(CAMH)の成人性自認クリニックの心理学者、1995年から2010年までCAMHの臨床性科学サービス責任者を務めた。

 

性別違和に関して、現在の主流派の説明の問題点は、明白に異なるタイプの人間を区別していないことである。例えば、ブルース・ジェンナーは、ケイトリン・ジェンナーになる前は、オリンピック選手で、3人の女性と結婚し、6人の子どもを持ち、外見的には非常に男性的である。それに対して、生得的男性であるジャズ・ジェニングスは、4歳で性別違和の診断を受けるほど女性的な性格だった。彼女は男性に惹かれるのである。ジェンナーとジェニングスは、その表現方法と経緯があまりにも違うのに、同じ症状だと思う人がいることに驚かされる。ジェンナーとジェニングスは、科学的によく研究されている2つの非常に異なるタイプの性別違和の例であり、動機、臨床症状、考えられる原因も根本的に異なっている。

多くのセラピストや活動家がこの区別を認めようとしないのは、少なくとも二つの理由から懸念される。第一に、彼らは関連する科学的証拠に無知であるか、意図的に無視していると思われる。第二に、異なるタイプの性別違和者の間で科学的に有効かつ基本的な区別をしないと、それぞれの人を助ける最良の方法を見出すことを妨げることにしかならないからである。はしか、インフルエンザ、連鎖球菌の咽頭炎はすべて発熱を伴う。しかし、単に「熱」とひとくくりにしてしまっては、有効な治療法はないだろう。 

性別違和のタイプ 

性別違和は頻繁に発症するものではない。しかし、少なくとも3つの明確なタイプの性別違和があり、現在、子どもや青年に定期的に発症している。ここでは、これらについて詳しくまとめている。他の2つのタイプの性別違和については、これらの年齢層ではあまり一般的ではないので、この小論の最後のほうで十分ではないが述べている。主な3つのタイプは、発症年齢(小児期、青年期、成人期)、発症速度(徐々に、または突然)、関連する性的指向(同性の一員かまたは自分は異性だという妄想)、および男女比(男性および女性に等しくまたは一方に偏っている)において異なっている。
 最初のタイプは、小児期に発症する性別違和で、生物学的な男の子と女の子の両方に明確に発症する。これは同性愛(自分の生物学的性別に対する性的嗜好)と高い相関関係があり特に生得的男性に見られる。(ただし、性的指向は通常、子どもが思春期や成人になるまで明らかにならない)。ジャズ・ジェニングスが性転換する前に発症していたのは、このタイプである。2つ目のタイプは、オートガイネフィリア型性別違和で、男性にのみ発生する。これは、自分が女性であると考えたりイメージしたりすることによって、性的興奮を覚える性癖に関連している。このタイプの性別違和は、思春期や成人期に始まり、その発症は一般的に緩やかである。(しかし、発症は家族にとっては突然の出現だ)ケイトリン・ジェンナーは自分の感情をオープンに語っていないが、私たちは彼女がオートガイネフィリアであることを強く疑っている。3番目のタイプは、急に発症する性別違和で、ほとんどが思春期の少女に起こる。このタイプは、関連する性的指向よりもむしろ主に、発症の年齢と速度によって特徴づけられ、2番目のタイプのように一方の性別に限定されないことがある。私たちの印象では、急に発症する性別違和は、gendercriticalresources.comのサポートボードに投稿している人同様、4thWaveNowを読んでいる親の娘たちに特によく見られようだ。

最初の2つのタイプ(小児期発症型性別違和とオートガイネフィリア型性別違和)はよく研究されているが、オートガイネフィリア型性別違和は主に成人において研究されてきた。3つ目のタイプ(突発性発症型性別違和)は最近になって注目されてきたもので、これまであまり症例がなかった可能性がある。

自分の子どもがどのタイプの性別違和なのか、どのように知ることができるのだろうか?もしあなたの子どもが性別違和であるという明確な兆候が思春期のかなり前にあったならば、その子どもは小児期発症の性別違和だ。(あなたはその時期に確実にその兆候に気づいていたであろう。少なくとも、子どもが極度に性別不適合だと密かに言葉にしていたはずだ)。もしあなたの子どもが思春期に初めて性別違和の兆候を示したのであれば、その子は他のタイプの1つである。オートガイネフィリア型性別違和は生得的な男性にのみ起こり、思春期か成人期のどちらかに始まることを覚えておいてほしい。(親にとって、それはいつも突然に思える) この3つのタイプについて、以下に詳しく説明する。 

小児期発症の性別違和(少年少女) 

小児期発症の性別違和を他のタイプと区別できる最も明白な特徴は、性別不適合の早期出現だ。性別不適合とは、服装や外見の好み、遊び方、遊び仲間の好み、興味や目標などを含む、様々な点でもう一方の性別のように振る舞う持続的な傾向のことである。強い性別不適合の男の子は、女の子の格好をして、人形で遊び、乱暴な遊びを嫌い、チームスポーツやコンタクトスポーツに無関心を示し、女の子の遊び相手を好み、大人の男性よりも女性のそばにいようとし、他の子どもたちから「シシー」(一般に女性らしい男の子を嘲ったり辱めるために用いられる言葉)と認識される。強い性別不適合の少女は、逆のパターンを示し、シシーに代わって、それほど軽蔑的でない「おてんば娘」という言葉が使われるようになる。幼少期の性別不適合の発症は非常に早く、一般的には性別に基づく行動が見られるようになるのとほぼ同じ時期に発症する。

すべての性別不適合児が(極端な性別不適合児であっても)性別違和を持つわけではないことを理解することが重要だ。おそらくほとんどの場合、実際には性別違和を持たないだろう。しかし、私たちは性別不適合がないのに小児期発症の性別違和の事例を知らない。

小児期の性別違和は、子どもが生まれながらの性別に不満であることが要件だ。さらに、彼らは通常、もう一方の性に憧れ、あるいは自分がそうであると主張さえする。 

小児期発症の性別違和について、私たちは何を知っているのだろうか? 

小児期に発症する性別違和については、2つの質の高い国際研究センター(1つはKenneth Zuckerが率いるトロント、もう1つはPeggy Cohen-Kettenisが率いるオランダ)によって系統的に研究されている。両センターは、それぞれのクリニックで受診した性別違和児の典型的なサンプルを評価し、追跡調査している。心強いことに、その結果は2つのセンター間でかなり似通っている。さらに、それは、米国で先に研究されたやや典型的といえないサンプルとも似通っている。

発表されている文献によると、少なくとも過去には、思春期前に性別違和が始まった子どもの60~90%が、性別移行を必要とせずに生まれながらの性別に適応していたことが分かっている。しかし、性別移行を奨励する臨床実践の変化により、その状況は変わりつつあるのかもしれない。

小児期発症の性別違和は、小児や青年期において十分に研究されている唯一の性別違和であることを認識することが重要である。これは、例えば、我々が提供した性別違和の持続と離脱を示す数値は、そのタイプにのみ適用されることを意味する。オートガイネフィリアや突発性発症の性別違和については、それに匹敵する数値はわかっていない。さらに、ほとんどの人が「トランスジェンダーの子どもや青年」といえば、小児期発症の性別違和を思い浮かべる。(そして、彼らはジャズの深刻な医療手術や生涯にわたるホルモン治療を考えるよりも、幸せなジャズを思い浮かべるのである)。しかし、この連想は、小児期発症でないすべての性別違和のケースに対して誤解を招くものだ。オートガイネフィリアと突発性発症型性別違和は、小児期発症型性別違和とは原因も症状も全く異なる。 

セクシュアリティ 

小児期に発症した性別違和のある子どもは、一般的な子どもと比較して、成人後に非異性愛者(すなわち、同性愛者や両性愛者)になる可能性が非常に高くなる。小児期に発症した性別違和から離脱した少年は、通常、非異性愛者の男性になる。追跡調査の時点で異性愛者であると報告している割合は少ない。性別移行した人は、男性に惹かれるトランス女性になる。

小児期発症の性別違和の少女のほとんどは、追跡調査によってほとんどが異性愛者であると報告しているが、性別違和から離脱した少女は一般の人と比較して非異性愛者である割合が非常に高くなる。性別移行した者のうち、ほとんどが女性に惹かれている。

繰り返しになるが、親が子どもの最終的な性的指向を変えられるという証拠はないし、親はその努力すべきではないと考えている。 

小児期発症の性別違和の持続の危険因子 

どの小児期発症性別違和の子が持続し、または離脱していくのか?この2つのグループの区別に高い信頼性おくことはできないが、偶然にたよって区別するより優れている。

完全な予測因子とはいえないが、性別違和の重症度によって、この2つのグループを区別することができる証拠がいくつかある。異性になりたいと言うだけでなく、自分が異性であると断言する子どもは、特に持続する可能性が高いだろう。「自分は異性である」という信念を表明することが、なぜ持続するだろうと予測できるのか、その理由はいまだ明らかでない。したがって、この変数によって完璧に近い予測ができるとまではいえない。これが「真のトランス」を見極める必須の基準であるというのは、言い過ぎであろう。
その他の経験的に支持されている危険因子には、社会経済的地位が低いことと、自閉症の特性があることで、これらはいずれも持続性を予測させる。なぜ、このような要因を重要視すべきなのか?研究者たちは次のように推測している。社会経済的に恵まれない家庭は多くの問題を抱えていて、性別違和の子どもが離脱するために一貫して支援できる社会環境を与えることができない傾向がある。自閉症の特性には、強いこだわりと強迫観念的思考があり、いずれも離脱をより困難にする可能性がある。さらに、自閉症の子どもの親は、他の問題を心配するあまり、性別移行を助長するような事柄に対して寛容である可能性もある。

持続性の強力な予測因子の1つは、社会的移行、すなわち、子どもが他の性別として生活することである。最近までは、このようなことはほとんど聞いたことがなかった。しかし、ますます多くのジェンダー・セラピストによって、社会的移行が知られてきているだけでなく、奨励されるようになってきている(「I am Jazz」のエピソードを見てほしい)。オランダでは、社会的移行はアメリカよりも長く一般的だった。最近の研究では、社会的移行は、生得的な男性が症状を持続させる最も強力な予測因子であることがわかった。つまり、女の子として生きることを許された性別違和のある男の子の間で、大人の女性になりたいと強く願う傾向があったが、これは驚くに当たらない。(同じ傾向が生得的女性にも見られたが、それほど強固ではなかった。) もし性別違和の子どもがもう一方の性として生きることを許されているのに、どうしてその気持ちを変える必要があるのだろうか。性別違和の子が、本当に、本当に、性を変えたいと望むなら、だれも反論するものはいないだろう。 

何をなすべきか 

必要な調査が行われていないため、確実なことは言えない。しかし、全体像を踏まえて、提案する。

もしあなたが、小児期発症の性別違和の子どもを離脱させたいなら、そして、その子がまだ思春期を大きく下回っている(様々だが、11歳より若いとしよう)なら、その子に対し、生まれながらの性別の一員であることを、断固として、(しかし優しく辛抱強く)主張すべきなのだ。これが難しい場合は、セラピストを探すことも検討すべきだ。異性として異性装や妄想遊びをさせるべきではない。何よりも、子どもに社会的に別の性に移行させるべきではない。

同時に、最善を尽くしても困難な場合がある。その時は、子どもが幸せになるためには、最終的に移行する必要があるかもしれないと認識してほしい。もし、その子の性別違和感が思春期まで続くようであれば、(これも子どもによって年齢は異なる。14歳くらいとしよう。) 移行する可能性はかなり高くなる。その時点で、親は移行を支援することを考えるべきだと、私たちは考えている。

オートガイネフィリア型性別違和(思春期の少年・男性) 

親の立場からすると、オートガイネフィリア型性別違和(生得的男性にのみ生じる)は、しばしば青天の霹靂のように思われる。これは、発症が思春期であっても成人期であっても同じだと思われる。10代の少年が突然、自分は実は男の体に閉じ込められた女である、あるいはトランスジェンダーである、あるいは性別移行を望んでいると表明することがある。典型的な例では、この発表は、彼がインターネットで集中的に調べたり、インターネットのトランスジェンダーフォーラムに参加した後に生じる。重要なのは、この青年は幼少期(つまり思春期以前)に性別不適合や性別違和の明確で一貫した兆候を示さなかったことである。

急に発症する性別違和と、たまたま思春期に発症したオートガイネフィリア型の性別違和とは、重要な違いがある。突発性発症型性別違和感症は突然発症するのに対し、オートガイネフィリア型性別違和感症は何年もひそかに育っていたのに突然明らかになることがある。これについては、後ほど詳しくお話しする。

オートガイネフィリア型性別違和はどこから来るのか?このタイプの性別違和の動機について、私たちは多くのことを知っている。私たちの知識のほとんどは、成人期に移行した生得的男性の研究から得ている。これらの成人の中には、思春期に性別違和になった者もいるが、その全員が、その症状の根本的な原因であるオートガイネフィリアを有していたのである。(警告。オートガイネフィリアはセックス(性行為)に関するものだ。子どもが性的妄想をもっていると考えることは、どんな親にとっても気まずく、不快なことであることは理解している。しかし、この点を直視しなければ、このタイプの性別違和を持つ息子を理解することはできないだろう)。

オートガイネフィリアとは、男性である自分が女性だと妄想することによって性的興奮を覚えることだ。つまり、オートガイネフィリアの男性は、自分を女性のように考えたり、女性のように振る舞ったりすることで興奮するのだ。典型的な異性愛者の思春期の少年は、魅力的な少女や女性について性的な妄想を抱く。オートガイネフィリアの思春期の少年もそのような妄想を抱くことがあるが、それに加えて、自分が魅力的でセクシーな女性であることを妄想する。思春期のオートガイネフィリアに関連する最も一般的な行動は、フェティシズム的な女装だ。この行動では、思春期の男性はプライベートで女性の衣服(典型的にはランジェリー)を身につけ、鏡で自分を見て、自慰をする。オートガイネフィリアの男性の中には、女装に性的興奮を覚えるだけでなく、女性の身体の一部を持つという考え方に興奮する人もいる。このような身体に関する妄想は、特に性別違和と結びつく可能性が高い。

オートガイネフィリアとオートガイネフィリア型性別違和を区別することが重要である。オートガイネフィリアは基本的に性的指向であり、その強度が強まったり、弱まったりするが、一度存在すると消えることはない。オートガイネフィリアはオートガイネフィリア型性別違和へと変わり、男性から女性に移行したいという強い欲求が現れる。男性がオートガイネフィリアを持つとオートガイネフィリア型性別違和に確実になるが、オートガイネフィリアだからといって性別違和になるわけではない。多くのオートガイネフィリアの男性は、男性のままで満足して生活している。さらに、オートガイネフィリア型性別違和が軽減して、性転換を希望していた男性がそうではなくなることもある。

一般に、思春期の少年は自分の性的妄想を親に打ち明けることはまずない。これは、特にオートガイネフィリアの少年に当てはまると思われる。さらに、女装する少年の多くは、それを恥ずかしく思っている。オートガイネフィリアの妄想や行動がほとんど秘密にされるという事実は、オートガイネフィリア型性別違和が通常どこからともなく出現するように見える理由の1つである。もう一つの理由は、オートガイネフィリアの男性はもともとあまり女性的ではないことである。オートガイネフィリアの思春期の少年は、性別不適合や性別違和の明らかな兆候を発しない。

オートガイネフィリアの男性の多くは、性別適合を求めない可能性が高いが、それの確証をえることは困難である。(男性として生まれたすべての人を対象に、オートガイネフィリアと性別移行の両方について尋ねる代表調査を行う必要がある。これはまだ行われておらず、今後もすぐに行われることはないだろう)。オートガイネフィリアを持つ多くの男性は、たまに女装をすることに満足している。女性と結婚する人もいるし、子どもを持つ人もたくさんいる。家族の存在は、幾分か気になるにせよ、その後の性別移行を避ける保証にはならない。過去数十年間、オートガイネフィリアの男性が性別移行する場合、女性と結婚して子どもをもうけた後、30~50歳の間に移行することがほとんどであった。最近では、思春期を含むより若い年齢で移行を試みている可能性がある。

オートガイネフィリアと(オートガイネフィリア型)性別違和との関係は不明である。1つの見解は、性別違和は、おそらく偶然の出来事や環境要因によって、オートガイネフィリアの合併症として生じるかもしれないということである。もう1つの見解は、徐々に性別違和になるオートガイネフィリアは、最初から単純なオートガイネフィリアとはいくらか異なっていた(例えば、より強迫観念的である)というものである。オートガイネフィリアの原因はまだ解明されていないため、これらの解釈を整理することは現時点ではかなり困難である。

オートガイネフィリア ― オートガイネフィリア型性別違和の中心的な動機 ― は、異常な性的指向と考えることができる。他のタイプの男性の性的指向と同様に、私たちはそれを変える方法を知らないし、変えようとしない方がいい。ジレンマは、最も幸福と思われる方法で、オートガイネフィリアを受け入れるにはどうしたらよいかということだ。それは、あるオートガイネフィリアの人は男性のままでいることであろうし、別のオートガイネフィリアの人は女性へ移行することだろう。 

オートガイネフィリア型性別違和について、私たちは何がわかっているのか? 

オートガイネフィリア型性別違和についてわかっていることの多くは、成人を対象に行われた研究から得られたものだ。初期の研究のほとんどは、オートガイネフィリアの理論を開発した科学者であるレイ・ブランチャードによって行われたものである。この研究はその後、他の研究者、特にアン・ローレンス、マイケル・ベイリー、そしてベイリーの弟子たちによって確認され、拡充されてきた。

ブランチャードの研究は、成人男性の性別違和患者の中に、2つの異なるサブタイプを特定した。一つは、彼が「同性愛型性別違和」と呼ぶタイプで、小児期発症の男性の性別違和である。この症状を持つ男性は、他の生物学的な男性に惹かれるという意味で、同性愛者である。ブランチャードは、それ以外の男性患者はオートガイネフィリアであるという説得力のある証拠を提示した。私たちは現在、男性の性別違和には2つのタイプしかないという説を支持している。なぜなら、それ以外の性別違和については説得力のある証拠が示されていないためである。しかし、私たちは科学的に偏見をもたないことを大切にしているので、この説は変わる可能性がある。特に、男性の思春期に発症する性別違和のいくつかのケースは、生得的女性に起こる突発性発症型性別違和と本質的に同じである可能性がある。しかし、これを立証するためには、さらなる研究が必要であろう。

オートガイネフィリアは、確かなことは言えないが、おそらく稀なものである。しかし、性転換を求める男性の間では、よく見られることである。実際、アメリカを含む近年の欧米諸国では、男性から女性への性転換の症例のうち、少なくとも75%をオートガイネフィリアが占めている。

オートガイネフィリアが性別違和を理解する上でいかに重要であるかを考えると、あなたがそれについて耳にしたことがないことに驚くかもしれない。オートガイネフィリアという考えはほぼ隠蔽されてきたのだ。なぜなら、ジャーナリストや家族、そして多くのオートガイネフィリアの男性を含むほとんど人々は、「トランスセクシュアルとは、一方の性の心をもう一方の性の体に宿すことである」という、間違ってはいるが、標準的な物語を強く望んでいるからである。多くの人々は、この物語の方が、「性転換を望む男性がいるのは、女性になることに強いエロティシズムを感じるからだ」という考えよりも、理解しやすく、動揺も少ないと感じている。

多くのオートガイネフィリアの男性の中には、―- 彼らもあなた同様、オートガイネフィリアを不可解に思っている ―オートガイネフィリアという考え方の発見を新発見だと肯定的に感じている人もいれば、一方、それに激怒している人もいる。一部のオートガイネフィリアの男性が否定的である理由は、主に2つある。第1に、一般の人々は、性別違和を性的に説明されると心に響かないと考えるだろう、すなわち、性的なものに対する不快感が蔓延しているのだ、ということを彼らは正しく認識している。第2に、彼らは自分自身の感情についてのこの説明(女性になることにエロティシズムを感じる)は、「男性の体に閉じ込められた女性」という標準的な説明よりも、満足できないと思っている。これは、オートガイネフィリアが男性の特性であること、だからオートガイネフィリアは女性になりたいと思うことが本質だからである。

トランスジェンダーの活動家は、しばしばこの考えを敵視しているので、オートガイネフィリアが論争の的になっていることを認識しておくとよいだろう。活動家たちからそれについて学ぶことは何もない。また、あなたの息子がインターネット上の議論に頻繁に参加しているのであれば、その考え方に反感を持つかもしれない。オートガイネフィリアが社会的な理由で論争になっているのであって、科学的な理由ではないことを私たちは強調する。科学的なデータで真剣に異議を唱えたものはない。 

セクシュアリティ 

オートガイネフィリアの男性は、様々なオートガイネフィリアの妄想や関心を示すことがある。女装することや、女性の体を持つことを妄想し、編み物などのステレオタイプな女性の活動を(エロティックな理由から)楽しみ、妊娠することや、または月経になることを妄想したりする。ある研究では、女性器を持つことを妄想するオートガイネフィリアの男性は、最も顕著な性別違和を持つ傾向があることが明らかにされている。

オートガイネフィリアの男性は、異性愛者(すなわち、女性だけに惹かれる)、両性愛者(男性と女性の両方に惹かれる)、無性愛者(すなわち、誰にも惹かれない)であると認識することがある。ブランチャードの研究では、オートガイネフィリアは、男性の異性愛の一種であり、自分の内心に向けられたものであることを示している。彼らはしばしば自分の外側に向けられた異性愛と共存するため、通常、女性に惹かれると言う。一部のオートガイネフィリアの男性は、自分が女性として他の男性に惹きつけられることを楽しんでいる。彼らは(女性の役割で)男性とセックスすることについて性的な妄想を抱くことがあり、中にはその妄想に基づいて行動することさえある。このことは、彼らの中には、バイセクシュアルであると認識する場合があることを説明している。また、想像上の「内なる女性」に惹かれるオートガイネフィリアは、この傾向が極端に強く現れ、他の人に対するエロティックな感情が残っていない人もいる。この場合、無性愛型性別違和となる。(無性愛のオートガイネフィリアの男性は、多くの性的妄想を抱くが、これらの妄想は他人を巻き込まない傾向がある)。

オートガイネフィリアの男性が性転換の一環として女性ホルモンを投与されると、通常、性欲が著しく減退する。このため、性転換への欲求も減退したと報告する人もいる。しかし、移行願望に変化がなかったという報告もある。(いずれにせよ、ホルモン療法は重大な副作用を伴う医学的介入であり、慎重に検討した結果、性別移行を目指す場合を除き、性別違和の治療法として、私たちは勧めない)。

オートガイネフィリアはパラフィリア(性倒錯)の一つで、ほとんど男性にしか見られない異常な性的関心のことである。

繰り返すが、オートガイネフィリアは性的指向であり、理解しがたい異常な指向であることは確かである。親が子どもの性的指向を変えられるという証拠はない。だから、親はそれを変えようとすべきではないと我々は考える。 

何をなすべきか 

私たちの価値観、知識、常識に従って、オートガイネフィリア型性別違和の男性は、最初に気づいてもすぐに性別移行を求めるべきではないと私たちは考える。移行には最終的に、取り返しのつかない結果をもたらす重大な医療処置が必要だからだ。しかし、私たちは、オートガイネフィリア型性別違和に対する正しいアプローチとは何なのか、わからないでいる。その理由の一つは、オートガイネフィリアについて、知識があって偏見のない科学者が行う研究成果があまりにも少ないからである。

まず、あなたの息子にオートガイネフィリアについて知ってもらうことをお勧めする。どのようにするのが一番良いかは、あなた次第だ。気まずくない方法はおそらくないだろう。このブログを見せることを検討してみてほしい。人は事実に基づいて人生の重要な決断をすべきであり、男性のオートガイネフィリア型性別違和者にとって、生じていることは事実だ。よくある「男性の体に女性の心・脳」はフィクションだ。

オートガイネフィリアを理解することで、性転換への意欲が低下する男性もいる。しかし、モチベーションが下がらない人もいる。我々は、小児期発症の性別違和と比べると、オートガイネフィリアの性別違和の持続と離脱のパターンについて、わかっていることははるかに少ない。

もしオートガイネフィリアの男性が科学的な証拠を熟知し、性別移行がもたらす結果を、少なからぬ時間をかけて辛抱強く検討し、それでもなお移行したいと望むなら、私たちはその決断に反対しない。多くのオートガイネフィリアの男性が、性別移行後に幸せになる可能性はある。しかし、思春期の子どもたちが決断を急ぐ必要はない。 

突発性の性別違和(主に思春期・青年期の女性) 

突発性発症型性別違和(ROGD:Rapid-onset Gender Dysphoria)は、突然やってくるように思われる。これは、ROGDはだしぬけに発症するからだと考える。これは、ROGDを持つすべての青年が、それが始まる前は幸せで精神的に健康であったということではない。しかし重要なことは、彼らが幼少期(思春期以前)に性別違和の兆候を見せなかったことだ。

ROGDの典型的なケースは、思春期または若年成人女性たちに見られ、彼女らの家族以外の世界が、トランスジェンダー現象を美化し、それが広がっていることを誇張している。さらに、インターネットとの過剰な関わり合いも指摘される。思春期の女性は自分がトランスジェンダーであるという確信を持つようになる。(まれにではなく、彼女たちの集団の仲間たちも同じ信念を持っている)。これらの仲間集団は、すべての不幸、不安、人生の問題は、自分がトランスジェンダーであることが原因であり、性別移行が唯一の解決策であると信じるよう、互いに励まし合う。その結果、ホルモン剤を含む性別移行への道を急ぐことも起こりうる。親が性別移行に反対することで、しばしば家族の不和を招き、別居につながることさえある。自殺願望を持つこともよくある。

私たちは、ROGDとは、若年者(多くは生得的女性)が、自分にはない症状があると思い込む社会的な伝染現象であると考えている。ROGDは最初からあった性別違和を発見することではなく、むしろ自分の問題が、以前から(自分からも、他者からも)潜んでいた性別違和のせいだと誤って思い込むことなのだ。はっきりさせておきたいのは、ROGDの人は確かに一種の性別違和を持っているが、それは誤った考えに特に影響されやすい人が信じ込むことによる性別違和なのだ。その人の性の心/脳がもう一方の性を持つ体に閉じ込められていることなどによる性別違和ではない。ROGDの人はもちろん性別の移行を望むし、その可能性にしばしば執着する。

ROGDを助長するサブカルチャーは、カルトと共通する部分があると思われる。例えば、絶対的なイデオロギーと一体化すること、極めて特殊な専門用語を使用すること、世界を「我々」対「彼ら」のように考えること(一般にありがちな青年より極端に)、「プログラム」に参加しない家族や友人との関係を断つよう奨励されること、といった側面である。また、一世代前に起こった非常に有害な流行、すなわち、幼少期の性的虐待をめぐる誤った「回復された記憶」と、それに伴う多重人格障害の流行と奇妙な共通点がある。これらについては後述する。しかし、まず最初に、ROGDについてわかっていることを少しおさらいしておこう。 

生得的男性はどうなのか? 

なぜ私たちは、生得的女性と生得的男性を比較することを重視するのだろうか。理由は3つある。第一に、ROGDについて行われた1つの研究では、男性よりも女性の方が圧倒的に多いことがわかった(80%以上が女性症例)。第二に、思春期の女性がトランスジェンダーであると認識し、ジェンダー・クリニックに来院する数が著しく増加していること。第三に、生得的男性に見られるROGDの症例のほとんど、あるいはすべてを占めると思われる、別のタイプの性別違和(オートガイネフィリア型性別違和)が存在することである。しかし、生得的男性に見られる少数のROGDの症例が、オートガイネフィリアによるものであると完全に断定することはできない。したがって、ここで論じることは、生得的男性にも当てはまる可能性がある。 

私たちは何がわかっているのか? 

ROGDは最近の現象であるため、確かなことはほとんど分かっていない。情報源は4つある。まず、リサ・リットマンが国際性科学研究アカデミーの年次総会でROGDに関する重要な研究を発表した。(それはまだ出版されていないが、すぐに出るのではないかと思う)。これは現在までのところ、唯一の体系的な実証研究だ。第二に、私たちはROGDの女児の母親と何度も会話を重ねた。第三に、この現象に関するいくつかの事例研究を読んだ。第四に、ROGDの子どもたちやその家族に(セラピストやコンサルタントとして)携わっている臨床家と連絡を取り合っている。幸いなことに、これらの情報源からまとまった知見が得られている。私たちは次のような結論にかなり自信を持っている。

 - ROGD患者の大多数は女性であり、発症年齢は高校生から大学生が最も典型的である。
- ROGD患者はROGD発症前に非異性愛者としてのアイデンティティを持つ割合が高い。
- 極端な社会的伝染の徴候が典型的である。例えば、複数の同級生が全員トランスジェンダーとして認識し始めた場合などである。学校主催のトランスジェンダー教育プログラムの後に発生することもある。
- 特に(自殺を伴わない自傷行為などの)境界性パーソナリティ障害や、かつて「アスペルガー症候群」と呼ばれていた軽度の自閉症に関連する問題が多い。
- 一般に、ROGDの子どもたちがトランスジェンダーのアイデンティティを受け入れると、精神衛生と社会的関係が極めて悪化する。
- 子どものROGDに抵抗する親は、「トランスフォビア」でも「社会的に不寛容」でもない。例えば、同性婚やトランスジェンダーの権利の平等を普通に認めている親たちである。 

ROGDに関する私たちの見解 

突発性発症型性別違和(ROGD)は、若者(一般的には思春期の女性)に発症する。彼女らには確立されたトランスジェンダーの形態に関する兆候がほとんど、あるいはまったくなかったという決定的な証拠があるにもかかわらず、自分がトランスジェンダーであると信じ込まされる場合に起こるのだ。どのようにして、そしてなぜ、このようなことが起こるのだろうか?

現在までの研究は非常に限られているが、過去の類似の現象から何が起こっているのかについて、私たちは強い直感と予感を持っている。すなわち、「回復した記憶や多重人格の流行」である。この章では、これらの過去の流行現象を説明し、今問題になっている流行現象である突発性発症型性別違和との類似性を示すことに多くの説明を割きたい。私たちは、過去を忘れる(あるいは無視する)者は、それを繰り返す運命にあると信じている。

1990年代、女性たちが、自分は性的虐待を受けたと信じるようになるケースが爆発的に増えた。たいてい父親からで、しかも繰り返し、残酷な目に遭わされたという。彼女たちは、これらの「記憶」を「回復」する前に -- たいていの場合、心理療法中に -- そのようなことは何も覚えていなかったにもかかわらず、虐待の事実が存在したと信じたのだ。その記憶はしばしばとてもありえないものであるにもかかわらず(たとえば、家族の誰かがが気づいていただろうと思える)、彼女らはその記憶が存在すると信じた。回復した記憶を持つ女性の多くは、家族との関係を断ち切った。多重人格障害の症状を発症する女性もいた。私たちは今、回復した記憶が偽りであったことを知っている。そして、多重人格障害は、少なくとも当事者やそのセラピストが信じていたような形では、存在しないのだ。私たちは、回復された記憶と多重人格障害を、ROGDと似たような原因、また、幾分か似ている原因を持つものとして、RM/MPD(recovered memory and multiple personality disorder )と呼んでいる。 

ROGDとRM/MPDの主な共通点は以下の通りだ。 

1. 1980年代以前はRM/MPDと一致する症例は非常にまれだったが、流行した。同じ事がROGDに起こっていると思われる。 

2. どちらも主に若い女性が罹患しているが、RM/MPD(平均32歳)はROGD(典型的には思春期)よりかなり遅く発症する。(もう一つの社会的伝染の破壊的な流行を見せたのは、植民地時代のセーラムにおける魔女告発で、主に思春期の少女を巻き込んだものであった)。 

3.  RM/MPDとROGDの両方について、「本気で信じている人たち」が説明しているが、過去の経験、常識、科学と矛盾している。 記憶と人格の統合は、RM/MPDを治療するセラピストが信じていたようには機能しなかった。例えば、トラウマを経験した子どもや大人は、それを抑圧することができないのだ。(彼女らはどう試みても、それを記憶しているものだ。)そして、生得的女性の性別違和感が幼少期以降に始まることはない。(それがROGDのような後天的な症状でなければ) 

4,どちらも、誤った有害な信念が社会的に伝染することを示す十分な証拠を示している。RM/MPDの場合、「感染経路」は通常、RM/MPDを強く信じているセラピストから、暗示にかかりやすい患者へと向かい、患者は同様の信念を身につけ、それを自分の人生に適用し、以前に愛した人に対して誤った、恐ろしい非難を作り出した。(セラピーや医療の治療が有害な結果をもたらすことを医原性と呼ばれる)。ROGDの場合、感染経路は主に若者から若者への直接的なものと思われる。確かに、ROGDの人が自分がトランスジェンダーであるという信念を獲得した後に、セラピストが関与し、多大な害に加担することはある。しかし、若い子がセラピストからROGDになるように説得されることは(まだ)まれなようだ。 

5. どちらも社会政治的なイデオロギーと結びついている。(興味深いことに、どちらのイデオロギーも、いまだに多くの大学のジェンダー研究プログラムに居心地のよい場所が与えられている)。RM/MPDにとって、イデオロギー体系は、男性による子どもへの性的虐待はあまりにも一般的であるだけでなく(真実)、猛威をふるい、慣例とさえなっている(虚偽)、というものだった。このイデオロギーと、フロイトの理論や方法(催眠術など)を組み合わせてみて、何が間違っていたのだろうか。それはたくさんあることが判明している。ROGDの場合、関連するイデオロギーはあまり首尾一貫せず、一見すると、矛盾する考えを含んでいる。ジェンダーは「流動的」であること(ここでは、誰もが男性と女性の二項対立に当てはまるわけではないという意味)、人々を厳格なジェンダー・カテゴリーに押し込めることは、社会的・個人的苦悩の原因となること、しかし、ジェンダー移行は人々を助けるために十分利用されていない方法だ、という考えである。 

6. RM/MPDとROGDの両方は、一般に精神衛生上の問題、特に境界性人格障害(BPD)に一致する人格プロファイルと関連している。これは、RM/MPDまたはROGDの患者全員がBPDであると言っているのではなく、単にこれらのグループによく見られることを示す証拠であるというだけである。例えば、私たちが前述の情報源から気づいた非自殺的自傷行為の割合の高さは際立っている。このような行動はBPDと強く関連している。 

7.自分がRM/MPDかROGDであるという信念を受け入れると、健全な機能および精神的健康の著しい低下につながる。 

ROGDに共通すると思われる要因、およびROGDとRM/MPDの間で類似している要因には、誤った信念やアイデンティティを受け入れるよう奨励することである。これらの要因には、脆弱な自己意識(BPD)、注目欲求(BPD)、社会的困難(BPDと自閉症の特性)、社会的に影響を受けやすいこと(BPDと青年期)、社会的圧力(青年期)、間違った結論を受け入れる可能性の高い信念を強く抱くこと(それが不合理で根拠が乏しいとしても)(社会政治的な教化)が含まれる。実際に性別不適合の過去を持つ青年や、性的指向が異性愛でない青年は、この事実が常にトランスジェンダーである兆候であると特に信じやすいかもしれない。人生がうまくいっていない青少年は、特にその理由を求めていて、思い切った変化を特に受け入れやすいかもしれない。

私たちがこれまで述べてきた熟知している情報と、その情報に基づく直感によれば、ROGDの人の多くは、自分が性別違和であると決める前からたいてい問題を抱えており、ROGDが(できれば)解消された後も、多くの人が多少問題のある生活を送るのではないかと思われる。もちろん、ROGDは本人にとっても家族にとっても、事態を悪化させるだけである。 

どうすればいいのか 

ROGDは最近の現象であるため、罹患者を支援するための指針はほとんどない。Lisa Marchianoが良識にあふれた素晴らしいエッセイを2つ書いているので、まずはそちらから始めることをお勧めする。

第二に、急に発症する性別違和については、ひとまず置いておいておこう。ROGD発症以前から存在し、ROGDの原因となっている可能性のある問題を特定してほしい。これらの問題に注意を払うことは、誰にとっても有益であり、おそらくあなたの子ども同意してくれるだろう。

第三に、ROGDに関しては、性別移行の考慮を遅らせるためにできることをしよう。様々なタイプの性別違和の中で、ROGDは性別移行が最も正当化されず、最も研究されていないタイプである。ROGDは、社会的な手段によって獲得された誤った信念から作られていることを忘れてはいけない。あなたの子どもにこの誤った信念を受け入れさせた前述のどの要因も、性別移行を許すことで回復することはない。 

極めてまれな2つのタイプの性別違和 

完全を期すために、もう2つのタイプの性別違和も含めておく。私たちは、どちらも性別違和のある人の中でもまれなものだと考えている。私たちの一人(ブランチャード)は、一つ目のタイプであるオートホモエロティック(自己同性愛)型性別違和の症例を調べているが、これはエロティックな動機による性別違和であると思われる。この場合、性的に成熟した生得的女性(すなわち、生物学的にもう子どもではない)は、ゲイ男性になり、他のゲイ男性と交流するという考えに性的にとらわれるようになる。二つ目のタイプ、つまり精神病に起因する性別違和であるが、この症状にはっきりと当てはまる人を私たちは見たことがない。(このタイプを含めるのは、私たち二人が尊敬する重要な学者であるアン・ローレンス博士の主張によるところが大きい)。このタイプでは、ある人(生得的男性、女性のどちらでも)が、深刻な思考力の欠如のため、自分がもう一方の性であるという妄想を抱くようになる。

表面的には、両方の症状には他のタイプの性別違和と類似しているところがある。例えば、急に発症した性別違和の女性は、男性に性的魅力を感じ、その結果、オートホモエロティック(自己同性愛)型性別違和と同様に、ゲイになろうと努力することがある。重要な違いは、急に発症した性別違和の女性は、主にゲイ男性になりたいというエロティックな欲求によって動機づけられていないことである。むしろ、ゲイ男性とのセックスの見通しを持つことは、彼女の症状の副次的結果であって、その主なポイントではない。急に発症した性別違和の女性は、広義には社会的伝染によってそのような症状にいたる(たとえば、性別違和がある重要な意味で望ましいという文化的シグナルも含む)。もう一つの稀なサブタイプに関して、私たちは精神病を患う性別違和者を知っている。しかし、これらのケースでは、精神病は性別違和の原因ではなかった。それは単に、性別違和の人が抱えている副次的な問題だったのだ。精神病に起因する性別違和の場合、自分がトランスジェンダー(または他の性別)であるという信念は、明らかに思考障害に起因する妄想であり、例えば、社会的伝染やオートガイネフィリアによるものではない。 

オートホモエロティック型性別違和 

この稀なタイプの性別違和は女性に限定される。発表された症例は、思春期後半から成人期にかけて性別違和感が始まった女性である(もっと早くから始まっていた症例も考えられる)。(異性愛者の女性で、男性に性的魅力を感じているが、他の男性と「同性愛」の関係を持つために性転換を希望している人に起こる。これらの女性は、自分が同性愛者であるという考えやイメージによって、性的興奮を覚えるようである。我々は、この性的指向を示すために、autohomoerotic gender dysphoriaという分類表示を作成した。このタイプの性別違和に関する体系的なデータはほとんどないが、臨床的には、強い男性的特徴を持つ異性愛者の女性が、自分が同性愛者の男性であるかのように感じ、女性らしい男性に強く惹かれると言う話は、100年以上前にさかのぼると言われている。

少なくとも少数のオートホモエロティック型性別違和者が外科的性転換手術を受け、その決断に満足していることは、よく知られている。現在の外科技術では、完全に納得のいく、あるいは機能的な人工ペニスを作ることはできないが、術後の満足度に関するこうした自己報告を疑うだけの説得力のある理由はない。しかし、オートホモエロティック型が、この点を大目に見てくれるゲイ男性のパートナーを容易に惹きつけることができるとは考えにくい。

このタイプの性別違和(オートホモエロティック)は、微妙な違いに見えるかもしれないが、オートガイネフィリア型性別違和の女性版ではないようである。オートガイネフィリア(男性)性別違和者は、女性の身体を持つということに魅力を感じ、オートホモエロティック(女性)性別違和者は、ゲイ男性のセックスに参加するということに魅力を感じるのである。オートガイネフィリアにとって、レズビアンの女性になることは二次的な目標であり、女性に惹かれ、女性になりたいと思うことの論理的帰結である。オートホモエロティク型にとって、ゲイ男性になることは第一の目標であるか、それに非常に近いものであるように見える。

数少ない役に立つ症例報告から、オートホモエロティック型性別違和には、小児期に観念形成や行動上の前兆があるようだ。しかし、これらの女性は、(同性愛以前の)小児期発症型性別違和の少女ほど、目立って男性的ではない。このような理由から、また、そもそもまれなケースであることから、多くの親が娘のこの症候群を発見することはないだろう。しかし、発症したときに、オートホモエロティック型性別違和の症例が、周囲から突発性発症型性別違和と認識されることは考えられる。これは、性別違和が突然生じたのではなく、初期の非典型的なエロティックな妄想が両親には見えなかったからである。 

精神病性妄想による性別違和 

性別違和が精神病性妄想を反映していることがあるという考え方は、確かにもっともである。たとえば、精神分裂病の妄想は、しばしばとっぴなものだが、それを抱く人にとっては抗いがたいものだ。残念ながら、私たち(レイ・ブランチャードとマイケル・ベイリー)は、このプロファイルに明らかに合致する人物と直接接触したことがないので、この性別違和感のカテゴリーについては、他のものよりも自信がない。私たちが直接的に知らないことが、必ずしもそれほど大きな意味を持つわけではない。仮に精神病による性別違和が(他の性別違和と比較して)かなり一般的であったとしても、私たちはそれに遭遇するとは予想しなかっただろう。重度の精神疾患を持つ人は、一般的に精神疾患の治療を受けており、性別違和の治療は受けていないし、最近まで、性別違和者を治療するクリニックでは、診断や治療に支障をきたす恐れがあるため、重度の精神疾患を持つ患者を排除していたのだ。しかし、私たちには、このタイプの性別違和を「確実に存在するもの」として受け入れることにはためらいがある。なぜなら、このような患者を診たという精神科医は、オートガイネフィリアなどの他のタイプの性別違和を見極めるための訓練が不十分ではないかと考えているからである。したがって、実際には精神病が同一人物の中でオートガイネフィリアとともに発症しただけかもしれないのに、精神病が性別違和を引き起こしたと結論づけるかもしれないのだ。私たちの一人(ベイリー)は最近、精神病性妄想による性別違和に私たちが期待するプロファイルを持っていると思われる青年の母親と連絡を取ったが、この青年がオートガイネフィリアであるという証拠は何も得られなかった。しかし、このタイプの性別違和が存在するかどうか、ましてや、それが広く見られるかどうかについては、私たちにはほとんど確信がない。 

性別違和の種類は1つではない:いくつかの影響 

性別違和が正確な用語でないことは、もう明らかだろう。性別違和を抱える子どもの親は、自分の子どもがどのタイプの性別違和なのかを知っておく必要がある。そのためには、最も一般的な3つのタイプすべてについて学ぶ必要がある。つまり、自分の子どもがなぜタイプXなのかを理解するためには、なぜタイプYでもタイプZでもないのかを知る必要があるのだ。これは単に学問上の話ではない。性別違和のタイプには、本質的な違いがあるのだ。

もし知識が力であるなら、知識の欠如は怠慢である。性別違和の科学的側面について、一部の主要なジェンダー臨床医が無知であるのは、恥ずべきことだ。より良くするために、彼らはここから始めるべきだ。私たちの類型論に敵対するジェンダー臨床家を採用しないように助言する。理想を言えば、彼らなら採用されないことに同意してくれるだろう。

また、性別違和には全く異なるタイプがあることを知れば、あるタイプのトランスジェンダーが、自分自身の経験をもとに他の子どもや青年に提言することへの疑問や懸念をもつだろう。ケイトリン・ジェンナーの経験には、ジャズ・ジェニングスの症状を理解できるものは何もないし、その逆もまた然りなのだ。しかし、オートガイネフィリア型性別違和に典型的な経歴を持つ多くの声高なトランスジェンダー活動家は、親や立法者、臨床医に容赦なく圧力をかけ、性別違和を抱える子どものタイプを区別しないことを黙認させ、そのための法律、治療法を求めている。さらに、彼らは自らの体験に基づく内部知識を主張することも少なくない。しかし、彼らの経験は、彼らにない2つのタイプの性別違和とは無関係なのだ。しかも、オートガイネフィリアに関しては、これらトランスジェンダー活動家はほぼ全員が否認している。つまり、公にされる彼らの体験の記憶は、歪曲されたものであるか、まったくの嘘であるかのどちらかである。注目すべき例外は、性別違和の重要な研究者となったアン・ローレンス博士で、彼は自分のオートガイネフィリアについて率直でかつオープンにしている。ローレンス博士は、異なるタイプの性別違和に関する科学文献を時間をかけて学び、自分の個人的な経験が非オートガイネフィリアの性別違和に当てはまると主張することはない。オートガイネフィリアを否認している人が、物語を一つにしようとすることで、最大の犠牲者となっているのは、実際、他のオートガイネフィリアの男性である。その中には、私たちに頻繁に連絡をくれる正直なオートガイネフィリアの男性もいる。彼らは否認派たちによる公然たる攻撃を恐れている。潜在的な犠牲者としてこのブログにつながっている多くの男性は、オートガイネフィリアの若者たちである。彼らは普通ならしないような決断の方へ揺れている。自分の症状の真実を直視できない者たちが信奉する間違った妄想に基づいた決断に揺れているのだ。

私たちにとって、最も悲劇的なグループは、その家族とともに、突然、発症した性別違和を持つ人々である。現在のトランスジェンダーの時代精神(「どこにでもあり、しかも素晴らしい!」)とソーシャルメディアが、問題を抱えた青年、特に思春期の少女の傷つきやすさとつながり、悲劇的に相互に影響しあい、この症状を生み出しているように思われる。彼らは、不必要で、醜く、不健康な医療介入を受ける危険にさらされているのだ。


(おわり)

 

 

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