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『友翔』

今日1月18日は愛すべき息子、友翔(ゆうと)の誕生日で10歳になりました。

たくさんの人々が犠牲となった「阪神・淡路大震災」の翌日が誕生日なんです。

25年も前のことなので、もちろん当時彼は影も形もありませんが、失われた多くの尊い命にあらためて合掌です。

友翔は「純型肺動脈閉鎖症」など4つの先天性心疾患を抱えて誕生しました。

通常、こういった心臓の異常は妊娠中のエコー検査で容易にわかるそうですが、運悪く産婦人科の先生が見逃していて、出産後半日ほど経ってからこれは大変となり、処置してもらえる病院を探すのに救急車で駆け回ったのですが、どこも受け入れてくれず、最終的に北千里の国立循環器病研究センターに搬送されました。

担当医から病状の説明を聞くにつれて次第に目の前が真っ暗になっていったことを今でも鮮明に覚えています。

妻は産婦人科に入院したままなので、余計に不安で仕方なかったと思います。

肺動脈が閉鎖しているために、右心室から肺へ血液を送り出すことができず、そのため右心室も正常に形成できてなくて極めて狭小で、三尖弁にも異常がありました。

左心室から送り出されて体中を回ってきた赤黒い静脈血が、右心室から肺に戻され、鮮赤色の動脈血になって再び全身に送られるという正常なサイクルが機能せず、一刻を争う状況でした。

すぐに手術となり、命を助けてもらえてとても有り難かったのですが、術後に小児集中治療室(PICU)に移された彼の姿を見ると、涙が止まりませんでした。

生まれたてのちっちゃな体には、メスの跡が生々しく残り、お腹からは何本もの管が出ていて、酸素吸入機や点滴が繋がれた痛々しい姿に、よく頑張ったなって何度も何度も声を掛けました。

その時は「なんでうちの子が」という思いが強く、産婦人科医を恨んだこともあり、実際に後でわかることになるのですが、知的障がいも持ち合わせていたんです。

一般に心臓に異常がある子は生まれてすぐに手術に取り掛かれる専門の病院でお世話になるのですが、友翔の場合は悲しいかな前述したような経過でした。

国立循環器病研究センターに搬送され処置してもらうまでの約半日の間に、綺麗な血液が脳に行き渡らずダメージを受けたのではないかと考えました。

しかし、産婦人科医も何度も謝罪してましたし、故意に見落としたわけでもないので、もうそれ以上どうこうはありませんでした。

専門的な話になりますが、最初の手術は「BTシャント術」といい、さらに続けて別に2回の手術「グレン術」と「フォンタン術」を受けました。

生まれてから2年ほどは、入退院の繰り返しで本人も大変でしたが、妻が入院中は毎日朝から晩まで付き添ってましたので、彼女が本当に大変でした。

定期的に行われるカテーテル治療時の全身麻酔から目覚める際に自発呼吸が出来なくなり、危篤状態に陥ったりと手術後も困難は続きました。

自宅に戻っているときにも、24時間酸素吸入は欠かせませんでした。

ムズムズして嫌なんでしょうね、鼻の下のチューブを外しては着け、着けては外しの繰り返し。

また、外出時も酸素ボンベを持ち歩くという、親子ともに不便な状態でした。

お陰様で今はずいぶん治まりましたが、医師や看護師を見ると、酷いパニックを起こす「白衣恐怖症」なんですね。

いつも彼らに痛いことをされる、彼らは悪い人たちだと思うんでしょうねぇ。

心不全等のリスクは依然残るとは言え、3度の手術により普通に生活が出来るようになりましたが、心臓疾患も部位や症状によって様々なパターンがあり、重篤さも人それぞれ違ってきます。

うちの子は右心室でしたが、これが左心室だと極めて深刻なケースが多いです。

国立循環器病研究センターでも、PICUに移されたあと一般小児病棟に戻ってこない子らもいたので、おそらく想像ですが亡くなってしまったのでしょう。

また、心臓移植でしか命を救うことのできない最重度の子たちも存在します。

心臓病に限らず、日々障がいや難病と闘い続けている子どもたちに、どうかご理解やご支援をいただけましたら幸いです。

今日無事に10歳の誕生日を迎えられたことを感謝するとともに、今後なにかと困難が立ちはだかることでしょうが、できるかぎり意味のある人生を歩んでいってもらえたらなと心から思います。

障がいや難病を抱えた子を持つすべての親が真っ先に願うこと・・・。

それは、自分たちが死んだ後も幸せに安心して暮らしていける世の中であってほしいということです。

とりわけ、友翔は年を取って授かった孫に近い存在なので、なおさらのこと強くそう願う誠榮でした。

10歳になった今も満足に会話できない状況ですが、本当に可愛くて可愛くて仕方ない自慢の息子なんです。

長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。感謝。

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