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#14.1. 「DXの本質」 DXの推進ロードマップを描いてみた

「Why?から始めよ!」ということを前回の記事で書きました。

今回は、いろいろな企業に対してコンサルティングをしたり、DXを実現したり(現在もしていたり)してきた経験も踏まえDXを推進するロードマップを描いてみます。
なぜ、自社がDXに着手しなければいけないのか?
この本質を理解することは非常に重要です。
その答えは、社会がデジタル化しているからです。
もの凄いスピードで。
社会や顧客がデジタル化していれば、その社会や顧客に対してモノやサービスを提供する企業もデジタル化していかなければ、その社会から押し出されてしまいます。

なので、単なる「企業変革」ではなく、「デジタル・テクノロジーを活用した企業変革(DX)」が必要なのです。

そのような環境において、自社はデジタル化によってどのような影響を受けるのか?
それに対してどのようなデジタル化をして企業変革をしていくのか?「Why?」から始めようということです。

ここで、前回の「DXの実現レイヤーの図」をもう一度示します。

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上図において、各レイヤー間で時間軸がズレます。
ちなみに、ここで単にRPA等を導入して単純なプロセスのデジタル化だけでは、ただ単にプロセスを改善したに過ぎません。RPAを導入しただけで、社会のデジタル化に対応できるでしょうか?
RPAを導入するのは簡単かもしれません。しかし、業務はどう変わるのか?組織はどう変わるのか?人はどう変わるのか?コストはどう変わるのか?
それに対して、間接的にでも顧客への提供価値は向上するのか?
等を考えなければいけません。
それには、それぞれの時間軸が異なるはずです。
そのズレる時間軸を把握して、もっと大きな視野で考えなければいけません。
そこには、ヒト、モノ、カネ、情報の様々な資産を分配して実現していく必要性が出てきます。

これを考え、実現できるのは、やはり経営者(経営陣)です。だからDXは、企業変革なのです。
言い変えると、DXは企業変革なので、経営陣が深く関与しないといけないのです。

よく「何から手をつけたら良いですか?」という質問を受けます。
まず、待ったなしでやるべきことは、一番下の層にあるクラウドシフトです。
「クラウドシフトできていなければ、とにかくすぐに取り掛かるべきです。」と答えます。
今後のDXを推進していく上で、システムが足かせになってはいけません。
ここを対応(クラウドシフト)していないと「変革の足かせになりますよ」って言っているのが「2025年の崖」ってやつです。
クラウドシフトする際に、一気にクラウドインテグレーションができる環境に移行できるのがベストですが、なかなかそう簡単にはいきません。
そこで、まずはいったんクラウド上に移そうということです。これがリフトです。

その後にシステムを「競争領域」と「非競争領域」に分割して、クラウド上でクラウドサービスを活用しながら、クラウドインテグレーションしていきます。

そして、クラウドシフトに並行してやるべきことがあります。

クラウドシフトを実施しつつ、同時に変革、デジタルシフト、を実施していきます。

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クラウドシフトが完了するのを待っていては遅いのです。
ここで同時に企業変革を始めます。変革については、コッターの8段階のプロセスに沿って進めることを推奨します。(これについては、後述)

新しく、デジタルシフト、変革をしていく際は、レガシーな仕組み(システム)を使わない前提で進めることが重要です。
クラウドシフトが終わっていなくてもです。
少し前にバイモーダルITという言葉が流行りました。

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モード1(既存のレガシーシステム)、モード2(クラウドシフトされたシステム)の2つのシステムに分割して考えるシステム移行のロードマップモデルです。
クラウドシフト、クラウドインテグレーションは、モード2で実現します。

ビジネス領域も既存ビジネスと新規ビジネス(DX化していく領域)に分けて考えます。いわゆる、出島モデルといった考え方ですが、ここで出島モデルのと既存モデルの領域のビジネスやシステムが、分断しないようにマネジメントしなければいけません。
DXの目的は、企業変革ですが、既存の事業を捨てることでも、やめることでもありません。
既存の事業は守りつつ、新しい価値を創造
していかなければならないので、DXは、とてつもなく難しいのです。

その出島モデルと既存事業を管理する経営マネジメント手法として、ゾーンマネジメントが有効なフレームワークだと考えています。
過去の記事にゾーンマネジメントについて書いていますので参考にして見てください。

では、経営者(経営陣)はどのように変革を進めれば良いのでしょうか?
企業変革が目的なので、コッターに変革の8段階とダイナミック・ケイパビリティをベースとしてロードマップを考えていきたいと思います。

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Step1であるように、緊急課題であるという認識の徹底(Sense Of Urgency)  これを全社的に植え付けることです。危機感を煽るのではなく、大きな目的を掲げるべきです。これこそがWhy?です。サイモンシネックの提唱するゴールデンサークルであるように情報の伝達をする必要があります。

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基本的に企業変革のアプローチは、コッターのプロセスを参照し、クラウドシフトと並行しながら進めます。
さて、いよいよDXを推進するためのロードマップを描いてみたいと思います。
これがベストな案というわけではありません。あくまでも一つの案なので、このとおりに実施していく必要はありませんが、少しでも参考になれば幸いです。

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変革の実施として、短期的な成功体験とクラウドインテグレーションの環境構築を2025年までには実施するという時間軸で考えています。

「環境変化の把握と危機の察知」
デジタル化していく社会において、自社がどのような影響を受けているか?もしくはこれから受ける可能性があるか?
「変革の準備」
Sense Of Urgencyとして緊急性を周知し、レジリエンスを強化し、変革のビジョン・ミッション、方向性を経営の観点から示示します。
「変革の実施」
アジャイルな組織を形成し、プロジェクト単位で組織の壁を破ったチーム編成をトップダウンで形成し、変革の短期的な成功体験を実現します。
この時に、変革のマネジメントとして、既存事業とDX事業に対して、資源の分配と管理をゾーンマネジメントにて実施します。
「変革の定着」
変革の準備、変革の実施を繰り返し実施し、修正していくことによって変革の文化を根付かせます。(ダイナミックケイパビリティの醸成)

この図でデジタル化がないじゃないか?と、思う人もいると思います。
そこで、この上にもう一枚被せて立体的に考えます。
下図のようなデジタル化の図を被せます。

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大きく捉えると、DXの最終ゴールは、企業変革の文化の醸成です。
いわゆるダイナミック・ケイパビリティとしての感知・捕捉・変革です。

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最後に前述のロードマップの図に、デジタル化推進の図を被せて立体化してみます。

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DXの推進はどのように進めるべきか?という問いに対して、様々な企業に対して、上図のような図からはじめています。
そこから、企業ごとの状況や戦略やDX方針等を鑑みながらカスタマイズしていくことが多いです。

非常に変化の激しい時代において、最適解を見つけ出すのは容易ではありません。どこから始めば良いかというのも自然な疑問です。
叩き台としてでも、使っていただけたら幸いです。


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