運用レポート2020.6.27

【週間為替市況】
今週は何とも慌ただしい一週間となった。
寄り付きからリスクオン
先週末に下値を模索していた株価が反発。ナスダック指数は再度史上最高値を更新。
また、一か月前に独憲法裁判所が「ECB資産買い入れプログラムの必要性を証明できなければ独連邦銀行は3か月以内に国債買い入れを停止する必要がある」との見解を示していたが、独憲法裁判所が判事の交代を予定していると報じられ、先週売られていたユーロに買戻しが入った。
また、先週心配されていたEUの新型コロナウイルス感染拡大に対する復興プログラムの合意に向けて、よく火曜日にオランダのルッテル首相と仏のマクロン大統領が会談を行うと報じられ、こちらもユーロの買いを誘った。EURUSDは1.11ドル台で寄り付いていたが、一時1.12ドル台後半まで上昇したが、ドル円の反応は限定的となり、ドル円のこの日の値幅は約25pipsだった。

翌火曜日。この日相場は大荒れとなった。
アジア時間の午前中に、ナバロ米大統領補佐官がFOXニュースのインタビューで
「中国との(貿易)協議は終わった」「中国人が嘘をついてアメリカ人が死んだ」等々、中国に対してネガティブな発言を連発。株価は大きく下げ、ドルも他通貨も大きく下落した。
ところがその直後、クドローNEC委員長が「米中通商交渉が終わったというのは完全に間違っている」、更にトランプ大統領が「中国との貿易合意は全く損なわれていない」と火消し発言を連発。
結局相場は元の位置どころか、そのままリスクオンに突入という何とも言えない動きとなった。
ところがNYタイムに入ると更に荒れた。
ソフトバンクグループが米通信大手のTモバイルUS社の株式を売却と報道。
時価総額から算出すると売却規模は約210憶ドル(2兆2000億円)となり、巨額のドル売り円買い思惑からドル円に大きく売りが入った。この日の高値107円20銭台から一気に106円丁度付近まで1円以上の下落。
このところドル円のボラティリティは低下していただけに市場にリーブされていたストップロスを一掃する動きとなった。

水曜日は完全リスクオフの動きとなった。
日中、殆ど動きはなかったが、NYタイムにトランプ政権は「EUと英国からの輸入品31億ドルに対し新たな関税を課すことを検討」と伝わるとユーロとポンドに大きく売りが入った。
更に国際通貨基金(IMF)が世界経済成長見通しを今年の4月に発表したマイナス3.0%からマイナス4.9%に大幅に下方修正。様々なファンダメンタルを材料視し相場はリスクオフの動きとなった。
為替市場はリスク回避のドル買いとなり、欧州通貨は売られ株価も大きく値を下げた。結局ドル円は前日の下げ幅を殆ど戻し107円台に戻して引けた。

翌木曜日は前日の流れを引き継ぎリスクオフ。
更に米国で新型コロナウイルス新規感染者数が過去最大数に達したということでリスク回避のドル買い継続となった。
米国の1日当たりコロナ感染件数、約2カ月ぶりに最多更新 -Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-26/QCIIRQDWLU7501

また、ECBはFRBが4月に行ったドル融通措置と同じ発想で、ユーロ圏以外の中央銀行にユーロを融通する枠組みを新設。こちらを受けユーロ需要が緩むとの思惑からユーロが売られ、こちらもドルの支えとなった。
NYタイムに流れは一転。
リーマンショックからの回復の過程で制定した、米通貨監督庁(OCC)が、金融機関に高リスクの自己勘定取引を禁じた所謂「ボルカー・ルール」の緩和を発表。
こちらを受け銀行株中心に株式が買い戻され持ち直し、リスク回避のドル買いもストップしドル円は107円40銭台まで上げたが失速。
米上院で対中制裁法案が可決されたが相場への影響は殆ど見られなかった。
米上院、香港巡る対中制裁法案可決-当局者と取引する銀行も対象 -Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-25/QCHPQPT0AFB501

そして昨日金曜日
日中は各市場堅調に推移。NYタイムに入ると再び動き出した。
この日米銀行へのストレステストの結果が公表された。心配されていたが何とか安心できる内容となった。
コラム:米銀の改革奏功、二番底織り込んでも健全性なお合格 – ロイター
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-us-banks-idJPKBN23X0CI
米FRB、銀行の配当に上限設定-9月まで自社株買い禁止 -Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-25/QCI0ZLT0AFB401
このストレステストに対し、ロイターとブルームバーグの見出しに文脈の相違があるのは気になることではある。

ストレステストを何とか通過したが、この日も米国の新型コロナウイルス新規感染者数が過去最大を更新。また、新規失業保険申請者数の伸びは鈍化しているものの予想を上回った。
テキサス州南東部のハリス群では最高レベルの非常事態宣言を発動。
また、前日に米上院で可決された対中制裁法案に対し「中国は香港情勢をめぐる米国の圧力について『米中貿易協議の第一段合意に悪影響を及ぼす可能性がある』と反発」と報道。
諸々の材料を受け、やはり結局リスクオフに反応。
NYダウは戻りを試していたが、結局時間外取引の引け間際に24000ドル台まで下落。
為替市場はリスク選好相場から一気に反転、リスク回避のドル買い再び。
ドル円は一時106円後半まで下落していたが、107円台まで上昇して引けた。
来週以降もこのファンダメンタルに振られる相場が予想される。ヘッドラインには注意が必要だろう。


【取引レポート】
先週のレポートでEURUSDがフィボナッチ61.8%を下抜けで追いかけるとレポートしたが、まったく抜けなかったため、週明けEURUSDは見送った。
Goldも1720ドル台も無く手を出しづらかったため見送り。
火曜日にドル円のリテールロングが増えていたためドル円ショートを慣行
朝のナバロ発言で利食い。
更に水曜日に戻り売りを慣行したが見事に踏んづけられた…


ドル円リテール売買動向

ドル円リテール売買動向

週後半に掛けロングが減少したためロングに持ち替えて再参戦。
木金と利食いを行って水曜日に踏まれた分の半分ほどは取り戻した。

更に週半ばからEURUSDのロングが増加
こちらを見てショート参戦

EURUSDリテール売買動向

EURUSDリテール売買動向

こちらは昨日まで一貫して取り続けた。
また、昨日の大荒れ相場で株価指数をショート → 大幅利食い
また、リスク回避のドル買い相場にも関わらず長い下髭陽線を出したGoldをロング。
こちらも大当たりとなった。
このところ週前半に喰らって週後半に盛り返すというのが毎週の流れとなっている。
来週からは週前半の動きには注意したい。


【来週からの戦略】
現在の相場で中長期のトレンド予測は無理だと思っている。というよりそれは無謀だろう。
各国中央銀行は未曽有の財政出動を行っており誰も経験したことのない未知の領域に踏み込んでいる。先日のECBでは未曽有の財政出動の効果は副作用を上回ると言っていた、当然のことなのだが副作用があると断言しているとも言える。

また相手が厄介だ「新型コロナウイルス」というウイルスである。
案の定、米国では経済再開で「感染第2波」となっている
とはいえ前回のように完全閉鎖という事態にはなっていない。
何故かというのも、何度もお伝えしているがもう経済が持たないのだろう。
完全に集団免疫での解決に舵を切ったのだろう。支持率が下がるのが恐ろしくて口に出せないだけだ。

その中でも気になるモノは頭に置いておきたい。
コラム:チャートで見るナスダック指数、大幅下落の予兆も -ロイター
https://jp.reuters.com/article/nasdaq-chart-column-idJPKBN23W0QB

確かにナスダックはこの状況にも関わらず史上最高値を更新し続けている。
この閉鎖&ソーシャルディスタンス確保の世界で唯一伸びそうなハイテク株中心ということもあるだろうが、ロイターのコラムにもあるように月足では強烈なベア・ダイバージェンスだ

とはいえ、一個の条件だけで大幅下落とは言い切れないし、下げるにしても強烈に上げてかもしれない。ヒゲで最高値を大幅に更新しても次の足になった場合はRSIには反映されない。

結果、我々の様な証拠金取引に励んでいる輩は中長期の予測は怪我の元だ
IMFが嫌なことを言っている

金融市場の復調は容易に反転も、経済見通しと連動せず-IMFが警告 -Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-26/QCI90WDWX2SJ01

真剣に相場に取り組んでいる方はもうお気づきだろうが、もうリスクオフ局面でドルが売られるのか買われるのかは断言できない状況という事になってきている。
そう、アメリカがどうなのか?欧州がどうなのか?日本がどうなのか?
という個別要因で動いている。そしてドル円に関して言えばNYタイムのゴールデンタイムのたった5時間程度でその値幅を形成している。

ただ、もう一点気になるチャートがある。
実は数週間前にも近いものをレポートしたが物凄い相関である


日経225先物とEURUSDの価格推移(日足)

日経225先物とEURUSDの価格推移(日足)

NYダウ先物とEURUSD価格推移(日足)

NYダウ先物とEURUSD価格推移(日足)

コロナショック以降、EURUSDと株価指数はチャートを見紛うくらいの相関性である。
株価が読めればEURは取れるだろう。という事はドルと株価指数は逆相関ということだ
EURUSDのヘッジを株価指数で行う(またはその逆)という組み合わせは悪くないかもしれない。

CFTC円先物投機筋NOP(円先物のため売買反転)

CFTC円先物投機筋NOP(円先物のため売買反転)

円買い増加

CFTC金先物投機筋NOP

CFTC円先物投機筋NOP(円先物のため売買反転)

ロング大幅増。このまま高いだろう

CFTC NYダウ先物投機筋NOP

CFTC NYダウ先物投機筋NOP

CFTC日経225円建て投機筋NOP

CFTC日経225円建て投機筋NOP

この、NYダウと日経先物のロング&ショート比率を見ると一つの戦略が浮かび上がってくる。
NYダウは強烈に売られている、ところが日経先物は殆どスクエア。

普段なら手放しでNYダウを買いたい。ただ今回は違う。どうせもう利食っただろう。
あまりシカゴの猛者共と手を合わせるのは好ましくないが、売るならダウ、買うなら日経という事になるだろう。このところ日経のパフォーマンスがダウを上回っているのも頷ける。そしてEURUSDでヘッジをすれば裁定取引の出来上がりだ。この投機筋の逆を突くのはもっともっとどちらかにポジションが増えてからでいいだろう。

そしてここに来てこいつだ

CFTC US Crude Oil投機筋NOP

CFTC US Crude Oil投機筋NOP

ガッツリ買われている。
もし米国の感染拡大第2波が止まらなければ大きく下げる可能性大。
AUDもCADも失速気味だ

従って来週は
色々考えると、米国の感染第2波の影響は大きい。
収まらなければ再閉鎖、再閉鎖すれば経済低迷
リスクオフポジションの構築
株価指数を戻り売り(NYダウやS&P500はNY引け間際で高値圏にあれば大きくショート)
日経の売りはやらない
為替はドル円のパフォーマンスが悪いため、EURUSD戻りうりで原則ドルロング
原油の戻りを売ってGoldの押し目を買う


唯一、注意を払うのは「新薬とワクチン」報道
という短期戦略で行きたいと思います。

最後に香港情勢。

最近よく香港ドルのドルペッグが終わるとか終わらないとかを香港でよく聞きます。
私の結論は、無い。あっても影響無い。という意見です。

ペッグは終わりません、ご存じない方も多いと思いますが、香港財務長官は香港では首相よりも偉いんじゃないか?という方がいつも就任しています。
それもその筈、香港ドルの価値を一定に保つのが彼らの主な役目だからです。
その昔アジア通貨危機の際、香港ドルが大暴落し金利が瞬間100%だとか1000%だとか、ということがあったそうです。
ところが当時の財務長官は香港ドルを死ぬ気で買い支え何とか危機を乗り越え、現在でも香港では英雄扱いされています。

そもそも、香港ドルペッグの終了は中国もアメリカも決められません。
アメリカが香港に対して行っているドル買いの優遇措置を停止しましたが、香港ドルのドルペッグはこの優遇措置以前から行っています。

また、中国が決められるか?
そもそも人民元がほぼドルペッグなのに香港ドルのペッグを外す理屈がどこにある?
もっと言うと、米国債を買っているのは誰なんだ?

こちらご参考に
https://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

一番は我らが日本。ついで僅差で中国。そしてなんと7位に香港。
中国と香港を合わせると日本を抜いてしまします。

本当に中国と香港がペッグを外すとドルは今の価値を保てるか? 
ドルが下がったその場合、他通貨が高くなるという事ではないのか?
困るのは中国なのか香港なのかアメリカなのか? 
日本級のお人好し国家が世界のどこにあるというのでしょう? まず無理でしょう。
皆様、あまりお偉いさんの鍔迫り合いに踊らされないようにして下さい。

以上、今週もありがとうございました。
来週もよろしくお願いいたします。

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