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月の海

【作品形式】朗読・1人読み
【男性:女性:不問】0:0:1
【登場人物】読み手
【文字数】896字
【目安時間】約4分


月の海
この海は凍っているのに
あたたかい


静かな夜
あなたは一人で道を歩いている
今あなたはどんな気持ちなんだろうか

『贈り物を喜んでもらえて,とても嬉しい』
『失敗しちゃって,がっかりしてる』
『よくわからないけど,モヤモヤしてる』

今の自分の状態を説明できることもあれば,
漠然とした気持ちが湧き上がって,整った言葉にならないこともあるだろう
そんな時は言葉にしなくたっていい
そのまま注ぎだせばいい

あなたが頭・心・体で
想いや言葉を巡らしていく時
涙が出てくることもあるかもしれない
それは静かに滴り落ちることもあれば
時に激しく流れることもある

無理に出さなくていい
でも
我慢もしないでほしい
泣いてはいけないなんて
思わなくていいんだから

あなたにとって
無理なく自然に
緩やかに泣いていいんだ

そしたら
涙に込められたあなたのすべての想いを
月の海に注いでいくから

これは内なる想いや葛藤を
ないがしろにしている訳じゃない

月の海には太陽の光が降り注いでいる
思い出したくないことは
太陽の光が月の海に届いた時に消してくれる
そして振り返りたいことは
月の海となって優しく思い出させてくれるだろう
そうやってあなたの想いは
月の海として
あなたが望む時に
いつでも振り返れるように存在している
その時に抱いた気持ちをそのまま凍らせて留めてくれている

そして
太陽から届いた光を反射して月が輝く時に
月の海から少しだけ気化したあたたかいやさしさをまぜて
あなたにちゃんと返すからね

だからどうか
顔を上げて
月の光に包(くる)まれてほしい

いくあてもない
どうしようもない
そんな思いや気持ちに囲まれて
どうしたらいいのかわからなくなってしまったら

どうか
空を
月を
見上げてほしい

月を見上げる時
あなたは何を思いますか
どんな気持ちになるでしょうか

どんな気持ちになっても
どんな想いを抱えていても
あなたが注ぎだすその心を
私は大事なものだと思っています

あなたの心が解(ほぐ)れて
やわらかくなったなら
また前に進んでいくといい

あなたの背中をそっと優しく
手のひらで押し出そう
また疲れたらいつでも帰ってくれば良い
あなたの楽しかった想い出とともに
待っているね


月の海
優しい想い出
楽しかった想い出
それが凍った
あたたかな海


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