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歳下に救われる。2/13 Vol.42

2003年、この頃は体育会系で
社員教育は気合いと根性だった。

いらっしゃいませの数が少なければ
お店の裏で声が枯れるまで
いらっしゃいませ訓練。
品出しが遅ければストップウォッチをもって
そうじゃない、こうじゃないと
まるで陸上部のコーチ状態だった。


その頃、イシワン(現 小川屋味噌店 工場長)が
入社してきていよいよスタッフも増員体制に。
繁忙期のお盆、8月13日今日から忙しくなる日に2人の社員が同時に退職した。


スタッフが辞め自分の社員教育の仕方が悪いんじゃないかと とにかく凹んだ。一方でここまで気合いが入ってたら着いてこれるスタッフもいないかと半分あきらめていた。そして 自分のやり方を変えるべきか変えずにいくか悩んだ。



1号店の新生房の駅と2号店の草刈房の駅。
2人の社員が同時に辞めたその日、入社したての
イシワンと2人で品出し、レジ打ち、配送と
両方の店舗を行ったり来たりを繰り返していた。


トラックを運転しながら
イシワンへのダメ出しが止まらない。
スピードが遅い、
ハイって返事をちゃんとしろ
想ってることは言葉にしないとわからない、
品出しはこーだ、
カッターの使い方はこうだ、
ダンボールの扱いはこうしろ、
いらっしゃいませに心がこもっていない、
助手席にいるイシワンに
ずーーーーーーーーーーっと
ダメ出しだった。


ハっとした。
こいつも辞めるかもしれないって。
それまでの説教トーンが急に落ちた。
そして車内が沈黙になった。


そしてその時だ。
窓の外をみると
手のコブシよりもデカイもみあげの人が
草むしりをしていた。
「イシワンさ、今、左側だけコブシぐらい大きいもみあげの人がいた」
「ウソですよ」
「イヤ ウソじゃない」
「いやいやいや そんな人いませんよ」


そしてUターンだ。
実際にいた。
左側だけヤマトタケルだった。
それまでのダメ出しは全部、吹っ飛んだ。
2人で笑いながら
「俺の言ってること合ってただろ?」
「はい!合ってました!」
「イシワン、俺のこと信じなかっただろ?」
「すみません!2度と疑いません!」
「じゃあちゃんと着いてこい!ははは!」


「着いていきます。俺は違います。」




笑いの中に隠された言葉だったけど
その笑いとは全然関係のない
「俺は違います」の言葉に
本当に救われた。


それ以来、
イシワンといると
変なモノをいっぱいみるようになった。
座っているのに大人よりデカい犬。
本社の前を歩く馬みたいな動物。
道路の真ん中でストレッチをする人など。


何度も通った生産者の家にイシワンを連れて
挨拶をすると全く違う家だった。

イシワンと広告の研修で
手を挙げて積極的に質問しつづけること3時間、
受けるべき研修は隣のクラスだった。


イシワンに怒って
ロッカーを叩くと
イシワンがいる方の扉が開いて
後頭部にヒットして間接パンチ🤜


語ればキリがない。




2004年、また1人 兄弟が増えた。



『せいじ殿の13人 2003-2015』
Vol.41-Vol.50(全10話)


イシワンは現在、諏訪商店グループ小川屋味噌店 
大工場の取締役であり工場長だ。

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