『リンゴの木』まーみん (ムーミン風書き方スタディ)
前日の記事でトーベ・ヤンソンさんの「ムーミン」の文章の書き方について調べました。それを踏まえて、書き方だけマネしてみたいと思います。
どのスタイルで書くか
「ムーミン谷の彗星」は書くとしたらかなり難しいと感じます。部分部分の関連が無いままに文章化するとした場合、それはとても自由ですがどう言った法則を設定すれば良いものでしょうか?もちろん法則が無くても良いのですが、それを文章と言えるまでにできるものでしょうか?
それに対して「ムーミン谷の仲間たち」の「春の調べ」は文章としてのまとまりは秀逸と言えます。全体と重要キーワードが対となっていて多少トリッキーですが上手いまとまりを見せていると言えます。
書いてみたいのは「彗星」スタイル、よく考えれば書けそうでテーマ性を求めるなら「春」の方です。ちょっと悩みますが、私はテーマ重視で書くのでハイブリッドに挑戦します。
気にする点
客観的な説明は極少で描写は情景描写のみ
エピソードどうしに繋がりが無いのは良しとする (『彗星』書けるか?)
全編を通してテーマに沿う (『彗星』でなく『春』側で )
こどもでもおとなでもわかる書き方
文字数
2000~5000
登場人物 (少なく)
人物1:まーみん (無邪気に自己中心的)
人物2:マメコバチ
人物3:ヒヨドリ
人物4:カラス
人物5:旅人
簡易プロット
まーみんがリンゴの木を自分のものだと考える
ハチ、鳥などがリンゴの木で何かする
リンゴの実が無くなる
旅人が来て話し、なぜそうなったのかを理解する
行動する
のはらのずっとむこがわからゆるゆると風が吹いてくるある日、まーみんはりんごの木の下にすわっていた。リンゴの花がふわふわとゆれていて、すこしピンクがかった白い花びらをすかしておりてくる光がほんのりとあたたかい。花のほんのりとあまい香りが、まーみんをずっとここにすわっていたいきもちにさせた。
太陽がだいぶたかくなったころ、のはらのずっとむこうからぶーんぶーんという音がしてマメコバチのむれがやってきた。マメコバチはリンゴの木のまわりをグルグルとまわってようすをみていたけれど、そのうちに1ぴきづつばらばらにちらばって、たくさんあるリンゴの花にもぐって蜜をとりはじめた。
まーみんはおこって言った。
「おい、これはぼくのリンゴの木だぞ。かってに花の蜜をとるんじゃない。」
マメコバチはおどろいて言った。
「きみはしらないのか。ぼくらは花の蜜をもらうけれど、その代わりにかふんをめしべに付けてあげるから秋になったらきみはたくさんのリンゴの実をしゅうかくできるんだよ。」
「そうだったのか。どうもありがとう。そしておこってごめんね。」
まーみんはあんしんしてマメコバチのようすをながめていた。
*****
水をたっぷりふくんでねつをおびた風がのはらの上をわたってきた日に、まーみんはリンゴの木の下にすわっていた。リンゴの葉が赤く大きくやけた太陽のひかりをさえぎって、のはらのなかでそこだけに黒いかげをつくっている。
東の林のほうからピーピー・ピョッピョとなにかはなしあいながらヒヨドリのむれがやってきて、リンゴの木のえだにとまった。ヒヨドリたちはまだピーピー・ピョッピョとさかんにはなしあっていたけれど、だれかがひときわ大きくピーと声をあげたとどうじに、いっせいに茶いろでまだらのはねをぱたぱたさせてまだ青くて小さなリンゴの実を食べはじめた。
まーみんはおこって言った。
「おい、これはぼくのリンゴの木だぞ。かってに実を食べるんじゃない。」
ヒヨドリはおどろいて言った。
「きみはしらないのか。ぼくらは実を食べるけれどぜんぶじゃない。ぼくらが食べたあとにのこるる実はちゃんと大きく育つから、秋になったらきみは大きくておいしい実をしゅうかくできるんだよ。」
「そうだったのか。どうもありがとう。そしておこってごめんね。」
まーみんはあんしんしてヒヨドリのようすをながめていた。
*****
太陽のひかりがすっかりあたたかいオレンジいろになって、のはらに白いわた毛がふわりふわりとうかびはじめたある日、まーみんはリンゴの木の下にすわっていた。リンゴの実が太陽と競うようにして大きく赤く色づいていた。
えんとつからけむりの上がりはじめた村のほうからまっ黒で大きなカラスがばさばさと羽音をたててとんできてリンゴの木にとまった。カラスはリンゴの葉の中にくびをつっこんでジロジロとかんさつしたあとに、いちばん大きくそだって赤くくなったリンゴを食べはじめた。1つ食べおえるとつぎに大きいリンゴを食べ、それがおわると次のリンゴを食べた。
まーみんは怒って言った。
「おい、これはぼくのリンゴの木だぞ。かってに実を食べるんじゃない。」
カラスは言った。
「きみはしらないのか。こののはらはだれのものでもないさ。だれのものでもないのはらにリンゴの木がはえていてリンゴの実がなったのだからこのリンゴはだれのものでもないのさ。だからぼくが食べていけないわけがない。」
まーみんははんろんした。
「いや、このリンゴの木はぼくのものだ。ぼくがずっとせわをしていてぼくが実をならせたんだ。」
カラスもはんろんした。
「それはうそさ。ぼくはしっている。だってかふんをつけたマメコバチからきいているし、小さな実を食べたヒヨドリからもきいている。マメコバチとヒヨドリはよくてなぜぼくだけダメといわれなきゃいけないんだ。」
まーみんはそれにちゃんとこたえることができなかった。
*****
雪がふってのはらもとおくの山も村もぜんぶがまっ白になったある日、まーみんはリンゴの木の下に立っていた。リンゴは葉も実もなくてガイコツのようになっている。
さくさく、さくさく、さくさくと白いじめんをふみしめながら、のはらをよこぎっておなかをすかせた旅人がやってきた。
まーみんは旅人に言った。
「もうこの木にはリンゴの実はないよ。カラスがぜんぶ食べてしまったから。」
旅人は言った。
「このリンゴの木はきみのものなのかい?」
「ぼくはそうだと思っているけど、そうじゃないと言うものもいて、よくわからないんだ。」
「こののはらはだれのものなんだい?」
「だれのものでもないさ。」
「それじゃ、どうしてこのリンゴの木がきみのものだと言えるんだい?」
「それはぼくが、この木をぼくのものだってきめたからだよ。」
旅人は、ふむと言ってだまった。
夜、まーみんと旅人はたき火をかこんではなしをした。まーみんは旅人のことを聞きたかった。そして旅人がなぜ旅人になったのかを聞いた。
旅人は言った。
「ぼくはまれたときから旅人だったんだ。にんげんは生まれたときから『じゆう』なんだ。だからぼくが旅人になりたいと思ったら旅人なんだ。」
「『じゆう』ってなんだい?」
「『じゆう』っていうのはね、じぶんの好きなようにしてよいってことさ。」
「じゃあ、ぼくがあのリンゴの木をぼくのものだって言うのも『じゆう』だよね。」
「そうさ、それも『じゆう』さ。」
「でも、カラスはぼくのリンゴの実を食べてしまったよ。」
「それも『じゆう』だからさ。」
「それなら『じゆう』なんていみがないじゃないか。」
「そうだね、『じゆう』は『じゆう』だけあってもいみがない。『じゆう』は『けんり』がいっしょにあっていみがあるのさ。」
「『けんり』って?」
「『けんり』はね、みんながみとめるってことだ。みんながみとめないとダメなんだ。」
「きみが旅人をするのはみんながみとめているの?きみはいつもひとりでいるのに。」
「そう、ぼくはいつもひとりでいるよ。でもね、みんなが、ぼくがひとりでいることと旅人であることをみとめてくれているんだ。」
「ひとりでいるのにみんなが?」
まーみんはちょっとあたまがこんらんしてしまった。ひとりでいるのにみんなといるってところがよくわからなかった。
「そうさ。こうみえても生きるってことはひとりではできないのさ。ぼくはいつもひとりでいるけれど、みんながいるからひとりでいられるのさ。」
旅人はさっていった。
*****
まーみんはマメコバチやヒヨドリとはなしをした。これからはおなじことをするにしてもちゃんとおたがいにこうしようときめてやるようにしたのだった。そしてカラスともはなして、リンゴをおたがいにはんぶんづつにわけあうことにした。
おわり
どうでしょう?上手く書けたでしょうか?スタディなのであまり書き直しはしていませんから変なところもあるかもしれません。(後で書き直しするかもしれません。)
なかなか難しいのは、「彗星」のように他の部分と関連の無いような部分を書き入れる事です。全体の雰囲気をその無関係な部分が作り出す補助になれば良いと考えましたが、どうも余計な事を書き入れるような気がしてしまって書けません。
描写はできるだけまーみんの心に映る風景にしたつもりですが、上手くいったでしょうか?自信はありません。もっとマシな書き方ができるように学ばないといけません。
感想やご意見をいただければ幸いです。
※りんごの木って言ったら、ゴールズワージーの小説が有名でしたね。後から思いました。あれはなかなか切ない・・・(関係ないけど)
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