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自分のやりたいことにまっすぐに挑戦できる成城で培ったメンタリティを武器に、世界へ

レスリングの国際大会で、表彰台の中央に何度も上がってきた尾﨑野乃香さん。実は7年前の「sful vol.8」に登場いただいたことがあります。そんな彼女の現在の様子や成城学園で学んだ日々の思い出、そしてレスリングにおいて大切にしていることを語っていただきました。
メイン画像はアジア競技大会、62kg級の様子。対戦相手はアイスルー・チニベジコワ選手。

小学1年生の時の運動会の様子

--尾﨑さんは、初等学校、中学校と成城に通われていましたが、どんな子供でしたか?
幼い頃はシャイで引っ込み思案な子供でした。でも、成城の自由な校風の中で、すこしずつ変わっていった気がします。それまで、自分がしたいことを親に伝えることができなかったのですが、レスリングは自分から「やってみたい」と親に頼んだのも大きな変化でした。近所のレスリングジムに通い始めてからは、おとなしい子からどんどん元気っ子に変化していきました(笑)。 

--よほどレスリングが楽しかったのでしょうね。
小学校2年生の時、テレビで浜口京子さんの試合を見たのがレスリングに興味を持ったきっかけです。実際に始めてみたら、とても楽しかった。4年生の時に全国大会で初めて優勝したのも大きかったと思います。自分よりも年上の選手に勝ち、勝つことのおもしろさを知って、もっともっと強くなりたいと思うようになりました。それまでも、テニスやダンス、水泳などさまざまなスポーツをしてきましたが、一番長続きしたのがレスリング。選手としてオリンピックを目指したいと思ったのも、初めてのことでした。

他者を認め重んじるメンタリティを身につけた

--小学校時代からレスリングで全国、そして世界制覇を夢見てきた尾﨑さんですが、成城学園での思い出はありますか?
 やっぱりスポーツが好きだったから、クラスを代表するリレーの選手になったり、相撲の選手になったりと、スポーツ系の行事は思い出深いですね。特に、小学生の頃に相撲大会で優勝した時に、みんなから「すごいね!」と言われて、嬉しかったのを覚えています。
 成城では、他者の個性を互いに重んじることを学びました。誰かが何か意見を言った時に、間違っているとか間違っていないとかを決めつけて批判されることがないから、とても発言しやすい環境でした。他者のことを重んじるからこそ、自分の気持ちも大切にできるようになる。そして、自分の思いにまっすぐに進むことができるようになるのだと思います。
今振り返ると、小学生の時に親に初めて「レスリングがしたい」と言えたのも、成城で自分の気持ちを発信することの大切さを教えられたから。一人ひとりが違うことを受け入れる環境で、のびのびと先生や友人たちと過ごすことができたのは、今の私のメンタリティに大きく影響しています。

中学2年生当時「全日本女子オープン」で準優勝

--学校のみんなでさまざまな行事に参加する中で、仲間意識も芽生えたのではないですか?
「山の学校」では山登りで苦しくなった時に、先生の「あきらめたらダメだよ!」という言葉で、友人たちと一緒にがんばれたように、絆は深まりましたね。だから、成城時代の友人たちとは、会うとすぐにあの頃にタイムスリップできるんです。嬉しいことを報告するだけでなく、うまくいかなくて落ち込んでいる時に弱い面を見せることもできる心強い存在。
遠征が多く、普段はなかなか会えないですが、SNSを通して試合の結果を報告すると、すぐに「よかったね」「おめでとう!」と、心からの祝福の言葉をかけてくれます。そんな友人たちは、私の宝物であり、彼女たちの応援が何よりの励みになっています。

勝つために必要なのは、誰にも負けない武器を持つこと

--これまで輝かしい戦績を残して来られました。勝って当然という空気の中で戦うことは、プレッシャーになりませんか? また、プレッシャーに打ち勝つ方法とは?
全力で応援してくれるみんなのためにがんばりたいという気負いのようなものを感じることはありますが、応援がプレッシャーになると感じたことはありません。
私がこれまでの試合経験で感じるのは、勝ち切る人は、自分に自信を持っていること。逆に言えば、練習量や費やしてきた時間、技……など「私にはこれがあるから負けないんだ」という強い思いを持っていないと勝てない。感覚派の選手もいますが、私は理論的に戦略を練るのが得意なタイプなので、いかに考えて、考えて練習を積んできたか、というのを自分の自信にして試合に臨んでいます。

--尾﨑さんの得意としておられる高速タックルも、技の面では武器になりそうですね。
そうですね。タイミングと角度、スピードが合致した時には、どんな選手にも負けない自信があります。後は、その技を試合の中でいかに効果的に使うかにかかっています。

世界選手権、65kg級。対戦相手はカドリエ・アクソイ選手。

 --最後に応援してくださるファンの皆さん、そして成城の在校生や卒業生に一言いただけますか。
成城の中学校を卒業してから、レスリングをするために帝京高校に進み、現在は慶応義塾大学に在籍しています。オリンピックに出場することを第一目標にして、体が動く限りレスリングの選手であり続けたいと思っています。一方で、小学生の頃から、レスリングをしているからといって学業を疎かにしていいという言い訳にはしたくなかった。だから、今も、大学でレスリングと勉強に全力で取り組む私の姿を見て、元気や勇気をもらってもらえたらなと思っています。

プロフィール】
尾﨑野乃香さん
慶應義塾大学3 年
小学2 年生で始めたレスリングで頭角を表し、注目選手に。
2019年に世界カデット選手権で優勝。2020年はクリッパン女子国際大会カデット61kg級で優勝し、全日本選手権も制覇。2021年全日本選抜選手権も制し、世界選手権に初出場。その後、同年の全日本選手権で2連覇達成。2022年アジア選手権では、決勝でチニベコワを破って優勝。2度目の世界選手権に挑み、初優勝を達成。年末の全日本選手権は2位に。

出典:https://www.japan-wrestling.jp/nonoka_ozaki/

インタビューを終えて
中学時代に「sful」で取材してから6年ぶりにお会いした尾﨑さんは、すっかり大人の女性へと成長した姿が印象的でした。国際大会で優勝を何度も経験した尾﨑さんが、レスリングの試合に臨む際に大切にしているのは、「日々、考えて、考えて練習してきたのだから大丈夫!と思う自信」。努力を積んでいるからこその言葉は、説得力を持って響きました。まずは体を大切にして、夢の舞台で大輪の花を咲かせてほしいと願っています。

文=宇治有美子 写真=尾﨑野乃香さんのご家族・岡村隆広・保高幸子
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