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2024年4月16日の小田原市議会厚生文教常任委員会で、清閑亭の利活用が急遽追加されたようです

神奈川新聞社などの報道の影響などを受けてか、小田原市議会「厚生文教常任委員会 」の報告事項に「清閑亭の利活用の経緯について(追加)」が急遽追加されたようです。

資料も出ていますので、清閑亭問題としての意見を記載しました。

要点

清閑亭の利活用に至るまでのプロセスが適性であったのか、根本的に情報開示をし、第三者による調査をすべきだと考えます。このままでは、公共の利益も、史跡や文化財の保護も、法令遵守も無視した、「やったもの勝ち」になります。少なくとも、以下のような対応は必要でしょう。

  • 情報の透明化:全てのプロセスにおいて市民に開かれた情報公開を行うこと。現状の利活用計画が始まった経緯、選定プロセス、文化庁との協議内容、公募条件が改変された経緯、工事の実施、契約締結過程などをすべて開示する。

  • 独立した第三者機関による調査:違法行為の経緯と再発防止、文化財保護の基準に則っているか、選定は公平だったか、公共の利益に値する選択肢だったのかなど、ここに至るまでの経緯を調査すべきです。

各報告内容への意見

ここからは、文化政策課だ提出している報告書の各項目についての意見です。

4 詳細協議での募集要件について
(1) 民間提案制度による募集(令和3年3月 18 日)
清閑亭の土地は、国指定史跡であることから、現状変更を行うには文化庁の
許可が必要である。そのため、事業者の提案の確度を高めるため、現状変更を伴う提案に制限を付して募集した。

厚生文教常任委員会報告事項追加資料 清閑亭の利活用の経緯について
文化政策課 令和6年4月 16 日

清閑亭の要件に明確に記載されており、9社がこれに従って提案をしています。神奈川新聞の報道ではJSフードシステム社もIHを利用する提案であったと記載されています。

清閑亭特記事項より

「事業者の提案の確度を高めるため、現状変更を伴う提案に制限を付して募集した」とありますが、史跡と文化財の保護にとって、一番重要な条件です。このような「後付の言い訳」が成り立たない事は自明でしょう。

また、選定プロセスにおける公平性の疑義についても強調します。清閑亭、豊島邸においてのべ21社からの提案があったにも関わらず、JSフードシステム社が独占しています。「外部有識者を交えた公正な選定プロセス」の内容は殆ど全てが黒塗りで隠されています。


(2) 厨房の増築相談(令和3年9月~)
提案を採用された事業者から、清閑亭の利活用の目的と方針に沿って、主屋
の管理保全と、平成 30 年度に策定した歴史的建造物利活用エリアコーディネートプランの目的に資する魅力的な事業展開を図るため、厨房を増設し火気使用を限定することで、主屋の火災リスクと事業展開を両立させる相談があった。

厚生文教常任委員会報告事項追加資料 清閑亭の利活用の経緯について
文化政策課 令和6年4月 16 日

IHを利用する計画から一転して、厨房を増設して火気を利用する計画になっています。9社からもの(増設はなく、おそらく火気を使わない)提案があったにも関わらずです。
しかも、神奈川新聞によると、「魅力的な事業展開」とは、以下の理由です。このような理由で文化庁が許可をするわけがないと思っています。

しかし、当初は電磁誘導加熱(IH)コンロを使って主屋内で調理するとしていたこの業者は、選定後に計画を変更し、市に厨房の増築を認めるよう要請。業者側は神奈川新聞社の取材に「IHでは水炊き料理の火力が足りない。ガス火を使うので主屋の外側に厨房が必要だった」と説明している。

無許可営業の清閑亭「私物化」に住民反発 小田原市、業者選定後に増築容認
政治・行政 | 神奈川新聞 | 2024年4月8日(月) 20:25


(3) 文化庁との協議 (令和4年4月~)
相談を受けて、清閑亭土塁が国指定史跡であることから、文化庁との協議を
開始した。
協議の中で、史跡小田原城跡調査・整備委員会の承認を得るよう指導があっ
たため、必要な手続きをとった後、文化庁に現状変更申請を提出し(令和5年3月6日)、許可を得た。(令和5年4月 21 日)
なお、増築部分の掘削は表土の中に収まり、遺構への影響はない。

厚生文教常任委員会報告事項追加資料 清閑亭の利活用の経緯について
文化政策課 令和6年4月 16 日

まず、文化庁には一度拒否をされています。こちらが、当時の小田原市と文化庁の議事録です。


史跡小田原城跡調査・整備委員会でも、大きく懸念が示されています。(特に令和4年度第2回(令和4年11月17日開催) PDF形式 :524.5KB)

https://www.city.odawara.kanagawa.jp/field/municipality/disclosure/singikaitounokoukai/council/culture/shisekizyoshi.html

最終的には、「文化庁の許可」を取得していますが、私達は以下の理由より、文化庁を欺くようなグレーな申請内容だったと認識しています。
1) 増設工事はやむおえない:代替案が多数あり、増設がやむを得ない状況ではなかった
2)景観への配慮:景観への影響より、コストの最小化を優先している

詳細はこちらの記事にあります。

(4) その他
国登録有形文化財である主屋の改修等は、通常望見できる4分の1以下の変
更や内装に限定した場合は文化庁への届け出は不要となっている。

こちらに関してはコメントはありません。本当に4分の1以下になっているのか、原状回復は可能なのかなど、情報公開請求をしています。

5 定期建物等賃貸借契約締結までの経緯
(1) 清閑亭の利活用に向けた詳細協議に関する協定書締結(令和3年12月24日)提案事業の採択を受けて、採用された提案の実施に係る契約の締結に向けて事業の内容及びスケジュールや建物の管理及び改修内容等について相互に協力し事業化することを目的とした協定書を締結した。

(2) 覚書の締結(令和5年5月26日)
詳細協議が整い、文化庁等の必要な許可を取得したことから、定期建物等
賃貸借契約の締結に先立ち、市及び事業者が必要な増改築工事に着手するこ
とを認める覚書を締結した。

厚生文教常任委員会報告事項追加資料 清閑亭の利活用の経緯について
文化政策課 令和6年4月 16 日

該当する覚書はこちらのみの内容です。国指定史跡上での増設工事、文化財内での営業です。本当にこれだけの規定で、増設工事、内装工事、営業開始まで行うことが適切だったのでしょうか?一般的な住宅ですら、賃貸借契約締結後に、内装工事に入るはずです。


(3) 定期建物等賃貸借契約の締結(令和6年3月7日)
市及び事業者の工事が終了し、不具合の有無や開業前の導線確認等、開業に
向けた準備のための相当期間を設けた上で、定期建物等賃貸借契約を締結した。

厚生文教常任委員会報告事項追加資料 清閑亭の利活用の経緯について
文化政策課 令和6年4月 16 日

定期建物等賃貸借契約に関しても疑問点が多々あります。

  • そもそも、増設工事、内装工事が開始される前に締結されているべきものではないのか。

  • 火災、その他原因により、文化財や史跡が既存された場合は、どちらがどのように責任を負うのか。

  • 月20万円と言われる賃料は妥当なのか。どのように算出されたのか。10年もの期間で契約する必要性があったのか。

  • 今回の違法営業などの発生時には解約できるのか。

  • 原状回復義務はどちらにあり、費用はどの程度かかるのか。そもそも解約は可能なのか。

賃貸借契約書はこちらです。


6 小田原保健福祉事務所からの注意
(1) 市及び事業者の当初の認識
令和6年2月 27 日から関係者を招いて開催したお披露目会は、営業開始
(3月 25 日)前の導線確認や建物の不具合の様子を確認する目的で実施し、営業には当たらないと認識していた。
(2) 小田原保健福祉事務所の指導と対応
小田原保健福祉事務所は、営業許可(3月4日)前の当該お披露目会を営業
行為であると判断し、3月 18 日に事業者に対して厳重注意を行った。同報告を事業者から受けたことにより、市として、3 月 22 日に、事業者に対し今後の適切な管理運営について申入れを行った。

文化政策課は本当に、これが営業に当たらないと考えていたのでしょうか。仮にそうであれば、全てにおいて考えがずさんすぎます。国指定史跡の上、文化財の中での「違法行為」です。一度、営業を停止し、経緯の確認や再発防止策、第三者による詳細確認など、踏み込んだ確認と指導を行うことが必要ではないのでしょうか。

運営するJSフードシステム(同市)は「お披露目会」として、名刺交換した約1500人に会費1万5000円で案内したが、「導線確認のための練習で営業ではない」と主張している。

「清閑亭」利活用 営業許可前に料理提供 会費徴収 運営側「導線の確認」 /神奈川地域神奈川関東
毎日新聞2024/3/14


また、複数の近隣住民が騒音、悪臭、交通悪化などの問題により営業へ反対していることも、改めて強調します。


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