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2023年10月「音楽との向き合い方」



 秋はやりたいことが沢山ある。今年は前々からこれをしようあれをしようと考えていたので、例年より秋という季節を堪能できた気がする。だけど同時に、やりたいこととやらなければいけないことの間で悩み、立ち止まる機会も増えた気がする。だけど音楽からは離れられなかった。最近は辛い時も多いけど、続けなければどこに行けば良いかわからなくなりそうだ。


『動物的な暮らし』/時速36km
『カラカラ』/結束バンド

 年に一度、サークルにオーディション形式のライブがある。ライブパフォーマンスに点数と講評がつけられて、最終的な順位に応じて冬にライブハウスでのパフォーマンスの機会が与えられるかどうかが決まる。事前に他のバンドがどのような選曲で臨むのかが気になって、勝手にコピー元のバンドを聴いていたりした。それぞれにやりたいことがしっかりとあるいいライブになる予感がしたのを覚えている。自分自身は今年は崎山蒼志とモーモールルギャバンのコピーを選んだ。出ないことも考えた頃もあったけど結果は2バンド。決して妥協があったわけじゃないし、ましてふざけていたわけじゃない。だけどいつもより、ちゃんとテーマを持ってできるのかみたいな不安はあった気がする。


『賛歌』/君島大空
 "ここからは君の季節優しい哀しい香り"
『16:28』/君島大空
 "君の声で僕が歌う"

 君島大空が出した今年2枚目のアルバムが素晴らしい。『映帶する煙』の頃よりもコンセプトが前面に押し出されていて、一曲一曲の重みがのしかかってくるなと感じる。彼はきっと作曲や演奏という行為が日常のあそびのとしてあり、その中で生まれた再現可能性の低い雑談のような産物も、記録してネットの海へ放ってきたのだろうと思う。そういうなんとなくしてきた行為を作品という形に整えたものにしか宿らないものがあったと思う。本当にまるで言葉を話すみたいに心象が楽曲に映し出されていた。



『We The Female!』/CHAI
 "Full of mistakes but lovable"
『Driving22』/CAHI
 "We got a new life"

 基本的におれは音楽や歌詞に意味や必然性みたいなものを見つけようとしてしまう。確かにそういうものは美しいし見つけられた時の気分はまたとないものだけど、CHAIにはそういうのとは違う魅力がある。バンドとしてのテーマに「誰もがそれぞれのカワイイを持っている」ということがあるのは確かだが、楽曲からはそう言ったメッセージ性というよりは純粋なパッションやポジティブさそのものが聴こえるような気がする。楽曲ごとに違う景色を見せてくれるようなアーティストもすごいと思うが、こんなにも一つのことを色々な角度から表現できてそれに理屈抜きで感動してしまうのはすごいことだと思う。



『COLORS』/TENDRE
 "だれのためでもない 描き出しは自由自在"

 「好きな人が好きな曲を好きになる」みたいな現象を恥ずかしいことだと考えていた頃があるけど、別に良いんじゃないかと最近は思う。誰かに影響されて手に入れた価値観も、そのうち自分のものになるしなと思う。



『PHEW』/ステエションズ
 "繰り返す日々は繰り返せないわ"

 一度でいいからライブで見てみたいアーティストの一つ。メロの心地よさ、オケのタイトさからポップスとして完成されてるなと感じていたけど、この曲は歌詞もいい。引用した部分もその通りだなと共感するけど、「湯気のかたち 生活のしるし」というサビの歌い出しもすごくいい。多分ずっと誰かの生活の一部になりたいんだろうなと思う。

『Boil』/kurage
 "想像力の先へ"

 本当にかっこいい曲だ。kurageが最初の3人だった頃から曲を聴いてきたし、ギタボの権田くんとは一緒にライブをしたこともある分、楽曲を色々な角度で見て、いろんなことを感じてきた。だけど今回はそういう思考を放棄したくなるほどに、彼の作る曲に詰まっている思索や信念がより濃くビリビリと伝わって感動している。続けられる人は何より強いと思う。



『プラチナ』/赤い公園
『沈む体は空へ溢れて』/君島大空

 10/2に君島大空トリオのライブを観た。音源が公開された時から今年の頭に出たアルバムよりも彼の人生の足跡が色濃く映し出されるアルバムだと感じていたけど、ライブはそれを超えてくる濃度だった。彼のこれまでしたかったことが詰まったアルバムなのだろうなと思う。これからも見続けたい。どうなるのだろうか。



『wake up call 待つ夜、巡る朝』/Laura day romance
 "ミルクの足りない昨日に絡まって咳き込んでる君の横でうつくしさだけにかまけていたい僕たちに明日はない"

 同世代の作る曲と思えない。このバンドの作詞家である井上花月が聴いて育ってきた楽曲にはかなり親近感を覚えるところがあるが、そのどこから出てきたとも言い難い、「長ったらしいのにこの表現がぴったりこの情緒を表しているんだ!」と思わせる歌詞に震える。Lauraの曲は歌詞だけを読んでいても泣いてしまいそうな美しさがある。



『胸騒ぎ』/TENDRE
 "何が変わっても何度無くしても大丈夫さすべての出来事"

 月末にドライブをした。ドライブ中にかける曲は助手席に座る人に任せることにしている。「TENDRE独特のメロディラインがあるよね」とか、「この前観たライブが良かった」とか、そういう話をしながら曲を聴いた。思ってたより歌詞があたたかいんだなと思った。


 季節を生きている。四季や一ヶ月を1つの単位としてテーマを持って生きているなと感じるけど、それは本当に俺という人間に一貫性を与えるだろうかという不安も過ったりした。今月はそれくらい、したいこと、すべきことが両腕からボロボロとこぼれおちるような、何かをパンパンに抱えることへの幸福感もあるような、そういう日々だった。だけどそれは割と短いスパンで見た時の話だし、それが良いことか悪いことかという評価はまだ下せていない。例えばこの6年大事にしてきたものがちゃんと大事にできているんだろうか。夏頃はすべてが一つに繋がっていくよう気がして、まずは手や体を動かしていたけど、そんなに簡単なことではないかもしれない。大切なものを選び取ってこぼさないようにしていきたい。



はじめ

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