暑い時期に増える食中毒|耳寄り健康講座⑮
常磐病院の新村です。今年のゴールデンウイークは暑い日が続きましたね。今回は、暑くなってくると増える「食中毒」をテーマにお話ししていきたいと思います。
【食中毒とは?】
食中毒は、有害な細菌やウイルスなどが体内に侵入することで、下痢・腹痛・発熱・吐き気などの症状が現れる病気の総称です。
腸管出血性大腸菌O(オー)―157などの「細菌性食中毒」、ノロウイルスなどの「ウイルス性食中毒」、水銀などの「化学物質による食中毒」、毒キノコなどの「自然毒による食中毒」などに分けられます。本稿では、これから発生件数が増えてくる「細菌性食中毒」に絞ってお話ししていきます。
【細菌性食中毒が流行しやすい時期と環境】
細菌は「高温多湿」を好みます。梅雨時期から夏場にかけて細菌が繁殖しやすくなるため、それに比例して食中毒の発生件数も増加します。細菌が増殖するには、水分・温度・栄養が必要です。夏場は水分と温度という点では申し分なく、食品には栄養が豊富に含まれているため、細菌にとって、大変増えやすい環境と言えます。
【細菌性食中毒の種類】
主な細菌性食中毒の原因菌を紹介します。
サルモネラ菌
感染源=肉類、鶏卵など
潜伏期間=6~24時間
カンピロバクター
感染源=鶏肉、生レバーなど
潜伏期間=2~5日
黄色ブドウ球菌
感染源=人の皮膚、便など
潜伏期間=1~5時間
腸管出血性大腸菌O―157
感染源=牛の便、感染者の便など
潜伏期間=3~5日
【細菌性食中毒の予防法】
細菌性食中毒を防ぐためには、食品衛生への意識が重要です。新鮮な食材を購入する、調理前後に必ず手を洗う、十分な加熱調理を行う、肉や魚に触れた包丁・まな板は都度洗う、台所にはハエ・ゴキブリ・ネズミはもちろん、ペットも入れない――などを徹底しましょう。
なお、原因菌のほとんどは75度で1分間加熱すると、ほぼ死滅すると言われています。
【時には命の危険性も】
細菌性食中毒の中でも特に注意が必要なのがO―157などの「腸管出血性大腸菌」です。通常、牛の腸や便にいるこの細菌は、人間の体内に入ると増殖を繰り返しながら毒素を産生します。
潜伏期間は4~8日で、症状は激しい腹痛の後、下痢を引き起こし、発症から1~2日後には血を含んだ下痢が出始めます。小さな子どもや高齢者は重症化し、場合によっては亡くなるケースもあります。夏場、生肉などを食べる際は十分ご注意ください。
なお腸管出血性大腸菌も手指や調理器具の消毒、十分な加熱調理で予防が可能です。
【まとめ】
厚生労働省の統計によると、食中毒の患者総数は平成24(2012)年2万6699人だったのに対し、令和4(2022)年6856人と、年々減少傾向にあります。
しかしながら、年に数件、死亡者が出ています。手指消毒や加熱調理などによって多くの食中毒を防ぐことができるので、一緒に対策を取っていきましょう。
しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。
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