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【政経東北】復興まちづくりの在り方|巻頭言2024.03

 震災・原発事故から丸13年を迎える。

 原発被災地の中でも放射線量が高く「帰還困難区域」と呼ばれたエリアは、一部を「特定復興再生拠点区域」に指定・除染する形で避難指示解除が行われた。さらには、同拠点区域以外の帰還困難区域で住民の帰還意向があれば「特定帰還居住区域」として避難指示を解除していく方針だ。

 原発被災自治体では国からの多額の交付金を基に復興まちづくりが進められ、中心部や同拠点区域には公共施設や商業施設、公営住宅などが整備されている。浪江町では福島国際研究教育機構(エフレイ)進出とそれに合わせた大規模なまちづくりが控える。こうして見ると、復興が順調に進んでいるように思えるが、福島第一原発の廃炉作業はまだまだ時間がかかる見通しだ。

 京都大学複合原子力科学研究所(旧京大原子炉実験所)で、長年にわたり原発の安全性について研究している今中哲二氏は「『40年で廃炉』は幻のスローガン」と指摘する。①燃料デブリ取り出しは難航が予想され、総量は800㌧超に及ぶこと、②建屋自体も高濃度汚染されており巨大な放射性廃棄物と化していること――などをその理由として挙げる。

 例えば2号機の原子炉格納容器の上ぶた(シールドプラグ)には8・4京ベクレルのセシウム137が付着・浸透しているとされる。原発の重量は1基数千㌧。解体時に発生する膨大な量の放射性廃棄物の行き先はまだ決まっていない。

 昨年8月には原発内に溜まり続ける汚染水を浄化処理した水の海洋放出が開始されたが、放出は今後30~40年かけて行われる見通しで、原発敷地内に溜まるタンク群がすぐになくなるわけではない。

 今中氏は「福島第一原発は100~200年を見越して廃炉を進めるべきだ」と提言する。 

 国は浜通りへの移住促進に力を入れているが、廃炉作業が200年続く地域に好んで移住する人がどれだけいるのか。旧避難指示区域の現住人口は震災前の半分にも満たない。エフレイ進出で企業誘致、人口増加が加速することが期待されているが、現段階でその効果は未知数。原状復旧・復興支援を求めるのは被害者の当然の権利だが、復興まちづくりや移住に過剰投資するなら、その予算で避難者を支援した方がよほど被害者救済につながる。そもそも住民基本台帳法では引っ越し後、2週間以内に住民票を移すことが定められているのに、多くの住民が〝避難者〟と扱われているのはナンセンスだ。いまこそ現実を見据えた議論を進めるべきだ。(志賀)


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