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血尿は病気のサインー耳寄り健康講座②

今月のアドバイザー
常磐病院 新村浩明 院長

 ときわ会常磐病院の新村です。今月号もよろしくお願いいたします。今回はさまざまな病気の〝兆し〟とも言うべき、「血尿」をテーマにお話していきます。

 【血尿とは?】

 「血尿」は、泌尿器科外来を受診される方の中で最も多い症状のひとつです。血尿とは、尿の中に赤血球が混ざった状態のことをいいます。尿中に混ざる赤血球の程度によって、多ければ目で見て赤い尿(肉眼的血尿)となり、少なければ見た目は正常の尿の色だけれども、血が混ざっているいわゆる尿潜血陽性(または顕微鏡的血尿)の状態になります。

 【血尿の原因】

 血尿は尿路といわれる尿の通り道のいずれの場所で出血していても、血尿の原因になりえます。尿路とは具体的に腎臓、尿管、膀胱、尿道の4つをいいます。

 原因として多いのは感染症、結石、腫瘍です。その他に腎臓では糸球体腎炎といわれる糸球体(腎臓の中の尿を作る装置)の炎症も重要な原因になります。また交通事故などの外傷で尿路が損傷されれば血尿が出現します。

 【血尿の診断】

 血尿を診断するためには尿検査を行います。その検査法には一般的に以下の尿試験紙法と尿沈渣検査法の2通りがあります。

 ・尿試験紙法

 尿に試験紙を浸すことによって検査します。尿の中に赤血球がある場合、試験紙が変色します。一般的に血尿の程度は、−、±、+、++、+++に分けられ、+以上を尿潜血陽性と診断します。簡便に検査できるので、試験紙さえあればご家庭でも検査ができます。

 ・尿沈渣検査法

 尿沈渣とは、遠心機で尿中の成分を沈殿させた後に顕微鏡で観察する検査方法です。試験紙法で尿潜血が陽性であった場合の2次検査として用いられます。

 【血尿と診断されたら?】

 肉眼的血尿が出現したり健康診断で尿潜血が陽性の場合は、必ず泌尿器科
を受診し検査を受けるようにしましょう。

 血尿の原因は前述したように多くの原因が考えられます。その中でも生命を脅かす可能性のある尿路の悪性腫瘍(癌)は、初期の段階では特別な症状が出ることは少ないため、早期発見のためには血尿が唯一の手がかりになります。

 そこで症状のない血尿(無症候性血尿)で検査をする場合、特に悪性腫瘍の有無を念頭において検査を進めます。

 【血尿の治療】

 血尿の治療はそれぞれの原因別に最適な治療が行われます。そのため原因が特定できない血尿の場合は、血尿そのものを治療することはできず多くは経過観察します。

 ・糸球体腎炎:内科治療

 ・尿路感染症:抗生剤投与

 ・尿路結石:体外衝撃波破砕術や経尿道的破砕術による結石除去

 ・尿路悪性腫瘍:手術

 血尿は尿路系疾患の存在を疑わせるサインのひとつです。顕微鏡的血尿の多くは原因が特定されませんが、一方、顕微鏡的血尿と診断されて3年以内の間に1〜3%の方に悪性腫瘍が見つかったという報告もあります。顕微鏡的血尿の程度と疾患の有無は相関しないともいわれています。

 尿路悪性腫瘍の早期発見のためにも健康診断で尿潜血を指摘されたら必ず泌尿器科を受診するようにしてください。

しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。


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