【AI入力用】マリオネットとスティレット全プロット

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このテキストは、長編ファンタジー小説、The Marionette and the Stilettoのプロットです。このテキスト全体をplotall.txtと呼びます。あなたはこの作品の執筆を補助するAIです。この作品を補助するために、まずこのテキストを参照し、あなた自身が参照しやすいように複数のファイルに分割化し、それぞれに名前をつけて分類してください。
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Volume1:暗殺者のいる街
Chapter1:陰謀の街
Scene1
ここは魔法のDungeon都市、Parakronos。大通りには冒険者ギルドを目指して地方から集まる若者を鼓舞する通りの先触れ、或いはそこから引き抜こうとする傭兵ギルドの募兵係、貧民街はあまりにも汚れて、死体すら片付けられていない。その中に、行き倒れた餓死者とは異なる死体があった。近くの壁には暗殺ギルドのマークがあり、人々が口々に正義の殺しだと言う。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter2:暗殺ギルドのお仕事
Scene2
古代の魔法と技術に支えられた魔法のダンジョン都市Parakronosを紹介。この街の発達した文明と活気ある生活、不平等な暗黒の裏側が屋根を飛び回るLekaの目を通して描かれ、陰謀と謎の基調が設定される。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter2:暗殺ギルドのお仕事
Scene3
この街の影の正義の執行者である暗殺ギルドの様子。Tattionが、暗殺ギルド本部の執務室で忙しそうに細かな暗殺の依頼を受けていくシーン。Lekaは職務の隙をついて執務室の窓から侵入し、暗殺任務に向かうのとは対照的な子供らしい反応でTattionから任務を受ける。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter2:暗殺ギルドのお仕事
Scene4
Lekaが請け負った仕事は、街の貧民街で違法に通行料をせしめる傭兵ギルドの無法者たちの排除。貧民街の住人からの陳情だが、警察権を持つ冒険者ギルドは動けない。Lekaはいつも頼りにされている貧民街のみんなになんでもないような挨拶をしながら、暗殺者のモードに切り替え、卓越した暴力と隠密行動の技術で傭兵を皆殺しにする。しかし見習いの槍持ちの少年まで殺してしまい、そしてその遺体が貧民街の住人に晒しあげられる凄惨なシーンを目撃し、ショックを受ける。これで暗殺ギルドのボス、Tattionのために暗殺者として働くLekaの役割が明らかになった。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter2:暗殺ギルドのお仕事
Scene5
暗殺ギルドの本部。夜になって。TattionとStavroが陳情ではなく表に出せない陰謀を依頼されている。悪人に正義の鉄槌を振り下ろす算段ではなく、この街の政治の行く末を話し合っている。冒険者ギルドの重役による、冒険者ギルドの裏切り者を始末する依頼。なんでも、傭兵ギルドの獣人勢力と結託し、反乱を企てているとか。暗殺による介入の陰謀。話が終わると、そこにLekaが帰還する。Stavroは彼女が窓から入ったことを咎めるが、Tattionは笑って許す。そしてLekaに次の任務を与える。今朝の曲がりなりにも街の貧民のためだった正義の任務とは相容れない、冒険者ギルドの裏切り者を始末する理不尽な指令を。Lekaは先ほどのショックを話し、Tattionに癒されたくてたまらないが、我慢する。暗殺決行までに数日の休暇が与えられ、LekaはTeruの顔を思い出す。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter2:暗殺ギルドのお仕事
Scene6
Lekaが去った後、TattionとStavroはこの街の表と裏から秩序を守る責任について語り合う。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter3:Marrionette使いとStiletto使い
Scene7
貴族の子Teruは、晩餐会での父Ludvicとの口論を通じて、その複雑な父子関係や、責任や権力に対する考え方の違いも紹介される。Teruは晩餐会から引き上げる。彼は魔法科学ギルドにおける自分の運命的な役割に無関心で、父の屋敷の離れであるガレージに篭り、ガラクタいじりや機械いじりといった個人的な趣味を追求している。そして父親同士の繋がりのおかげで、幼少期から仲がいいLekaが訪ねてくる。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter3:Marrionette使いとStiletto使い
Scene8
二人の人生が対照的に描かれる。Teruとの純粋な幸せの瞬間、先ほどの血の惨劇とは対照的だ。彼女は表向き明るく振る舞うが、内なる葛藤がある素振りを見せる。魔法科学ギルドに所属する貴族のTeruと、貧民街ではヒーローだが、魔法科学ギルドの貴族に忌み嫌われる暗殺ギルドのLekaは一緒にいられるはずもない。Teruは父親の愚痴を言い、Lekaは自分を語らずTeruとの接触そのものから慰めを見出す。ふたりはそうやって互いの存在に慰めを見出すが、互いを隔てている社会の壁を痛感する。LekaはTeruに全てを打ち明けたいが、幼なじみの関係性があっても、暗殺ギルドの裏の仕事は明かせない。Teruはなんとなく、Lekaが単なる暗殺ギルドに所属してるだけの貧民街の便利屋という表の顔だけではないことは察している。Teruは自分が愚痴を言うように、Lekaも自分のことを話していいんだと伝えるが、Lekaは去ってしまう。窓からそれを見ていたLidvicがTeruのガレージを訪れる。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter3:Marrionette使いとStiletto使い
Scene9
LudvicはLekaとの友情についてTeruに詰め寄り、暗殺ギルドと関わることは極めて政治的に有効だが、あくまでその関係を隠し、相手をmarionnetteのように扱うように忠告する。TeruはLekaをかばうが、異なる世界の現実に直面せざるを得ない。LudvicはTeruに、自身の運営する大規模な工房への出入りを許可するが、Teruは反発心から拒否してしまう。Teruは寝る時、Lekaとの幼少期の思い出を回想する。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter3:Marrionette使いとStiletto使い
Scene10
次の日の夜。TattionはLekaに冒険者ギルドの裏切り者を始末する理不尽な任務について詳細を話す。彼女を巧みにStilettoのように操り、ギルドへの義務と現状維持の重要性を思い出させる。このように、Lekaは自分の忠誠心と親子の関係に疑問を抱くことになるが、すぐに打ち消してしまう。それが表面化するのはまだ先だ。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter4:Lekaの葛藤
Scene11
Lekaは、重要な任務を実行に移す。街で対立し反乱を起こそうとする冒険者ギルドの裏切り者を始末する任務だ。しかしその過程で、冒険者の主張を耳にしてしまう。冒険者ギルドは、Liminal Dungeonから算出するアーティファクトの枯渇を隠し、不正を行っていると。Lekaはそれに正当性を感じるが、冷徹に任務を実行する。暗殺対象の男女が、死に際に愛情を確認し合おうとするが、Lekaはそれをも無視して苛烈な殺しをしてしまう。Lekaは暗殺に成功するが、心に傷を負う。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter4:Lekaの葛藤
Scene12
Lekaは自分の倫理観と父であるTattionの意図との矛盾に気づき、大いなるアイデンティティクライシスを感じる。命令に従った結果にせよ、その中で自分が良かれと思って行動した結果にせよ、それによって発生する罪を被ることになるという厳しい現実。それを突きつけられ、自分の人生と父親の意図について、人生で初めて大きな疑問を抱くが、罪なき暗殺対象を抹殺することで、その気づきに蓋をする。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter4:Lekaの葛藤
Scene13
Lekaは父Tattionの屋敷、暗殺ギルドの本部に帰還する。Tattionは罪悪感に苦しむLekaの様子に気づき、彼女を抱きしめて慰める。……自分が下した命令に従ったことでLekaが苦しんでいるのにもかかわらず、それを慰める役割すらTattionのモノだ。Lekaは自分を苦しめる原因であるはずの父Tattionにしか本音を話せない状況に引き裂かれる。Tattionは休まずに暗殺を続けてきたLekaに休暇を提案する。最初は乗り気で少女らしい闊達さで休暇の間の予定を語るLekaだったが、次第に今の状況の責任を自ら思い出して休暇を拒否する。TattionはLekaの自由だと言うが、それはTattionの巧妙な誘導によるものだった。Lekaは次の任務を受ける。賭場の傭兵の監視だった。傭兵ギルド……。まだ反乱を諦めていないはずだというTattionの推測である。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter4:Lekaの葛藤
Scene14
翌日の朝、Lekaは救貧院のLilyに会うためTeruと貧民街を歩く。Lekaは言外にTeruに癒しを求める。しかしTeruはLekaが重大なことを秘密にしている、つまり彼女の暗殺業の詳細を明らかにしてくれないことに苛立ちを露わにする。まだ若いLekaが実際の殺しに関わっていることを、Teruは薄々感じつつも、指摘する勇気はない。Lekaも、友情を失うかと思うと話すことはできない。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter4:Lekaの葛藤
Scene15
LekaとTeruは救貧院のLilyに会い、その仕事を手伝い終えたシーンからスタート。Lilyはお礼を言ってくれるが、腹違いの妹であるLilyがあまりに自分の自由に生き、暗殺業とも関わりがないことにLekaは嫉妬すら感じる。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter4:Lekaの葛藤
Scene16
LekaはTeruと貧民街を通って中心街へと帰宅するが、スリに遭う。Lekaたちは難なく回避するが、スリに失敗した獣人の子供は、目の前で仲間から制裁を受けることに。通行人は誰も目線すら向けない。獣人の子供なんて、そんなものなのだ。Lekaが追い払い、獣人の子供に優しく諭し、励まあう。助けたことになるが、その子供はそれが気に食わなかったのか、Teruが抱き起こしてあげた時に、突然ナイフを取り出し、Teruに突きつける。Lekaは突き飛ばそうとするが、Teruがおどけて獣人の子の毒気を抜くことで対処する。このスリの一件で荒事に対するLekaの強硬で不寛容な姿勢とTeruの融和的で寛容な姿勢が対比される。コンフリクトのシーン。危ないところだったと憤慨するLekaに、Teruは人格の柔軟さを語る。TeruはLekaの苦しみの深さを完全には理解していないものの、無条件に彼女を支え、暗殺ギルドから押し付けられた堅苦しい信念に疑問を持つよう励ます。だがLekaは納得いかない。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter4:Lekaの葛藤
Scene17
さっきの獣人の子は諦めていなかった。親を連れてきて、武器を持ってTeruに襲いかかる。貴族に対して大きな憎悪を抱いていたのだ。もちろん、その家系であるTeruにも。流石に対処できないTeru。Lekaは暗殺者としての超人的な体力と素早さで素手で武器を叩き落とすと、Teruを抱えてすぐに逃げた。調子のいいことを言っても実際には対処できないTeruは、自分の無力さにショックを受ける。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter4:Lekaの葛藤
Scene18
暗くなり始める。逃げ切れたようだ。LekaとTeruは建物の上で、夕陽がParakronosの大時計塔に沈んでいくのを見る。大時計塔が落とす影が二人を隠し、鐘の音が遠くで聞こえる。この街の大きさと理不尽、強固な構造にTeruは絶望し、貴族として成長してそれを強化する仕事に就くなんて真っ平ゴメンだという。Lekaは何も答えられない。Teruは自由に生きて責任から逃れることをすすめるが、Lekaは愛情を人質に取られていることを理由に拒否する。Lekaは二人の運命がどんどん離れていく予感に不安を感じつつ、傭兵の賭博場の監視任務に就く。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter5:貴族と獣人
Scene19
Teruは自らの自由を証明するため、危険なあそびに身を投じることになる。学院の友人と共に、傭兵ギルド所属の獣人のギャングと賭博行為をするのだ。大人しく、あまりこういう危険な行為には近づかないTeruだったが、今日は学院の悪友Hermarnの誘いに乗った。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter5:貴族と獣人
Scene20
Teruと悪友HermarnたちはParakronosで最も治安が悪い闘技場横の賭博場までおっかなびっくり入り込み、賭博が始まる。悪友Hermarnが持ちかけたゲーム。Teruは驚く。賭けを仕切るのは、Lekaだった。Teruは驚くが、黙っている。HermarnはTeruに耳打ちする。あのディーラーは買収してあるのだと。Teruは訳の分からない気持ちになる。貴族の若者たちは、勝てる勝負を仕掛けた。しかしLekaは公平にカードを切り、HermarnとTeruたちは獣人のギャンブラーに大敗を喫してしまう。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter5:貴族と獣人
Scene21
Teru達が賭けに負け、精算を要求される。買収したはずのLekaに裏切られ、怒りに震えたHermarnが負けを帳消しにしようとピストルを出す。Lekaは知らん顔。獣人ギャングの方が一枚上手で、Hermarnたちはピストルを奪われ、人質になる。リボルバー式のそのピストルは、まだ貴族が支配する魔法科学ギルドが表に出していないもので、これが漏れれば大変なことになる。そのことを獣人たちから突きつけられ、Teruたちは絶体絶命の窮地に陥った。悔しがるHermarnだった。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter5:貴族と獣人
Scene22
Lekaが動く。監視任務についていたLekaは、Hermarnの手のものから買収を持ちかけられても、知らん顔だった。しかしもうこうなっては現場を収集しなければならない。傭兵たちの側にもイカサマの非があることを明らかにして、Teru達の窮地を救う。傭兵たちを武装解除して誰も怪我人なしにこの場を収める。Lekaは潜入しての監視は失敗だとため息をつく。そしてHermarnとTeruたちに、帰宅するように言う。しかし、傭兵たちは諦めてはいなかった。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter5:貴族と獣人
Scene23
砲撃まで使い、獣人の傭兵が不自然なまでに多数、Teruたちを追撃してくる。やはり反乱のために集結していたのだ!Lekaは何人も迎撃し、その暗殺技術で殺害することになる。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter5:貴族と獣人
Scene24
Lekaは傷つき返り血を浴びながらも戦う。TeruはLekaを背後から襲おうとしている獣人の傭兵をリボルバー式ピストルで撃ち、Lekaの窮地を救った。Teruにとって初めての殺人だった。しかし怪我をしたLekaと、戦闘に不慣れで対応できないTeruは、追い詰められてしまう。万事休すと思われた時、砲撃音を聞いて急行してくれたTattionが合流、Stavro率いる暗殺ギルドの上級暗殺者たちが反乱を鎮圧、事態は収束した。Teruは、Tattionに抱きつくLekaを見て、その関係を察する。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter6:拭い去れぬ不安
Scene25
賭博場での大事件は終結したという。匿ってもらった暗殺ギルドの屋敷で、LekaとTeruは静かな時間を見つけ、起こった出来事を振り返る。二人は街と自分たちの生活の両方について、深く話し合う。TeruはLekaの強さと決意に感嘆の意を表すが、同時に彼女が歩む道への懸念も口にする。Lekaもまた、命を救ってくれた感謝を述べる。Teruは自分のガレージに深夜に帰る。そこでLudvicに嫌味を言われるが、獣人の反乱の件を詳細に報告して驚かれる。LudvicはLekaを大切に思う心と街への責任の自覚で、息子が成長の機会を得たと判断し、自分の政務を一部任せることにする。Teruは緊張と不信を感じつつも、それを断らなかった。「ようこそ、この街の裏側へと」Ludvicはそう言ってTeruと別れた。Ludvicのいなくなったガレージ。Teruはベッドに寝転がり、リボルバー拳銃を弄び、あの貧民街の獣人の子供を思い出した。一体何を撃てばいいというのか。弾を抜いて引き出しにしまった。

Volume1:暗殺者のいる街
Chapter6:拭い去れぬ不安
Scene26
今回の件は賭博場の者たちの暴発として不問に処され、獣人たちは反乱の準備をさらに進める。闘技場で活躍するJadwanが初登場し、獣人の反乱が本格化することを示唆する。観客は全て獣人で、何かが起こる予感が演出されている。


Volume2:亜人種の悲哀
Chapter7:悪友再び
Scene27
Teruと悪友Hermarnが闘技場で試合を観戦している。LudvicとHermarnの親に誘われたのだ。Teruは貴族としての仕事を手伝うようになったが、付き合いでこんな興行を見に来るだけでは不満があった。それは貴族が家族で観戦できる安全なお遊戯のようで、冒険者たちが、無害だが見た目だけは派手な魔法を使って、Liminal Dungeonのモンスター役の獣人をやっつけるお芝居。最後には冒険者が決闘の真似事をして、相打ちになって魔法が花火になる。そんな筋書きだ。ほとんどただの興行で、子供でも安心して見られるコメディ要素もある。演劇じみていて予定調和そのもの。あまり面白くないが、悪友はTeruに「もっと面白い催し物がある、素行の良くない貴族が行くらしい」とそそのかし、Teruを連れ出した。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter8:闘技場の惨劇
Scene28
Teruは悪友に誘われ、地下でひそかに開かれている非合法の闘技場に足を踏み入れる。殺し合いだった。この街の評議会はこのようなものを認めていないが、傭兵ギルドが運営しているために手を出せない。死体が運び出される光景に、この前の賭博で情けない姿を晒してしまったHermarnは、強がって平気な顔をしてズンズン入っていく。Teruは悪い予感をビンビン感じつつも、ついていく。この悪友も悪いやつじゃない。貴族の学友はみんな将来の仕事仲間。いつかこいつと一緒にこの街を変えないと……。彼はまだ、自らが負った責任に気づくタイミングが来ていないだけなんだ、と、自分に言い聞かせて。Teruはこの前のことをそれとなく話す。不思議と色々な事情を聞かれていない。Hermarnは詳細を話そうとするTeruを遮ると、Lekaを助けられたかだけたずねる。Teruが肯定すると、笑顔を向けた。ギルドの間の闇に関し、助けられたからには見て見ぬふりという誠意で答える、彼なりの誠意。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter8:闘技場の惨劇
Scene29
TeruとHermarnがたどり着いたそこでは檻の中で人間や獣人や亜人種が果てなき殺し合いをさせられていた。Teruは衝撃を受けつつも、その光景から目を逸らすことができない。傭兵ギルドの息がかかった金貸しへの多大な負債。その帳消しを条件に新米冒険者などが強制的に出場させられ、凄惨に殺されていく。大型獣人のGazboがまず殺戮ショーを演じる。次の試合は懲罰的なものらしく、望まずに出場させられるものがいるのだという。TeruもHermarnもこれから起こる惨劇に恐れ慄く。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter8:闘技場の惨劇
Scene30
触手族の女、毒使いChartreuseが初登場する。Chartreuseは勝てば娼館で接客した傭兵の客を誤って毒で発狂させた償いがされるのだという。前菜に何人かの「傭兵ギルドに叛逆した者たち」が檻に入れられ、GazboとChartreuseが殺していく。赤い髪の冒険者Aishaも放り込まれた一人だが、Chartreuseの毒霧の中、なんとか生き残り、小柄さゆえに檻の隙間から出て観客のTeruに助けを求めて彼の客席に匿われる。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter8:闘技場の惨劇
Scene31
闘技場の外まで来たTeruとHermarn。入り口の闘牛のような獣人をどう突破しようか悩みどころだったのに、彼は気絶していて脱出することができた。一息つくと、Aishaから、獣人の大規模反乱が数週間以内に決行されるという情報を聞き、Teruは驚き、なんとか対応しようと考える。闘技場の主催者であるJadwanが登場し、次の試合を予告する。それはGazboとChartreuseを戦わせる試合だった。Gazboは勝てばJadwanへの挑戦権を得る。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter8:闘技場の惨劇
Scene32
Lekaは暗殺者の監視ネットワークからの緊急連絡を受け、闘技場へと急いでいた。彼女の部下であるGazboとChartreuseが傭兵連中に連行されたとの情報。向かう先は、一つしかない。いつも世話を焼かせる問題児たちだが、今回は他ギルドとの大問題だ。Lekaは身柄を預かる身。死なせるわけにはいかない。夜の街、屋上から屋上へ。路地を飛び超え、彼女は急いだ。月だけがそれを見ていた。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter8:闘技場の惨劇
Scene33
試合が始まり、GazboとChartreuseが命を賭した戦いを繰り広げる。圧倒的な力を持つGazboに対し、Chartreuseは毒を使って応戦するが、徐々に追い詰められていく。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter8:闘技場の惨劇
Scene34
そこでLekaが乱入し、無用な殺しも仲間同士の争いもするな!と二人を叱責する。二人はファイトマネーがどうとかぐちぐち言っていたが、Lekaは無理矢理GazboとChartreuseを闘技場から脱出させる。主催者のJadwanは激怒し、Lekaに襲い掛かるが、彼女は巧みに回避し、闘技場から逃げ出す。Teruは学友を放りだしてAishaと共に逃げだし、Lekaを追った。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter9:過去との対峙
Scene35
闘技場から少し離れた路地で、一連の出来事を受けて、LekaはGazboとChartreuseを叱りつける。本来両者は彼女の部下、暗殺ギルドの裏の実行部隊のメンバーだったが、殺人嗜好症にせよその反社会的な性格にせよ、あまりに手がかかり、Lekaも手を焼いていた。こんな形で殺し合っているなんて、また大問題を起こしたとLekaは呆れるが、GazboとChartreuseは反省することもなく、今まで殺し合っていたことも忘れている。ファイトマネーの金をみらい損ねたことばかり気にしている。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter9:過去との対峙
Scene36
LekaがTeruのガレージにいく。TeruはLekaに、Aishaが話した近いうちの獣人の反乱の計画を訴える。驚くLeka。LekaとTeruは、この前の賭博場の反乱を思い出す。情報は信憑性があると考え、二人はTattionとLudvicに報告し、相談を求めるが、傭兵ギルドの最大戦力であるJadwanとの敵対は流石にギルド同士の大戦争に発展すると、慎重な姿勢を崩さない。TeruとLekaは独自の調査を進める。しかし噂以上の情報は入手できない。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter9:過去との対峙
Scene37
Teruは自分なりに獣人反乱の調査を進めていたが、有力な情報を掴むことはできなかった。傭兵ギルドとの関係が深いとされる貴族の家でのゲームパーティに参加することを急遽決める。Lekaは父Tattionから指示された貴族暗殺の任務のため、いつものようにGazboとChartreuseを集めて標的の屋敷に潜む。Lekaの心中は複雑だった。Lekaたちは標的の屋敷のそばで息を潜める。Teruが到着し、子供達とゲームを楽しんだ後、一緒のベッドで眠る。そこでGazboが騒ぎを起こし、Lekaが侵入。Teruは銃を構えるが、LekaとTeruが見つめあってかたまり、Chartreuseが弟を殺そうとし、Teruが闘技場の化け物を撃とうとし、しっちゃかめっちゃか。最後にCrevanがトイレから帰ってきて、麻痺毒で気絶した弟と、怪我したTeruが連れ去られるところを見る。Crevanが拉致されるはずだった、という事実から、貴族はビビリ、傭兵ギルドへの出資を止める。Jadwanは動き出す。
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Volume2:亜人種の悲哀
Chapter9:過去との対峙
Scene37
貧民街の酒場。治療されたTeruは、Lekaの実際の仕事の残酷な内容を目にし、ショックを受ける。Teruは貴族の穏やかな世界とは全く違う世界にLekaが身を置いていることに、改めて驚く。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter9:過去との対峙
Scene38
で飲んだくれていたGazboは、かつてJadwanの指示で自分の種族である獣人に敵対する者を殺していた過去を話す。それは決して正義のためではなく、単に彼の殺人衝動の結果だと主張するGazbo。Tattionによって捕えられた後、個人的な因縁でJadwanを暗殺することを提案し、解放されてLekaの部下になった。Gazboはまるで自分のことを誇るようにJadwanの傭兵としての伝説を語る。戦場でたった一人で城壁を蹴り崩したとか、大砲の球を受け止めたとか、万の軍勢を皆殺しにしたとか。LekaやTattionの生まれつき魔法的に強化された強大な身体能力を、ポテンシャルの高い大型獣人が得たらどうなるかの好例だという。GazboはJadwanと見た目がそっくりで弟だが、その能力は共有しておらず、魔力を示す瞳の色も違う。無能力の黒だ。大型獣人の素の身体能力しかない。今はまだ下についていてやるが、いつかLekaを食い殺してやるとGazboは凄んで見せた。LekaとTeruは娼館街で仕事中のChartreuseに接触する。ちょうどまた、客を発狂させかけたところだった。Chartreuseは触手族の最後の生き残りで、種族の数少ない生き残りとして期待をかけられていたのに、自分が子孫を残すことができない上、毒が強すぎる体質であることに絶望し、仲間を皆殺しにした過去をもつ。亜人種という生まれに関わりなく、その亜人種からすら排除された境遇。Lekaはそれをわかっていながら、あえて部下として保護している。娼館の店主は怒っていて、それは当然であるが、ことその悪態が触手族への差別的な言動に及ぶと、Teruはそれを止めようとする。しかし元暗殺者の店主に凄まれてうろたえ、黙ってしまう。Lekaがそれ以上の殺気で黙らせた。結局Chertreuseからは大した情報は引き出せなかった。彼女と一緒にGazboのいる酒場に帰還する。なんにせよ、Lekaのもとで保護されていなければ、街の秩序の面から見て、生存が許されないGazboとChertreuseだった。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter9:過去との対峙
Scene39
四人は酒場で食事をしつつ、Jadwanについて語る。まだ反乱の詳細はわからない。LekaはGazboとChartreuseに同情を抱きつつも、彼らの過去の行為に疑問を感じ、救ってやれる方法を探している。一方、Teruは亜人種の置かれた過酷な状況に心を痛め、社会の不条理に怒りを覚える。LekaはGazboとChartreuseは個人的な運命に同情すべき点があると言うが、Teruは種族間の不平等が原因だと主張する。二人は改めて、この社会の在り方について議論を交わす。しかし当の本人たち、GazboとChartreuseは真面目な話などどこ吹く風、LekaとTeruの恋愛未満の関係をからかう。Lekaは鬱陶しがるが、Teruはまんざらでもない。LekaはGazboとChertreuseとともに仕事へ向かう。Teruはそれを複雑な気持ちでみおくった。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter10:Jadwanの野望
Scene40
Jadwanについて調査を進めるLekaとTeruは、Gazboに案内され、獣人のスラムを訪れる。Jadwanが獣人たちの住む区画で秘密裏に違法な徴兵や募集をかけ、どんどん仲間を増やしていたことがわかる。Jadwanは亜人種の不満を利用し、獣人傭兵の部隊にどんどん取り込み、彼らを扇動することで自分の権力を拡大しようとしていたのだ。貧民街の獣人のスラムで、彼らはかつてスリをしようとした子に再会する。逃げるその子を追うと、棲家に辿り着き、そこには天才的な才能を感じさせる炭とタールで描かれた絵画があった。題材はどれもJadwanの姿。その子は襲ってきたが、Lekaが押さえつけた後、Gazboが追いついてくる。その子はGazboをJadwanだと勘違いして、抱きつく。鬱陶しがるGazboだったが、唸り声を上げても全く動じないのを見て、Gazboはその子の耳が聞こえていないことに気づく。今まで分からなかったことに、絶句するTeruとLeka。獣人の子はGazboの手を引っ張る。ドアの向こう隣の部屋に入ると、ひどい臭いが鼻をついた。そこには腐乱した獣人の遺体があった。Gazboの見立てだと女性らしい。枕元には手紙があり、GazboによるとJadwanの筆跡だという。謝罪の内容が記されている手紙だった。耳の聞こえない子を自分の子だと認めるわけにはいかない、12月になる前に反乱を決行する、そうすればその子を引き取ることもできる、と記されてあった。TeruとLekaは顔を見合わせる。もう十一月の末だった。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter10:Jadwanの野望
Scene41
LekaとTeruは、Gazboとを説得し、ChartreuseとともにJadwanの陰謀を阻止するために協力を求める。しかし、GazboはJadwanとの一騎打ちの決闘にこだわり、反乱に関しては知らんぷりを決め込む。LekaとTeruは諦めてTattionやLudvicにJadwanの手紙を届け、報告しようとしたが、間に合わなかった。残されたGazboは、耳が聞こえず、自分とJadwanの見分けもつかないらしいこの子をどうしてやればいいかと苦悩する。自分らしくないことだと動揺しながら。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter10:Jadwanの野望
Scene42
ついに、その夜間、Jadwanが傭兵ギルドの獣人部隊と秘密裏に用意した戦力を使い、Parakronosの街を攻撃し始める。Lekaは単独でJadwanに立ち向かうが、圧倒的な力の前に苦戦を強いられる。JadwanはLekaに問いかける。なんのために戦うのだ?この街のために戦っているのか?と。Lekaは自信を持って答えられない。誰も助けが来ない状況で、Lekaはどんどん負傷していく。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter10:Jadwanの野望
Scene43
絶体絶命のピンチに陥ったLekaのため、TeruはGazboとChartreuseに助けを求めに行く。LekaはTeruへの信頼と絆を胸に、Jadwanに立ち向かう。しかし、Jadwanはあまりにも強く、打倒の糸口は見つからない。JadwanはLekaの匂いから、Lekaは亜人種のエルフ族、娼館街で使い捨てられる獣人以下の最低の被差別種族から生まれたに違いないと言う。Lekaは冷静ではいられなくなり、Jadwanの一撃をもろに喰らい、ピンチになる。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter11:共闘
Scene44
GazboとChartreuseはなかなか首を縦に振らない。Lekaの生命がどうなってもいいのかと問うTeruだが、基本的に人格が破綻しているGazboとChartreuseは決して世話になった相手のためにリスクをとったりしない。しかしTeruの説得と、とある約束によって、GazboとChartreuseは考えを改め、LekaとTeruに協力することを決意する。GazboはChartreuseに聞こえないように、獣人のスラムにいるあの耳の聞こえない子の保護を要求する。それからChartreuseは……。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter11:共闘
Scene45
四人は力を合わせ、Jadwanとその軍勢に立ち向かう。GazboとChartreuseの助けをLekaは意外に思うが、最後の力を振り絞って戦うことを決意する。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter11:共闘
Scene46
激戦の末、LekaとTeruは闘技場へとJadwanを追い詰める。Jadwanは自分の野望を語りながら、彼らに対する憎しみを剥き出しにする。彼は獣人の受けた仕打ちと恨みを語り、LekaみTeruもそれを跳ね除けることはできない。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter11:共闘
Scene47
しかしそれでも、LekaとTeruは責任と罪を背負うことを決意する。獣人の憎しみも抱えてこの街を平和にしてみせると。Jadwanは、最後はLekaのパンチとTeruの銃の一撃によって致命傷を受ける。冒険者ギルドが闘技場を包囲し、Jadwanは完全に追い詰められる。しかし理解できない力で突然ポータルを開き、Liminal Dungeonへ逃亡する。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter11:共闘
Scene48
反乱は終わった。Aishaの働きかけで、Kinan率いる冒険者ギルドが事態の収集に当たった。獣人傭兵部隊は一旦は拘束されるが、傭兵ギルドの力を考えると、Jadwanの独断ということになり、すぐに解放されるだろうと、Kinanは言った。暗殺ギルドや魔法科学ギルドの人員も到着する。闘技場でさまざまな人々が慌ただしく動く中、傷ついたLekaと、精神的な重責を負ったTeruは、互いに体を支え合い、闘技場の最上部から、被害を受けた街を眺める。犠牲者は膨大な数になるだろう。あちこちに砲弾も着弾しているようだ。極めて悲劇的な状況に心を痛めるTeruを励ますLeka。そして二人のもとに、TattionとLudvicが現れる。被害状況を確認する父親たちだが、冷徹な視点に少しTeruは幻滅する。そしてLekaとTeruのもとに馬鹿騒ぎするGazboとChartreuseが現れ、Teruに約束の履行を求める。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter11:共闘
Scene49
Teruは意を決する。事情を察せないLekaに、いきなりキスをした。それこそがChartreuseが提示した条件だった。イタズラが成功して喜ぶGazboとChartreuse、真っ赤になって二人を追いかけるLeka、ほっとした表情でそれを眺めるTeru。戦いを通じて、LekaとTeruはGazboとChartreuseとの絆を深める。亜人種の置かれた状況を改善するために、社会と戦っていく決意を新たにする。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter12:束の間の平和
Scene50
Jadwanの脅威は去ったが、ParakronosはJadwanの反乱によって大きな被害を受けていた。それでも元気な顔を見せるLekaとTeruを見つつ、崩れた建物を見下ろし、語り合うTattionとLudvicだった。息子と娘の話に移り、両者は子への期待と愛、それから二人の将来について語る。Tattionが語るには、街の権力の座についたMarionette使いのTerruと、その忠実な手足となるStilettoであるLeka。それこそが理想だろうと。Ludvicは同意する。

Volume2:亜人種の悲哀
Chapter12:束の間の平和
Scene51
LekaとTeruは復興に向けて尽力する中で、亜人種と人間の共生のための第一歩を踏み出そうと努力する。復興作業の中で、TeruはAishaと再会する。Lekaと共に復興作業に従事し、親交を深めると、Aishaはバカな理由で作った借金が帳消しになり、やっとLiminalDungeonに挑戦できる冒険者としての資格を得たと報告する。Aishaのたくましさに笑い、その昇進を喜ぶLekaとTeruだった。Gazboは貧民街へ戻る。獣人のスラムへ向かうと、あの耳の聞こえない子の家へ向かう。すでに母親は埋葬してあるが、あの子は絵を描くための場所にはこだわりがあるらしく、家から離れなかった。辿り着くと、反乱の時の砲撃の流れ弾で、家は崩れていた。Gazboは落胆するが、所詮この世はそんなものだと思う。しかし瓦礫の中から血のついた絵を見つけた。直前まで描いていたものらしい。Jadwanの絵かと思ったが、今まで塗られていなかった目のところが、黒く塗ってあった。生まれて初めて大きな感情の揺らぎを感じ、泣くことができない自分に驚くGazbo。


Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter13:Liminal Dungeonの冒険者
Scene52
Kinanが街の中心の大時計塔内部のLiminal Dungeonを探索するシーン。内部で正気を失ったJadwanに出会い、激戦の末に撃退する。しかしKinanはこの事件の背後に、より大きな力の存在を感じ取る。Yoth-Gorhの存在を。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter14:英雄の旅立ち
Scene53
Leka、Teru、Gazbo、Chartreuseたちは仲良く過ごす一方で、時折街の治安を乱すような行動を取ってしまう。楽しいシーンであり、Teruの会話と洞察によって、GazboやChartreuseの内面が描かれる。そんな中、冒険者ギルドの警官に注意される。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter14:英雄の旅立ち
Scene54
その警官たちはKinanに率いられていて、昇格してLiminalDungeonに挑む予定の少女Aishaもいた。Kinanはかつて幼いLekaが怪我をした時に、自分の屋敷に転がり込んで手当てしてやったことを思い出す。そしてKinanは、評議会の決定で自分がLiminal Dungeon内部の魔王を倒す使命を与えられたと語る。それを聞いたLekaは、危険な任務に就くKinanの身を案じつつ、彼がずっと見守ってきた、まだ若いAishaの面倒を見ることを約束する。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter14:英雄の旅立ち
Scene55
Lekaは冒険者ギルドの警官隊に格闘訓練を依頼され、教官として派遣される。暗殺ギルドや傭兵ギルドに比べれば遥かに腕っぷしに劣る新入り冒険者たちを鍛え上げる。暗殺ギルドの対人技術はこの街一番だ。それのうち、公開できる技術は提供する。Tattionのギルド間の融和策だった。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter14:英雄の旅立ち
Scene56
Kinanに感謝されつつ、Aishaの様子を見守る。最近、兄たちをとある事件で亡くしたらしい。表向きはLiminal Dungeonでの殉死ということになっているが……。Kinanは言葉を濁し、Lekaは訝しんだが、答えはわからなかった。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter14:英雄の旅立ち
Scene57
傭兵ギルドのリーダー、傭兵隊長Duraが何の予告も無しに冒険者ギルドの訓練所を訪れる。動揺が広がる。冒険者ギルドと傭兵ギルドは警察権を巡って争う仲であり、場に緊張が走る。Duraが仕掛けた、ギルド同士の威嚇である。最初は大人しく見学を申し出たDuraだったが、Lekaへの憎しみの目線が、Lekaにわからないはずもない。トラブルの予感しかしなかった。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter14:英雄の旅立ち
Scene58
DuraはAishaにちょっかいを出した後、Lekaと手合わせを願う。Lekaは軽くいなせる相手だと舐めてかかるが、技術では勝てても腕力で負けてしまう。Lekaとしてはあり得ないことだった。魔法的な身体強化を感じた。KinanがLekaを守るために決闘の名乗りをあげ、彼の体内のアーティファクトの超常的な能力で凌ぎ、この場はこれ以上のエスカレーションを防ぐため、解散になる。Lekaは手合わせをした相手の心情がなんとなくわかる。明らかにDuraは、Jadwanの仇としてLekaを見ていた。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter15:傭兵隊長Dura
Scene59
LekaとTeruは二人で街を流れる河の縁に行き、石を水面に投げて、跳ねる回数を競争する。Teruも結構伸びるが、Lekaは対岸まで届く。Lekaはふざけつつも、生まれて初めて暗殺の仕事で受けた恨みを感じて、恐怖ではないにせよ、それに対して抵抗できない感覚を覚えたという。だから力負けしたのだと。Teruは流石に想像するしかできない。夢みたいな和解なんてありえないことは知っている。自分がこの街の権力者になって、憎しみが存在する状態でそれでも街を平和におさめるしかないと、覚悟を語った。LekaはTeruの覚悟を褒め称えたが、それが簡単でないことを知っている。

「なあTeru坊」  Lekaの声は、いつものようでいて、いつものようではなかった。Teruは一瞬、息を呑む。なにか、なにか理由はわからないが、死の匂いがした。 「もし神がいるとしたら、死んだら罪を裁いてくれるのかな?」  Teruは真剣に答える。なにばか言ってんの、Lekaらしくないよー、だなんて、雰囲気からするととても言えない。 「……死んだ後のことより、今生きている喜びを感じようよ」  Teruは一歩進み、寂しそうなLekaの隣に座ろうと、石垣に上がろうとするが、胸までの高さのそれに上がれるか不明で、躊躇する。するとLekaがTeruの意を察したのか、貴族仕様の高い襟をむんずとつかんで、ヒョイと引き上げて、隣に座らせた。そんな超人的な力も、彼女からすると造作もないことだった。 「え、えぅん」  Teruはそれだけで生来の弟気質、そしてLekaにこれまで何度もそうやって扱われてきた甘えから、精神的な優位を擬似的な姉に明け渡しそうになったが、すんでのところで我慢する。こんな簡単に持ち上げられたのは、自分が華奢なせいだろうかとも思ったが、考えない。父Ludvicも、暗殺ギルドのTattionさんも、スタヴロさんも、みんなみんなガタイがいい男が多すぎる。それに負けてたまるか、とも思った。  Teruは横に座るLekaを見た。赤い瞳が、河を越えて、向こう岸の商業地区に向かっている。いや、もしかすると、もっと遠くを見ているのかもしれない。この街の垣根を越えて、もっとずっと先の……。  LekaがTeruを見た。その顔にあったのは、いつものニヤッとした強者然とした笑みなどどこにもなく、消えそうなほどに力ない微笑み。疲れが目に見えてわかった。それも肉体的なものではなく、精神的なものだった。Teruはそれを見て、いたたまれない気持ちになる。またLekaが言った。 「全人類は罪人だ、ともいうよな。そしてとりわけ、殺しや戦争を生業とするこの街の一部ギルドは……」  Teruは反論する。対神学のこういう議論は学院でも良くあった。 「違う、全人類はみんなイノセントなんだ。聖典を解釈よくよく解釈するとそうなるんだよ」  Lekaはやっと、顔色の絶望一色に、少しだけ興味の色が混じり始める。 「イノセント……?」 「そうだ」  Teruは内心興奮して話し続ける。Lekaとこんな話をするとは思わなかった。 「人間は、イノセントとして生まれてくる。生まれたばかりの赤ん坊に、罪があるわけはない。そして責任もなければ、罪とは何かという概念も感覚さえもない。みんな生まれる前の無垢な状態から、人生という厳しい場所に、突然連れて来られた哀れな被害者にすぎない」 「ふーん」  Lekaは少し元気が戻ったのか、川の方へ投げ出している足がパタパタし始める。 「でもヨォ、そんな認識でいると苦しくねーの? その、イノセントとして生まれた子供? が、どんどん罪に塗れて、クソみたいな罪人になっていくんだろ? やっぱカミサマって、人を苦しめるためにこの地上に産み落としてるんじゃねーか?」  Lekaが話に乗ってきたことに、Teruは喜びを感じる。少し笑みを浮かべて、こう諭す。 「確かにそういう側面はあるかもしれない。でもねLeka。まだ世界に地獄みたいな辛さが存在する限り、人は悪を内包しなければならない。世界の理不尽さに対抗するための、握りしめた一本のナイフみたいな悪さ。君の暗殺ギルドは、短剣をシンボルとして掲げていたね。スティレットだっけか。人間は誰でも、成長する過程で、イノセントな存在だった自ら、自らのイノセント性を破壊しなきゃいけない時が来るんだ。自ら自覚して罪を犯す。犯さなきゃならない時が必ず来る。そういう責任を引き受ける覚悟を示すことによって、大人になる……そんな過程でしか神の意に沿うことはできないらしい。でももしかしたらこの行為は神への反逆かもしれなくて……」  途端、Teruの体は前につんのめった。 「うわあっ!?」  Lekaめ! やったな! そう思う頃には、河の中へドボンだった。水飛沫が収まる前に、またドボン。二人分の水飛沫が、あたりに跳ねた。Teruは一瞬、ゴボゴボと水を飲みかけたが、信じられない力で水面に引き上げられ、肩を支えられた。 「レ、Leka! ゲホゲホ! あ、あ、頭おかしいんじゃないのか!? ベルゼ司祭もケンも死んだって時にこんなふざけて!」  Teruの目の前、向かいにLekaはいた。両手をTeruの脇に差し込んで、自分は立ち泳ぎで浮かんでいる。足がつかないから、泳ぎができないTeruとしては、ちょっとした恐怖だ。だが、こうしてLekaが支えてくれるとなると、結構安心で……。  ともかくTeruはLekaに怒りの視線を向ける。Teruは、Lekaの顔にイタズラっぽい笑みが浮かんでいて、自分を見て笑っているのを想像した。しかしそうではなかった。その顔は無表情だった。おかしい。絶対におかしい。Lekaの顔はずぶ濡れで、いつもはふわっとしたホワイトゴールドの髪も、ベッタリ顔に張り付いている。その下に、いつものLekaのイタズラっぽいニヤニヤ笑いは、その片鱗さえなかった。むしろ、涙が一瞬見えたような。 (Leka……そんなに、悲しんでるのか?)  いや、河の水だろう。Teruは思い直した。二人は、二人の幼馴染み同士の、恋人未満にして肉親以上の関係は、いつもぐるぐると、惑星と恒星のように、喧嘩する犬のように、火に引き寄せられても飛び込まない羽虫のように、永遠にくっつくことはなかった。  TeruはLekaの顔を見た。もしTeruがもう少し女慣れしていたら、絶対にキスしていただろう。そう断言できるくらい、今にも何かが溢れそうな、哀れみを誘う顔だった。しかしTeruがもう少しプレイボーイだったとしても、この取扱注意の幼馴染みの姉みたいな女性に、そんなことができたかどうか。Teruは、自分の胸で弾けるくらいに感じる愛おしさと、哀れみと、好きだという感情を、どうすることもできずにいた。赤い瞳と青い瞳が、反発するでも引き寄せあうでもなく、ジレンマを回避できるギリギリの距離で、見つめあった。  涙。  Teruは見た。間違いない。今度こそ、Lekaの顔に、河の水ではないものが一筋、新たに現れた。Teruの中で何かが決壊した。流石のTeruも、ここで慰められなかったら男じゃないと自分を叱咤した。Lekaの肩を引き寄せて、抱きしめて、もしかしたらキスを……。それで手を伸ばそうと力を込めた一瞬……反応されてしまった。Lekaは足すらつかないその河の水を蹴って、石積みの縁に飛び上がってしまった。 「ええ……」  その人間離れした力に、Teruは困惑すると、次の瞬間、Lekaの手で引き上げられて、釣り上げられた魚のように、通りに打ち上げられる。べちゃっという音がして、上等な羊毛の貴族の服が、大量に水を含んでいることがわかった。そして上げられるとき、襟を掴まれた一瞬、水の中に沈められて、Teruは少し河の水を飲んでしまった。 「ゲッホゲホぉ!」  むせるTeru。飲料水には適さないと魔法科学ギルドが言いつつも、庶民はいくらでも飲んでいる、衛生的にはまあ合格の水だった。Teruはやっとの思いで、這いつくばったままLekaを見上げる。 「ゲホ……あ、相変わらずというか……力増してない? 赤い瞳の……魔族の血、って……ゲホ! Tattionさんや、傭兵ギルドの闘技場に出るんだって、パレードしてる人たちにも、そういう人が、何人かいるけどさ……」 「うっせえ」  もうLekaの声色は、いつもの調子に戻っていた。LekaはTeruを引っ張って、近くの冒険者ギルドの交番に行った。哀れで間抜けなTeruが、河に落ちたのを助けたと言って、替えの服とタオルを借りた。  街の理不尽は、まだ容赦なく続いていく。住人たちは、暗殺ギルドという悪を、理不尽を切り裂くスティレットを、欲望のままに突き刺すスティレットを、手放さないだろう。……それが、どれだけ罪悪感で錆びつこうが、あるいは誇りで研ぎ澄まされようが。



あーしはスティレットだ!殺意すらオメーのものでなくていい!テル坊、いや、テルーライン・アルエイシス。あーしがオメーのモノになった日にゃあ、オメーは誰かを殺す気も起こさなくていい。あーしが、オメーが邪魔に思った瞬間、殺してやるからよ。
 何を……言って……

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter15:傭兵隊長Dura
Scene60
二人はDuraがJadwanのように反乱を考えていないか調査することを決める。そして街のギルド同士の争いについて愚痴を言う。ギルド同士は緊張関係があるから、なかなかこういう時に動けないと。Teruはあっけらかんとしたもので、自分たちが大人になるまでによくなる、責任はそれから背負えばいいと言う。TattionもLudvicも信用がおける大人だから、僕たちは安心して自由に動けばいいとも言った。Lekaは納得しないが、まだわだかまりを言語化もできない。LekaはTattionと相談し、Duraの身辺調査の許可を得る。GazboとChartreuseと協力し、その周辺を洗い出す。驚くべきことに、DuraはLilyと接触していた。危険なニオイを感じるLekaたち。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter15:傭兵隊長Dura
Scene61
Duraは獣人の孤児院を経営していた。そこで聖人のように振る舞い、獣人の身寄りのない子に施しをするのをLekaは見た。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter15:傭兵隊長Dura
Scene62
しかしLekaが怪しんで忍び込むと、そこには、大量の武器も秘匿されていた。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter15:傭兵隊長Dura
Scene63
Lekaは危険を犯して孤児院地下の武器庫でDuraに接近し、その真意を糺す。目撃者を消すとばかりに襲いかかるDuraだったが、流石に本気になったLekaは捉えきれない。Lekaは今度こそDuraを抑え込むことに成功する。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter15:傭兵隊長Dura
Scene64
妙な真似はするな、準備が進んでいるようだが、もう反乱の決行は無理だ。武器庫は閉鎖して魔法科学ギルドが武器を回収するだろう、と。そうLekaは釘を刺し、引き上げる。Tattionに見たものを報告し、Tattionはとりあえず話が大きいから手を引けとLekaに指示する。Tattionは、StavroにZicoを動かすと伝える。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter16:ファーストダイブ
Scene65
AishaのLiminal Dungeonへの初ダイブの日が来る。お祭りのような騒ぎになる。初ダイブはまさしくお祭りで、LekaとTeruは、おいしそうな果物や面白い雑貨を見つけては、わいわい言いながら選ぶ。まるでデートだが、この前のキスの件を意識して、なかなか関係はぎこちない。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter16:ファーストダイブ
Scene66
二人はこの機会にLilyが貧民への炊き出しをしている場面に出くわす。LekaとTeruとLilyはお祭りの楽しい雰囲気の中談笑するが、突然Lilyが泣き出してしまう。さっき獣人の子供がひどい扱いを受けるのを目撃したのだという。LilyはDuraとの関係を明かす。人間の中で唯一、権力と慈愛を併せ持つ人だと、LilyはDuraを評価した。複雑な気持ちになるLekaとTeru。まだDuraを信用できない。

Scene67
式典の会場である大時計塔の根本へ向かう途中で、Kinanに出会う。さっき、Lilyが獣人の子供が暴漢に暴行を受けたのを諌める場面に出会し、Lilyが危険な目に遭うのを止めたのだという。すぐにLilyの護衛の暗殺者が寄ってきて、Lilyが何者であるかを知った。Lilyについて本当に純粋で慈悲深い娘なんだと語るLekaに、Kinanは微笑ましそうに、Teruのこと以外でそんなに君が他人を褒めるところを初めて見たよ、と言った。LekaもTeruも驚き、なんだか照れ臭くなる。Kinanは、なんにせよ、獣人の味方をしてくれるものはみんな味方だ、と言って、自分の半獣人の耳を指した。Deraを思い出し、複雑な気分になるLekaとTeru。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter16:ファーストダイブ
Scene68
Leka、Teru、Ludvic、Kinanなどが見守る中、式典は進む。Aishaたち、獣人で構成される新しい冒険者パーティの準備が整う。緊張するAishaに、Kinanはここで引き返しても恥ではないと言う。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter16:ファーストダイブ
Scene69
まだよちよち歩きの冒険者見習いには、傭兵の護衛が同行する協定がある。これにより傭兵ギルドもLiminal Dungeon内部の権益に食い込み、利益を得ようという算段があった。しかし近年は傭兵ギルド側の拒否で実現していなかった。しかし今回ばかりは違った。Dura自身がLiminal Dungeon入りを土壇場で決めたのだ。流石に困ると何色を示すKinan。護衛の方が重要人物だなんてあり得ないと断るが、Duraはしつこく食い下がる。冒険者ギルドのスポンサーであるLudvicがゴーサインを出し、DuraとAisha一行はLiminal Dungeonに入る。内部では通常通り探索が行われる。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter16:ファーストダイブ
Scene70
まだLekaたちには正体不明にしか見えないZicoが動き、Liminal  Dungeonへのゲートを悟られずに通り抜ける。しかし魔法的知覚を持つKinanと超人的動体視力のLekaはそれを感知し、Kinanは特別命令でLekaに追跡を依頼する。初めてLiminal Dungeonに入るレカ。心配するTeruに、Ludvicは魔法科学ギルドの技術で作られたドローンを見せ、Lekaの後を追わせる。その映像をLudvicとTeruは見守った。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter17:時空異常空間
Scene71
Duraは探索を装い、Liminal Dungeonのある場所にAsiha一行を誘導する。そこにはJadwanが鎮座していた。Duraは密かにJadwanと通信し、ここに若き冒険者たちを連れてくる算段だったのだ。その場で獣人の冒険者たちを脅し、冒険者ギルドに潜り込むスパイに仕立てようとするDura。DuraはAishaに兄の死を語り、兄もまた獣人の反乱に加担しようとしていたと伝える。揺れ動くAisha。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter17:時空異常空間
Scene72
そこにZicoが突入してくる。明らかにDuraを狙っている。まだ回復しきらないJadwanは応戦できない。Duraは本気で抵抗するが、Zicoは強く、逃げきれそうにない。それをLekaが止めた。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter17:時空異常空間
Scene73
Lekaの考えは、とりあえずDuraを殺すことなく捕縛すること。Tattionは明確な意思を示さなかったが、Lekaに殺害を指示しなかった以上、ここで死なせたくはない。それがLekaの考えだった。Lekaは、彼女にとっては正体不明の敵であるZicoと戦う。その間に退避するDuraとAisha。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter17:時空異常空間
Scene74
Lekaは正体不明のZicoと戦ううち、理由のわからないフラッシュバックを感じる。Zicoの気配に、懐かしい感覚を覚える。戦いながらLiminal Dungeonから飛び出て、大時計塔を登って戦う。やがてZicoは時間切れになったように、貧民街の方へ消えた。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter18:帰還の後
Scene75
KinanとLekaとTeruはAishaを心配する。何かDuraに危険な目に遭わされなかったかと。Aishaは何も言わずに笑うだけだった。その手には、とある指示書が握られていた。Liminal  Dungeon内部の様子を見ていたTeruが、Lekaを心配してくれる。Zicoとの戦闘中に様子がおかしかったと。Lekaは不安を感じつつ、Teruのガレージで時間を過ごす。Teruはこの前のキスについて話題にするが、Lekaは自分が幸せになっていいのか、と疑問を示す。Teruはそんなことはないというが、Lekaは頑なだった。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter18:帰還の後
Scene76
TattionはZicoが娼館に帰還したことを確認し、Dura暗殺に失敗したことをどうすべきか考える。Liminal  Dungeon内部で殺すのが一番だったのだが、と。流石に他ギルドのトップを証拠が残る形で殺すわけにはいかなかったから。Ludvicと通信し、今後の対策を考えることにする。いつものTattionやLekaによる政敵の暗殺で、評議会の実権を握る算段を進めながら。

Volume3:傭兵隊長の慈悲
Chapter18:帰還の後
Scene77
LekaがTattionのもとに帰還する。TattionはZicoによるDura暗殺の失敗がLekaとの間の秘密主義に起因する連絡不足にあるとわかっているが、あえて気にしない。まだまだLekaをうまく使わなければならない。TattionはLekaの疲労に気がつき、Teruと街から出てバカンスに行くことを勧める。Lekaは喜ぶが、やはり街での自分の責任を思い出し、葛藤する。Tattionはそれを見て、Teruと新しい場所に行ったまま帰ってこないと言う選択肢は許されていると語る。驚くLeka。Tattionがそんなことを言うのも驚きだが、自分がその選択を想像しただけで、大きな喜びを感じたことがいちばんの驚きだった。迷いを見せるLekaに、TattionはGazboとChartreuseも連れていけばいいと伝える。いい考えだと思うLekaだったが、あの者たちは街でしか生きられないと思い直す。結局、Tattionの申し出は、Lekaに街で負わなければいけない責任を思い出させる結果になった。Tattionはそうやって、Lekaを精神的に巧みに縛っていた。


Volume4:冒険者の誇り
Chapter19:Kinanの思い出
Scene78
Lekaがまだ暗殺者として経験が浅い頃、一時期Kinanに懐いていた頃があったことをKinanは思い出す。KinanにはAishaとその兄という、家族同然の存在がいたが、Lekaは放っておけない子だった。暗殺ギルドの表には出せない仕事をしていることは知っていたが、何よりまずその境遇に彼は同情した。Tattionの話をLekaが辿々しく語るたび、Kinanは偽物の愛の腐臭を感じていた。しかし、どうすることもできなかった。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter20:永遠の別れ
Scene79
Aishaは何かを悩んでいたが、Kinanには話さない。KinanはAishaに、兄のことを話す。獣人と共にこの街の構造を覆そうとしていた彼のことを。もちろん、冒険者ギルドの公式見解では、暗殺ギルドに依頼して暗殺されたなど絶対に言えないのだが。Aishaは、Jadwanが闘技場で血の饗宴を開催した時、Gazboに殺されそうになったことを話す。Kinanは初耳で驚いた。JadwanとAishaの兄は協力関係のはずだった。しかし所詮彼にとって、人間はいつでも切り捨てられるのものなのか?と。Kinanは半獣人である。しかし彼は街を守る存在。街でクーデターを起こそうなんて考えられないと答える。Aishaは納得いかない。実はAishaは、エルフの母親から生まれた孤児なのだ。幼い頃から苦労し、実の兄のように慕う冒険者に拾われるまでの生活を思うと、街へは憎しみすらある。Aishaは決意する。Duraが言っていたクーデター計画が止められないなら、せめてKinanだけはそこから遠ざけると。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter20:永遠の別れ
Scene80
Kinanの出立式当日、彼はAishaに冒険者になることをやめるように願っていると伝える。才能ある者があまり長くLiminal Dungeonに入ることで、未知の力を呼び覚ましてしまう危険性を説くのだ。それはまだ魔法科学ギルドによって明らかにされていない研究成果だが、どうも「幸福のエネルギー」はLiminal Dungeonに入った個人に対しては悪影響を与えるらしい。Kinanの仲間も、これで発狂したとのことだ。Kinanは長年の経験から、、Aishaにその兆候を読み取っていた。しかしKinanは心配させまいと全ては伝えなかった。ただ単に夢を諦めろと伝えられたAishaは、納得できずに激しく動揺し、裏切りだと叫んで取り乱し、他の冒険者に取り押さえられてしまう。Lekaが訓練所の共感をしたよしみでAishaの身柄を預かると言って、Aishaは解放される。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter20:永遠の別れ
Scene81
Lekaに諭され、なんとか感情を抑える。そしてAishaは兄との約束について語り始めるのだが、その兄こそがLekaに暗殺された人物だったのだ。Lekaは身近な人物に自分への復讐の権利があることに呆然とする。動揺するLekaの隙をついて、Aishaは姿をくらます。暗殺者であるLekaから逃れるなど尋常なことではない。すでにAishaは、Liminal Dungeonに満ちる「幸福のエネルギー」に侵され、Lekaに匹敵するほどの素早さを手に入れていたのだ。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter20:永遠の別れ
Scene82
式典が進む。しかしKinanがLiminal Dungeonに入った瞬間、突如ゲートが閉じられ、彼は仲間と引き離されてしまう。Aishaの裏切りのせいだ。彼女は人目を盗み、Liminal Dungeonへのゲートポータルに細工をしたのだ。これでKinanはこのクーデターから隔離され、安全になるということだ。傭兵ギルドの長、傭兵隊長DuraがKinanの仲間を銃殺する。そこへ傭兵ギルドの傭兵が大挙して乱入し、大反乱を起こし、式典は大混乱に陥る。クーデター発生だった。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter21:反乱と召喚
Scene83
反乱に加担した傭兵たちは、次々と街の権力者たちを暗殺していく。Ludvicは最新の魔導機械鎧を身にまとい、反乱軍と戦うが、傭兵の手によって盗まれた召喚魔術が発動され、Liminal Dungeonから復活したJadwanが姿を現す。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter21:反乱と召喚
Scene84
Jadwanの登場で流石にLudvicも撤退を検討する。反乱のリーダー傭兵隊長DuraはLudvicに敗れるも、Jadwanにその夢を託す。Duraはかつて獣人に恋をし、貴族を追われた過去があった。傭兵になったのも、殺された獣人の恋人の仇をとり、人間と獣人の地位を逆転させる計画のためだった。JadwanはDuraの思いを聞かされていたが、彼の人間への憎しみは純粋だった。人間との共闘を拒み、瀕死のDuraを葬り去ると、獣人だけの街を建設することを宣言する。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter21:反乱と召喚
Scene85
LekaはAishaとともに事態の収拾に乗り出すが、召喚魔術でJadwanが呼び出された時、その影響で一瞬だけYoth-Gorhが顕現していた。その強い魔力に反応し、「幸福のエネルギー」によって記憶が混線してしまう。LekaにはAishaとその兄の記憶が、AishaにはLekaが兄を殺害した記憶が流入する。それからJadwanの出現の情報とその憎しみの大きさも。「幸福のエネルギー」を含む魔法的なエネルギーが、密かに魔法的な才能が大きい人々の精神の中でネットワークを形成しているせいだ。今、JadwanとLekaとAishaの間でそれが活性化したのだ。混乱の中、二人は戦闘状態に突入してしまう。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter21:反乱と召喚
Scene86
LekaとAishaの悲しき戦い。それは罪悪感と憎しみのぶつかり合いになる。二人は泣きながら殺し合う。Aishaは今し方覚醒したばかりの超人的身体能力を存分に振るう。Lekaはその罪悪感から防戦一方だ。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter21:反乱と召喚
Scene87
決着がつかぬまま、傭兵たちの放火によって貧民街に火の手が上がる。そこへ偶然居合わせたGazboとChartreuseがLekaとAishaの戦いを目撃する。Aishaへの攻撃をためらうLekaをGazboが叱咤し、Chartreuseの毒によってAishaをいったん退ける。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter21:反乱と召喚
Scene88
LekaからJadwanの復活まで聞き、状況を把握したGazboは、街が危機に瀕していることを理解する。ショックで無気力になったLekaに喝を入れると、自分の計画をLekaに話す。要は、自分が執着する好敵手、Jadwanを倒せばいいのだと。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter22:地獄からの呼び声
Scene89
街の反乱を鎮圧すべく、TattionはZicoを再び呼び覚ます。Zicoは普段、娼館のエルフが世話をしている。Zicoの母親である。火がつきつつある娼館を訪れるTattion。囚われのエルフちZicoの親子は逃げる術もなく、Tattionが来た時は助けに来たのだと喜んだが、そうではなかった。その際、Tattionは、普段は隠している残虐な一面を覗かせる。もはや用済みとばかりにエルフの母親を殺したのだ。それはまだLekaたちの知るところとはならないが……。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter22:地獄からの呼び声
Scene90
TattionはZico連れ出し、煙が充満し始めた娼館を後にする。そしてZicoに、Gazboの血を与え、その兄であるJadwanを追跡させる。Zicoは血に反応し、その匂いを追い、まるで殺戮兵器と化して暴れ出す。その体からはどんどん触手が伸び始め、最後には怪物のようになる。ZicoはChartreuseの触手を埋め込まれて改造された殺戮マシーンだったのだ。バウンドする砲弾のように、Zicoは街を破壊しながらJadwanのいる大時計塔の麓へ向かった。Tattionは焼け落ちる娼館を背に、その場を後にする。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter22:地獄からの呼び声
Scene91
Ludvicは魔導鎧を纏い、Jadwanと死闘を繰り広げるが、徐々にJadwanに押され気味だ。ついに鎧は破壊され、Ludvicは危機に陥る。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter22:地獄からの呼び声
Scene92
そこへGazboが貧民を率いて駆けつけ、Jadwanこそがこの街の真の王だと喧伝、信仰対象を求める貧民を焚き付けて騒ぎを起こさせる。隙ができたJadwanにLekaとChartreuseが奇襲をかけるが、突如乱入したZicoによって中断されてしまう。Ludvicは脱出し、反撃の準備のために撤退する。

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Chapter22:地獄からの呼び声
Scene93
Zicoの凄まじいパワーは残されたLudvicの鎧をも破壊し、Jadwanにも傷を負わせる。Lekaたちにも襲いかかり、Gazboは瀕死の重傷を負ってしまう。ChartreuseはZicoから自分の同類のニオイを感じる。

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Chapter22:地獄からの呼び声
Scene94
Leka、Jadwan、Zicoの三つ巴の戦い。Chartreuseはもう逃げるつもりだった。しかしいつもならそうしていたはずが、どうしても離れられない。Zicoは触手の化け物で……間違いなく自分と同じニオイを感じる。Chartreuseは困惑するしかないが、夢にまで見た自分の子供を幻視する。

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Chapter23:英雄の死
Scene95
Zicoの暴れようは想像以上で、街はどんどん崩壊していく。なんとか自力でLiminal Dungeonから脱出したKinanは、崩壊しつつある街を見て危機感を覚える。負傷したLekaを庇って、ZicoとJadwanの戦いに巻き込まれ、重傷を負ってしまう。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter23:英雄の死
Scene96
街が被るあまりのダメージを憂慮したKinanは、自らの命と引き換えにLiminal  Dungeonに働きかけ、LekaもZicoもJadwanも、今街を脅かしている存在全てをLiminal Dungeonへと追放する。

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Chapter23:英雄の死
Scene97
Lekaは気がつくと、そこは不思議な静寂に包まれた楽園のような空間で、中心には民家があった。人間の状態に戻ったZicoが招くのに応じ、Lekaはそこに入る。そこにはSakuraという女性がいた。その空間は「幸福のエネルギー」の安定した本来の力によって、あらゆる闘争心を鎮めるのだという。Jadwanも、今までの獰猛さが嘘のように紳士的に振る舞っている。びっくりするが、Lekaもその影響を受け、LekaはZicoやJadwanと対話を試みるが、まだ深い話し合いには至らない。Zicoと仲良くなったChartreuseは、自分の娘ができたかのように喜ぶ。

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Chapter24:街の惨状
Scene98
いったんLekaだけがLiminal Dungeonから戻ると、Lekaの体感に反して、一ヶ月の時間が経っていた。Liminal Dungeon内では時間の進みが歪むためだ。街は壊滅状態のまま復興していない。LekaはTeruと出会い、今までどこへ行っていたんだ、と驚かれる。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter24:街の惨状
Scene99
一ヶ月間復興と街の混乱の収集に尽力していたTeruから事の顛末を聞かされ、ギルドに属さない革命勢力が台頭していること、そしてその勢力がGazboとChartreuseの討伐に懸賞金をかけていることを知る。GazboはJadwanと見た目がそっくりだから、ChartreuseはZicoと同じ触手の化け物として取り違えられたから。Lekaはあまりの事態に整理が追いつかない。とにかく、街の中で影響力を増した暗殺ギルドへ行こうとTeruは提案した。

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Chapter24:街の惨状
Scene100
Lekaを心配していたTattionは彼女を優しく迎える。しかしその言葉にLekaはショックを受ける。真実はどうでもいいから、とりあえず革命議会の勢いを抑えるためにGazboとChartreuseを討伐しろと命令したのだ。Lekaは揺れ動く。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter24:街の惨状
Scene101
Lekaは忙しそうなTeruに迷惑をかけないように、心を許せる相手と触れ合いたいという欲求をグッと抑える。街の復旧のために後回しになり、Lilyの救貧院に一旦埋葬されたKinanの墓に行く。救貧院は、貧民街の火事の避難所として、なんとか焼け残っていた。自分の秘密であるTattionとの関係を知っている人が、ひとりいなくなってしまった寂しさ。Lilyとこの街の英雄について話をする。Lilyは、Kinanのようにはなれないかもしれないが、私たちのお父さんのTattionのようにはなれるかもしれないと言った。Lekaは一瞬意味がわからなかったが、すぐに気づく。Lilyが異母姉妹であることを知っていることに。驚いてLilyにただすと、Kinanから手紙が来ていたのだという。君の姉のLekaが心配だから頼む、と。LekaはKinanのおせっかいを思って笑った。Kinanのやつ、人の家の事情も知らないで、と。LilyはLekaを抱きしめてくれる。よろしくね、お姉さん、と。Lekaは初めてTattion以外と家族の交わりを結ぶことができ、思わず涙した。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter25:Sakuraの意思
Scene102
LekaとTeruはKinanの犠牲を胸に、荒廃した街を立て直すことを誓う。一部が崩壊した屋敷で、LekaとTeruはTattionとLudvicの手記を見つける。Sakuraが書いたものだった。そこには50年前のTattionと勇者Yusufとの冒険が書いてあった。冒険の後、TattionはYoth-Gorhに世界の真実を知らされ絶望し、次第に亜人種狩りに手を染めていくようになったことも。その後の、SakuraがLiminal DungeonとParakronosを行き来する間に見聞きしたと思しき、LudvicとTattionの複雑な友情が書いてあった。二人は協力し合いながら、暗殺と技術革新でこの街を理想的な形に発展させてきたのだと。しかしそれも限界らしい。世界の改変の可能性について触れ、手記は終わっている。それをTattionに渡そうとLekaが持ち去る直前、Teruはその手記の裏に秘密の書き込みがあるのを見つける。そこには、「お願い、誰かTattionを止めて」と書いてあった。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter25:Sakuraの意思
Scene103
手記を改めて調べると、そこにはTattionの身勝手な計画について記されてあった。暗殺ギルドという存在自体、忌むべきものだ。ギルド同士の緊張関係のバランサーとしての役割さえなければ、あるいは法が裁けない悪人さえいなければ、本来あってはならないもののはず。しかしTattionは、今の街の現状を肯定し、暗殺ギルドの永続を願っていたのだ。LekaとTeruは初めてTattionを脅威に感じ始める。大人たちだけに任せてはいけない。自分たちで責任を負わねば。LekaとTeruは、彼らを苦しめてきたギルドの不条理に立ち向かい、皆が自由に生きられる社会を作ることを決意するのだった。

Volume4:冒険者の誇り
Chapter25:Sakuraの意思
Scene104
一方、革命勢力に追われ、Yoth-Gorhの声に導かれ、Liminal Dungeonに逃げ込むまだ傷の癒えないGazboと、Zicoという心の拠り所ができたChartreuse。しかし、新たな脅威は確実に迫っていた。



Volume5:世界の真実
Chapter26:異世界人
Scene105
異世界の技術を持つ謎の集団がLiminal Dungeonを探索していた。彼らの目的は明らかにされない。彼らの装備は、LekaやTeruの世界よりも遥かに進んだ技術で作られている。彼らはダンジョンの調査を終えると、金属に覆われた世界へと帰還する。そこには、Jadwanが実験体として囚われていた。ヘルメットを脱ぐと、彼らの姿はGazboとChartreuseによく似ていた。平行世界の住人であることが示唆される。

Volume5:世界の真実
Chapter27:新たな秩序
Scene106
Parakronosでは、Kinanの死後、新生評議会が発足。獣人や貧民の代表者も参加し、民主的な体制への移行が図られている。暗殺ギルドとLudvicの権力が強まる一方、傭兵ギルドと冒険者ギルドは弱体化している。Ludvicが実質的な主導権を握り、暗殺ギルドとの合併を進めようとする。Teruは融和政策を訴えるが、受け入れられない。

Volume5:世界の真実
Chapter27:新たな秩序
Scene107
Ludvicの策略により、LekaとTeruは新組織の運営に携わることになる。首輪をつける意図がある、とTeruは言った。Lekaは自分たちが警戒されていることに緊張する。

Volume5:世界の真実
Chapter27:新たな秩序
Scene108
一方でTattionは、Parakronosの大時計塔の彼だけが知る秘密を使い、世界を自分の思い通りに変えようと企んでいた。Yoth-Gorhは決して誰か一人の味方をしたりしない。Tattionの意思も聞いていた。Tattionは、かつてLudvicと、この街の運命は二人で決めるのだと誓ったことを思い出す。その時に誓いの証として渡した魔法のアーティファクトアイテム,
Marionette Idiotesを取り戻し、手に入れることを画策する。しかしその背後をLudvicのドローンが追っていた。

Volume5:世界の真実
Chapter27:新たな秩序
Scene109
ドローンで異変を察知したLudvicは、Tattionの監視を始める。そんな中、Liminal Dungeonへのゲート前広場で異世界の勢力と自警団との交戦が発生する。

Volume5:世界の真実
Chapter27:新たな秩序
Scene110
異常事態を受け、革命議会と評議会が合同で緊急事態宣言を発し、Liminal Dungeon内部の調査が決定される。各ギルドからメンバーが選出される。暗殺ギルドはその権力を誇示するため、TattionによってLekaとStavroを出動させることが決定される。TeruもLudvicの作ったアーマーを着込み、参加を表明する。Aishaが嗅ぎつけ、Liminal DungeonへLekaを追いかけ、仕留めることにする。

Volume5:世界の真実
Chapter28:隠された真実
Scene111
真相を探るためのLiminal Dungeonへの探索。Leka、Teru、Stavroらが行く。今ここであれば誰にも絶対に盗聴されないと、Lekaは一か八か、Stavroを仲間に引き込もうとする。しかしStavroはとりつく島もない。Tattionの野望など、どうせ成就しない、あの老人には好きにさせておけ、と。予想外の反応だった。LekaとTeruは落胆する。Stavroは、Tattionの残酷さと、周りから見える姿とは対照的な矮小さを示すエピソードを語る。そしてLekaに、いい加減親離れするべきだと説く。Lekaはその言葉を重く受け止める。対立だけが親離れの方法だと勘違いするのは、子供っぽいことだとStavroは続ける。Teruもその言葉を考える。

Volume5:世界の真実
Chapter28:隠された真実
Scene112
そうしていると、敵襲がある。異世界の技術を持つ勢力と交戦。Stavroは必死に戦うが、装備が違いすぎて苦戦する。やがてStavroとLekaとTeruは逸れてしまう。

Volume5:世界の真実
Chapter28:隠された真実
Scene113
LekaとTeruは孤立し、兄の仇討ちを誓うAishaと対峙する。Teruの必死の説得も耳を貸さず、Lekaを殺すと宣言するAisha。TeruはLekaの背負った罪や責任の結果を目の当たりにして、ショックを受ける。

Volume5:世界の真実
Chapter28:隠された真実
Scene114
争っているうち、Teru、Leka、Aishaの三人は、Sakuraの庭に迷い込む。そこでは争いが鎮静化され、和解への糸口が見えてくる。料理を用意したSakuraと、すっかり穏やかになったZicoに迎えられる。ChartreuseはGazboと一緒に出て行ったとも聞く。どこへかはSakuraもわからないらしい。

Volume5:世界の真実
Chapter28:隠された真実
Scene115
AishaとZicoとの対話の中で、LekaはZicoとの過去を思い出す。Zicoもまた、Tattionに酷薄な仕打ちを受けてきた被害者だった。Lekaは先ほどのStavroとの会話も思い出す。Tattionに、縛られすぎているのかもしれないとLekaは思った。

Volume5:世界の真実
Chapter28:隠された真実
Scene116
Teruを交えた穏やかな会話は、やがてYoth-Gorhの関心を引く。Yoth-Gorhは、50年前のTattionとの邂逅を語り、彼の二面性について言及する。

Volume5:世界の真実
Chapter28:隠された真実
Scene117
LekaとAishaの和解が深まる中、異世界の未来人の特殊部隊が襲来し、争いを鎮静化させる魔法を中和する。そしてそれが無効化されるまでの少ない時間で、Lekaたちは異世界の勢力との対話の機会を得る。未来人がヘルメットを取ると、その顔はGazboとChartreuseそっくりだった。しかしそこでわかった真実は、数少ない「幸福のエネルギー」は全ての平行世界で共有されており、異世界同士はそれを奪い合う関係にあるということだった。争いは不可避であることがわかった以上、戦いあるのみだとLekaは結論する。Teruは平和の可能性を模索する。Aishaはその場に残り、精神を治癒することを選ぶ。争いを鎮静化させる効果が切れ、異世界の未来人が銃を向ける。Zicoが戦闘モードに入り触手を生やし、未来人たちを押し留め、その隙にLekaとTeruは脱出する。

Volume5:世界の真実
Chapter28:隠された真実
Scene118
Liminal  Dungeonからの脱出路で、Yoth-Gohrは、全ての平行世界が「幸福のエネルギー」を奪い合っていることについてより詳しく教えてくれる。Lekaは戦いを選び、Teruは平和を模索する。そして、Yoth-Gorhから街の秩序回復への協力を申し出られる。LekaはTeruと共に、Yoth-Gorhとの同盟を選ぶ。

Volume5:世界の真実
Chapter29:革命の兆し
Scene119
Lekaが街に戻ると、状況はさらに悪化していた。獣人や亜人種のストライキ、革命議会の台頭など、暗殺ギルドへの反発が高まっている。政治の中心となった暗殺ギルドは、Stavroが怪我をして戻ったせいで人手が足りず、混乱に対処しきれていない。LekaとTeruは少しの間、呆然と混沌と貸した街を見ていたが、二人で協力してこの危機を乗り越えると決心した。

Volume5:世界の真実
Chapter29:革命の兆し
Scene120
LekaとTeruは市民軍を率いて暴動の鎮圧に駆り出されるが、食糧危機でお腹を空かせた貧民の暴動で、Lekaは手を出すことを躊躇する。Tattionの命じる過剰な武力行使に疑問を感じ、明確に反発の意思を示す。しかしいくらTattionに反発できても、目の前の暴動はおさまらない。Yoth-Gorhの助言も虚しく、LekaもTeruも市民軍の発砲を抑えられず、暴動参加者の貧民の血に塗れ、傷つき、打ちひしがれる。

Volume5:世界の真実
Chapter29:革命の兆し
Scene121
暗殺ギルドの屋敷に戻ったLekaは、Tattionと会話する。異世界勢力と戦闘した際のStavroの怪我は回復に向かっているようで、それは良かった。Tattionは白々しいくらいに優しくLekaを迎えてくれる。それは懐柔策であるともLekaにはわかったが、どうしようもない。今Tattionの権力の下から逃れてTeruとだけで街をおさめることなんかできない。無力感に涙するLekaを、Tattionは抱きしめる。

Volume5:世界の真実
Chapter29:革命の兆し
Scene122
LekaとTeru、Ludvicの三者会談が行われる。Ludvicは、Stavroによって異世界から持ち帰られた死体の解剖結果を示し、平行世界の存在を確信したと語る。そして、全ての世界を統べて街に不可侵の平和をもたらす計画に現実味が出てきたと話す。そのため、LekaとTeruの力を借りたいと持ちかける。躊躇するLeka。Teruが全責任を負うと宣言し、ここはいったん保留となる。

Volume5:世界の真実
Chapter29:革命の兆し
Scene123
そして追われる身のGazboとChartreuseとLekaが接触。LekaはChartreuseに対し、あのままSakuraの家にいた方が幸せだったのではないか? と訊ねる。しかし彼女は否定する。自尊心は、幸せの中にはないと、Chartreuseは言った。Gazboも、自分らしく、自由に振る舞えない場所に止まる気はないと言った。意外な驚きに包まれるLekaに対して、GazboとChartreuseは自分たちの人生を吐露する。そして、この街におけるその人生の意味を問う。Lekaは答えられない。だが必ずGazboとChartreuseを守り、街を人生に意義を感じさせる場所にすると約束する。GazboとChartreuseはそれを信じ、またいったん身をLiminal Dungeonへ潜めた。

Volume5:世界の真実
Chapter29:革命の兆し
Scene124
街の混乱が極限に達し、暗殺ギルドのメンバーにも動揺が広がる。そんな中、ついに異世界の未来人の軍勢による襲撃がある。未来技術をフルに投入してきた敵勢力に、ほとんど抵抗できないParakronosの防衛勢力。Ludvicの技術で作った機械でさえ、効果はあるにせよ数で圧倒される。そんな中、Yoth-Gorhがその強大な力を解放し、強大な魔法で街の一部ごと未来勢力を消し飛ばす。Yoth-Gorhが単独でそんな判断をするはずはないと訝しむLekaとTeru。Tattionの居場所は不気味なほどに不明だ。それでも未来人勢力は一掃できなかった。

Volume5:世界の真実
Chapter29:革命の兆し
Scene125
危機に陥る街に、LekaとTeruはLiminal Dungeonでの会話をヒントに弱点をつく。こちらの世界のGazboとChartreuseをぶつけて、異世界のGazboとChartreuseを「上書き」したのだ。こうして異世界勢力のリーダーを消滅に至らしめたLekaとTeruだった。

Volume5:世界の真実
Chapter29:革命の兆し
Scene126
しかしその瞬間、TattionがYoth-Gorhの力を使ったポータルから出現し、GazboとChartreuseを抹殺しようとする。革命勢力にその死体を渡し、全ての混乱の元凶だとして事態の収集を計るつもりだった。しかしGazboとChartreuseは未来装備でワープして逃げ仰る。

Volume5:世界の真実
Chapter30:運命の分岐点
Scene127
TattionがYoth-Gohrと接触し、その力を借りていたことを知り、驚くLekaとTeru。Yoth-Gorhになぜそのことを教えてくれないのかと通信で伝えると、彼は自分の力は全ての人間が自由に行使していいのだと言った。特に、人間の邪悪な意思を具現化したアーティファクト、Stiletto la rebelleを持つTattionの意向が最優先だという。意志を持たない存在の根本的な信用ならなさにショックを受けるLekaとTeru。TattionがGazboとChartreuseを殺そうとしたことにショックを隠せないLeka。Tattionの差別的言動に怒りに我を忘れ、LekaはTattionに襲い掛かり激しい戦闘になる。技の応酬も虚しく、圧倒的な力量差の前に敗れ去り、再び服従を誓わされる。しかしその時革命勢力が襲いかかってきた。

Volume5:世界の真実
Chapter30:運命の分岐点
Scene128
Ludvicが革命勢力を扇動し、暗殺ギルドを追い詰めたのだ。窮地に立たされたTattionは、Ludvicとの同盟を選ぶ。二人は新秩序樹立のため手を組むが、Teruはそれに反発する。真実は、これは出来レースであり、ギルドの勢力から権力を穏便に革命勢力に移譲し、LudvicとTattionはその実権を握るつもりだったのだ。手土産のGazboとChartreuseの死体がないのは残念だったが……。Yoth-Gorhがそう教えてくれた。先ほどまでTattionに支配下にいたYoth-Gorhだったが、TattionがアーティファクトのStiletto la rebelleを使用していない間はTeruとLekaに協力するのは間違いないらしい。TeruはYoth-Gorhに願ってポータルを開けてもらい、LekaとともにLiminal Dungeonへ逃げ込む。革命の嵐に包まれる街を背に、二人は新たな決意を固める。

Volume5:世界の真実
Chapter30:運命の分岐点
Scene129
Liminal Dungeonで、LekaとTeruは互いの過去に対する本当の思いと真意を打ち明ける。Lekaは、本当は父であるTattionを恨んでいることを認める。しかしそうであってもその力から逃れられない無力さ、情けなさも含め、Lekaは涙する。Tattionによって抑圧されていた自分の本心に向き合う辛さを感じるLekaを、Teruは優しく抱きしめた。

Volume5:世界の真実
Chapter30:運命の分岐点
Scene130
そこにYoth-Gorhが現れ、過去の映像を見せてくれる。いや、一見過去に見えたそれは、未来のようにも見えた。いや違う。これは平行世界の映像だ。平行世界では、TattionもLudvicもLekaもTeruも、あるいは死んで覚えていないはずの彼らの母親も生きていて、みんな穏やかに暮らしていた。Yoth-Gorhは語る。無限に存在する平行世界にも、「幸せのエネルギー」の偏在によってその世界の幸福度に違いがあり、Lekaたちのいる世界線は、だいぶ辺境の方で、より「幸せのエネルギー」が多い異世界と比べれば、不幸なのは当然なのだと。絶望的な真実に、Lekaは呆然とし、Teruは怒りを顕にする。Yoth-Gorhは語る。これがTattionを絶望させた真実であり、彼から話を聞いたLudvicが、必死に目指す改善すべき現状なのだと。

Volume5:世界の真実
Chapter30:運命の分岐点
Scene131
最後にYoth-GorhはGazboとChartreuseを保護していることを伝え、世界の真相と、二人が進むべき道を示唆する。世界をLekaとTeruが望むように変えるため、Tattionの絶望に基づく野望を阻止し、Ludvicの真意も確かめること。それが二人に託された使命だと悟る。

Chapter31:運命への抵抗

Volume5:世界の真実
Chapter31:運命への抵抗
Scene132
再びParakronosに舞い戻ったLekaとTeru。また一ヶ月以上の時間が経っていた。そこで目にしたのは、革命議会が支配するParakronosの惨状。公然のものとなった不正義の暗殺と、粛清に明け暮れる混沌とした街の姿だった。Ludvicの未来異世界の技術を取り込んだ機械部隊と、Tattionが率いるStavroの暗殺部隊、そして革命議会の市民軍が手を組んだ中で、ふたりはどうにかYoth-Gorhから聞いた重要な二つのアーティファクトを入手し、世界を望む方向へ改変しなければならないと悟る。そう遠くない未来にやってくる戦いの予感に、LekaとTeruは身を震わせるのだった。


Volume6:真実の狭間で  
Chapter32: 過去と未来の交錯
Scene133
50年前の勇者たちとの旅が語られる。16歳のTattionは、異世界からやってきたSakuraとの愛情の面で勇者Yusufに嫉妬し、その二面性の根っこになる歪みをここで生じさせる。Yoth-Gorhと最終的に出会ったYusufはYoth-Gorhと和解し、平行世界構造の強固さと理不尽さに憤りを共有する。しかしこの時点ではどうしようもない。TattionはYusufからMarrionette IdiotesとStiletto la rebelleという二つのアイテムを託される。Yusufは世界を救うため命を落とす。彼は事前にYoth-Gorhに依頼し、自分の遺体を月に埋めてくれるようにいう。MarrionetteとStilettoの秘密に迫る伏線が張られる。

Volume6:真実の狭間で  
Chapter32: 過去と未来の交錯
Scene134
 未来人に捕まっているJadwan は、平行世界の自分と議論する。その世界線では、人類と獣人の対立はとっくの昔の歴史に過ぎず、科学者である異世界のJadwanは、Lekaたちの世界線のJadwanのいうことをくだらないと言い切った。本気で怒るJadwan。

Volume6:真実の狭間で  
Chapter33:新たな絆
Scene135
革命政府となった評議会で、LudvicとTattionが市民と議論する。世界改変の前段階として、この世界をそのまま都合よく維持するのに、まずは足場固めである。復興もしなければならない。LudvicとTattionは議会が自分の思い通りに操縦できていることに満足する。そして水面下で、Marrionette IdiotesとStiletto la rebelleをそれぞれ隠し持つ二人は、お互いの理想とする世界のあり方を探り、妥協点を模索する。

Volume6:真実の狭間で  
Chapter33:新たな絆
Scene136
面従腹背をして、お互いの屋敷で革命議会の手伝いをしていたLekaとTeruだが、突然市民軍によって軟禁されることに。街の体制が完全に固まり動かせなくなるまで、もしくは、GazboとChartreuseの処刑が完了するまで動けないらしい。LekaとTeruはそれぞれYoth-Gorhに呼びかけるが、Stiletto la rebelleを使うTattionに支配されているのか、応答がなかった。

Volume6:真実の狭間で  
Chapter33:新たな絆
Scene137
何も進展がないまま、LekaとTeruは、Yoth-Gorhを通じた通信だけができる状態に置かれる。二人はそれぞれの屋敷から出られないまま、「責任」と「自由」をめぐる議論を重ねる。二人の価値観の違いが浮き彫りになる。二人は軟禁状態のストレスから情緒不安定になる。幸福の未来を見通せなくなり、喧嘩になる。二人の仲が決定的に崩れる前に、ずっとYoth-Gorhが介入し、屋敷の中に開いたLiminal Dungeonへの簡易ポータルから二人を逃す。

Volume6:真実の狭間で
Chapter33:新たな絆
Scene138
Liminal Dungeon内で、LekaとTeruは再び口論になるが、掴み合いに喧嘩にまで発展し、もつれあって倒れ込む。LekaもTeruも、ハードでシリアスな状況で参っていた。このままSakuraの家でも、Liminal Dungeonの安全な場所で一緒に暮らせたらどんなにか楽だろうと思う。責任も何もかも放棄して。Yoth-Gorhが、その意思を本気で願うなら尊重する、Tattionや Ludvicがどれだけ世界を改変しても、永遠に安定した住居をLiminal Dungeon内部に作り出すと言ってくれる。LekaとTeruは久々に笑い合う。そうではないと、二人は見つめあって意思を伝え合う。

Volume6:真実の狭間で
Chapter33:新たな絆
Scene139
そんな中、未来人からの新たな脅威が迫る。彼らは街の中心の大時計塔を標的にする。それ自体が魔法のアーティファクトで、Liminal Dungeonの入り口であるそれを破壊することが目的だ。そうすることでこの世界から永遠に平行世界への干渉能力を取り上げるつもりなのだ。月面基地からの攻撃が予想されると、Yoth-GorhがLekaとTeru、それからTattionなど、彼とリンクしている全てに魔法適性が高い才能あるものに呼びかける。未来人勢力に囚われていたJadwanも密かにそれを聞いていた。そのことを異世界のJadwanに伝えると、作戦計画の漏れが起こっていると勘違いし、未来人勢力はパニックになる。その隙をつき、Jadwanは研究施設から逃げ、Yoth-Gorhの力を借りてLiminal Dungeonへ入る。

Volume6:真実の狭間で
Chapter34:過去との対峙
Scene140
LekaとTeruはLiminal Dungeonの中で作戦を練る。月からの攻撃なんかどうやって防ぐんだ? と。そこへJadwanが現れる。戦闘になるかと身構えるTeruとLekaだが、Jadwanはとりあえず急戦を申し入れ、未来人勢力の攻撃を防ぐことを考えようという。彼もまた、Parakronosの街の支配権を欲する身。大時計塔ごと街を滅ぼされては困るのだ。

Volume6:真実の狭間で
Chapter34:過去との対峙
Scene141
LekaとTeruとJadwanは休息を求め、Sakuraの家に行く。そこでGazboとChartreuseがすっかり穏やかになってるのを見た。これもこれでいいものだと二人は言う。責任からも罪からも完全に切り離された生活に、LekaとTeruは理想を見る。GazboとJadwanは、過去の人間からに差別と虐待の辛さを思い出し、初めて素直に共有しあって涙する。LekaもTeruもそれを見て穏やかな気持ちになる。しかし、今はまだ、TeruもLekaも責任から逃げるつもりはない。そうすればプライドを手に入れることはできないから。GazboとChartreuseが本当に求めるもの、それは幸福ではなくプライド。その事実を胸に、Jadwanを協力者としてParakronosの街へと戻る。

Volume6:真実の狭間で
Chapter34:過去との対峙
Scene142
TeruとLekaはLudvicの屋敷へと、Yoth-Gorhのポータルの力で運んでもらう。Jadwanは獣人たちの区画へポータルを開いてもらった。Teruは父Ludvicとの対話の中で、彼の真の目的を知る。この世界を平行世界の「幸福のエネルギー」の奪い合いでトップに踊り出させ、この世界の苦悩を取り去り、尚且つ他の世界を導くことで、平行世界全体の幸福の量を底上げしようというのだ。たまたま大時計塔のLiminal Dungeonというチャンスが、Yoth-Gorhからもたらされた以上、そうすることが自分たちの責任なのだと説く。少なくともTattionの世界を都合よく変えるだけの計画よりはいいと判断し、LekaとTeruは、Ludvicに賛同し、自己中心的な世界改変を望むTattionに対抗することを決意する。

Volume6:真実の狭間で
Chapter35: 革命の炎
Scene143
Jadwanが獣人たちを従え、街を支配する革命議会に反旗をひるがえす。Jadwanを新たな王と信じる貧民中心の革命勢力一派が反逆、蜂起し、TattionとLudvicの失政を訴えて民衆の支持を得ようとする。

Volume6:真実の狭間で
Chapter35: 革命の炎
Scene144
混乱をよそに、未来人からの攻撃が迫る。彼らは月面に召喚して設置したマスドライバーを使い、街の中心部である大時計塔へ最大の威力の攻撃をしようとする。異世界のJadwanがスイッチを押すが、しかしYusufの遺体がノイズになって、攻撃はそれて街の近海の海上に着弾し、失敗する。あまりに大きな水飛沫に、港は高波で洗われ、混乱する街はパニックになる。

Volume6:真実の狭間で
Chapter35: 革命の炎
Scene145
未来人勢力は、マスドライバーの攻撃を修正するため、改造したJadwanの放つ信号を利用する。Jadwanは指令を受け取ると、Sakuraの家でGazboと話した内容を思い出した。Jadwanは自分を慕って集まってくれた同胞を見る。あれほどの、高波が起こるほどの水飛沫。人間は憎いが、この仲間たちまで死なせるわけにはいかないと考えた。Jadwanは決意する。Yoth-Gorhに、ある頼みをした。しかしその瞬間、遠隔操作で体の自由が奪われ、Jadwanは大時計塔の外壁を駆け上る。未来人たちは間違いなくここに命中させるつもりだ。ビーコンは、Jadwanだ。

Volume6:真実の狭間で
Chapter36:絆の力
Scene146
LekaはTeruと合流し、Jadwanの居場所を突き止める。大時計塔のてっぺんまで外壁を伝って駆け上がるLeka。Jadwanに相対することに成功するが、意思を奪われ、力が増したJadwanに追い詰められる。絶体絶命のピンチの中、Liminal  DungeonからGazboとChartreuseが現れ、協力してくれる。

Volume6:真実の狭間で
Chapter36:絆の力
Scene147
未来知識を得て、責任を自覚したGazboとChartreuseは、LekaとTeruが世界を救う鍵であることを信じていると語る。殺人衝動や反社会性を有する自分達がプライドを得られる街など、永遠に手に入るわけがない、要らないのは自分達だ、と語った。自らの命を犠牲にし、意思をなくしたJadwanを抑え、マスドライバーの攻撃を阻止し、街と、LekaとTeruを守る。GazboとChartreuseはそう宣言する。Yoth-Gorhを通して会話を聞いていたTeruは、その意図を読み取った。YothGorhの力をフルに使い、ビーコンになったJadwanを、未来世界に送り込めばいいのだ。

Volume6:真実の狭間で
Chapter36:絆の力
Scene148
Yoth-Gorhが全力を出し、異世界に介入し、ポータルを繋げた。その瞬間、Liminal Dungeonから漏れ出た「幸福のエネルギー」の作用で、GazboとChartreuseの記憶と本当の願いをLekaとTeruは心で理解する。それは、愛されること。自分たちを虐げた街を、それでも守って愛されたいという、健気な心。

Volume6:真実の狭間で
Chapter36:絆の力
Scene149
Jadwanを狙い、空間転移してぶつけられるはずだったマスドライバーの攻撃は、異世界転移し、未来人世界の研究所を木っ端微塵に吹き飛ばした。無論、Jadwanと、それを押さえつけていたGazboとChartreuseと一緒に。GazboとChartreuseの死は、LekaとTeruに大きな衝撃を与える。彼らは、二人の犠牲を無駄にしないため、そして世界を救うために戦う決意を新たにする。自己中心的なTattionの改変策を退け、どうすればより良い世界、他の世界を導く世界を作れるか、Ludvicと真剣に話し合うことを決める。

Volume6:真実の狭間で
Chapter37希望への反逆
Scene150
革命の嵐の中、LekaとTeruは  Tattionの野望を本気で阻止する意志をLudvicに伝える。彼はいつになく穏やかだった。Tattionに敗北したと語る。TattionがYoth-Gorhの力を解放して街の一部を焼き払った事件。あれをLudvicの実験の失敗のせいにされたらしい。さっきの街の近海の巨大な水飛沫も、Tattionに利用され、Ludvicの危険な実験のせいだということに。愕然とするLekaとTeru。全ての責任をTattionから被せられ、投獄すらされる可能性が出てきたLudvic。初めてTeruに優しく接するLudvic。TeruとLekaに自分の計画を託し、生きている限りは死力を尽くすと宣言する。Tattionに対抗するため、何よりこの街の平和のため、LekaとTeruはLudvicに協力する。

Volume6:真実の狭間で
Chapter37希望への反逆
Scene151
しかしLekaはだんだん不安を感じてきた。あまりにも大きな出来事が続き、心身の疲弊を自覚しつつあった。その足は貧民街の外れの救貧院に向いていた。しかしそこは暗殺ギルドの施設でもある。革命勢力の過激派によって、崩されていた。呆然とするLekaに、Lilyが声をかける。崩れていても、やってくる人はいる。Lilyは意地でもここに残るという。しかしLilyもまた、もはや配る物資も用意できず、無力感と疲労に苛まれていた。Tattionのもとで保護される方がいいのはわかっているのだが。Lekaはつい、自分からは絶対しない話を切り出す。Teruと一緒に三人で逃げようと。街から出たことのないLilyとLekaだが、そうするのも仕方ないではないか? と。LilyはじっとLekaの顔を見る。そしてゆっくり首を振った。その計画がLekaの疲労から出たもので、本心ではないと見抜かれたのだった。Lekaは恥ずかしくなる。甘えた夢物語を語ってしまった自分が。責任から逃げてはいけないんだな、としんどい言葉を吐くLekaに、Lilyは本心を話す。本当は父であるTattionがしてきたことが正義だとは一切思っていないし、Lekaのことも、もし他人であれば糾弾する側にいたと思う、と。Lekaはショックを受けるが、Lilyは必死で弁解する。それでも自分は罪を共有できる、いや、しなければならない立場にいるんだと。絶対に自分はLekaの味方だし、Lekaも私の味方でい続けて欲しい、と言った。Lekaは、ぷつんと切れそうな心の糸が、まだなんとか切れずにいけそうだと思った。しかしそれは、無理をしている自覚もあった。


Volume7:惨劇の始まり
Chapter38千里の果てを見つめて
Scene152
半壊した暗殺ギルドの屋敷。Lekaは最近の出来事を振り返っていた。GazboとChartreuseの死、今までとは大きく違う方針の革命議会の台頭、そしてもう決してTattionと和解ができそうにないこと。すべてが彼女の心を重くしていた。疲労は無視できない。この街の、世界の責任を背負うという大きすぎる使命の前に、膝を屈しそうになる。Liminal Dungeon内のAishaからのメッセージをYoth-Gorhが知らせてくれる。GazboもChartreuseも旅立ってしまったが、ZicoとSakuraと一緒に、この家で穏やかな日々を過ごしているとのこと。そこで気づいたが、LekaもAishaもみんな犠牲者なのだと。罪も責任も、本当は誰一人背負えないのだと。LekaはTeruにその言葉の意味を聞くが、わからないまま終わる。そんな中、Tattionから食事会への招待が届く。和解のチャンスということだ。LekaはTeruとYoth-Gorhの通信で話し、面従腹背でしばらくTattionの動向を探ることにする。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter40家族の絆
Scene153
暗殺ギルドの食事会。Tattionは家族団欒の雰囲気を演出しているが、Lekaには違和感が拭えない。LilyはLekaを気遣ってくれるが、疲労が限界に達しつつあるLekaにとって、息抜きは疲労を自覚するタイミングでしかない。一方、Stavroはこの場を利用して、革命議会に対する暗殺ギルドの立ち位置について、Tattionに進言しようとする。Lekaはもうそんなことをしている暇はないと言うが、Tattionを論破できる材料もない。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter40家族の絆
Scene154
そのイラつきから、食事会の最中、Lekaは思わずLilyに対して理不尽な態度を取ってしまう。Lilyは困惑しつつも、Lekaを受け入れようとする。Lekaは自分の感情を抑えられずに席を立ってしまう。LilyはLekaからすれば恵まれ過ぎているし、今父Tattionに対してLekaが感じている葛藤も一切感じていないのだろうと。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter40家族の絆
Scene155
Lekaは自分の部屋で独り、思い悩んでいた。Lilyが部屋を訪れる。彼女はLekaの境遇も自分との腹違いの姉であることも知った上でLekaを受け入れる。Lekaは驚くとともに反省し、これからTattionの子供達と良好な関係を構築できるように努力することを誓う。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter41:崩壊の足音
Scene156
翌日、LekaはTattionから命じられた任務のために街に出ていた。治安維持行動。あまり従いたくないが、街のためにはなるし、従っているふりは続けないといけない。そこで革命議会のメンバーが略奪行為に興じているのを目撃する。やめさせるが、ギルドと革命議会の緊張関係を理由に、大きな問題になることを示唆して彼らは狼藉を続ける。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter41:崩壊の足音
Scene157
一方、Teruは元学友を通じて魔法科学ギルドの残党と合流し、密かにLudvicの動向を探っていた。Ludvicに一旦は全面的に協力する意志を見せたが、完全な信用はできない。そこで、Ludvicが貧民を扇動し、未来技術の武器を配って新たな自警団を組織していることを知る。Teruは、Ludvicの真意を測りかねながらも、危機感を抱く。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter41:崩壊の足音
Scene158
夜、暗殺ギルドの屋敷に魔法と未来兵器を交えての猛攻が加えられる。Tattionはすぐさま反撃を命じる。混乱の中、Lekaは必死でLilyを探すが、彼女の姿が見当たらない。やがて、Lilyが敵に拉致されたことが判明する。Lekaが略奪をやめさせようとしたことが遠因だろうか。詳細不明である。Yoth-Gorhの通信を聞いてTeruはLudvicの影が脳裏にチラつくが、まだ信じられず、Lekaには伝えられなかった。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter42:悲劇の連鎖
Scene159
Ludvic、全てを失った貧民に未来技術の銃を配って自警団になってくれと演説。Tattionによって取り上げられた自分の政治力を取り戻すため、民衆を煽ったのだ。Teruに民衆を率いて戦えという。拒否するTeruだが、もはや新しい革命議会の矛盾は表面化しており、もはやついた火は止められない。街を混乱させないため断りきれない。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter42:悲劇の連鎖
Scene160
LekaとTeruは話し合うが、それは重大な対立に発展してしまう。責任から逃げてもいいのか、あるいは背負わなきゃいけないのか、そもそも何をもって責任と言えるのか。この街をどこへ導けばいいのか。それが喧嘩を伴って議論される。しかしもう無理だった。Lekaは度重なるあまりに大きな出来事に、心がポッキリ折れてしまう。Lekaは限界を悟って泣き崩れる。謝罪して抱きしめるTeru。タイミング悪く割って入ってきたYoth-Gorhが運命の耐え難く争い難い残酷さを説き、ここで逃げ出しても構わないのだと言った。しかし、TeruもLekaもそれを拒否する。責任から逃げないことを決める。しかしふたりにはもう、荷が勝ちすぎる状況なのは明らかだ。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter42:悲劇の連鎖
Scene161
Lilyはまだ見つからない。Lekaは暗殺ギルドの執務室での仕事中、LekaとStavroがストレスのあまりに喧嘩する。Tattionが仲裁するが、屋敷に未来兵器がまた撃ち込まれる。Ludvicを呪う言葉を吐くTattion。彼もまた、街の実権を握ったが、失いつつあることに苛立っている。そのせいで統治は綻び、街のインフラや食糧事情は悪化していた。それに恨みを持つ亜人種たちの集団が襲撃してきたのだ。武器は……明らかにLudvicのもたらしたものだ。Lekaはだんだん敵味方がわからなくなっていた。Tattionは限界を悟り、Ludvicと和解してLiminal Dungeonでさっさと世界改変をすることに決める。しかし、反乱勢力の人間がやってきて、Lilyの「一部」が入った箱を届けた。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter43:流転
Scene162
TeruとLudvic、革命議会に呼び出され、その上で死刑を言い渡される。反乱を計画した罪だった。それは家族のLilyを殺され、絶対に和解できなくなったTattionの策略だった。その瞬間、Ludvicは未来兵器の銃で武装した種族を問わずに編成された民衆の軍を自作の技術のポータルを使って引き入れ、評議会全員を抹殺してしまう。あまりの蛮行に呆然とするTeru。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter43:流転
Scene163
これによって革命騒ぎは一旦収束する。LudvicはすぐさまLily殺害の件を謝罪し、Tattionはいた仕方なく沈黙をもってこれを受け入れる。Teruはもはや理解が及ばなかった。彼も親交があったLilyが、こんなことで命を落とすなんて、そして、憎しみを抱えたまま、父のLudvicとTattionはこの街を運営していこうとしている。革命議会も消えてしまった。これが、これが街を変えるということなのだろうか。信じられない。TeruとLekaは、あまりにも常人離れした「政治」の世界についていけない思いを共有した。今回ばかりは、Yoth-Gorhの分析的な感情のない言葉が慰めになった。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter43:流転
Scene164
LekaとTeruは、責任を背負うと言っても、ここまでのことが起こるだなんて思っていなかった。甘く見ていた。しかしTeruはまだいい。Lilyの死で一番ショックを受けているのは、Lekaのはずなんだから。腹違いだったとはいえ、妹だ。TeruはLekaを気遣おうとするが、Lekaは突然発狂したように笑い出し、もう限界だと言った。Teruもまた同じ気分だった。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter43:流転
Scene165
ショックを受けたLekaを、Stavroですら慰めてくれる。しばらくStavroの妻子と暮らせばいいと言ってくれる。新しい兄と妹の関係を予感するLeka。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter43:流転
Scene166
だが、Ludvicは自分の部隊の統制に失敗したようだった。彼の勢力の一部過激派の暴走で、Stavroは襲撃され、死に至る。LekaはStavroの遺体を回収するが、Stavroの妻がそれを見つけ、錯乱してしまう。そのせいでStavroの死は街の皆の知るところとなり、暗殺ギルドはさらに大きくその影響力を減じてしまう。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter43:流転
Scene167
それをきっかけに、再度ショックに沈むLeka。Tattionは全ての嫡子を失ったことで流石にショックを受けるが、今度はLekaに表舞台に立って全てを引き受けるように命令する。初めて命令を明確に拒否するLekaだが、その結果Tattionと致命的に対立し、TattionはLekaに制裁を加える。高度な戦いが繰り広げられ、Lekaが隠していた想いが語られる。Tattionはそれを身勝手だが反論しにくい理屈で迎え撃ち、親子間対立が生じ、深まっていく。しかしLekaに暗殺技術を教えたのは他ならぬTattionである。勝てるはずもない。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter43:流転
Scene168
やがて暗殺ギルドの本部は、Ludvicの率いる市民軍に包囲される。Ludvicはやり過ぎたとも思うが、もはや彼の器すら飛び出て事態は転がってしまった。Teruが成長していたら、あるいは制御できたかもしれない。そう思うと、Ludvicは歯軋りする思いである。街の治安のため、もはや不要になった暗殺ギルドの解体を命じる。そして組織を全て統合し、新しい街の秩序を構築しようというのだ。渋々条件を呑み、敗北を認めたように見えたTattionだが、これは出来レースだと察知するTeru。もうLudvicとTattionは、この世界線に見切りをつけていると思い至った。Teruはそう思うと、Yoth-Gorhの力を借りてポータルを開き、Lekaを連れてLiminal Dunngeonに入り、対策を練る。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter43:流転
Scene169
Yoth-Gorhは一旦Liminal Dungeonの時間を停止し、好きなだけ休んでいいと言ってくれた。TeruとLekaの心の交流、癒し。Liminal Dungeon内部で、二人の過去を振り返るような映像が流れ、傷ついた二人は癒される。Yoth-Gorhが現れ、この世界の平行世界構造の真実と、進むべき道を示してくれる。Lilyが殺される時に受けた仕打ちまでYoth-Gorhはしゃべってしまい、Lekaはショックで嘔吐する。二人は決意する。LudvicやTattionの好きにはさせない。Yoth-Gorhも決して人間と歩める存在ではない。LekaとTeru、自分達だけの力で、真の意味でこの街に平和をもたらすと。Yoth-Gorhは、Tattionの持つ人間の世界を破壊したいという欲望を表すアーティファクト、Stiletto la rebelle、そしてLudvicの持つ世界を支配したいという欲望を表すアーティファクト、Marionette Idiotes。少なくともこのどちらかを奪えば、LudvicもTattionも世界改変ができないし、二つ揃えばLekaとTeruに世界改変の力が移るのだという。二人はそれを目指した。

Volume7:惨劇の始まり
Chapter44:最後の決意
Scene170
時間の止まったLiminal Dungeonの中で、TeruとLekaはSakuraのもとで穏やかに過ごす。最後の決戦の英気を養うために。Sakuraからも過去が語られ、全てを終わらせてほしいと言われる。多元平行世界の「幸福のエネルギー」を奪い合う構造、それは地獄そのものだと。LekaとTeruがどのような選択をするにせよ、そこを変えないと根本的な解決にはならないと。Teruは、思いを巡らす。Lekaは、その選択を信じると言った。


Volume8:幸せの贈り先
Chapter45:始まりの闇
Scene171
大昔、LekaがTattionに拾われた時の記憶。Lekaは他の婚外子と殺し合いをさせられ、親友であったZicoの両目を抉って勝利したLekaのみがTattionの寵愛を受けた。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter45:始まりの闇
Scene172
そのようなあまりにも凄惨な記憶を封印から掘り起こしたLekaは錯乱し、Sakuraの家でTeruに慰められる。Lekaは、真に倒すべきは父親であるTattionだと、魂に刻んだ。和解の可能性を完全に排除し、LudvicともTattionとも違う世界改変を、Teruと一緒に実行しないといけないと心に刻んだ。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter46:最後の陰謀
Scene173
完全に刷新された新生評議会。もはや街に残っているインフラもろくになく、破綻の悲しみと絶望だけが共有されている有様だ。それを終えて、議長になったLudvicと、ナンバー2になったTattionの秘密のやりとりが描かれる。血をたくさん流すことになったが、それによって真の友情が出来上がったのだということ。とりあえず今現在のほとんど崩壊したに等しい街のことは諦め、お互いの考えをすり合わせ、全く新しい世界改変を行うことなどを取り決めた。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter46:最後の陰謀
Scene174
新生評議会では、街の復興などが議論されるが、TattionもLudvicももはや興味がない。Ludvicは隙を見てTattionのStiletto la rebelleを奪い、Ludvicの持つMarionette Idiotesと合わせて自分だけの意思で世界を改変しようと画策する。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter46:最後の陰謀
Scene175
一方、Tattionはその動きを読んでいた。LekaとTeruをうまく使って決定的な瞬間を演出しようとする。そのため、Liminal Dungeon内部のLekaに接触する。Sakuraの家を訪ねたのだ。歓迎するSakuraの前で、すっかり敵対的になったLekaに偽りの謝罪をし、関係を戻そうとする。Lekaは虐待に他ならない厳しい暗殺訓練や、理不尽な命令についての謝罪を受け入れる。どうしても、Lekaは父親の愛を完全に捨てることなどできない。また偽りの愛が構築された。Tattionは責任について思い悩まなくていい世界を作ってやるとLekaに約束する。わきで見ていたTeruは、Lekaの本当に安心したような顔を見ると、そんなものに騙されちゃダメだともいえなかった。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter47:運命の歯車
Scene176
とりあえずParakronosの街に戻ったTeruとLeka。崩壊し切った街の絶望的な復興を担う新たな組織の運営を補佐しつつ、LudvicとTattionに従うフリをする。その真意を探ろうとする日々。LekaとTeruは、父親がしきりに語る責任論に、空虚さを感じていた。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter47:運命の歯車
Scene177
LekaもTeruも、Stiletto la rebelleとMarionette Idiotesのありかを探そうとするが、頻発する食糧不足やら何やらに対応しないと人が死ぬ。Teruでも手いっぱいなのに、もう殺しを戒め、暴動にもろくに対処できないLekaには荷が重いようだった。Teruは現状の限界を悟る。Sakuraの家で永遠に全ての責任から逃れる生活がどんなにいいか。しかし耐えるしかなかった。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter47:運命の歯車
Scene178
そんな中、未来人の脅威が再び迫ってくると、Yoth-Gorhから警告が。研究所を失い、なりふり構わなくなった彼らは、いよいよ本気でこの世界を消滅させるつもりだ。Liminal Dungeonへの入口である大時計塔を破壊するだけではなく、世界そのものを抹消するという手段で。今度は月よりさらに遠方の宇宙、絶対に予測不能で防御不能な場所から大規模な攻撃を仕掛けてくるとYoth-Gorhが警告する。天才であるLudvicはブラックホールによる攻撃を予想して、なんとかしようとする。TeruとLekaは、Ludvicと協力してアーティファクトを結集し、防衛策を練るが、Tattionの姿が見当たらない。役に立ちそうなアーティファクトを探して保管庫を探るLudvicは、隠していたMarionette Idiotesが消えていることを知り、愕然とした。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter47:運命の歯車
Scene179
Tattionは、すでにMarionette IdiotesとStiletto la rebelleを手に入れ、密かにLiminal Dungeonに潜入し、Yoth-Gohrと接触していた。彼はもうすでにYoth-Gohrの力を利用して、自分の理想の世界を作り上げることができるチャンスを掴んでいたというわけだ。それは、Liminal Dungeonと永遠に分断し、独自の「幸せのエネルギー」だけでやっていく、閉じた世界。そうすれば、確かに他世界と断絶され、未来世界からのブラックホール攻撃も不発に終わり、攻撃も防げるが……。SakuraがTattionを止め、Yoth-Gorhの通信でこれを知ったLekaは、Tattionを止めるべく、ポータルで単身Liminal Dungeonに乗り込む。LudvcとTeruは、引き続き未来人の攻撃への対処に当たる。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter48:終わりの始まり
Scene180
TattionはSakuraを殺した。流石に自分自身ショックを受けるTattionのもとにLekaが訪れる。Tattionの本音が語られる。毎回、殺しのあとには娘であるLekaのように罪悪感と責任を感じると言ってのけるTattion。しかし、そんなものは人類にはいらない感覚なのだ、とも言う。罪や責任は、所詮社会の構成員としてそれを成り立たせるために仮初に社会と約束されたもので、真のトップの個体にはそんなものいらないのだという。LekaはTattionが、GazboやChartreuseと同類のサイコパスだと気づく。しかも、なまじ力と権力とそれを隠し演技して組織や敵や……そしてLekaを操る知能があるだけに……責任を本気で引き受ける誠実さを得る機会がなかったのだと。Lekaは同情とともに、自分の本当の望みを体現してしまえば、人間はこんなにも醜く哀れになれるのかと絶望する。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter48:終わりの始まり
Scene181
未来人の攻撃が来る。単なるブラックホールではない。重力波攻撃で、空間そのものが圧縮されて潰れかけるが、しかしLudvicとYoth-Gorhの最大の魔法科学兵器で阻止され、多元平行世界構造が不安定化する。大時計塔が暴走し。Liminal Dungeonに世界が飲み込まれ、未来世界もParakronosのある世界も、その存在が不安定になり、もうMarionette IdiotesとStiletto la rebelleを使ってYoth-Gorhに世界を改変してもらうしか道がなくなる。LudvicとTeruはLiminal Dungeonから解放された津波のような「幸せのエネルギー」の波をもろに受け、Yoth-Gorhと同じような感覚を得る。時間も空間も超えた、全ての平行世界を感じる感覚。自分というものが溶けて、定まらなくなりそうな危機感の中、Teruは理解する。Marionette IdiotesとStiletto la rebelle、つまり、世界に盲従する愚かなる服従と、世界を破壊してでも自由を求める狂気を現す、二つの人間の意思そのものが必要だ。それだけが世界をあるべき姿に繋ぎ止めるのだと。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter48:終わりの始まり
Scene182
もはや存在自体があやふやになった世界で、街の住人たちは消えかかり、自分たちの世界を多元平行世界のトップにしたがっていた未来人勢力は消滅していく。Yoth-Gorhの種族と同じような感覚を得たTeruはそれを感じる。しかし、これでよかったのか? という罪悪感をTeruは拭えなかった。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter48:終わりの始まり
Scene183
Leka、Teru、Tattion、Ludvicはもはや自分たちの位置も不確かになった中で合流する。そしてYoth-Gorhの支援のもと、何もない空間で仮初に実体化する。そして目的を遂げるために準備に取り掛かるLekaは、自分の運命に思いを馳せ、Teruは全てに世界の未来に思いを巡らせる。Ludvicは人間の前進する力で世界を変えようと決意を新たにし、Tattionは自分の利己的な野望に狂喜する。四人の間に、Marionette IdiotesとStiletto la rebelleがあった。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter49:責任
Scene184
迷いのなさでは頂点であるTattionが二つのアーティファクトを掻っ攫う。Ludvicが最強のアーティファクトに銃をポケットから展開し、Tattionの動きを封じる。その隙にLekaとTeruがMarionette IdiotesとStiletto la rebelleをTattionから奪おうとするが、Ludvicが拘束銃を解除し、TattionがLekaとTeruを制圧する。もともと、二人の折衝で擦り合わせた、多元平行世界のトップでもあり、尚且つ暗殺者を他世界に送り込んで「幸せのエネルギー」の収集を促進する世界を構想していたのだ、これならLudvicちTattion、双方の意見が合致する。そう、Ludvicは宣言した。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter49:責任
Scene185
Marionette IdiotesとStiletto la rebelleをYoth-Gorhに捧げ、計画を実現しようとするLudvicとTattion。しかし最後の瞬間、TattionはLudvicを裏切った。Tattionは自分だけに都合がいい世界を作ると宣言する。そしてLudvicに一撃を加える。死なないが行動不能の重傷を追うLudvicからMarionette Idiotesを取り上げ、Stiletto la rebelleとともに使用しようとするTattion。それは Yoth-Gorhに全人類を代表して呼びかけ、世界を作り変えるためのアイテム。LekaとTeruはその一瞬の出来事に呆気に取られるが、すぐにTattionを阻止しようと動く。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter49:責任
Scene186
TattionはLekaに彼の考える理想の世界を示して誘惑する。二つのアーティファクトを使うには二人の人間の二つの意思が必要だから。ZicoもAishaもStavroもLilyもGazboもChartreuseも、Lekaと関係した全ての人間が、正式な暗殺者になって、Lekaと一緒に暗殺業を続ける。そのためだけに街は存在し続ける、お前たちは一切変わらなくていい。責任も負わなくていい。永遠に今の生活をつづけられる、と。この世界ではお前は責任や罪も自尊心とプライドによって相殺できると。魅力的な提案に思えたが、LekaはTeruが示す道を選んだ。責任を自覚して罪と向き合っていく道を。Tattionは相互理解が不可能だと悟ると、Teruを殺害し、Lekaに自分に従わざるを得ないようにする方法を選んだ。Lekaはそれを阻止するため、激しい戦闘になる。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter49:責任
Scene187
GazboとChartreuseはTattionによって都合よく復活させられた存在だが、幾度も平行世界で似た人物が生まれたことでノイズのようなものが生じ、Lekaの記憶にあるような人物として復活する。Teruの呼びかけでGazboとChartreuseが乱入し、命を捨てて戦ってくれたおかげで、TattionとLekaの殺し合いが決着する。Tattionは息絶えた。しかしすでにLekaは致命傷を負っており、Teruはここで全てをどうにかしないといけない状況に陥る。GazboとChartreuseは自分たちの生命をまっとうできたことを喜んで消えていく。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter49:責任
Scene188
Lekaは激しく血を流し、もう長くない。それを抱きかかえたTeruは、愛するLekaの人生の疲労そのものを感じた。まだ若いのに、自分たちが感じてきた苦労と理不尽を思うと、もう限界だった。Lekaはあまりにも大きな責任と罪を背負ってしまったのだと、Teruは理解していた。TeruはLekaに最後の意思を確認する。君はどうしたい? と。Lekaの返答は、Sakuraの穏やかな家に帰りたい、だった。Teruは全てを理解した。TeruはさっきLekaに示した責任と罪に向き合う道を拒否することに決める。重傷を負ったLudvicが語りかけてくる。Parakronosの街を平行世界の頂点に押し上げろ、そしてTeruよ、その王になれ。Ludvic自身の代わりに、と。しかしTeruはそれを拒否する。ここまで疲れ果てて、その人生の全てを無為に捧げた暗殺者の娘を前に、そんなものは虚しいと思った。幸福を追い求めて働き続ける世界なんか拒否すると宣言する。全ての世界を押し上げるために働く世界なんか拒否すると宣言する。そのために犠牲と振り落とされる人間を無用に生み出し続けて走り続けることなど拒否すると宣言する。その過程でたくさんの罪と責任を生んでそれに駆り立てられ続ける生活なんて拒否すると宣言する。自分に背負える範囲でしか世界を背負わなくていい。背負いきれない責任からは、逃げ出したっていいんだ。そのせいで世界がどうなっても、それは自分たちのせいじゃない。別に悲観することはない。誰か一人のせいで世界はどうにかなったりしない。それはいいことなのか悪いことなのか、知らないけど、少なくともだからこそ世界は続いていける。人にとって、平穏こそ、求められるものではなかったのか? Teruはそう確信した。TeruはMarionette IdiotesとStiletto la rebelleを使い、Yoth-Gorhに呼びかける。無限にある世界の中の有限の「幸福のエネルギー」を集めるシステムがあるのなら、それを逆に働かせる、分配するシステムもあるだろうと、Yoth-Gorhは肯定する。やめろと叫ぶLudvicを尻目に、Teruは Yoth-Gorhに全ての平行世界を平等に幸せにしてほしいと願った。

Volume8:幸せの贈り先
Chapter50:完璧ではない理想の世界
Scene189
物語の最終的なフィナーレである。平行世界構造は均一化され、どの異世界でも、実在の現代の地球の先進国のような生活が実現された。多くの社会問題は残っているが、あまりにも大きな絶望はもう残っていない社会。全ての世界が、他の異世界を羨まなくても良くなった。スポーツ少女に生まれ変わったLekaは、暖かいアパートの部屋で、父である伝説的なスポーツマン、Tattionから、育て方が厳しすぎたと懺悔を受ける。元々の暗殺者としての人生も残っていたLekaは、それを聞いて満足げに会話する。テレビを見ていると、見知った顔が幸せそうにしている。GazboもChartreuseもLudvicもJadwanもZicoもAishaも、みんなそれぞれ社会の中で普通に生きていた。飛び級で自分より先に大学へ行ったTeruから連絡が来る。新しい社会運動のワークスペースへの参加を求めている。Lekaは全ての異世界が救われていなくても安定を得たことを確信し、今の世界ですべきことに集中する。
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