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【争議体験談 vol. 1 ホステル】

学生ユニオン争議体験談では、学生ユニオンメンバーが経験した争議をご紹介します。第1弾では、ホステル(簡易宿泊施設)で起きた労働問題に対して行った団体交渉に関してです。

就業時刻10分前出勤
Aさんが働いていたホステルでは、始業開始時刻が15時でしたが、会社からは14時50分までに出勤しないと遅刻扱いにすると伝えられていました。しかも、その10分間には以下のような業務をこなさなければなりませんでした。

・シャッターを開ける ・制服に着替える ・チェックインするゲストの情報確認
・チェックインするゲストの部屋がベッドメイクされていなかった場合はベッドメイク

まず、労働基準法では、制服に着替えるような仕事の準備時間も、労働のための拘束時間であるため、労働時間とみなされ、賃金が支払われるべきとされています。すなわち、Aさんの職場の場合、14時50分から賃金が支払われる必要がありますが、15時からしか支払われておらず、準備どころかベッドメイクまでをも10分間で行うのはそもそも無理がありますが、その時間はいわゆる“ただ働き”をさせられていたわけです。

未払い賃金について申し出るとパワハラに...
Aさんは、賃金が支払われていない10分間も労働時間であるため、支払いをしてほしいとLINEで伝えたところ、1か月ほどはぐらかされ、最終的に給料を受け取るために会社の事務所を訪れた際に、社員1人と会社とその親会社の社長2人からパワハラを受けました。

「あなたにはどんな権限があってそんなこと言ってるんですか?」
「あなたは何の資格を持ってるんですか?」
「あなたは弁護士なんですか?」
「(社長が社員に対して)この人の言ってること、録音して」

このような言葉を大人3人から詰め寄られながら言われ、大学生であったAさんは精神的な苦痛を受けました。
Aさんはこのようなパワハラの場面においても、
「労働者として労働基準法の話をしているだけです。」
「弁護士じゃなくても労働者として会社に不満を言う権利はあります。」
「どうぞ録音してください。逆にこっちが録音したいですよ。」
などと反論をしましたが、会社側は全く聞き入れようとせず、Aさんが話し終わる前に被せて話してくるため、話にならないと思ったAさんは事務所から去りました。

実質的な不当解雇に
パワハラを受け、事務所を去った直後に、会社はAさんを会社のLINEのグループから一方的に退会させました。その後、シフトの管理システムにもログインができなくなり、実質的な不当解雇と受け止め、首都圏青年ユニオンに相談をしました。

団体交渉
ユニオンに入ったAさんは会社に団体交渉を申し入れ、未払い賃金の支払い、不当解雇の撤回、不当解雇により働けなかった期間の賃金保障等を求めましたが、団体交渉や法律に関して無知な親会社の社長は、ユニオンに脅迫まがいの電話をしてくるなど、非常に不誠実な態度でした。しかし団体交渉で会社は、組合の人たちやAさんと目を合わせようとせず、会社の回答に対するAさんの反論にも反論してこず、後ろめたいような表情が印象的でした。その後もコロナにより会社が廃業となるため復職は難しいと言われるなどトラブルもありましたが、要求はすべて呑ませ、解雇の撤回に関しては金銭解決で和解しました。

社会的に立場の弱い者を積極的に雇う確信犯的な会社
この会社では、社会的に弱い立場にある人たち、例えばAさんのような大学生や移民労働者をアルバイトとして多く雇っていました。これまでに社長らに嫌がらせや不当な扱いを受け、辞めていった人たちも少なからずいたようです。聞いたところによると、LINEで漢字を間違えたネパール国籍の従業員に対して間違えた漢字を100回書けと命令したり、勤務の初日に店舗のデスクに鞄を置いた中国国籍の従業員に対して失礼だと怒り、即日解雇したりということがあったようで、会社の人間は明らかに自身の立場の優位性を利用して、従順な労働者を探し、気に入らないことがあるとすぐに人を「使い捨て」る確信犯でした。Aさんは、他の日本以外の国籍を持つ先輩従業員数人に一緒に組合に入って会社と交渉しないかと声を掛けましたが、「解雇されたら次の仕事を探すのが大変だから」と断られました。日本国籍を持たず、日本語を第一言語としない人たちにとって、この国で継続的に安定した収入を得られる仕事に就くことは容易ではありません。

!!組合加入を!!
立場を利用して搾取しようとする経営者は絶対に許されませんが、もしそのようなトラブルがあった時に、会社と対等な立場で話し合いができるのが、労働組合です。悪質な会社に対して労働環境を改善させるための交渉を、正規・非正規、国籍、ジェンダー、宗教などを問わず、1人から行うことができる首都圏青年ユニオンに、ぜひご加入ください。


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