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スキップとステップ

私は今朝スキップした。昨夜なんてステップまで踏んでいた。
心躍るようにスキップしたわけではない。朝5時起きのアラームをスキップしたのだ。寒さと眠気に負けてそのまま意識は遠のいた。
毎年訪れる数日の葛藤がここにあった。「明日は紅葉狩りにでもでかけよう」と、ルンルン気分で心高ぶらせながらステップを踏む私が昨夜いた。

明日は5時にに起床する。そして、手早く身支度を整えてカワサキW650で北に向けて出発しなければならない。そう思う私が毎年いる。
夜、ステップ踏んで、朝、スキップする。もう、一年ががりのルーチーンになっているようだ。

それを今年もやらかした。予定はたてたもののあくまで『ソロツーリング』だ。誰にも迷惑をかけない。ただ、『紅葉の見頃』は刻々と終わりに向けて色艶を無くし、ひたひたと落葉にむかう。

私の『紅葉狩りコース』は、群馬を出発して栃木県日光をスキップしてメインは南会津にあった。日光周辺の素晴らしい紅葉と忌まわしい渋滞は毎年私にスキップされていく。その日光の渋滞をスキップするべく私の出発時間は6時だ。これがつらい。
日光をいかにしてスキップするか、これが私を悩ませるのだ。

秋だけではない。夏であれ春であれ、日光をどううまくスキップするかにその後のツーリングの満足度は左右される。冬期の道路閉鎖を除けば、春から晩秋にかけて4.5回は走る日帰りコースだ。右回りなら、群馬、新潟、福島、栃木と回る。この辺りのライダーにはおなじみの周遊コースなのだ。
私は、秋は左回りと決めていた。日光さえ早い時間にスキップすれば、あふれんばかりの南会津の大紅葉が私をむかえてくれる。

さて、私は明日、起きれるのだろうか。起きなければならない。その価値が、南会津にはある。私の心をもう一段ステップアップさせるような大紅葉があるのだ。
冬季閉鎖される国境の長い峠を越えた先には、ほろ苦い想い出の雪国がある。

                 *

ちなみにこんな詩をかきました。『詩のほう』にも載せてありますが、このエッセイとあわせてどうぞ。

『あちらとこちら』

あちらの山むこうに女がいた
こちらの山むこうに男がいた

蛇のようにうねる田舎道があちらとこちらの山を一本の恋路でつないでいた
女はそれがいつ途切れるかわからない、か細い道だと知っていた
だけど、この男はしらない、馬鹿だから

あちらの山むこうには雪がよく降った
こちらの山向こうには風がよく吹いた
この女と男の恋路は吹き荒れた雪に埋もれてその行方は、もう、わからない

でも、どこかべつの慈愛に満ちた恋路が切り拓かれて
女は幸せを抱いて弾むようなスキップをしているはずだ
だけど、この男はしらない、馬鹿だから


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