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「なるせをラップでディスってみたw」をラッパーが採点してみたwww #3

 前回の「Drill 優子」を解説した時、20文程の文章量のリリックを講評するに5000字もかけてしまったんですよね。
 今回、「他人のラップを勝手に公表してるお前は誰なんだよ」という意見へのアンサーとして自身の投稿済み楽曲を分析、解説するんですが、これ「Drill 優子」の5倍くらいの文章量あるんですよ……。
 既に心折れかけてるんですが、「ラッパーが添削してみたwww」と言ってしまった手前頑張るしかありませんね……。

 それじゃ、やっていきましょうか……。




【なるせをラップでディスってみたw (真題:暴牛 to nqrse)】


 動画の最初にも流れていますが、この楽曲はnqrseというシンガーの「ラップって僕がやってるみたいなやつだよ?」という発言に対して「シンガーがラップ語んな」と述べるだけの曲です。
 つまりはビーフですね。ビーフ→牛+暴言、よって暴牛、という名前になっています。
 ラッパーとしての源氏名は至極なんですが、暴言はあまり好きじゃないのでビーフの時だけ暴牛という名前を名乗っています。
 ちなみに、このビーフを描くにあたってnqrseのチャンネルに投稿されている楽曲を全て聴きました。聴いた上でアイドルラップという感想しか持てなかったので終わりです。

・「N Q R S E へボカスなボーカス
偉ぶるwack mc 手を出すな坊や (ei)」


 押韻箇所「エ(ヌ)キューアールエスイー/え(ら)ぶるwack mc」「へボカスなボーカス/手を出すな坊や」

(ei)←笑。クソダサいです。
 ここは一番大事な歌い出しなので、韻の固さを強調しています。
 加えて、「N Q R S E~なラップ(笑)で」までが、なよなよしたダサいフロウなのはnqrseのモノマネをしているからです。なかなか再現度高いと思います。特に(ei)とか。

 ボーカス(bogus)は偽物、という意味なのですが(調べた)、これはnqrseが調子に乗る発言の元となった楽曲、「See me」の出だし「頭にクラウンつけたボーガス」というライムから引用しています。相手の言葉で煽るのが一番効くって僕のヒーローアカデミアで習ったので。

・「My name is 暴牛 a.k.a. 至極
なるせの下手でペラペラなラップ(笑)で覚醒 暴言吐く闘牛 for you」


 押韻箇所「暴牛/闘牛/for you」「極/暴(言)/闘(牛)/for you」「なるせ/ラップ(笑)で/覚醒」「下手/ペラペラ」「で覚/(暴)言吐く」

 細かいですが押韻が繰り返されています。
「ペラペラ」というワードは「闘牛」から来ていて、これはお前を煽るための曲ですよ、暴言を使う闘牛(暴牛,私/ビーフ)をあなたに送ります。という意味のラインです。
 個人的には「なるせ/ラップ(笑)で/覚醒」の押韻は韻の飛距離があってお洒落ですね。
 もともと「My name is~覚醒」の箇所は韻を踏まないつもりだったんですが、無意識に踏まれている韻があって驚いたのを覚えています。
 加えて、「My name is/for you」の簡単な英語を使っているのは、すぐ英語のフレーズを使いたがるnqrseを揶揄したかったからです。これ以降ほとんど英語が出てこないのは、ここの英語が特別な意味を持っていると伝えたかったからですね。私は"日本語"でラップが出来ますよ。というアピールです。

・「歌い手崩れじゃ踏めない
不快で震えたゴミライミングで
『Trust me』」


 押韻箇所「歌い手崩れじゃ/不快で震えた」「ない/ライ」

「ない/ライ」は#2の「底からム/俺からの」で述べた、位置を揃えた押韻です。
 意味が分かりづらいので翻訳すると、「歌い手の延長でラップもどきをしているあなたには韻は踏めないです。あなたのゴミライミングで私は不快のあまり震えました。特に『Trust me』。」
となります。
 こういう、暗号みたいなライムを私はあまり好まないので、普通に減点対象です。
 私はラッパーとしては二流なので、こういった翻訳が必須のライムが多いです。改善していきたいですね。

『Trust me』はnqrseの楽曲「レモネード」のラップパートの歌詞です。
 メロウな楽曲なのに急に変なラップを始めた挙句、韻が踏めなかった「Trust me」の箇所を気持ちの悪い歌い回しで誤魔化している箇所、比喩抜きで「不快で震えた」ので引用しています。根がシンガーなんでしょうね彼、楽曲全体を通してあまり日本語ラップのこと分かってない感じがします。身の程を弁えて欲しいですね。

・「ミスしない韻しか信じない
いつしか死んでた、君が信じた倫理や審美眼
RIPします 新人さん (damn)」


(dame)←笑。ダサいです。

 押韻箇所「ミスしない/韻しか/信じない/いつしか/死ん(で)た/君が/信じた/倫理や/審美眼/RIPします/新人さん」

 なかなか良いと思います。「i(u/n)iai」の押韻なので、「ミスし/いつし/RIPし」は全て踏めている判定です。
 まぁ私が描いてるのでそりゃ踏めている判定のミスしない韻しか採用してないに決まってるんですけども。あまりにこの講評に有利過ぎるのはちょっと申し訳ないです。

 余談ですが「倫理や/審美眼」は轍。名義で投稿した、シャンティ(SHANTI)の歌ってみたにも使われている韻ですね。
 同じ楽曲中で不必要に同じ語彙は使わないという縛りを設けているのですが、楽曲間での使い回しは良しとしているのでこういうのもあります。

・「やたらやかましいだけ、かましてなんかない、姦しいだけ」


「a/i」を多用する踏み方をしたかったパートです。母音を特定の順で繰り返す押韻だけでなく、使用する母音の種類を制限することでの押韻を試みています。
 挑戦が窺えて良いです。
 踏み外しているのも「け/て/け」だけですし、まぁ一文中に「だけ」を2回も使っているのは減点対象ですが、全体的には良いと思います。新しいですね。

・「アイドルのラップパートと変わらねぇお遊びのスキルで能書き垂れるなら至極の喝、叩っ込んだらぁ低能野郎。
ビーフに躾と刃併せた 宛先は軽薄なJ-RAPPER。」


 押韻箇所「アイドルのラッ(プ)パートと変わらねぇお遊び(の)スキルで能書き垂れるな/ら至極の喝(、)叩っ込んだらぁ低能野郎。ビ(ー)フに躾と刃併せた」「軽は(く)な/ジェイラ(ッ)パー」

 意味わからんくらい長い押韻です。ただ「プ/、」はともかくとして「の/ー(i)」は普通に踏めてないですからね。あと「く/ッ(a)」もそう、この「ッ」は前後に「ラ/プ(a)」の母音があるので、韻を踏むとしたら「a」の音と踏むべきです。「く」ではなくね。
 だとしても、「aiouoa()()aaooaaaeeoaoi(o)uiueouaiaeua」の34音で踏もうとし、そのうちの33音は韻として成立しているので、なかなか素晴らしいラインと言えるでしょう。もっと言えば「刃/先は」で踏んでますが、まぁここはそんな役立ってないので……。

・「いくらあやせど眠らぬ不良、夜遊びで今日も無駄にしたの?」


 押韻箇所「不良/今日も/の?」「(ね)むら/(も)無駄」

 ぶっちゃけここは押韻あってないようなものです。
 なぜなら言葉遊びのパートだからですね。
 直前のラインで「アイドルのラップパート」というワードが出てきたので、具体例を示してあげています。
 YOASOBIのアイドルは押韻がお粗末なことで有名であり、nqrseはアイドルの歌ってみたも出しているので、半分ダブルミーニングみたいになってますね。(とはいえ「アイドル」は楽曲のテーマがアイドルなので、アイドルの下手くそなラップを真似していると捉えると凄く意味のあるダサさになっています。コンセプトと合致している点で私はアイドルのお粗末な押韻を評価しています。)
 具体的には「いくらあやせ」「夜遊び」です。
 この二つを繋ぐために「不良」というワードを使い、そこで得られた学校のイメージを次のラインに流用しています。
 韻は踏めていないですが、描写を余すところなく活かせている点、趣旨に沿った掛詞をしている点で充分に対価は支払っていると言えるでしょう。
 前のパートは押韻、このパートは言葉遊びとコンセプトがはっきりしているのも良いですね。高得点です。

※備考:ikura→YOASOBIのボーカル、Ayase→YASOBIのコンポーザー(楽曲を作る人)

・「手間いらずな世界が崇高だ。
黒板から目を逸らすな
教壇から目を光らす硬派な韻踏むメンターが韻に宣言する、
スタイルインディペンデンス。」


 押韻箇所「手間いらずな/世界が崇」「な/だ」「(せか)いが崇高だ/光(ら)す硬派な」「黒板/教壇」「韻に宣言す/インディペンデンス」

「から目を.らすな」はカウントしません。
 逆に、「いが崇/光らす」を韻とカウントしているのは、「から」の母音が「aa」であるからですね。同じ母音が連続する箇所は、音が1つ足りなくても韻として機能します。
 例えば「私が親ならマジ殺してる/課題が終わらないのも知ってる」では、「親ならマジ/終わらない」が6文字と5文字なので1つ「a」の音が足りないんですが、「やならマ/わらな」は「a」が連続するためどの音が抜けているか分かりづらいことと、中央の母音は踏み外されても気付きにくいことを利用しています。
 韻マンが多用する語感踏みにも「中央の母音は踏み外されても気付きにくい」は見られます。水曜日のダウンタウンの「『あ』と『す』さえ合っていれば何を言っても『ありがとうございます』に聞こえる説」や、たんご の さいご と さいしょ が あっれいてば じばゅんんが めゃゃくちゃちゃ でも ぶしょんう として よめる 奴に通ずるものが見られますね。

「手間いらずな世界が崇高だ。」は直前の「不良」が居ないに越したことはないみたいな意味を込めています。

 一応翻訳しておくと、「しっかり聴けよ、これがオリジナリティとクオリティを両立した先生のラップだぞ」みたいな意味です。

・「悪ぃrapは美容に悪ぃな、微妙な韻とフロウだ no doubt
しみったれたライムばっかで?
「See me」?だれが見るんバッカでーw」


 押韻箇所「美容に悪ぃ/微妙な韻」「フロウだ/no doubt」「しみったれ(た)ライムばっかで?/「See me」?だれが見る(ん)バッカでーw」

「悪ぃrapは美容に悪ぃな」は「See me」のVACONのバース「イイ Rap は美容にもイイよ」のサンプリングです。
 翻訳すると、「あなたのラップは微妙です、疑う(doubt)余地も無く。そんなしみったれたラップなんか誰が聴くんでしょうね?」です。

「たれたライム/誰が見るん」は前述した「同じ母音が連続する箇所は、音が1つ足りなくても韻として機能」するを利用しています。

 直前のパートで押韻密度が足りないなと思っていたので、ここで持ち直してくれたのは嬉しいですね。

・「年々韻踏む数がスカスカになってく 歌詞が (菓子パン) 薄皮のライム
不景気でスベりそうで~」


 押韻箇所「数/ガス/カス/カ/が薄皮」

 言葉遊びが先行し過ぎて分かりづらくなってますね。あまりよろしくありません。
 nqrseの過去曲は光るものがあるんですが、シンガーソングライターになってからは急激に質が低下しています。それを薄皮パンシリーズが5個から4個に内容量を減らしたことに合わせて指摘したかった箇所なのですが、「歌詞が/菓子パン」とするのは無理がありますし、「薄皮のライム(果物)」の掛詞はまだ良いとしても全体的にあんまりパンチがないですよね。
減点はしませんが加点もないかなといった感じです。

「不景気で」は薄皮パンシリーズが4個になっちゃったことと絡めています。分かるわけないだろ。

・「不景気でスベりそうでマジ滑稽w おっと、素敵ですね
一所懸命待ちぼうけ喰らってるラップの女神に
ダサいライン既読無視でバイビー」


 押韻箇所「不景気でスベりそうで/素敵ですね一所懸」「不景気/スベり」「マジ滑稽w/待ちぼうけ」「らってる/ラップ」「女神に/でバイビー」

 まぁそこそこって感じですね。特筆することもあんまりない感じの押韻です。
「らってる/ラップ」に関しては踏めてないんですが、撥音を揃えることにより無視できないレベルで聞き心地が良くなっているので韻判定しました。

「ダサいライン既読無視」は「薄皮のライム」に対応させた言葉遊びとして考えたのですが、録音段階位で「これハハノシキュウのパクりだな……」と気づきました。「君のパンチライン既読スルー」ってやつですね。
 まぁ私は合うと思ってOK出しましたが、人によってはアウトと評するでしょう。

 意味的には「素敵ですね/一所懸命」で切れています。
 翻訳すると、
「韻少なすぎて滑稽ですね。おっと口がスベりました。」
「あなたのラップダサ過ぎて女神に既読スルーされてますよ。」
って感じですね。

・「仕方がないから手元のファン洗脳する
「あんま舐めないでね」って?(fuck)」


 押韻箇所:「仕方/いから」「手元のファン/洗脳(する)『あん」「ない/ファン/『あん/(fuck)」

 まぁ普通ですね。「手元のファン/洗脳(する)『あん」はちょっと面白いかな~くらいです。ここは韻を分割しているんですね。「eoooan」→「e(n)oo(uu)an」、「n」は「o」と対応させて構わないので、(uu)で韻を分割している形になります。
 結果的に「ファン/『あん」をアクセントにグルーブが生まれているので良いんですが、あんまりこういう押韻は好きじゃないです。
 そもそもここはパンチラインパートというか、「その程度のお前が『あんま舐めないでね』なんてイキがっていいわけないだろ」と訴えるパートですからね。

・「まともにラップも出来ないカスなら日本語ラップを語るのやめたもれ」


 押韻箇所「ラップ/カス/ラップ/語る」

 当楽曲の肝です。押韻が無いのはそのせいですが、分かり易くこの曲のコンセプトを伝えているので良しとしています。
「やめたもれ」の「たもれ」はビートの作者が居れている「TamoreS」というコーラスを活かすため、半ば強引に入れています。後述する「全員"だ漏れ"なく」も同様の理由です。

・「金輪際「もういっかい!」とかない
この一回を聴き取りなさい」


 押韻箇所「金輪際/『もういっかい!』/この一回/を聴き()()」「とかない/取(り)なさい」

 なかなかのハードライムですね。「とかない/取(り)なさい」では「と/取」を強調した歌い方をしているので韻判定していますが、人によっては「かない/なさい」という韻だと認識するでしょう。どちらでもいいと思います。
 なぜならこのパートの主役は「金輪際/『もういっかい!』/この一回」ですからね。「を聴き取り」も「取」以外は踏めていますし、「取」は「とかない」の「と」と対応しているので、2つの韻を繋ぐ架け橋として機能していると思います。充分な対価ですね。

・「貴重な意見も「boomers rumors」
切り捨てなきゃすぐ「周波数が
狂う」 安定感のない雑魚
(Booo!) 完全下位互換野郎」


 押韻箇所「すぐ/狂う』/(Booo!)」「安定感のない雑魚/完全下位互換野郎」

 そんなにですね。「貴重な意見も」「切り捨てなきゃ」は踏めてないですし、ここの文末の押韻は「See me」で踏まれた韻を流用しているだけですし。
 ただ「安定感のない雑魚/完全下位互換野郎」で綺麗に落とせるような内容になっているので、大幅減点とまではいきません。これが無いと何故「安定感」がないのか分かりませんからね。あと相手の楽曲のサビをそのまま使って煽っているのは結構芸術点高いので、なんなら減点しなくてもいいまで出てきたな。
 まぁ後半の押韻は「(安定)(感)(のない)(雑魚)/(完全)(下位)(互換)(野郎)」と分ければそんなに難しい韻でもないので、プラマイ0って感じですね。大したことしてないです。

・「日本語の本当の発音知らない。」


 押韻箇所「本語の/本当の/(発音)」

 スタミナ切れっすか?w
 自虐はともかく、(発音)としているのは「音」が「語/当」と対応しているからですね。
 まぁこれを韻と見なすかは微妙ですが……。私は韻として認めません。ただこういう踏み方もタカタカラップでは効果的に用いられることもあります。
 例えばAdoの唱「皮膚"を"破り"そう"な"程"に跳ねる心"臓" くらい激"情"的"仕様" イニミニマニ"モ" ご来"場"からの雷"光" かくれん"ぼ"してるその気持ち解"放"」は""の「ou(唱)」を強調しているタカタカラップです。ガチガチなハードライムでなくても聴き心地が良いのはAdoの歌唱力に加えてこの押韻構造があるからなんですね~。
 それを私が使えてるかといえば微妙ですが。多分探せばこういう踏み方は私もしてるんですけど、これを韻と認めるのは判定が甘すぎるので今回は踏めてない、ということにします。

・「お前のレモネード、まるでラムネ、子供向けの層だ。
音も抜けたようなフレーバー、すぐ『名画』とか~」


 押韻箇所「子供向け/音も抜け」「層だ/ような」「フレーバー/すぐ『名画』」

 ラムネがlemonadeの転訛 (日本で音が変化) したものという話は知ってる人はいると思います。
 このラインはつまり、「君やたら英単語使いたがるけど全部日本訛りキツ過ぎて子供しか騙せないよ?」という意味です。
 加えて、「子供向けの層だ」はつまり「子供向けのソーダ」、nqrseの楽曲「レモネード」に対しても「子供騙しの曲だね」というディスが込もっているわけです。
 子供向けなので炭酸が抜ける、nqrseの適当な発音に対して音が抜けているという指摘に繋がり、甘ったるいだけの歌い方のフレーバーが香ってくるぜ。みたいな意味が込められています。
 レモネードは英語っぽく、ラムネはわざとらしい程カタカナっぽく発音しているのもそういうことです。あなたの「レモネード」は「<ラムネ>」というわけです。

 正直、ここの押韻は可もなく不可もなく程度なのですが、ダブルミーニングが上手く行ったと思っているので加点対象です。なかなかいいんじゃないかな。

・「~ようなフレーバー、すぐ『名画』とか英語話者気取る歌い方、母国語愛さないヘイターが感覚でライミング?」


 押韻箇所「バー/画』/話者/方」「レーバー/英(語)話者/ヘイター」

 歌い方に気を遣い過ぎて韻がおざなりになってますね。
 しかし、この後続く押韻は「レーバー/英(語)話者/ヘイター」のような、文中の一文字を踏み外しながらも語感踏みとして成立させているものが多いので、そこへ滑らかに繋ぐための韻として考えると無駄な韻ではないと思います。
 だとしても韻が少なすぎるんでただのお経になってますけど、nqrseのラップを真似して揶揄してるわけじゃないんだったらミスですけど、文脈的に真似してると言われても不思議じゃないですね。少しの減点で許しておいてあげましょうか。
 あ、『名画』は楽曲レモネード内で使用された歌詞です。本当にこんな感じの歌い方してて鳥肌立ちました。悪い意味で。

・「母国語愛さないヘイター(→nqrse)が感覚でライミング?
半信半疑 誰かのアレンジ 人気レシピ
「韻にテクニック」
「斬新なリリック」感じない
理由は他人様のパンチライン」


 押韻箇所「ライミング/半疑/なリリック」「半信半疑/斬新なリリック/感じない/パンチライン」「人気レシピ/韻にテ(ク)ニッ(ク)」「テクニック/リリック※」

「理由は他人様の」が全然踏んでないのにいっちょ前にかっこつけたメロディで歌ってるのイラつきますね。nqrseの「Trust me」に通じるものを感じます。全曲聴いちゃったせいで耳が不具合を起こしてしまったのかもしれませんね。理由はともかくダサいので減点です。

 あと、「感覚でライミング」はあらなるめいだったか何かの切り抜きで「感覚だよ感覚!」みたいなこと言ってたことから生まれたワードですね。相手の言葉を使って~ってやつです。(元の切り抜き見つけられませんでした。もし言ってなかったらごめんなさい。)

「ライミング」の「グ」はほぼ発音してません。なら「リリック」の「ク」も発音するなよと思うかもしれませんが、この「ク」は※の「テ"ク"ニッ"ク"/リリッ"ク"」を成立させるために発音する必要があるんですね。
 語順も「ライミング→半疑→テクニック→リリック」なので、ここは発音した方が気持ちいいと思います。
 あと「リック 感じ」とk行が連続するので、「ク」を省略すると分かりづらくなるんですよね。そこそこ韻は踏めているんですが、まだまだ韻に振り回されている感が否めません。
「人気レシピ/韻にテ(ク)ニッ(ク)」も美しくないですしね。
全体的に惜しいな。まぁ今後に期待といった感じですね。減点はしますけど。

・「バトル先進国 全身ドブ纏うカス
お前はアイドル あんなもんバトルラップのパロディじゃボケ」


 押韻箇所「バトル/纏う/ア(イ)ドル」「先進国/全身ドブ」「ドブ纏うカス/もんバトルラップ」

 韻は良い、特に「バトル先進国 全身ドブ纏うカス」が全音韻に関わってるのは凄く良いと思う。でもこの短い間に「バトル、アイドル」って何回使ったよ?いや意図は分かるよ。でもちょっと多すぎるね。減点です。まぁ韻が綺麗なのでトントンかな。

 韻とは離れますが、「ボケ」のしゃがれ声なかなか可能性を感じますね。粒感、ザリザリ感がとても耳当たり良いです。習得して使って欲しいですね。

 この辺は全体的に韻が疎かになっています。が、パンチラインや掛詞などでどのバースも相応の対価は払えてるように思えるので、全体的には上の下といった感じでしょうか。

 あとここの「日本語の本当~パロディじゃボケ」は内容が綺麗に移っていくんですよね。「日本訛り英語ダサっ→例えば『名画』→そんなやつが「感覚でライミング?」w→誰かのモノマネみたい→ちょうどバトルラッパーのパロディで反吐が出ます(ドブ纏う)」という風な変遷がビートに合わせて展開されていくのはなかなか高得点です。
ていうか韻はともかくとしてビートアプローチは綺麗ですね彼。ドラムやフロウに合わせて単語を強調することでフロウがビートと噛み合いグルーブを生んでいます。あぁなかなかいいね、全体的に、普通に見落としてました。

・「自称プロを素人とし擁護しようとするコメント欄に言っとくぞ
『みっともないのを気づかせない嘘も方便』とか禁止。」


 押韻箇所「自称プロを/素人と」「自称プロ/素人/し擁護/しようと」「コメント欄に/方便』とか禁止」「言っと(く)ぞ/『みっと(も)ない※語感踏み」「ないのを/ない嘘も※語感踏み」

 あと強いていうなら「くぞ/嘘」で踏んでますが、これはループとして機能してるか怪しいな。私は機能してるように聴こえました。

 はい。ここ翻訳要りますよね。押韻は合格点なんですけど、やっぱり彼韻踏むとすぐ自分にしか分からない暗号を作り出すので厄介です。言葉の持つイメージでベン図を描いて、全てが重なるイメージを表現するというやり方で詩を描いているので少々仕方ないところはあるんですが、文字で読んでも伝わりづらいのはいただけませんね。

 翻訳するとこう
「自称プロを名乗る、アイドル営業で成り上がった素人に対して、『初心者なのに頑張ってて偉い!』『叩かれてるのにステージに立ってて凄い!』『ベル普通に上手くなってる!』みたいな擁護コメント、みっともない姿を晒してることを気づかせないようにオブラートに包んだ嘘を、嘘も方便って言うでしょと正当化すること勿れ」
 嫌いなんですよね心底。批評家気取りの素人が客観的意見気取ってただ贔屓してる中身のない誉め言葉。結局その人のラップや作品を見てるわけじゃないですからね。誰が言ったかじゃなく何を言ったかを見ろよ素人共が。そんな態度でアイドルラップばっかり聴いてるから耳の中にゴミが溜まって<本物>の音が聴こえなくなってるんですよ。ミーハーが専門家気取んな、身の程弁えろ。

 ちょっと言葉が荒くなってしまいましたが、まぁこういう意図が含まれています。
 ここからはnqrseではなくnqrseのリスナーというか信者に向けたライムですね。高級品なのでしっかり味わうように。
 ビートの変わり目と詩の変わり目をリンクさせる。のばラップ以降フルで曲を作ってこなかったブランクを考えるとなかなか綺麗な構成を作れていると思います。
 まぁ翻訳なくてもニュアンスはしっかり伝わると思うので、分かり易さの減点は少なめに、韻の大幅加点と合わせて「なかなか良い」とさせていただきます。

・「理想と想像をシェイクした素人本物のフェイク」


 押韻箇所「理想と想像をシェイク/素人本物のフェイク」

 綺麗ですが実質2,3文字の韻を繋ぎ合わせてるだけなので、技巧の面で劣ります。が、まぁ聴き心地は良いので良しとしますか。

 ラッパーを名乗る最低限の最低限って感じの韻ですね。

・「本物のラッパー?笑わせんな、
いいとこ乞食の同情ラッパー」


 押韻箇所「本物のラッパー/の同情ラッパー」「ラッパー/笑わ/ラッパー」「いいとこ乞/食の同情」

「ラッパー」って単語使いすぎ。減点。「いいとこ乞/食の同情」は無意識に踏んだ韻ですから、ただただ偶然ちょっと良い感じになっただけのラインです。認めません。下の上。

・「"持ち上げちゃうのだぁれ?"
お前ら全員だ漏れなく」


「TamoreS」に合わせた「だ漏れ」です。ここは語りパートなので押韻採点対象にはなりません。
「"持ち上げちゃうのだぁれ?"」のサンプリングは、原曲の「構ってチャン 勢い余って champ 持ち上げちゃうのだぁれ?」の意図を汲んでいるので、かなり美しい引用になっていると思います。
 持ち上げてるのは信者ファンです。

・「ラップを知らない99人の
信者の生存に一番の手を切った露天商
言いたかねぇけど死んだ個性の似合った奴隷よ
シンガーがラップ語んなよそ者」


 押韻箇所「信者の生存/一番の手を/切った露天商
言いた(か)ねぇけど/死んだ個性の/似合った奴隷よ」

 良い押韻ですね。100点です。「言いたかねぇけど」の踏み外しも良い位置で踏み外しているので問題なし。ここが強調されることで、「死んだ個性の似合った奴隷よ」がどうしようもない本音なんだなと伝わります。

 でもこれ1年くらい前に描いた楽曲(未発表の合作)のフレーズをそのまま持って来ただけなんですよね。
 原文はまぁ……、いつか公開します……。(いや正直私のせいで合作の制作滞ってるとか言えねぇ……。こんな記事書いてる場合じゃねぇだろぉ……。)

 ちなみにその合作のリリックは文句なしの100点です。そう考えるとこの暴牛 to nqrseは出涸らしですね。まぁ彼には充分過ぎる程濃いと思いますが。

「ラップを知らない99人の信者」とは、切り抜きでのnqrseの発言「(俺のラップの良さが)99%には伝わらなくても、1%の分かってる人には伝わると良いな」という思いあがった発言から引用しました。「ラップの良さなんて分かってない99%の信者にしかあなたのラップは届いてないですよ。」という煽りです。相手の言葉~って奴です。

「シンガーがラップ語んなよそ者」
 本音ですね。最後に一番言いたいこと言って〆る構成は個人的に好みです。

 うん、ここのパート100点だな。流石過去の私のラインを流用してるだけある。


【総括】


 喧嘩売り過ぎ。曲じゃなくてこの講評文が。いろんなところに飛び火しましたが、口が滑ったということで許して欲しいと思います。

 全体的にクオリティは高いですね。ただやはり拙い箇所、韻に振り回されている箇所などが目立つ印象を受けます。
 今後そういった部分が改善されるといいですね。
 自分の楽曲なので当然なのですが、ほとんどの箇所は作詞に対する姿勢も模範的で良かったです。

 ただやはりモチーフにnqrseが含まれているので、そこに引っ張られ気持ち悪くなった箇所は結構ありました。
 冒頭のメロディラインや日本訛り英語を茶化すパートなどですね。
 日本語ラップ自体は問題ないので、このまま自分のスタイルと他の細かいところを洗練させていって欲しいです。

 というわけで、
「暴牛 to nqrse (なるせをラップでディスってみたw) / 暴牛a.k.a.至極」
の日本語ラップ至極ポイントは82点とさせていただきます。

 30音超えの押韻を始めとする挑戦的で高品質な押韻や、サンプリング、掛詞のクオリティ、およびビートアプローチによる大幅加点。
 分かりづらさ、歌い回しの未熟さ、素人MIX、複数箇所に見られる語彙の重複による減点。
 基準点を50点としてそれらを加味し80~85点の間と判断したのですが、この程度のラップに85点もつけるのはやりすぎな気がしたので82点としました。

 というわけで、ここまでお付き合いいただき有難うございました。
 ビーフというのはHIPHOPカルチャーにおける伝統芸能みたいなものだと思っていて、私はこれを「平和のために暴力ではなくラップで雌雄を決するための手段」として高く評価しています。
 2024/01/28時点でのこの動画の再生回数は1300越え、低評価数は50近くあり、人を煽って楽しむだけの猿が残したアンチコメントも5つ程あります。
が、文句を言いたいという方はね、私がnqrseに最低限の敬意を払ったように、ラップを一曲描き上げるという経緯を経験して欲しいです。
 もしかしたら素晴らしいラップが生まれるかもしれません。そうやって日本語ラップの開拓が進んでいくのも、私は良しとしています。

 それじゃ、この記事が面白かったら感想なり共有なり異議なりフォローなりなんなりかんなりしてください。
それじゃあ、また今度。

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