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妄想練習001: 楽園ボーイミーツガール

なるべく毎日800字以内の小説を完結させる、それが妄想練習。題材は自分のInstagram。写真にそれっぽい物語をつけます。通し番号を振っていますが、それぞれが独立した短編(になる予定)です。

 セントラルパークは、もううんざりだ。
 健康増進にうってつけの緑豊かな公園。窮屈なドーム都市の風景を覆い隠す、成長促進剤漬けの巨木。わざとらしく青々とした芝生。どこまでもつくりものめいた楽園。ずっと同じドームで暮らしていれば、あきあきするというもの。
 そんなことを何度も言っていたら、次の休暇に、両親がいつもとは趣向のちがう場所へ連れだしてくれた。ドームの端っこにある高級ホテルは、「外」の風景を眺めながら優雅なリゾートライフ、が触れこみだった。
 いつも疲れている両親にしてみれば、リゾートなら何でもいいんだろうけれど、ぼくは「外」にさらけだされたプライベートビーチで圧倒された。覆うもののない太陽。目の前の湖は、一見きれいでも、死の海だという。焼き尽くされた大地はひからびて砂になっている。それでもぼくたちのビーチには、豊富な水をたたえるプールがあり、呼べばすぐにウェイターが喉を潤すオレンジジュースを運んでくる。
 手をのばせば届くのに、あちらとこちらはまるでちがう世界みたいだ。手をのばせば。
 ぼくはプールから身をのりだし、手をのばした。沙漠の熱風にあおられ、目を覆ったその一瞬、あっと思ったときには遅かった。ぼくは本物のビーチ、死の海の砂浜へとダイブしていた。
 目の玉がひっくりかえるような砂の熱さに、ぼくは出したことのない声で叫んでしまった。飛びあがるように起きあがり、熱さのせいか恥ずかしさのせいか、頬がひどく熱い。
 砂の上には、女の子がいた。ぼろ布を頭からすっぽりかぶって、黒く丸い目をきらきらさせていた。
「あなたは楽園の天使さま?」
 水着の天使なんて、まったくもって格好がつかない。

(697字)


妄想練習の経緯については↓


今回のアイディアメモと構成

つくりものの楽園
敷地の外は沙漠
休暇中の少年
沙漠の少女
砂の上の楽園
ドーム
セントラルパークにはうんざり
起 沙漠のリゾート地にやってきた少年アキル
承 境界の外に身を乗りだし、外に出てしまう
転 外の少女チカに出会う
結 お互いがお互いの住む国を楽園だと言い合う


作者コメント

もう当分続きそうな文章で困る。あと、いちおう名前を決めたのに出せる尺がなかった。

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