【第四話】セネクトメア 序章「始まりのナイトゲート」
【前回までのあらすじ】
現実と夢の狭間にある世界「セネクトメア」に辿り着いた主人公(坂本俊輔)は、セネクトメアの治安を守り、謎を解明する組織「ホープライツ」のリーダーであるギブソンと、解析官の如月と出会う。彼らのアジトで、セネクトメアの秘密を教えてもらった主人公は、ホープライツに入団することを決意する。
ギブ「よし!じゃあさっそくだが、職種を決めるか。」
俊「職種?この世界にも、職種があるの?」
ギブ「あるさ。現実世界と違って、ここでは金は必要ないから働く必要はない。セネクトメアでの職種は『自分がどんな力を特化させるか』によって変わる。」
まさか、夢の中でも職業があるとは思わなかった。現実世界でも、来年には進学か就職かを選ばなきゃいけないけど、思っていたよりも、その時は早く訪れたのかもしれない。
俊「職種は、好きなものを選べる?」
ギブ「ああ。自由に選んでいいぞ。ただし、セネクトメアでの職種は四種類しかない。何か分かるか?」
俊「たったの四種類!?そんなんで世界が成り立つの?」
ギブ「金を稼ぐ必要もないし、飲食しなくても死なないからな。働かなくても生きていける場所だから、必然的に、職種は少なくても問題ないってことになる。ほとんどのリンカーは、遊んでるだけだしな。」
ハチャメチャな世界だとは思っていたが、想像以上かもしれない。ほとんどの人間が遊んでいるだけなんて。それはそれで幸せで楽しいかもしれないけど、大丈夫なのか?現実とは全く違う常識に、少し戸惑う。
それはさておき、たった四種類の職種しかないってことは、それはこの世界でも必要な職種ということだろうか。
俊「ちなみに、その四種類の職種って何?」
ギブ「せっかくだから、当ててみな。」
ギブソンと如月が、微笑んでいる。
場の空気を読み、このクイズの答えを考えてみる。
おそらく、今アジトにいる人間も、何かしらの職種に該当しているはず。そう思い、周りを見渡してみる。
ギブソンは、ソリッド・スネークのような軍人風の格好をしている。如月は、いつもパソコンを抱え、キーボードを叩いている。大きなモニターが並ぶ壁際には、何か作業をしている人達がいる。
確か、如月を紹介された時に、解析官って言ってたな。ホープライツには『この世界の謎を解明する』という任務がある。ということは、1つは解析官か?
我ながら冴えてるな、と思った。更にギブソンの格好から推理すると、どう見ても戦闘員という職種があることに間違いはなさそうだ。俺が初めてこの世界に来た時も、神姫と衝突してたし。
解析官と戦闘員。あと二つは何だ?建物があるってことは、大工?パソコンがあるってことは、IT系の何か?まとめると、製造者といったところか。
この部屋にも、自動販売機や飲み物、モニターからパソコンまで色々揃ってる。当たり前のことだけど、物を作る人がいないと物は存在しない。壊れたら修理する必要もある。
最後の一つは何だろう。個人的には金魚屋であって欲しいが、その可能性は極めて低い。色々考えてみる。
人がいるってことは、コミュニケーション系の何かかな?営業とか仲介人とか、弁護士とか。まとめると、接客業?w
自分で考えて自分で笑ってしまった。とりあえず答え合わせをしてみよう。
俊「解析官と戦闘員と製造者と接客業!」
如月「お~!」
如月が、驚いた顔をしている。まさかの全問正解か?そう思った次の瞬間、ギブソンと如月が笑い出した。
ギブ「何だ接客業ってwこの世界にレストランや服屋はないぞ。」
どうやら、接客業はないらしい。
ギブ「まぁでも惜しいな。戦闘員だけ正解だ。解析官と製造者は△で、接客業は✖。」
やはり戦闘員は正解だったか。でも△ってどういう意味だろう?
俊「もったいぶらずに答え教えてよ。」
考えるのもめんどくさいので、聞いてみた。
ギブ「正解は、戦闘に特化したソルジャー、自然の理を操るマージ、物理的な物の具現化と解析ができるエンジニア、抽象的なものの具現化と解析ができるクリエイターの四種類だ。」
ゲームの中でしか聞いたことのない職種と、現実世界でも聞いたことのある職種が二つずつ。俺の推理は、惜しかったような惜しくなかったような。
そう考えてると、ギブソンが説明し始めた。
ギブ「ソルジャーは、戦闘を得意とする職種だ。戦闘手段は様々で、空手やムエタイって奴もいれば、剣や槍を扱う奴もいる。銃火器を扱う奴もいるが、現実世界ほどの威力はない。」
俊「そうなんだ。確かに、銃火器に現実と同じ位の威力があれば、みんなそれを装備するもんね。」
ギブ「人それぞれレベルがあるし、各能力値にも個性がある。扱うジャンルは、好みで選ぶことがほとんどだ。ちなみに俺は、メタルギアシリーズが大好きだから、ソリッド・スネークに憧れてソルジャーになった。」
やっぱり寄せてたのか。
俊「なるほど。じゃあ、マージは?」
ギブ「マージは、簡単に言うと魔法使いみたいなもんだ。ドラクエにもいるだろ?攻撃系の奴もいれば、回復や補助系の奴もいる。更に属性も、炎、氷、雷、風、光、闇の六種類ある。」
俊「ドラクエというより、ファイヤーエムブレムだねw」
この世界を創り出した神がいるとしたら、ゲーム好きに違いない。
ギブ「エンジニアは、建物や武器、パソコンや車など、物理的な物を具現化したり、解析したりできる。解析官である如月は、エンジニアだ。」
俊「あそこのモニターに座ってる人達も、何かを解析してる最中?」
ギブ「いや、今は特に何の異常もないから、ゲームでもやってるんだろう。」
ゲーム!?あんなに真面目に取り組んでいるのに!?
近づいて画面を見てみると、見たことないゲームで遊んでる人もいれば、「ツムツムのコイン稼ぎキャラ一覧」を調べてる人もいる。本当にみんな遊んでるだけなんだな・・。
嬉しいような悲しいような感情を引きずりながら、ギブソンの元へ戻る。
ギブ「クリエイターは、抽象的なものを具現化したり、解析できる。この世にないものや、誰も見たことないものでも生み出せるんだ。」
何か夢のある職種だな。
俊「じゃあ、青春を具現化できたりするの?」
ギブ「具現化するイメージさえできれば、可能かもしれん。ただし、抽象的なものに限るから、青春真っ最中の高校生を生み出すことはできない。」
あくまで非現実的なものしか生み出せないってことか。じゃあ金魚も無理ってことになる。
俊「じゃあ恐竜とかは?」
ギブ「それはできる。他にも、ユニコーンとか、想像上の生き物も具現化できるぞ。」
俊「抽象的であれば、生き物でもいいんだね。」
ギブ「まぁ、そんなところだ。これで各職種の説明は終わりだ。どの職種にする?」
俊「一回選んだら、もう他の職種には変えられないの?」
ギブ「いや、転職はできる。ただ、転職すると今までのレベルやスキルは受け継げないから、一からの再スタートになる。そんなに気楽にできないぞ。」
俊「そうなんだ。何にしようかな・・。」
どの職種も楽しそうだけど、どれか一つしか選べないから、慎重に考えて決めないと。
続く。
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