「注意書き」あれこれ

子供向け注意を作ることがよくある。学芸員がするような仕事じゃないかもしれないけど、ほかのだれかがやってくれるわけでもないから自分でやっている。

作品にさわらないで、壁にもたれないで、展示室でお菓子とか食べないで、お水は決まった場所で飲んで…などなど。博物館・美術館を利用する上で大事なお約束なんだけど、意外と大人まで浸透してないことが多いから、子供経由で大人にも知ってほしいなと思い、A5サイズで持ち帰れるように作っている。

子供向けにはイラストで、大人向けには文章で作成し、印刷は両面。そうすれば1枚で子供も大人もわかる、というやつだ。コスト面としても白黒で作成しているので比較的安価に抑えていると思う。

ただ、これが本当に伝わっているかというと、そうでもないらしい。
監視員の方との雑談で判明したのだが、以前作っていたバージョンのほうがまだよかったらしく、現在のイラストバージョンは不評とのこと。以前のバージョンとは、大人向けの文章を子供用にわかりやすく書き換えたものだ。これだと文字が多く、子供が読んでもわからないからと思ってイラストバージョンを作って切り替えたのだが、このイラスト自体が今度は「何を指しているかわからない」らしく、かえってわかりにくくなっている。文字だと親子で来た時に、親が子に読み聞かせて理解させているから、まだよかったんじゃないですかね…と言われてしまった。このあたりのさじ加減、難しいものがある。

ほかの博物館・美術館はどうしているのだろう。このあたりのリサーチがあまりできていないから参考にしたくてもできない。文字の大きさとか分量も知りたいところだ。

目指すところはIKEAやレゴブロックのような「誰が読んでも文字がなくても伝わるもの」なんだけど、それを作ろうとするとすさまじくエネルギーが必要だし、ピクトグラムから何から作らなきゃならない。それをするなら文章のほうがまだ楽。楽なんだけど、文章だと今度は日本語を母語としない人たちに対して伝わらないからどうしたもんかとなる。

そもそも論だけど、博物館・美術館を利用するにあたってどのくらい注意事項があるのか、必要とされるのか。あれしちゃだめ、これしちゃだめ、っていう禁止事項を考えたら割とありそうな気もする。一方でそういうのは日本だけとかいう話もあるから、あまり縛りすぎてもなあという心情もある。ちゃんとコントロールできるのであれば問題ないだろうけど。

注意書き一つとってもこんだけうだうだ考えることが多いので博物館・美術館ってのは大変。大変だけど、そういうところを考えて利用者の満足度が上がるのであれば嬉しいし、そうなってほしいから割と楽しかったりする。博物館・美術館に行くときはそういうところにも注目してもらえると嬉しい。

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