ワタクシ流業界絵コンテ#18

 アニメの監督というのはどうしたらなれるのですか、という質問をよく受けます。これは人それぞれなので一概には言えません。短編がメインだった昔は、個人作品の延長だったので、アニメーター・イコール・監督でした。これが、スタジオシステムによって大がかりな劇場映画を作るようになると、演出部に入って演出助手、そこから監督という道も出来ました。基本的には徒弟制度的な流れで、監督はなるべき者がなる、という説得力があったように思われます。そして時代は流れ、『アニメ』の枠組みが確立している現在はというと、TVアニメで面白いエピソードを演出した演出家や、演出的にも優れた能力を持つアニメーターがスポンサーやプロデューサーの推挙を得て昇格(?)するのが大体だと思います。だから、前述の質問に対しては「TVシリーズで面白い話を作ること」と答えています。
 さて、最近はビデオや1クール(13話)の作品が花盛りです。TVアニメの本数自体も尋常な数ではありません。こうした事が影響して、ある程度各話の演出ができれば監督になれる、或いはさせられるケースが増えています。昔は、グロス(下請け)会社の演出家が監督になることは大変難しいことでしたので、演出家にとっては、こうしたチャンスが多くなるのは大変ありがたいことです。演出5年目、30歳になってすぐの頃、僕は亜細亜堂のプロデューサー氏に呼び出されました。話はというと、グループタックからTVシリーズ(4クール)の監督の打診が来ている。断る理由がないので受けちゃったけどいいよね、というものでした。『受けちゃったけどいいよね』という所に多少の引っかかりはあったものの、確かに断る理由はありません。グループタックは、劇場版『リカちゃん』の制作を中断再開後に引き受けてくれたところで、勝手知ったる何とやら――
「やります、やらせていただきます」というわけで、『赤ずきんチャチャ』を60話で抜け、グル-プタックへ出向になりました。大地さんや桜井さんとの『演出勝負』をリタイヤするのはどこか後ろめたい気がしましたが、1年50本のシリーズを監督できる魅力には勝てません。94年の8月、顔合わせということでプロデューサーの金さんと対木さんに会うと、早速進行中の企画書を見せられました。それをチラと読んだ時の僕の感想は次のようなものでした。
「何じゃ、こりゃあ?!」   (つづく)

NHK出版『放送文化』2001年11月号掲載


読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)