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ポジティブフィードバックでやる気スイッチを入れる

 組織で個人が活躍するためには、組織の中に居場所があり、自他共に重要な存在だと認められることから始まります。そうした自己重要感を高めるポジティブなコミュニケーションが組織内の人間関係においてはとても大事になってきます。
 日常業務において、相手の良い言動に対して良い評価を伝えることをポジティブフィードバックと言います。おおまかには、相手のモチベーション向上を目的に行われるものですが、マネージャーはこのポジティブフィードバックというコミュニケーション手法を活用することで、メンバーに対して果たすべき関わりを実現していくことになります。



ポジティブフィードバックによる4つの承認

 まず、ポジティブフィードバックすべきポイントについて紹介します。その土台には4つの承認があると言われます*。「結果承認」、「行為承認」、「存在承認」、「可能性承認」がそれです。

ポジティブフィードバックによる4つの承認

 「結果承認」は成果・結果に対してポジティブな評価をすることです。目標を達成したり、期日までに業務をやりきれたり、そうしたときに褒められ、賞賛され、頼りにされるといったポジティブなフィードバックを受けると誰しも自己重要感の高まりを実感できると思います。

 次に「行為承認」です。結果が出ていない状態であっても、そこに繋がる行動を起こしていること自体に対してポジティブな評価をすることです。結果は後からついてくるではないですが、やるべきことをしっかりやり切る、結果に向けて努力を継続する、そうした日々の行動こそが本質的には重要です。こうしたプロセスをしっかり見守ってくれていて、言葉にして認めてもらえることは、自己重要感にとって大きなポイントになります。

 「存在承認」は、行為以前の、その人がそこにいること自体を認め、大切に扱うことです。例えば、ビジョンに共感して会社に入社してくれたり、プロジェクトのメンバーとしてキックオフの場に集まってくれたり、同じ部署として長年苦楽を共にしてくれていたり、存在それ自体にポジティブな言動をする機会は多くあります。そうした機会を通して自己重要感を高めることができます。

 最後に「可能性承認」です。相手の未来の可能性を信じて、期待するというコミュニケーションです。これは、とてもポジティブなフィードバックだと思います。仮に結果が出せない状況があっても、きっと次はできると信じてるとか、ネガティブなフィードバックをするような事態でも、君ならきっとできるから期待している!といったポジティブなフィードバックに変換することで自己重要感を高めていくことが可能です。


相手の個性にあわせたフィードバック

 誰にでも同じ言葉でフィードバックをして、ポジティブな心象を与えられるとは限りません。個人の性格はさまざまです。生まれながらの気質と、人生経験を経て深まる思考が相まって、その人の性格として他人には映っています。その性格にあわせて最適な言葉でポジティブフィードバックを行う必要があります。性格に関しては、様々な分析ツールがありますが、ここでは最もシンプルな「タイプ分け™」を紹介します。*

タイプ分け™

 コントローラーは、トップダウン型の人物です。リーダーシップを発揮するのが得意で、起業家や経営者に多いタイプです。逆に人や場を支配したがり、他人に指示されるのが苦手です。ポジティブフィードバックする際は、相手を上から評価するようなコミュニケーションは禁物で、「この成果はあなたのおかげ」と、事実をストレートに賞賛するのが有効です。また、その人が認める先輩や上司から賞賛認されるのも嬉しく感じます。

 プロモーターは、人の輪の中心で盛り上げ役として活躍し、注目を集めるような存在です。アイデアマンでチャレンジも得意、人を巻き込み、その場を仕切りながらものごとを進めていきます。プロモーターは、人に影響を与えたいタイプなので、他人からのポジティブなフィードバックは大好きです。ヨイショしまくってOKな性格です。

 アナライザーは、沈着冷静で慎重に行動します。ロジカルに考え、しっかり準備してから行動したいタイプで、失敗や間違いが嫌いです。「すごいね」「やるねー」といった抽象的な表現は、バカにされているように感じかねません。「xxxの分析の示唆はよく辿り着けたね」というような具体的な評価や、頭の良さを賞賛するようなコミュニケーションががポジティブに伝わります。

 サポーターは、いわゆる「いい人」です。ギスギスした環境は苦手で、人のために何をするのが好きなタイプです。他人の気持ちに敏感で気配りができます。サポーターは、他人に貢献したいタイプなので、ポジティブフィードバックの際は、「ありがとう」と感謝を伝えたり、「あなたがいてくれて良かった」といった言葉が嬉しく感じます。

 ここでは、4つの「タイプ分け™」を紹介しましたが、他にも人の性格・タイプを分類する方法はたくさんあります。要は相手の人となりをしっかり観察し、相手に伝わる最適なコミュニケーションでポジティブフィードバックをすることが重要ということですね。


フィードバックは伝え方が9割

メラビアンの法則

 相手にあわせた言葉のチョイスが重要と話しましたが、一方で、人と人とのコミュニケーションにおいて、言語情報というのは10%も影響していないというメラビアンの法則というものもあります。

 話の内容などの言語情報(Verbal)が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報(Vocal)が38%、見た目などの視覚情報(Visual)が55%ということで、「3Vの法則」とも言われています。伝え方が9割、話し方が9割的なビジネス書がありますが、まさに定量的にも9割以上が聴覚や視覚の情報が影響力を持つということが確認されているわけです。

 ポジティブフィードバックにおいても、この点は重要です。いくらポジティブな内容、承認を言葉で伝えていても、目を見て話していない、相手に伝える姿勢が感じられないようでは、意味をなしません。目を見て話す、体ごと相手に向いている、相手の言葉を受け止め、頷いて見せる、発言しようとしている時は沈黙を破らずに待つなど、傾聴の姿勢がとても重要です。


ポジティブフィードバックされたい存在になる

 一生懸命頑張った時、その頑張りを認めてもらいたいはどんな人でしょうか?仕事だったら上司かも知れませんし、お世話になった先輩かも知れません。プライベートであれば、自分のことをよく知る友人かも知れませんし、人生をともにするパートナーかも知れません。

 もちろん、頑張りを認めて褒めてくれる存在は誰であってもありがたいですが、自分のことをよく理解してくれていて、頑張る姿を見守ってくれていた人であれば、その嬉しさはより大きいものになるでしょう。

 裏を返せば、メンバーにポジティブフィードバックを行うマネージャーというのはそういう存在であるべきだとも言うことができます。相手のことを認め、理解し、頑張りを見守り、適切なタイミングでポジティブフィードバックをすることができる存在。個性を理解しているからこそ、適切な表現で、伝えることができる、そんなマネージャー像です。


 マネージャーが人を動かし、組織を活性化するためには、ポジティブフィードバックによって自己重要感を高めることが重要であり、そのためにはメンバーひとりひとりの人となりをしっかり見つめて、相手に伝わる熱意あるコミュニケーションが求められるわけですね。


後輩 竜野が思うこと

 相手の良いところを見つけて褒めるのは好きなほうですが、その結果相手の自己重要感を高められているかというと自信がありません。言葉は伝わっているようだけど、なんだかしっくり来てなさそう、ということも時折あります。

 「自分だったらこう言ってもらえると嬉しい」を起点に考えているのが原因だろうな、と薄々気づいています。だた、自分にない喜びポイントをどう想像すればいいかわからずにいました。

 今の私には、タイプ分け™を使ってメンバーを4タイプに分類するのはシンプルでとっつきやすいです。まずは普段の振る舞いや反応から、メンバーがコントローラー、プロモーター、アナライザー、サポーターのどれに近そうか考えて、コミュニケーションのトライ&エラーを積み重ねていこうと思います。


出典
*ヴィランティ牧野祝子 著『国際エグゼクティブコーチが教える 人・組織が劇的に変わるポジティブフィードバック』
*鈴木義幸 著『コーチング流タイプ分け™を知ってアプローチするとうまくいく』


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