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『マニジュ』について書いてみた。

 佐野元春&ザ・コヨーテ・バンドの新作『マニジュ』について書くことになった。最初は「マントラとしての歌」というテーマで書いてみるつもりだった。15年ほど前に「マンダラとしての音楽」というテーマで一万字前後の暴力的な駄文を書き殴り倒したことがあったから、それに較べたら「マントラとしての歌」について書くこともそれほど難しくはないだろうと楽観的に考えたのだ。

 しかし、実際に書き始めてみたら、これが予想以上に難しいテーマだった。とにかく書いても書いても終わりが見えない。書いているうちに一万字どころか三万字を費やしても語り尽くせないテーマではないかと思えてきた。一昨年からの病気や手術によるブランクのせいもあって、病み上がりの筆者の頭と腕がひどく鈍っていることは間違いないが、いずれにしても三万字は長すぎる。

 「ウェブに発表するテクストは(基本的には)三千字以内」という筆者の個人的なルールを盛大に破ることになるのはともかく、そもそもそんなシロナガスクジラ並みに長大な駄文を読んでくれるほど暇を持て余している読者なんて、この極東の島国には存在しないだろう。

 それに気づいて キーボードをカタカタさせる痙攣的な運動をストップしたときにはすでに五千字を超える駄文を垂れ流していたわけだが、それでもまだ勇者は最初の中ボスが潜む秘密の洞窟に辿り着いてもいなかった。しかもその時点で締切前夜の23時57分。

 その瞬間、“Man Needs You”というキーワードが閃いた。といっても、執筆中に「マニジュ、マニジュ、マニジュ」と声に出して呪文のように唱えていたら、それが自分の耳に“Man Needs You”と呟いているように聞こえた、というだけの話だから「ダジャレかよ」と突っ込まれたら「ま、それはそうなんだけどさ」と応えるしかない。だけど、『マニジュ』が“Man Needs You”にも聞こえる、という事実は決して偶然ではないように思えた。

 で、とにかく書き始めてみたら、締切日の朝5時に書き終わった。そして、それと同時に愛用の(ていうか一台しか持っていない)ノートPCが壊れた。それくらいの勢いで書き殴り倒した。文体は滅茶苦茶だが勢いだけはある。死に損ないの復帰作としては悪くないだろう。

 さて、壊れたPCだが、キーボード以外はまだ辛うじて動いているので、数年前に800円で買った中古の外付けキーボードを繋いで、今これを書いている。だが、このままでは近日中に全面的な機能不全に陥ることは目に見えている。次に原稿料が入ったら、すぐにPCを買わなければ。


芳醇な艶を放つ「Maniju」

https://www.moto.co.jp/maniju/critics/02.html

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