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四万十川の奥地で、アジをつまみながらローカル線の行く末を語る

人生の半分をローカル線マニアとして過ごしている。

東京出身の反動か、大自然をゴトゴトと走り、\ポーッ/ と汽笛まがいの音を出すディーゼルカーに小学生の頃から憧れ続けた。
そんな自分は「JR予土線」に目をつける。元から「ものすごい田舎」というイメージがあった高知の山間部に、一日4往復しかないローカル線があるじゃないか…!気がつけば、予土線を全線乗り通せる切符を買っていた。

JR予土線。愛媛南西部の宇和島から、高知南西部の窪川を結ぶ。
”しまんトロッコ”を走らせるなど観光に力を入れている。


旅人相手なら初対面もなんのその

寝床に選んだのは「かっぱバックパッカーズ」。起点の窪川駅から6駅の十川(とおかわ)駅から徒歩10分以内と好立地の宿だ。17:38発の終電(早すぎ…)に飛び乗り、暗闇の四万十川沿岸をひた走って到着。

宿には、自分以外に8人くらいのライダーが泊まっていた。親切なオーナーの村岡さんを中心に、お裾分けのアジでアジフライを作り、食卓を囲って談笑する。およそ初対面とは思えない打ち解け方で、月並みにいえばこれぞゲストハウスの醍醐味だ。

元料理人の方に千切りの極意を教えてもらった


「ローカル線+ゲストハウス」が生んだ奇縁

実はこのゲストハウスに来たのは、あるシンパシーというか、自分との共通点を感じたのが理由だった。

自分は北海道の道北に行きつけのゲストハウスがある。毎年2〜3回ほど遊びにいき、片付けとかお客さん対応を手伝う仲だ。
(足しげく通う度に泊まっていたら、いつの間にか常連から「スタッフ」へと昇格し、お客さんをもてなしたり、webサイトを作ったりしている。自分の第二の故郷?)


ここの最大のウリは、日本最北のローカル線”宗谷本線”沿線にあることで、メインの客層は宗谷本線を目当てに来た鉄道ファン達だ。
宗谷本線沿線の「ウタラといかん」と、予土線沿線の「かっぱバックパッカーズ」の2つは、ローカル線沿線にある旅人宿として、遠く離れていながらも兄弟のように似たものが感じられた。

オーナーの村岡さんに「実は僕北海道でゲストハウスのスタッフやってるんですよ」などと話すうちに、「それってウタラといかんのこと?行ったことあるよ」とのこと。なんと!
しかも行った理由も、「ローカル線沿いの立地が似ているから」で、全く考えることが一緒だったのだから、あまりに同志すぎてもはや笑えてくる。

完全に意気投合した村岡さんと自分は、行ってみた感想や、ゲストハウスの経営の仕方、ローカル線の苦境など色々な角度の話をした。
特にローカル線の苦境については切実で、止まらない衰退をどうしたらいいのかは、お互い答えがないながらもあれこれと喋った。(ローカル線は利用者の少なさゆえ本数があまりなく、自家用車と比べて便利さが大きく劣るため、減便や駅・路線そのものの廃止などの憂き目を見ている)

車ではなく駅を積極的に使う、観光資源としての存在価値をアピールするなど、あれこれ案は出るものの、どの案にもそれを阻む要因がある。モビリティとして完全に引けをとってしまった鉄道が、他にはないメリットで盛り返すことはできるのか。それで宿や地域を元気にすることはできるのか。難しい問題で結論は出なかったが、いずれこの話題はどこかで詳しく書きたいと思う。

宿の窓から見える予土線。新幹線をモチーフにした可愛い電車が走る。
普通列車は1日上下4本ずつしかやってこない。
宗谷本線(北海道)。こちらは1日上下3本とより少ない

「馬路村」に何かがある気がする

旅人が集まると、必然的に「どこ行かれるんですか」「おすすめの場所は」みたいな話になる。オーナーの方が色々教えてくれたのだが、その中で県東部の馬路村(うまじむら)が気になった。

馬路村の位置

周辺に合併を打診されても乗らず、頑なに独立を守り我が道を行く自立心の強い村。それはただ単なる意地ではなく、村として「やっていけている」ゆえなのだそう。
この村は柚子の名産地で、採れた柚子を加工、販売まで一気通貫で村内でやっているらしい(これを一次産業×二次産業×三次産業=”六次産業化”と言うことを初めて知った)。巧みなブランディング戦略を採り、人気は拡大、今やJAに属さず”馬路村農協”という自治体単独で採算が取れている地域おこしの成功例になっているという。

おまけにホームページの完成度が高い。どうやらこの小村に、デザイン事務所があるらしく、そこが作成しているという。本業がデザイナーであることもあり、この村にさらに興味が湧いた。

自分は地域おこしに興味があり、東京一極集中の中で地方の里山がどのように独自の魅力を発して価値を広められるか、を最近考えている。もしかしたらその大きなヒントが馬路村にあるかもしれない…。
旅でたまたま耳にした村から、思いがけず何かを吸収できたら面白い。

また第二の集落である魚梁瀬(やなせ)は、中心街から離れた、山奥のさらに奥のホンモノの秘境らしい。人口は150人程度、集落の一部がダム湖に沈んだ歴史を持つ。
何があるのかさっぱりわからないが、こんな山奥にも人の営みがあると思うと、無条件で行ってみたくなるのが自分のサガだ。
とにかく気になって仕方ない。やなせ。魚梁瀬…。一文字めの魚いらなくない……?

高知は奥深い

ひとしきり談笑し、23時を回ると皆寝床に着く。ライダーの朝は早く、翌朝8時にもなればほぼ半分が宿を後にする。「それじゃあ」とだけ言い残して、お互いの連絡先など一人も知らない。
昨晩仲良くした分かなり呆気なく思えるが、その方がかえって、談笑したひと時が貴重な出来事として記憶に刻まれる。

なんにせよ、今回わかったことは、高知県は奥深い。沼にハマりそうだ。
もう12月の東京⇔高知の夜行バスを探しはじめている。


ちなみに、この一帯には「半家(はげ)」という地域がある。地名だからしょうがないとは言え、カタカナで書いてしまっては流石に悪口である



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