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<灯台紀行・旅日誌>2020 年度版

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<灯台紀行・旅日誌>2020 福島・茨城編#7

塩屋岬灯台撮影3

港を後にした。海沿いの道に戻り、少し走り、高い防潮堤沿いの駐車場へ入った。朝来た時にも寄った場所だ。外に出ると、太陽が眩しかった。塩屋埼灯台の立っている岬を見た。ぼうっと霞んでいる。モロ逆光。ということは、岬の反対側へ行けば、順光だろう。比較的きれいなトイレで、用を足し、駐車場を出た。

海沿いの道を、ガードマンのいるところまで行って、右折し、回り込むようにして、岬の反対側に出た。ところが、岬の真下へと続く道に、またしてもガードマンだ。漁業関係者以外、立ち入り禁止だと言う。窓を開けて、すぐそこに見えている、防波堤灯台を撮りに来たんだ、と言ったが、褐色に日焼けた小柄な爺は、要領を得ない。立ち入り禁止の一点張りで、そのうち、少し離れた立看板のそばにしゃがみこみ、迂回路の地図を指さしながら、なにやら、塩屋岬灯台へ行く道順を説明している。ラチが明かない。わかったわかったと、フロントガラス越しに、手で合図して、車を回転させた。

さてと、ここからは、カンを働かせていくしかない。ナビのセットなんか、いちいち面倒なのだ。適当なところで、信号のない交差点を左に曲がった。なんだか、辺りが、だだっ広い。きれいに整地されている感じで、ところどころに、新築の住宅が建っている。なるほど、あの<大津波>に襲われた区域なのだろう。さらに、周りをきょろきょろしながら走っていくと、左手に、がっちりした、巨大な土手だ。ひと目でわかった。防潮堤だ。

辺り一帯が、公園化されているようで、少し先に、休憩所や駐車場らしきものが見えた。少し考えて、土手下の道に路駐した。すでに、灯台を背中に背負っているわけで、これ以上、遠ざかるわけにはいかない。幸い、交通量は全くない。むろん、駐禁の紙を張られたり、タイヤに線を引かれることもあるまい。何しろ、すべてが押し流されてしまった場所なのだ。外に出た。カメラ二台、それぞれ首と肩にかけ、整備されている土手の階段を登った。

土手の上は広い道になっていた。灯台とは反対方向へと、その道は、砂浜に沿って伸びている。ちょうど、昨日見た、<鵜ノ尾埼灯台>の下にあった巨大な防潮堤と、同じようなロケーションだ。ただ、ここの方が、はるかに規模が大きい。万里の長城を、一瞬、想起したほどだ。眼下には、穏やかな、暖かい褐色の、きれいな砂浜が広がっていた。天気も最高だ。ここに居るだけで幸せだ。だが、その砂浜の背後に、<万里の長城>が聳え立ち、連なっている。<大津波>が、人間にどれほどの恐怖と被害を与えたのか、よく理解できた。

土手の下は、広い道路になっていた。左方向は、塩屋岬の下で行き止まりのような感じ。ただ、右方向は、どこまでも続いている。はるか彼方に、小さく岬が見える。あそこがどこなのか、見当もつかない。広くて長い階段を下りた。正面からの太陽が眩しかった。新設の道路と砂浜の間にも、コンクリの真新しい防潮堤があった。これは、さほど高いものではない。見回すと、砂浜に下りる専用の階段が、間隔を置いて設置されていた。

やっと、砂浜に到達した。左手、岬の先端に、灯台の姿がちらっと見えた。位置的に、波打ち際まで行けば、もう少しよく見えるかも知れない。きれいな砂をゆっくり踏みしめながら、歩いた。と、おそらく、一つ手前の岬に隠されていたのだろう、断崖に立つ、白い灯台の全景が見えた。断崖の斜面は、一部、コンクリで固められていた。だが、ま、それにしても絶景だ。二台のカメラで、これでもかというほど撮った。ほとんど同じ構図なのだが、撮って撮っても、撮り足りないような気がした。

アドレナリンが少し収まって、岬の下あたりを、よくよく見ると、そうか、先ほど、<漁業関係者以外、立ち入り禁止>と言われた場所だ。カラフルな道路標識などが見える。さらに、そこから先の防潮堤は工事中だ。ブルーシートなどが、海風にあおられている。ということは、岬の西側?の漁港を守る工事をしているわけだ。なるほど、あのあたりが、下調べした、塩屋埼灯台を西側から撮るポジションだったんだ。

あとは、海の中にある防波堤灯台だ。灯台の上から見た奴だが、ロケーションが変わると、全くの別物。手前に、打ち寄せる波などを入れて、気持ちよく撮った。そう、波の音が聞こえていたと思う。夏場のような暑さではなく、心地よかった。海の色、というか波が緑がかっていて、それが、真っ白に砕けながら、キリもなく押し寄せてくる。

遠くの方から、波打ち際を、サーファーがボードをわきに抱えて、歩いてくる。カメラから目をはなして、どこへ行くのか見ていると、例の<漁場関係者以外、立ち入り禁止>の方へ向かっていく。そうか、ちらっと見えたが、爺のガードマンの背後、断崖の下に乗用車が何台も止まっていた。サーファーの車だったんだ。

引き上げよう。時間的には午後一時前だったようだ。いま撮影画像のラッシュを見て確かめた。なるほど、ちょうど、塩屋埼灯台の午後の撮影時間になったわけだ。砂浜から上がるために、防潮堤の階段を目で探した。階段はかなりの距離をあけて、等間隔に設置されている。だが、みな同じに見えて、自分が下りた階段が、どこなのか少し考えた。付近の空間全体を見直し、目星をつけて歩き出した。

防潮堤の階段を登り、広い道路を横断して、今度は、<万里の長城>の階段を登った。階段の上の辺りに、中年の黒っぽい男が座りこんでいて、そばに牛乳パックのようなものが置いてあったような気もする。昼食を取っているのだろう。その、防潮用の巨大な堤防の上に、変な像が立っていた。海に向かった、見上げるような男子のブロンズ像で、顔の辺りが焼け爛れている。いたずらされたのか?いや、おそらく、銅が錆びて、緑青が頭から垂れてきたのかもしれない。それにしても、異形な感じがしたので、説明書きなども読まず、ちらっと見ただけで、通り過ぎた。<大津波>による大惨事が脳裏をよぎったのかもしれない。

<灯台紀行旅日誌>と<花写真の撮影記録>
<灯台>と<花>の撮影記録 by 関根俊和

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