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破れた夢の先にある人生                            -白い砂のアクアトープ-

The two girls met in the ruins of damaged dream.

「白い砂のアクアトープ」副題

「白い砂のアクアトープ」は、2021年7月から12月にかけて放送されたTVアニメ作品だ。その副題が示すように、本作は夢破れた二人の少女が新たな道を見つける過程を描いている。訳あってアイドルの夢を諦めた「宮沢風花」と落ち目の水族館を閉館させまいと足掻く「海咲野くくる」。彼女らを中心にした青春群像劇は、P.A.WORKS得意のお仕事アニメであり、「凪あす」「色づく」に続く篠原俊哉監督の微ファンタジーシリーズでもある。

「凪のあすから」2013年
「色づく世界の明日から」2018年

そんな本作だが、対する自分の評価は「長所と短所の両方が存在する」というものだ。

長所として特筆すべきは、映像的な部分である。豊かな表情作画は成長過程にあるキャラクターの未熟さすら愛らしく見せているし、観光地でない生活舞台としての沖縄は平屋根や貯水槽といった背景のリアリティに支えられている。AパートとBパートの間に入るアイキャッチは当回の内容を示唆しており、不規則なサブタイトルと合わせて目を惹くものだった。
“作画が崩れない”以上の視覚的魅力が見出せる点を評価したい。

OP2の冒頭。平屋根の上に貯水槽が確認できる。

一方で、ストーリー面には難が多い。くくるが仕事で失敗する場面では、自身もチェックを怠った上司が彼女だけに反省を強要したように見えたし、再挑戦の後とんとん拍子に成功していくのにも違和感を覚えた。また、環境保護の話題は強引とも思える導入で、それから繋がる風花のセカンドキャリアについても窮屈さが続いた。肝心の主人公二人の話が結論ありきであるため、必然性の乏しさに対する不満は拭えない。

さて長短は前述の通りだが、視聴を止めなかった事実から言えるのは、内容について考えキャラクターを感じたいと思い続けられる作品ではあった、ということだ。物語を追いかける楽しさのあるTVアニメ、「白い砂のアクアトープ」。
名作駄作を言う前に、自分は間違いなく本作が好きである。


KITiArc発行「Yashigani Magazine」vol.45 寄稿文より一部改変し掲載。

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