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「女性による初の品評会「美酒コンクール」」関友美の日本酒連載コラム(リカーズ1月号)

 昨年10月、「第1回Japan Wowen‘s SAKE Award ~美酒コンクール2023~」の表彰式が開催されました。フェリミナーズ世界ワインコンクールの日本酒版ともいえるこの品評会。酒類資格を保有する十分にテイスティング能力のあると認められた女性が厳正に審査を行う、日本国内初のコンクールです。今回は女性81名によって審査がおこなれました。光栄なことにわたしも審査員として、ブラインド審査にあたったのでその時の回想をしましょう。

審査中の酒。銘柄や瓶などは伏せられ、ブランド方式になっている。

特定名称ではなく「スパークリング部門」「フルーティー部門」「ライト&ドライ部門」「リッチ&ウマミ部門」「エイジド部門」「ロウ・アルコール部門」といった香味別の6部門で分けたのも新しい点でした。各審査員が2部門、40~50種類を担当し、色、香り、味わいの3つを軸に採点していきます。書き込んだフリーコメントは出品した酒蔵にそのままフィードバックされます。

今回の審査員が表彰式で再会(左から氏家エイミーさん、著者、上左からこばたてるみさん、山本洋子さん)

審査員はおのおの14時〜19時の都合がいい時間に会場を訪れ、自分のペースで2時間ほど審査をおこない帰っていく、というスタイル。ひとときだけ山本洋子さん、藤田千恵子さん、山同敦子さん、友田晶子さんの4名が揃い、声をかけ合う姿を見て、ひとり静かに舞い上がりました。彼女たちの著書や記事に影響されて今日のわたしがある、と言っても過言ではありません。目標としている女性酒ジャーナリストの草分け的存在です。名前を知らない人でも、日本酒資格や教科書の編成にも関わっているので知らずに影響を受けている人も多いと思います。同じ立場で会場にいるのが申し訳ないやら、誇らしいやら。見渡せばソムリエ、酒ジャーナリスト、キャビンアテンダント、飲食店・酒販店勤務者、インフルエンサー、女子大生などさまざまな年齢、職業の女性たちがいました。

左から、こばたてるみさん、氏家エイミーさん、友田晶子さん、著者

 女性審査員だからフルーティな酒や甘い酒が有利では、と予想されていましたが、リッチ&ウマミタイプやエイジド(熟成)タイプの評価が高く、今回の最高峰の日本酒はなんと「天山 純米全麹仕込み 20年熟成」でした。本コンクールコーディネーターの友田さんは「日本酒キャリアの長い審査員やワイン愛好家の審査員の評価が高いというわけではなく、Z世代など若い審査員からも高評価だった点が非常に面白い」と、コメントしています。

本コンクールコーディネーターの友田さんと、七田酒造 社長・七田さん
今回のコンペティション、最高峰に輝いた「天山 純米全麹仕込み 20年熟成」

 わたしが日本酒に興味を持ち、酒場を巡り始めた10余年前、日本酒居酒屋でひとり飲みする若い女性は多くありませんでした。オススメや地方文化を教えてくれる素敵な人が多い反面、ナンパやセクハラなど気色悪い人が多かったのも事実。だからこうして、女性が日本酒を評価する世界が実現されたのは喜ばしいことです。今年は福井県開催、来年はまた違う地域、とコンクール審査と表彰式の拠点を全国各地に移していくそうです。「美酒コン」が定着し、さらに女性が輝くステージとコミュニティが拡がることを願います。

今月の酒蔵

八戸酒類(青森県)
青森県八戸市「八鶴工場」と五戸町「五戸工場」がある。蔵元の橋本家は、八戸の経済発展を支えた立役者。八鶴工場の代表銘柄は「八鶴」、五戸工場は「如空」「三戸のどんぺり」「菊駒」。正統派の日本酒はもちろんのこと、「日本酒なのにびっくりりんご!」をテーマに青森県らしくりんごをイメージした、柔らかな甘さと酵母由来のリンゴ酸が効いた低アルコールの変化球の酒にもチャレンジ。米と米麹だけでこんな表現が?!という驚きを体感して欲しい。

以上

庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」1月号より

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