趣味趣味音楽航海図GO GO Niagara論

 昭和50年代世代の私にとってラジオから流れる音楽は自分の中の音楽教科書を作るのにとても必要なツールであった。
深夜ラジオでディスクジョッキーが紹介する曲のメロディーやアーティスト名をメモし、後日レンタルCDショップや図書館のレコードコーナーでお目当てのものを探し、それをmaxellのカセットテープにダビングし、AIWAのウォークマンに入れ通学の時に自転車を漕ぎながら聴くのは原体験のひとつだ。
更にそのレコードのライナーノーツからも自分の血肉になる指標が示されているものだ。
1976年に日本コロンビア、ナイアガラレーベルから発表された大瀧詠一氏の『GO❗GO❗NAIAGARA』はまさにそれぞれの趣味を遊泳する音楽航海図鑑であろう。
元々は氏がディスクジョッキーを担当していたラジオ関東の『GO❗GO❗NAIAGARA』がベースになっており、この番組のリスナーから泉麻人氏やサエキけんぞう氏らを生み出した伝説のラジオ番組だ。
残念な事に筆者は同番組はリアルタイムで聴けなかった世代だがこの作品が当時の番組の世界を擬似体験させてくれるそれになっている。
アルバム構成は深夜ラジオの人気ディスクジョッキー大瀧詠一が自身の書斎から趣味嗜好に特化した音源を紹介していくスタイルになっている。
ベースになるのはアメリカンオールディーズと戦後日本の流行歌の融合でそれらを上手く自分の曲のエッセンスとして散りばめられている。
「Dr.Kaplan's Office」をバックに前口上をするトニー谷。一人多重コーラスグループ、ジャックトーンズによる「お先にどうぞ」「Why Do Lovers Others Hearts❓️」の遊び心満載のバックコーラス、歌詞に散りばめられた「ドンパン節」「毒消しゃいらんかね」は音楽における日米友好条約、「Barbara Ann」をモチーフにした「月曜の夜の恋人に」(馬場こずえの深夜営業=土曜の夜の恋人に)を架け橋にした大友克洋との異文化交流は後のサブカルチャーブームに大きな影響を与えたのは間違いない。
そして深夜ラジオの特権ともいえるセンチメンタリズムは大瀧詠一氏のウィットに富んだノベルティ気質がスパイスとしてリスナー各々の胸がこみ上げる要素になっている。
この『GO❗GO❗NIAGARA』月曜の夜に恋人に会いに野球場へ出かけ趣味の音楽を聴きながら針きって恋の滝わたりに失敗してもニコニコ笑っていれば私たちのドアをノックしてくれるのだ。

https://youtu.be/M_hDscmvRQY

他、元ネタ多数。

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