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【SELFの本棚】#50 共感革命 山極壽一著

(文:SELF編集部 かつ しんいちろう)

山極先生には2023年4月の『薩摩会議』で基調セッション「文明」にご登壇いただきました。地球の環境危機プラネタリー・バウンダリーのお話や、契約社会の行きつく先の危うさ、そして社交という人類の本質などについてお話しいただきました。(くわしくは、リンクの記事へ)

この本は、その約半年後の2023年10月に発刊されたものです。ゴリラの研究を通して霊長類や人類を鋭く観察する山極先生ならではの視点が多く盛り込まれています。

人類の繁栄は約七万年前の「言葉の獲得」が大きな起点だったと言われていますが、その前に人類同士が仲間とつながり集団を形成するために「共感する」という起点があったのではないか?というのが山極先生の説です。

「共感」という獲得された本能があるのに、人は何故戦争を起こし、破滅へと向かうのか?人類の本性は暴力的というのは間違いで、そもそもは争わない動物だったのではないか?ということを人類史を振り返りながら検証しています。

人類が破滅への道をたどることになった元々の原因は、「言語の獲得」と「農耕牧畜による食糧生産と定住」にあるとしています。言語は様々な虚構を生み出し、その結果攻撃性を増し戦争へとつながり、定住は所有の概念をもたらし奪い合いへとつながる。その結果、戦って勝ったものが奪い、負けたものが奪われるというルールが社会の隅々まで浸透して誰もそのことを疑わなくなる。しかし、人類史からみるとそうした活動パターンはごく最近(といっても5万年~10万年前ですが)のことで、それまではダンスをしたり表情で意思伝達をして移動をしながら移動して暮らしていたということです。

行き詰まり感のある今日、少し言葉を手放して、共感するモードにシフトしてコモンズ(共同体)を考えることも大切だなと本書を読んで思いました。


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