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僕らは単純に聡明で内向的なだけ。

今日は私の子育てブログのなかで「参考になった」と多くの方に言っていただいた英文記事(を抜粋し意訳したもの)を紹介します。

何故この記事を当時紹介したのかといいますと、私自身が記事のなかのウィリアムくんのように周囲から誤解を受けやすい “聡明で内向的な男の子” を現在進行形で育てているからでした。


単純に聡明で内向的なだけかもしれない


That's not autism: It's simply a brainy, introverted boy. の著者は臨床心理学者のEnrico Gnaulati博士で、この記事は著者の著書『Back to Normal』から抜粋されたそうです。

専門家である著者は、聡明で内向的な男子がまだ幼い場合、様々な特徴が自閉的なのか、そうではないのかを見極めるのは、経験を積んだ専門医や専門家でも非常に難しい、と述べています。

聡明で内向的な男の子は、ギフテッドが広く認知されているアメリカでも誤診されやすいグループに属するため、家族はとくに気をつけていないといけないと思います。

お子さんの成長のマイナスになってしまわないように、教育、医療、心理の専門家の様々な意見や解釈に耳を傾けつつ、親である私達自身もしっかりリサーチしたり、得た情報や知識の是非を見極める批判的思考スキルを身につけておくと安心できますよね。

赤ちゃんの頃から育ててきた我が子を一番よく知るのは “私” なのだから、と “私” を過信してしまうのも個人的には危険じゃないかと思います。”私” の直感を信じつつも、謙虚に、客観的に、全体的に見るのが大切なんじゃないかと思います。

結局のところ一番大事なのは、現在の我が子に何が必要で、何が不要なのかを正しく見極めることだと思いますから、過小評価も、過大評価も、判断の正確さや公平さに欠けるという意味で危険だと私は思っています。

この記事を読んで「やっぱりうちの子はOOじゃなくてギフテッドだ」と結論づけるのではなく、「うちの子はOOと診断されたけれど、もしかしたらOOではないのかもしれない・・・」と疑問を持つくらいがちょうど良いかもしれません。

統計的に幼少期(小学校入学前)の男児が一番誤診されやすいそうなので、この記事も あえて『男子』について書かれたようです。

以下、記事の抜粋した箇所の和訳です。


“その男の子は自閉症じゃない。単純に聡明で内向的なだけ。”


聡明で、知的にギフテッドで、ひとつのことに没頭する男児は、幼少期にASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、双極性障害などと誤診されるケースが多い。自閉症をスペクトラム(連続体)でとらえるようになったのも誤診が増えた要因だろう。偏った好奇心、はばの狭い行動、コミュニケーション能力の低さ、頑固さなど、幼少期の男児によく見られる問題行動をASDか否か見極めるのは非常に困難だ。

以下の特徴が見られる男児は医療機関でも誤診されやすい。
・知的発達が著しく、”友達” よりも “物事”(数字、虫、車 etc.)を探究することが好き
・ロジックに惹かれる
・同じことに興味がある子達とでしか会話ができない
・ビジネスライクな話し方だったり、専門的な話しかできない
・執着したときに学習能力を最も発揮する
・とくに幼少期、言葉で表現する能力の発達が(その子自身の)知的発達の速度に追いついてない場合、物事を言葉でうまく説明できず、癇癪を起こしてしまう
・物事をマスターしようとするとき、知的には理解していても、言語・身体能力の発達が年齢相応なため(からだが頭についていけず)フラストレーションが爆発する。

ウィリアムくんの例


生後から知的発達速度が尋常でなく速かったウィリアムくんは、5歳のときに有名大学病院の権威ある医師より20分前後の診察を受け「”on the spectrum” にあり、アスペルガーだ」と診断された。

数年後、より詳しいアセスメントを受けたら、ウィリアムくんの知能指数はIQ144のギフテッド域にあり、すべての分野で1年早く発達していることがわかった。しかしコミュニケーション能力は低く、対人関係も上手くなかっため、自閉症と診断された。家では普通におしゃべりで、時と場合によっては上手に社交するウィリアムくんを知るご両親は、診断結果に困惑するばかりだった。 

8歳になったウィリアムくんを初見し、彼といろいろな話をしたとき、ウィリアムくんがASDではないことは私の目には明らかだった。ごっこ遊び的な会話のなかでの彼の想像力の豊かさ、対話のキャッチボールは見事であり、確実にASDではなかった。

又、ASDによく見られる(例えば昆虫の名前、年表や地図、車種など)詳細な事実を忠実に暗記する作業は、ウィリアムくんは苦手だった。ウィリアムくんは抽象的思考の持ち主で、物事を深く探究し、概念的、哲学的に知識を得ていた。これもASDにはない特徴だ。

ウィリアムくんは現在高校生だが、同じような知的マインドを持つ友達もでき、生徒会で頑張っている。幼少期の頃と変わらず知的好奇心は強く、関心のある教科はA、興味ない教科はF(=落第)をとり、ご両親は頭を抱えている。ショッピングモールなどで友達とハングアウトするよりも、ひとりで自分の好きなことに没頭する方が断然好きなティーンだ。食べ物の好き嫌いも相変わらずだし、(例えば、ランチの時間だから読書を今すぐやめる、などの)アクティビティの変化に対応するのも苦手で、今でも癇癪を起こす。

それでもウィリアムくんはASDではない。彼は聡明で、内向的で、超マイペースなマインドを持っているだけだ。彼本人にしかわからない彼独自のやり方で物事を進めないと納得しない。家族や友達にとっては大変だし、本人も問題視されてしまうが、ウィリアムくんはASDではない。

幼少期診断の罠


もちろん本当にASDであれば早期から適切な処置、トレーニングを受けたほうが良い。しかし幼少期に診断を仰ぐと、ウィリアムくんのように誤診される可能性も高まる。

幼い子どもは(皆)ストレスのある環境に置かれると自閉的な言動をするものだ。慣れた環境、子どもが安心しリラックスしているときでないと、まず診断は正しくできない。

新しい環境に馴染みにくい子、見知らぬ人の前ではかたまる子、両親と離れられない子などは、医師の前で無言になったり、机の下に隠れたり、目を合わせなかったり、手をヒラヒラさせたり身体を動かしたりなどの自傷行為をする傾向にあり、それが自閉的と間違われる場合もある。名前を呼ばれても、返事どころか、呼んでいる人のほうすら向けない子もいるが、これらは自閉のサインではない。 時代錯誤と非難されそうだが、幼少期の男女の発達の違いもある。

(略)

ギフテッド?ASD? (注意:2eの場合もあります)


ギフテッドの関心事は、はばが狭くても、obsession(固執)ではなくenthusiasum(熱中)である。関心事について誰かに夢中で講義していても、聞き手が退屈していたり無視していたりすると気づき、講義をやめたり、不機嫌になったり怒ったりする。聞き手の気持ちや状況が読めずに話し続けるのは自閉的特徴だ。(訳注:聞き手の気持ちや状況を読めてもあえて話し続ける場合は、ほかになんらかの要因がある場合が多く、自閉的であると断定できない。)

ギフテッドの関心事はよどみなく変化しうる。例えばウィリアムくんの場合、世界地理 → 古代史 → ロックスター(とくにビートルズ)の生涯 → ヴィンテージ・ギター、と関心事が変わっていっている。それぞれに繋がりは見られるが、関心の対象は変化していっている。関心の対象には変わらぬ情熱で深く探究していく。一方ASDの関心事は、昔から変わらず一本でいく傾向にある。

又、ユーモアのセンスは、認知能力の発達具合が顕著に出るもののひとつだ。ギフテッドは皮肉や嫌味、不条理を理解し、ブラックユーモアとして使うのも大好きだが、ASDの子達は、皮肉や嫌味を理解できず、文字通り受けとってしまう。

聡明で内向的な男子は誤解されやすいナンバー・ワンだ。答える前にきちんと考えをまとめたいので、咄嗟の質問には弱い。「好きな動物は?」という単純な質問にも(訳注:例えば動物とはクジラやイルカも含めていいのか、ユニコーンのような神話的なものも含むのか、あるいはペットにできる範囲の動物なのか、などと)無言であれこれ必死に情報処理し、1分以上かけてようやく答えたりする。しかし質問者は、すぐに答えられない内向的男子を「理解が遅い子?」「対話ができない子?」などと思ってしまうかもしれない。

聡明で内向的な男子の特徴


聡明で内向的な男子はひとり時間が大好きだ。自分の関心事をネットで徹底的にサーチしたり、ひたすら考え事にふけったり、と永遠に楽しむ。誰にも邪魔されずにぼーっとできる大切な時間&空間が、彼らには必須なのだ。

外向的な我々の文化では、チーム・プレーヤーであることや、人好きであることが、とかく重視される。内向的な男子を持つ親は、外向的であることが良しとされる文化のなかで、なんとも肩身のせまい、居心地の悪い思いをしている。「もっと社交的にさせなきゃ」「もっと友達を作らせなきゃ」とプレッシャーも半端ないだろう。

しかし聡明で内向的な男子も、同じようなマインドを持つ子達や、同じ知的レベルの子達、同じ関心事を持つ子達に出会うと、嘘のように外向的になる。おしゃべりで積極的になり、なかなか乙なソーシャル・スキルを発揮したり、と見違えるほどになるだろう。彼らが(長年出会えず)ようやく出会った “友達” は、一生涯の友達になるだろう。

(大半を略)
(男女の幼少期の発達の違い、癇癪、偏食、などについては省略しました)

まとめ


幼児期の子(とくに男児)が以下の特徴を見せても、すぐにASDであると結論づけるのは乱暴だ。

・目を合わせない
・動き過ぎる又は動かない
・癇癪
・偏食
・変わった関心事
・不思議なコミュニケーション

聡明で内向的な男子がASDなどと誤診されると、凸を伸ばす必要があるのに、まずは凹を標準にしようとされる。ウィリアムくんのような子は、思考回路(=マインド?)が周囲の子達とは単にまったく異なるだけであり、もっと社交的になる必要もないし、ソーシャル・トレーニングも必要ない。単純に聡明で内向的な男の子には、ユニークなスクール・プログラムさえあれば大丈夫だ。関心事のエキスパートになれるだろうし、真の友達とも出会い、なんの問題もなく社交的になるだろう。


Gnaulati, E. (2013, September). That's not autism: It's simply a brainy, introverted boy. Salon. Retrieved from
https://www.salon.com/2013/09/21/thats_not_autism_its_simply_a_brainy_introverted_boy/

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