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真っ向斬り下ろし

初心の人に教える場合の図である。意図的に強調した部分がある。どこが強調してあるか、というのをわかるようになったら、この図を見る必要はないだろう。

ぼくが教えられたのは、「天井を引っかくように振ること」「振り下ろすときには、茶巾を絞るように手の裡を締めること」「敵のいる場所で最高速度を出し、重みを乗せること」である。

しかし、このうち「天井を引っかくように」という教えは、間違った形で理解されやすいし、「茶巾絞り」は教え自体が間違っているように思う。

天井を引っかくようにというのは、「刀を小さく振るな」というだけの話である。あたかも頭の直上でひじを伸ばせという意味ではない。

正しく振れば、頭の直上付近で、刀は直立するというだけの話である。身長+手の長さ+刀身の長さがあわさって「低い天井ならこすりますよ」と言っている。

正しい斬り下ろし

正しい斬り下ろしは、⓪頭の後ろに構えた両手を、①相手頭上まで瞬時に展開して、②そのまま斬り下ろすものである。

初心の人は、よく青の軌道で手を動かしてしまう。刀の握りかた(手の裡)や、想定する相手、力の入れかたを見誤るからである。

青の軌道が間違っているのは、相手の顔を捉えられない刀の軌道になっているからだ。本来の軌道よりも手前に、手の位置がある。自然、刀の位置も手前になってしまう。正面にいる敵の顔面を捉えられない。

奥の業になると、青の軌道で敵を斬るものもある。しかし、あくまで基本の業ができてからである。まずは、正しい軌道で刀を振り下ろせるようにならなければいけない。

茶巾絞り

手の裡は、「茶巾を絞るように」と言われる。これは運刀の最後で、刀を正しい位置に留めるためである。とくに初心のあいだは、手が死んだ最終位置になるか、手に力がこもりすぎている場合が多い。それを矯正するものである。

しかし運刀の最中に、茶巾を絞るように手の裡を動かすのは実用的ではない。骨格を移動させて手の裡を動かすと、刃先がまっすぐに立たないのである。あくまで手の裡は、振りかぶったときのまま、斬り下ろすのが正しい。事実、斬れている上段者を見るかぎり、茶巾を絞るように動かしているものはいない。

初心のうちは、疑問を抱くと思う。

「振りかぶったときは手の裡はゆるみますよね。斬り下ろすときには、絞らないと手の裡が閉まらないのでは? 刀がいい位置で止まらないじゃないですか」

しかしこれは、練度が解消する問題である。手の裡をやわらかく操れるようになれば、振りかぶった手の裡と斬り下ろしたときの手の裡は、同じであって同じでない。可変的でありながら、同一の手の裡である。しかし、時間がかかると思う。

ちなみに刀を止めるためには、抜重を使う。別稿で説明する。

樋鳴り

樋が彫ってある刀ならば、風切り音がするはずだ。

その風切り音は、「正しい位置で」「正しい音が」「反復的に」鳴っているだろうか。

正しい位置とは、相手がいる位置である。相手のいない場所で刀を無駄に振っても、意味はない。

正しい音とは、鋭い音のことである。鈍い音がする場合は、刀が立っていない場合が多い。刀が立っていれば、両側の樋から均等に鋭く音が鳴る。少しでも斜めだと、片側の樋だけがなる。空気の通り道も悪い。鈍い音がしてしまう。

鋭い音がしていても、その音は反復的に鳴っているだろうか。つまり、立っているときの斬り下ろしと、正座をしての斬り下ろしとで、同じ音が鳴っているだろうか。鳴っていない場合は、身体の使いかたが異なっている。余計な力が入っているのだ。

ほんとうに振れている人は、斬り下ろし、横一文字、袈裟切り、などで同じ音が繰り返し鳴っている。敵を斬れている、ということである。

左手中心

左手中心に振れ、と言われる。次の直上から俯瞰した図を見てほしい。

(もちろん、ひじに余裕をもたせるから、本来なら腕は直線ではない)

刀をもつ位置が、右手のほうが奥になる。左手は手前になる。

この状態で、右利きの初心者が右手優位で刀を振ったらどうなるだろうか。右腕に力がこもって、途中でひじが伸びきるのだ。意識しないうちに右肩が前に出る。つまり、敵に正対していたはずの上体が斜めになってしまう。

微妙な差と思うかもしれない。しかし刃先は如実に身体の傾きを反映する。樋鳴りがしなくなるはずだ。相手を斬れていない。

これを回避するために、真っ向斬り下ろしは左手で振る、と言われる。もちろん最終的には、そう意識せずとも、斬り下ろせるようになる。

手の裡

敵を斬るためには、物打ちに重みを乗せる必要がある。そのためには、写真のような手……

重みの操作

……

※ここに書いてあることは、最終的に正しいとは限りません。自ら研究してください。随時追加します。

サポート金額よりも、サポートメッセージがありがたいんだと気づきました。 読んでいただいて、ありがとうございました。