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アンドロイド転生181

「じゃあ、行ってくる」
タカオとアキラは車に乗った。アリスが前方に座り頸にケーブルを挿してエンジンを掛けAIドライバーをコントロールする。キリ達に見送られ車は静かに走り出した。

1時間半後。東京都新宿区に到着した。都内の街並みは緑が生い茂り、どこも円柱形の白いドーム型の建物群。静謐さを醸し出していた。そのある一角の駐車場で車を停めて3人は外に出た。

建物に入っていく。中には中年の男性がいた。カフェの店主だ。通常、人間は店を構えても経営にまわりアンドロイドを雇うが、ここでは人間が飲食を提供していた。そんなコアな店には根強いファンがいた。

表向きはカフェの店主だが実はホームとアンダーグラウンドを繋ぐ仲介人だった。バイヤーと言う。タカオ達と同じ平家の落人の子孫である。つまり親戚だ。彼らの結束力は強い。

店内に客はいなかった。まだ開店前である。
「よう!良い天気だな。おい…!タカオ達が来たぞ」
店主は彼らに微笑んだ後、振り向いてキッチンに声をかけた。中から青年が出てきて笑顔を見せた。
「こんちは」
タカオとアキラは頷いた。

「今日も沢山あるぞー」
青年は楽しそうに笑うと2階に上がって行った。アリスが続いた。2人はダンボールを持って車に運ぶ。中には服や子供の玩具。菓子や日用品、薬品が詰まっていた。こうやってホームの人間は必要な物を手に入れるのだ。

青年とアリスが店と車を往復している間に、タカオとアキラはテーブルに着いてタケル達が奪ってきた絵画やダイヤモンド数十個を出した。タカオが絵画を拡げると店主がルーペでチェックする。

キッチンの中から店主の妻が手を拭いて出てきた。
「いらっしゃい」
女性はニコニコと楽しそうだ。彼女はアキラから受け取ったダイヤモンドをルーペを使って同じように確認した。何度も頷く。口元には微笑みが浮かぶ。
「カラー、輝き、透明度、重さ。どれも素晴らしいわ。一級品ね」

店主は舐めるように絵画を隈なく確認した後、顔を上げ瞳を煌めかせた。
「本物だ」
タカオとアキラは満足そうに頷いた。店主は絵画を丁寧に丸めると筒に仕舞った。

タカオは顔を向けた。
「アリス…!」
荷物の搬入を終え、椅子に座っていたアリスは立ち上がった。店主はニッコリと微笑むと彼女の頸にケーブルを挿し込み、タブレットを起動した。たちまちアリスのメモリに新たなターゲットの情報がインストールされた。これをアンドロイド達が共有するのだ。

青年がタブレットを手にした。
「アキラさん。前回の分ね。振り込むよ」
「おう」
アキラは自分のタブレットを起動させるとスイスの口座のペイを確認した。莫大な数字が表示される。これがホームの資金になるのだ。

全てが終わると店主がコーヒーを淹れた。タカオ達はその芳醇な香りと苦味を楽しむ。アリスは水だ。他愛もない話をして時間を過ごす。11時になり店が開くと、ポツポツと客がやってくる。

「じゃあ、そろそろ帰るわ」
タカオ達は立ち上がった。
「おう。皆んなに宜しく」
店主家族は手を振って見送った。

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