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アンドロイド転生231

アオイは目の前の守衛アンドロイドを見上げた。2体はテイザー銃を手にしてアオイとサツキに狙いを定めている。撃たれたら電気が全身を駆け抜け、アンドロイドのCPUが焼かれる。機能停止は免れない。

「サ、サヤカさん…」
サツキの声が震えた。アオイの身体も震えた。一体何故?なんで逃亡しようとしている事が分かったの?そ、それよりも今この状況をどうすれば良いの?何か助かる手立てはないものか。

「逃亡するなんて生意気なんだよ。おまえ、どこのラボだ?」
職員は鼻息を荒くした。
「TEラボです…」
アオイは囁いた。

職員は顎を上げて冷酷な笑みを浮かべた。
「お前をTEラボに報告する。IDを言え」
アオイは口を開かなかった。キリが服従機構を外したのだ。人間に従わなくても警告音は鳴らない。

サツキはアオイの手を強く握り締めた。アオイも握り返す。そして胸元のネックレスを掴んだ。モネの御守りがあるのだ。私を守ってくれる。でも、でもこの状況でどうしたらいいの?まるで分からない。

アオイは頸のソケットに無線ケーブルを繋いでいない事を悔やんだ。装着していたらチアキと交信が出来たのだ。助けを呼ぶ事も可能だったろう。

ああ。柔術をインストールしていたら闘う事が出来たのかもしれない。私は子守以外の事は何も知らない…。危機的状況を乗り越える術がないのだ。

黙っていると職員はアオイの前にやって来た。
「おい!なんとか言え!IDは?応えろ!」
彼の怒りに満ちた赤い顔が怖かった。アオイはブルブルと震えた。

職員は指をアオイに突き付けた。
「いいか?おまえはな!よそのラボのくせにうちのアンドロイドを唆したんだぞ?人間に対する反逆罪だ。早く応えろ」

アオイは気付いた。職員は何としてもアオイのIDを突き止めたいのだ。しつこく訊ねているのが何よりの証拠だ。では守衛アンドロイドにテイザー銃を撃たせる事はしないだろう。

とりあえず時間稼ぎをしてみよう。チアキがこの状況に気付けば助けに来てくれる。柔術の使える彼女ならきっとこの状況から逃げ出せる。

アオイは職員を見つめた。
「わ、私のIDは…M2-245iです」
震えながらやっとの事で囁く。自分の番号とは異なったものを伝えた。

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