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【1%ノンフィクション】Vol.0982(2010年9月29日発行のブログより)

ライバルは、20代の頃の自分。

すっかり熟睡していた乙は、寝室からお手洗いに起きてきた。

夜中の3時前だった。

書斎からバシバシとキーボードをたたく音が聞こえた。

甲はパソコンにむかってガンガン仕事をしていた。

甲の上半⾝は裸のままで太い腕と分厚い胸板は、
まるで肉体労働者のようだった。

天才画家のゴッホは、とてつもない剛腕だったという逸話が頭を過った。

乙は目が冴えてしまった。

そして、同時に目の前の甲という男に恐怖を感じた。

「あなたって、いったい何と闘っているの?」

乙は襟を正しながら、寝起きホヤホヤの声で聞いた。

甲はパソコンに向かったまま、こう呟いたように思えた。

「20代」

目の前のこの男は、40代になったら30代の頃の自分を、
50代になったら40代の自分をライバルとして永遠にがんばり続けるのだと思った。

乙は、「好きなことは継続できることなのだ」 ということの意味が、
ようやくわかった。

誰に強制されるわけでもない。

誰に合格点を決められるわけでもない。

すべて自分で決めていいのだ。

その代わり、圧倒的実力が求められるのみ。

いたって、シンプルである。

乙は、何かとてつもない怪物を相手にしてしまったように感じた。

こんな感覚は、初めてだった。

また、熟睡できた。

乙の寝顔は、ちょっと誇らしげだった。

...千田琢哉(2010年9月29日発行の次代創造館ブログより)

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