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【気づき】Vol.1196(2011年10月11日発行のブログより)

赤い風船。

30分の間にわずか3回のセリフしか出てこない、
1956年フランス映画。

本でいうと詩のような感じだね。

余計なことは何も語らないんだけど、ジワリと後から効いてくる。

アメリカ映画はとにかくロジカルを重視して理屈っぽいんだけど、
フランス映画はロジカルを超えた感性で観させる力がある。

本でいえば白紙の美がオーラとなって伝わってくるあの感じ。

主人公はまだ小学校の低学年と思われる男の子。

偶然登校中に街灯に引っ掛かっていた赤い風船を見つける。

よじ登ってそれを手にする。

するとその風船は浮揚ガス入りなんだけど、
ちゃんと意思がある生物であることがわかった。

まるでペットのようにその男の子を主人として慕ってくる。

どんなことがあってもね。

まるで忠犬ハチ公だ。

学校へ行ったら、

「そんなものを学校へ持ってくるんじゃない」

といって風船を外に放り出さなければならない。

バスに乗ろうとしても、

「そんなもの持ち込んではいけません」

といって手放さなければならない。

でも、その赤い風船はいつまでも待っているし、
どこまでもついてくるんだよ。

撮影舞台になっているパリの街並みも堪能させてくれる。

それも、人が1人しか通れないような裏通りなんかの庶⺠的な部分までね。

最後に赤い風船は萎んでしまって、
パリ中の風船が男の子の元に集まってきて空を飛んでいく。

この男の子に飼われてみたいと思って。

結局赤い風船というのは、子どもの頃はみんな持っていたのに、
大人になったら忘れてしまう

「夢」

なんだね。

子どもの頃ってみんな、

「将来は大きな会社に入って満員電⾞に押し込められて通勤したい」

「35年ローンでヒィヒィ言いながら郊外⼀⼾建てを買いたい」

なんて考えない。

僕たちの子どもの頃は、
本気でウルトラマンとか仮⾯ライダーに憧れていた。

自分も大きくなったらああなるんだって。

夢と現実の区別がなくなったら、夢が叶うようになる。

風船は決して男の子から逃げなかった。

夢も決して逃げない。

夢から逃げてしまうのはいつも僕たち人間なんだよ。

この映画の監督アルベール・ラモリスは映画撮影中に48歳で亡くなった。

仕事中に亡くなっているのがまたカッコいい。

僕も95歳を超えて今と同じような生活を送りながら、
パソコンの前で執筆中にニコニコ笑いながら逝っちゃって、
曾孫から、

「あ!ひいおじいちゃんわらいながらしんでるよ」

って言われたいな。

死に際にやっていることがその人の天職だと信じている。

追伸.

そこそこ給料をもらっているけど、嫌々仕事しているサラリーマンよりも、夢と現実の区別がついてないまま大人になってしまった男のほうが、
結構いい女を連れて歩いているのは、

その男が運命の

『赤い風船』

を持っているからなんだね。

『赤い風船』

の存在を笑ったら老化現象だね。

...千田琢哉(2011年10月11日発行の次代創造館ブログより)

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