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【1%ノンフィクション】Vol.0926(2010年8月4日発行のブログより)

与え好き。

乙は六本木ヒルズに入っているスターバックスでストローで
マンゴーフラぺチーノを口に含みながら、

「ねぇ、あなたってどうしてそんなに与え好きなの?」

と甲に聞いた。

甲はプレゼント魔だった。

甲と付き合った女性はいつも自分以外の女性には、
プレゼントして欲しくないと不満に思った。

甲のプレゼント好きは打算ではなかった。

それがわかるからこそ、女性は心配になるのだ。

世の中の美人の本音は、尊敬している心底惚れた男性には、
自分以外に対しては冷たくいて欲しいのである。

甲の祖母の哲学で、何かを新しく買ったら、
何かを捨てることによって豊かになるというのがあった。

だから、甲はどんどん人にプレゼントした。

甲の部屋に遊びに来たら、必ず面白いものが置いてあった。

だから、遊びに来た人はそれに夢中になる。

夢中になっている最中に、

「よかったら、それあげるよ」

とプレゼントしてあげると、
それだけで相手は甲のことが大好きになるのだ。

よくプレゼントに何をあげたらいいのか困る、という人がいる。

甲にはこれが信じられない。

女性がデート中にブティックに入ることがある。

気に入ったものは必ず他の商品もひと通り見終わった上で、
最後にもう⼀度念入に手に触れてチェックする。

そして、値札を見る。

「お待たせ。ありがとう、行こっか」

と言ったら、それが今、欲しいものだ。

財布の予算と相談して、今買えるものであれば、
御手洗いに行かせている間にそれを買ってしまって、
その日の晩にプレゼントすることだ。

高価なものであれば、その商品をきちんと憶えておいて、
それを誕生日プレゼントにすればいいのだ。

これが記憶力である。

おっと、
ついついビジネスライクのマーケティング的な話になってきてしまった。

要は愛している、ということは記憶力にモロに出る。

だから女性は誕生日や記念日を忘れることを許さないのだ。

「仕事でも人に与えてばっかりいるの?」

乙は遠回しに質問した。

「そうだね。よく上司に部下に与えすぎたら後から困るぞっ、
て忠告されてるよ」

甲は無邪気に即答した。

「は〜、なるほど。それが成功の秘訣なのね」

とため息を吐きながら言った。

甲は会社で周囲の3分の1の稼働率で周囲の3倍の生産性を挙げていた。

あり余った時間は、人に与えることばかり考えていた。

まさに小学校低学年のドッジボールの試合に、
運動部の大学生が参加している状態だった。

「お待たせしました」

店員が笑顔で注文していたアツアツのチョコレートチャンクスコーンを
持ってきた。

甲はレジで乙が2秒間視線を横にやっていたのを見逃さなかった。

...千田琢哉(2010年8月4日発行の次代創造館ブログより)

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