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「折々のことば」に引用されました

本日(2023年9月3日)の朝日新聞朝刊にて、元阪大総長の鷲田清一先生が続けておられる長期連載「折々のことば」に拙文が引用されました。(サムネイルは朝日新聞の連載一覧のところから拝借しています)

引用されたのは東北大学教養教育院(編集)の『東北大学教養教育院叢書「大学と教養」転換点を生きる』の第七章「女性の高等教育と無意識のバイアス払拭が次世代の幸福の鍵になる」からでした。

日本初の女子学生は理系(化学と数学専攻)だった」という部分が切り取られ、無駄の無い、かつ風刺やユーモアも含まれる鷲田先生のコラムの中にすっぽりと収まっています。あたかも、そうなることが運命づけられていたかのように。

文章を書いているときは、常に誰かの読者のことを想像しています。それは不特定多数というよりは、こんな方に読んでもらえたら良いなぁ、というターゲットを絞ったことの方が多いです。例えば、週刊ダイヤモンド誌の連載コラムであったら、ビジネスマンで生命科学に興味があって、「ふーん、なるほど」と思って、誰かとの食事の折のネタにしてもらう、というような。

本書の場合は、今年がちょうど日本で初めての女子学生が誕生して110年目、そして、法文学部の女子学生が誕生して100年目という節目の年に当たるので、そのような大学の歴史や女性研究者育成の取り組みに興味のありそうな方を想定していました。

はじめに
 人口の約半分は女性であるにもかかわらず、日本ではその能力が活用されていない。女性の参画が遅れているのは特に政治や経済の分野であるが、高等教育の分野においても、諸外国と比してギャップがある。東北大学は1913年(大正2年)に3名の女子学生の入学を許可した。本章では、ちょうど110年前の日露戦争後の当時、最上位の高等教育機関である「帝国大学」に女性が学ぶことがどのようにして可能となったのかを振り返り、日本の置かれた現状を踏まえ、コロナ禍によって浮き彫りとなった社会の転換点において、人々が心豊かに暮らしていく上で、アカデミアにおける女性の参画が鍵となることについて考察したい。

東北大学教養教育院叢書「大学と教養」転換点を生きる』の第七章
女性の高等教育と無意識のバイアス払拭が次世代の幸福の鍵になる」より

鷲田先生の琴線に触れたのは下記のあたりだったかしら、などと想像したり…。

 当時の帝国大学は9月からの秋入学であった。4名は8月8日から1 2日の間に体格検査と入学選抜試験を受けた。本当に女子に入学試験を受験させたことを聞きつけた文部省からは、澤柳政太郎に代わり第二代総長となっていた北條時敬へ「元来女子ヲ帝国大学二入学セシムルコトハ前例無之事ニテ、頗ル重大ナル事件二有之、大二講究ヲ要シ候」という問合せが8月9 日付で送られている。
 北條はこちらにすぐに返答はせず、4名の入試は続行。8月13日に合否判定が為され、黒田チカ、牧田らく、丹下ウメの3名の合格が決まる。理科大学学長(現在の理学部長)の小川正孝と北條が決裁し、3名の女性の名前を含む合格者名簿が翌14日に文部省に宛て発送されることとなった。
 実は、この件は世間の注目を集めており、16日にリーク報道が東京朝日新聞、読売新聞、東京日日新聞に掲載された。このため「女子大生の日」は8月16日とされたこともあったのだが、コロナ禍の2020年に東北大学は、正式に入学許可が官報に掲載された21日をもって「女子大生の日」として正式に記念日登録した。ちなみに、北條はその後、8月25日にしれっと事後報告に文部省に出向いている。電話やメール等の通信手段が一般的ではなかったからこそ、3名の女子大生誕生がこの時期に可能となったのかもしれない。

同上「1.3 日本初の女子大生誕生」より

朝日新聞をクリップして送ってくださった方によれば、東北大学の経済学部出身の元仙台市長、奥山恵美子氏のことばも取り上げられたことがあった、とのことで、リンクを貼ろうとしたら、ウェブ記事になっていないくらい前だということがわかりました。図書館等で以前の新聞は読むことができますので、気になる方は探してみてください。その言葉は……

ときに変人と呼ばれるような人の力が、社会には必要です。

「折々のことば 第789回」

最初の3人の女子学生たちは、マジョリティの旧制高校出身の男子学生たちより年齢も上で、「変人」と思われていたことは間違いないと思います。
もし「女性の高等教育と無意識のバイアス払拭が次世代の幸福の鍵になる」の中身を読んでみたいという方は、第七章を抜き出して私家版としたPDFを東北大学リポジトリにて公開していますのでご笑覧あれ。

この拙文を書くにあたり、そもそも執筆をお声がけくださった東北大学名誉教授の水野健作先生ならびに、史料館の加藤諭先生に改めて御礼申し上げます。以下のサイトも参考にさせていただきました。

誰かに届いて欲しいと思って書いた言葉が、「折々のことば」に取り上げられ、またそれを読まれた誰かに届くことになれば、これ以上に嬉しいことはありません。また、ちょうど数日前の9月1日に、東北大学が国際卓越研究大学の候補として1校、最初に認定を受けるというお知らせがあったばかりで、個人的には嬉しいことが続きました。

そんな今年、女子学生誕生110周年を祝う記念のイベント「門戸開放〜東北大学のダイバーシティ」を9月30日に開催予定としていますので、どうぞ奮ってご参加ください♫


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