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『VIVANT』は間違いなく、壮大な「愛の物語」でした

『VIVANT』とうとう終わってしまいました。最終回、次から次へと怒涛の展開にあっという間の79分でした。もっと観ていたかった…。あの音楽と共にまだまだ余韻が冷めません。

『VIVANT』については中途半端な気持ちで何かを書くことはできないと避けてきましたが、最終回を観終えた今やっぱり書きたくなってしまったという感じです。

あえての内容予告なしでスタートした『VIVANT』。全貌がヴェールに包まれた状態から「敵か味方か、味方か敵か」というキャッチコピーそのものの二転三転する濃密なストーリーに、毎回毎回映画を観たかのような満足感がありました。

「別班・公安・テント」の三つ巴の闘いが描かれていたわけですが、このドラマの根底に流れていたのは“さまざまな愛の形“だったと最終回を観て確信しました。

共に過酷な運命を生き抜いてきた自分の分身エフへの不思議な自己愛。

それを守ることだけを考え忠実に任務を果たしてきた母国・日本への愛(愛国心)。

バルカで死にかけた乃木を救ってくれたアディエルとジャミーンへの感謝の愛。

別班の仲間に対しての“揺るぎない絆“の証としての愛。

初めて異性を愛する気持ちを知った薫への純粋な愛。

死んでいると思っていたけれどテントのリーダーとして生きていた父・ノゴーン・ベキ(乃木卓)への息子としての愛。

その父と亡くなった母・乃木明美から息子・乃木憂助への両親からの深い深い愛。

血のつながらない弟・ノコルへの兄弟愛。

野崎の片腕として、結果的に乃木たちをいつも救い続けてくれたドラムへの愛。

本来なら敵対する関係ながら、互いに一目置いた存在として信頼し合う野崎への愛。

子供の頃に両親と引き離され過酷な運命をたどった乃木が、人として生きる上で大切な“さまざまな愛の形“に触れることで、ここからまた新たな人生を切り開いていく「再生の物語」でもあったように感じています。

乃木に絡んだ愛だけではなく、もっともっと色んな形の愛も描かれていましたね。

例えばテントがやってきたことは決して許されることではないけれど、行き場を失った孤児を救う資金集めのためのテロ活動だったということも途中明らかになりました。あのチンギスが孤児だったことも最終回で判明しました。

チンギスにとってもノゴーン・ベキは大切な存在であり、そこにも確かに愛が存在していました。

ここまで緻密な計算をされ尽くした最終回が、これまでのドラマであったでしょうか?

それにしても、一流の俳優陣と練りに練られたいい脚本が揃えば、こんなにも面白いドラマが作れるのだと『VIVANT』は改めて教えてくれたような気がします。

最終回を観て残念な想いを抱くドラマも正直少なくありません。『VIVANT』の最終回はまだ残る謎も残しながら、同時に続編への序章であるのかもしれません。でも第一部の最終回としてはこれ以上ない完璧なエンディングだと感じました。

『VIVANT』というドラマに出逢えた喜びをかみしめながら、続編の情報を待ちたいと思います。

3ヶ月間、本当に楽しませてもらいました。『VIVANT』に関わったすべての皆さまに感謝です。素晴らしいドラマをありがとうございました!

最後に乃木が知った″愛″を感じられる、私の大好きなセリフを…。

【乃木から父へ】
「お父さん。あなたに逢うまで本当は不安でいっぱいでした。僕のことを覚えてくれているだろうか?逢っても何も感じないんじゃないか…。僕のことを愛してくれないんじゃないかって。あの武装組織のアジトで離ればなれになったあと、ずっと僕を探してくれていたと聞いたときたまらなく嬉しかった。僕は、ずっとあなたに愛されていた。あなたは母と僕を失い絶望の淵に追い込まれながらも、満足に食べることもできない、路頭に迷う子供たちを救うためにテントを作り、何十年もの間バルカの民から厚い信頼を得て弱き人々を守り続けた。息子としてそんな父を心から尊敬します。あなたの息子であることを誇りに思う」

【乃木と薫の会話】
「僕はあなたとジャミーンが一緒にいる姿を見るだけで、すごく温かい気持ちになれるんです。僕はあなたから、人を愛することの素晴らしさを教えてもらいました。この世界には、こんなに素晴らしいものがあるんだって。ただそれを守りたいって、心から思えたんです」
「それってやっぱり、私のこと好きってことですよね?」
「はい。好きです」

ドラマ『VIVANT』より

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