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小澤メモ|Sb|スケートボードなこと。

3 おらが町のスケボーカンパニー。

リベラルな土地柄。
ポートランドは、全米屈指のリベラルな都市と言われている。もともと、西海岸はヒッピー・カルチャーがあったし、ハンティントンやベニスを基点に、ビッグ・ウェンズデーとかドッグ・ターナーなサーフやスケートなどのカウンター・カルチャーも突出していた(今やカウンターではなくメインストリームのひとつにまでになったけど)。それに、サンフランシスコでは、同性愛者のために立ち上がったハーヴェイ・ミルクの公民権運動などが盛んだった。自由な風土って簡単に書いてしまうけれど、まさにそんな感じだ。西海岸のカリフォルニアから北上するとポートランドがある。ちなみに資本主義とサヨナラした森生活を送る家族の物語、映画『はじまりへの旅』の舞台はポートランドより陸続きの北、ワシントン州が舞台だった。

ガス・ヴァン・サント作品。
それでポートランド。ここには誰もが知っているブランド、NIKEの本社がある。ストリートのいたるところに、NIKEがスポンサードしているレンタルバイクがある。スケーターからコワモテからいろいろ集まってくる、おらが町のバー、キャッツ・ポー・サロンとは、限定のNIKE SBをリリースしたりしている。このバーのオーナーは、サンフランシスコでREALやANTI HEROのデッキなどスケート・インダストリーを支える裏番的イカすスケーターのミッキー・レイズだったりする。ガス・ヴァン・サント監督のポートランド3部作『マラノーチェ』『ドラッグストア・カウボーイ』『マイ・オウン・プライベート・アイダホ』の映画の舞台としても有名だ。さらに彼は、世界の先駆けとなったコンクリートD.I.Y.スケートパーク、バーンサイド(かなり立派なお手製コンクリパークをポートランド市のリーガルとして認めさせてしまったことで知られる)を舞台にした作品『パラノイド・パーク』も撮っている。

おらが町のデッキ、DIETA。
そんな町で注目したいのが、NIKE本社とは比べ物にならないベンチャーな規模感の、南オレゴン出身のジョニーとサクラメント出身のフランクがスタートさせたスケートカンパニーDIETA。ミニマムながら、北カリフォルニアなテイストを醸しつつ、しっかりとポートランドに根ざした活動をしている。それは、おらが町のスケボーショップ、コモンウェルズに行っただけでもわかる。狭い店内の壁にディスプレイされていたデッキは、人口密度ならぬデッキ密度が高く、その一画を奪取するのはかなりハードルが高そうだった。一番手は当然、ショップオリジナルのトランプ大統領パロディデッキ。それががっつりと陣取り、あとはノーカルたちのアニキとかヒーローのシグネーチャーデッキが数本のみ。日本で人気のカリフォルニアンなデッキなどは1枚もなかった。そんな中で、DIETAのデッキが1枚、壁の特等席にディスプレイされていた。これを見て、(やるな)と感心したのだった。さらに感心したのが、彼らの勤務態度。いつも撮影後にオフィスに寄ろうと思うのだけれど、16時を過ぎると誰もいないのだ。おそらくは15時くらいからソワソワしだして、それからコンクリートD.I.Y.スケートパークのバーンサイドやダウンタウンへスケートしに行ってしまうのだろう。自分たちがスケートを楽しむ時間を大切にしながら、スケートボードで仕事する。巨大ディストリビューションにはなれないけれど、つくりたいものをつくってミニマムながらスケートボードの上で生きていく。そんな感じだ。好きだな、こういうの。だから、この街に来たら、15時より前にオフィスに行って、ジョニーとフランクのコンビにスケートの話を聞くといい。スポットや町の流し方と、ちょっとしたローカル・ルールを教えてくれるはずだ。3
(写真はNIKE本社の何百分の1かものDIETA本社の入り口に貼られたポライドたち/2018)


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