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空気感染する?結核について知ろう

長年にわたり「国民病」「亡国病」として恐れられた結核は、明治時代から昭和20年代にかけて日本の深刻な公衆衛生問題の一つでした。しかし、国家レベルでの予防と治療の取り組みにより、その死亡率はかつての1%以下に劇的に減少しました。

1980年代に入ると、都市化の進行と共に、かつて結核が流行していた時代に感染した人々が高齢になり、発病率が再び増加する現象が見られました。これにより結核の罹患率低下は鈍化し、1999年には「結核緊急事態宣言」が発せられるに至りました。宣言後は罹患率の低下が再び進んでいます。

国際比較では、欧米諸国は早くから結核の罹患率が人口10万人当たり10未満の低水準を達成していました。日本は2021年に、ようやく人口10万人当たり9.2という数値で低まん延国の仲間入りを果たしましたが、それでも11,519人の新規患者が報告されており、欧米諸国の水準に達するにはまだ道のりがあります。

現代においては、結核への社会的関心の低下や、多くを占める高齢患者における典型的な症状の欠如により、診断が遅れ、集団感染や予後の悪化に繋がることがあります。また、若年層を中心に、外国出生の患者比率が増加していることも新たな課題となっています。これは「世界の結核を根絶しない限り、日本の結核も終息しない」という認識をより強固なものにしています。結核は現在も、日本だけでなく世界規模で最大級の感染症の一つとしてその影響を及ぼし続けています。




結核とは


結核は、「結核菌」という細菌が原因となる慢性感染症です。患者が咳やくしゃみをする際に排出される結核菌は微細で、空気中に長時間漂うことが可能です。これらの菌を吸い込むと、肺の奥深くに小さな病変が生じ、肺の入り口近くのリンパ節が腫れることで感染が確認されます。多くの場合、体の免疫系がこれを抑制しますが、大量の菌を吸い込んだり、免疫力が低下している場合には、病状が進行して「結核症」となるリスクが高まります。


結核は初期に小さな散布性病変として気管支の先端で発生します。これらの病変が集まり、組織が溶けて空洞(穴のあいた状態)を形成すると、結核菌は気管支を通じて肺の他の部分へと広がります。さらにリンパ系や血管を介して全身に拡散し、最終的には肺組織の大部分が破壊され、呼吸困難や他の臓器の機能不全を引き起こし、生命を脅かす状態に至ります。この進行性の特徴が、結核を非常に危険な病気として位置づけています。




結核は肺だけの問題ではない?


結核は、一般的に肺の病気として知られていますが、その影響は肺に限定されません。実際に、結核菌は体内の様々な臓器に病変を引き起こす能力を持っています。特に頻繁に冒されるのはリンパ節で、その中でも首の脇の腫れは最も一般的であり、かつては「るいれき」と称されていました。結核はまた、骨や関節にも影響を及ぼし、背骨の結核が引き起こす脊椎カリエスはその一例です。


結核の影響は腎臓にも及び、腎結核は膀胱など周辺の器官にも問題を引き起こすことがあります。さらに、結核は喉頭、腸、腹膜、そして眼、耳、皮膚、生殖器にまで広がる可能性があります。特に恐ろしいのは、結核菌が血管を通じて全身に散布され、「粟粒結核」と呼ばれる状態を引き起こし、最終的には脳の膜である髄膜に病巣を作り、結核性髄膜炎を発症するケースです。現代の医療では粟粒結核は早期に発見すれば治療が可能ですが、髄膜炎に至ると治療が遅れた場合、患者の約三分の一が死亡し、生き残った場合でも重度の脳損傷を遺すリスクがあります。

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