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老後設計に影を落とす「人口問題」

リタイアメントプランの作成


FP(ファイナンシャルプランナー)の仕事の1つに「リタイアメントプラン」の作成があります。これは、主に定年退職前の方を対象に老後の生活設計のお手伝いをするしごとです。
老後の生活設計で大事なのは「健康」・「生きがい」・「お金」の3つだと言われていますが、実際この内の1つでも欠けていると「ハッピーリタイアメント」というわけには行かなくなります。
FPはこの3つの内、「お金」の部分に関し、クライアントの高齢期の夢や希望を伺った上で、個々の年金や就労による収入、退職金など貯蓄残高、ローンなどの借金残高と実際かかる生活費などをトータルに分析して、キャッシュフロー表を作成し、65歳以後、25~30年間に個々のクライアントがどの程度の生活レベルの老後人生を送れるかについて説明し、夢や希望とのギャップを埋めるアドバイスをします。
現実には老後の生活設計について楽観的に考えている人が多く、70歳代で貯蓄を使い果たしてしまうような人も多く見受けられますし、退職までに安定した貯蓄を築いていたり、退職後も一定の収入が見込めるなど、一見すると、ゆとりのある老後が問題なく遅れるように見受けられるものもあります。
今までの「リタイアメントプラン」はそれで十分であったかもしれません。しかし、今後、今までになかった「人口減少社会」が高齢期の生活設計にも大きな打撃を与えるものとなります。基本的な老後の生活設計をキャッシュフロー表を作成して構築したとしても、実際、そのとおりに行くとはかぎりません。世の中にはいろいろなリスクがあるからです。
老後の生活設計には主な5つのリスクを加味しておかなければなりません。

老後に考慮しなければならない5つのリスクとは、「健康リスク」、「長寿リスク」、「家族リスク(こどもリスク・親リスク)」、「インフレリスク」、「制度変更リスク」の5つです。
一つ一つ簡単に説明しましょう。
「健康リスク」はお解かりでしょう。老後設計は基本的には60歳時点での「平均余命期間」で設計しますが、WHOが2000年に公表した「健康寿命」という言葉があります。「健康寿命」とは、日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間のことで、これから考えると、健康で生活できる期間は「平均余命期間」よりは10年ほど少なくなってしまいます。医療や介護にかかる費用は高齢期には当然のことながら、増加しますし、就労収入を予定していた方は計画変更を余儀なくされます。また健康であってもそれを維持するための費用が必要かもしれません。
二つ目は「長寿リスク」です。老後の生活設計は「平均余命」をベースに行いますので、長生きすればするほどお金はかかります。人間の死亡年齢は大きな個人差がありますし、「健康リスク」が小さく、健康な人ほど「長寿リスク」を負うという関係になってしまいます。平均余命年齢に達した時点でも貯蓄に余力を残しておかなければなりません。
三つ目の「家族リスク(こどもリスク・親リスク)」はすべての人が負うリスクではありませんが、無職や低収入のお子様、無年金・低年金の老親を抱えるなど家族の生活を老後になっても支えなければならない人も少なくありません。
以上の3つは、個人的なリスクであって、従来からも「保険」を上手に取り入れるなど、リスクコントロールは比較的取り入れやすいものです。
それに対して、次の2つのリスクは社会的なリスクといえましょう。
「インフレリスク」はご承知のように、お金の価値を減らしてしまいますので、たとえばハイパーインフレが起きたりすれば、生活が立ち行かなくなります。近年デフレの続く状態に慣れきってしまった、または、インフレを経験した事のない世代が多くを占めるようになってきたため、このリスクは忘れがちですが、必ず加味しておきましょう。
さて最後に一番やっかいなのが「制度変更リスク」で、これが老後設計に影を落としています。
私達の未来には様々な深刻な問題がのしかかって来ていますが、中でも日本社会の最大の課題は「人口減少」問題であることはもはや異論がないと言ってもいいでしょう。そしてその影響をもろに受けて「制度変更リスク」が、程度の差こそあれ、これからの時代には間違いなく起こってきます。
社会保障の現状から見て、「年金」も「医療」も現在の制度が立ち至らなくなります。負担が著しく増加して、給付が大きく減らされることは覚悟しなければなりません。
保険料や税制も毎年のように制度変更があります。特に、老後の収入源の柱である「年金」については、制度破綻の可能性すら考えられます。退職前からの、個人年金活用などを考えなければなりませんが、このリスクに対処するためには制度変更の情報をできるだけ早くキャッチして、場合によってはキャッシュフロー表を見直すことも必要になるでしょう。







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