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息子をとびきりほめたできごと。

昨日は息子が通う小学校の個人面談だった。
やんちゃな息子について先生からどんな話が出るのか、毎回若干の緊張を抱えながら学校へ向かうが、
その度に先生から「たくさんほめてあげてください」との言葉と共に、私の知らない息子にまつわる、さまざまなエピソードが伝えられる。これはこの学校の方針なのかも知れない。

それでもやっぱり拭えぬ不安。
小さな机が並ぶ教室におずおずと入ると、息子が入学してから3人目となる担任の先生が、雨降る窓を背にしてニコニコと待っていらっしゃった。
学力の話、お友達との様子などが伝えられた後、
聞かされたのは帰りの会で毎回必ず手を挙げて発表をしているという息子の話。
どうやら、クラスの帰りの会で「きらきらさん」といって、その日一日の中でいいことをしたお友達の名前とその理由を発表する機会を設けているそうなのだが、
息子はこの「きらきらさん」を必ず毎日伝えているそうなのだ。
「なかなかできることではありません。人のことをよく見ているんだなと思いました」
と言われ、そうですか、まったく知りませんでした。と何度か頷きながらも、
本当は心の中で、息子のことを誇りに思っていた。
すごい、すごい、と今すぐ頭を撫でて抱きしめたかった。


センジュ出版から刊行している書籍『あの日ののぞみ246号』(中村文昭著)は、
主人公・高校2年の新道湧(しんどうわく)が、
夏休みのある日に新幹線の中で偶然隣に座った、作務衣に草履姿、やけに馴れ馴れしいおっさん"アキさん"から、彼の高校の時の思い出を聞かされるうち、自分の人生が動き出すという小説だ。
全国に数多くのファンを持つ講演家、かつベストセラー作家でもある中村文昭氏の初小説であり、本人の実話を元に創作した本書は今、
人生に悩む高校生に、またその親御さん、教育関係者にと、幅広く読まれ続けている。
また、本書を元に、著者中村さんは人生初落語にも挑戦。
小説を書き、高座にも上がってと、いくつになっても新しいことに挑むその姿は、観客のさまざまな感情を呼び起こしていたと思う。

さて、その『あの日ののぞみ246号』、67P、68Pにこんなくだりがある。

「アキ、中学での失敗を繰り返さんように、高校に入ったら、まず初めにこのノートに友だちみんなの名前を書くんや。ほいでな、みんなのいいところを見つけるたびに、このノートに書いて、それをそん子に伝えたったらええよ。誰かて、いいところは必ずあるんやからな」


これは、おっさんアキの母親のアドバイスだ。
ワガママ放題だったアキは中学時代、クラスの全員から無視される経験を持つ。
そんな息子に対し、親心からアキに「友人のいいところを見つけ、伝える」よう話すこのシーン、これは著者が実際に母親から伝えられた言葉でもある。

本書の中でいくつか好きなシーンがあるが、私はこのアキの母親の言葉、そしてそれを素直に実行した息子アキが大好きだ。
決定権、決裁権を持つ人、組織、団体を代表する人物を叩くのはまだわかる。
でも、会ったこともない人を匿名で吊し上げたり、欠点ばかりをあげつらったりする代わりに、
そのエネルギーを「友人のいいところを見つけ、伝える」ことに向ける人が一人でも増えたなら、今よりずっと心地いい循環が、あちこちでうねりを高くするだろう。
実際、中村さんをはじめとしたセンジュ出版の著者含め、尊敬する人達に共通するのは、人の長所を察知する能力が高いこと。
だからこそ、支持者や仲間がその人の、その作品の周囲に集う。
小さく、大きな循環がその人を中心に生まれ続けている。


息子が友人のいいところを毎日、挙手をして発表しているという。
彼はどちらかというとシャイな方で、目立つことが得意ではない。
その息子が、毎日毎日、誰かのいいところを見つけてはクラスメイトを前に話をしていると聞き、
面談からの帰り道、私は胸がいっぱいになっていた。

帰宅してすぐ、私の帰りを待っていた息子は、
「どうだった?」
と不安そうに尋ねてきた。
先生から聞いたいくつかの注意点を伝えた後、私は「きらきらさん」のことを話した。
先生がどう言っていたか、そして私がそのことをどれほどに嬉しいと思ったか。
その理由に『あの日ののぞみ246号』の話も含めて、ほめてほめて、ほめまくった。


実際に息子がどのように発表しているかを聞いて、私も真似をする。

「今日のきらきらさんは【息子の名】さんです。なぜかというと、お友達のいいところをたくさん見つけているからです。みんな、ほめられて嬉しい気持ちになったからです」

照れ臭そうに、にっこり笑った息子。

「さすがパパとママの子だね」
と伝える私。これも著者中村さんの受け売り。
自分を信じるという姿勢を、まずは大人から子どもに見せること。
口にするたび本当は面映いが、著者の言うことを素直に聞いて行動することもまた、
編集者の大切な仕事である(笑)。


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