見出し画像

ooeya bar #2 「千里の道もバイトから」

いらっしゃい。今夜は一人っすか? どーぞどーぞ。いつもの? オッケー。

大江屋店主アミーゴのバイト歴は長いっすよ。生まれて初めて人様にお金をいただいたのは喫茶店でのバイト、高校一年生でした。実家のあるニュータウンに「樫の木モック」って店ができたんですね。音楽活動資金が必要だったアミーゴは、電話帳の飲食系片っ端から電話してバイトを探した。でもスナックとかは経験がないのとまだ若すぎたのとでなかなか雇ってもらえなかった。そんなある日、、、

「時給280円でもよかったらおいで」

と首を縦に振ってくれたのがこの店の剛力ママでした。(今思うにちょっと剛力彩芽に似てたので)元CAの未亡人Aさんと若奥様のBさんが既に働いていて、少年アミーゴが加わり仲良く3人でフロアを担当することに。

「はい、いらっしゃいませ!」

思えばこの頃は店で見よう見まねで覚えたプリンやホットケーキ、クッキーを、家でこっそり作ったりしてたんすよ。Aさんはママの次に年上だったので、何も知らないアミーゴに手取り足取りで教えてくれたな。ある日男のお客様が一人で窓際に座っててプリンアラモードを注文された。剛力ママが、

「あなた、ちょっと初めてアラモード作ってみる?」

とアミーゴを調理場に大抜擢。

「ええええ? い、い、いいんですか?」

目をキラ星にさせてアミーゴはホイップクリームをゴージャスに飾り付けてさくらんぼ3つ飾って、全身全霊のアミーゴアラモードを抱えてお客様のもとへ。ドキドキ、、、、、するとそのお客様が、

「商品サンプルはもっとスッキリしてて美味しそうだった。これクリームだらけでまずそうだから、もう一回作り直して」

少年アミーゴは小学生で校長先生への差し入れをしたあの時代からどうもこの手の「やりすぎコージー」のきらいがあり。アミーゴは慌てて厨房へひとっ走り、作ったアラモードをゴミ箱に捨て新たに作り直しました。剛力ママ、大激怒。Aさんは、

「ママの言うこと気にしなくていいわよ。良かれと思ってやったんだから」と優しかった。

画像1
いちごいちえ

この頃やってたバイトは、英語の家庭教師、ピアノの先生、ペンキ塗りのアシスト、淺沼組の工事現場、無料新聞の配達、郵便配達、そしてレギュラーで弾き語りの仕事が服部緑地のラウンジ「楡の木」で始まったばかりだった。

思えばこのつい1年前、中学3年だったアミーゴ。高校入試の模擬試験の論文に「水」をお題に小論文と言うのがあり、「水といえば水商売、、、この世の中のものは何一つ止まるものなどない」と書いて0点を取ったことがある。なんとも懐疑主義なアミーゴらしいが、当時から「流れる」「移りゆく」世界感に興味津々。だから時給280円でも全〜然御構い無し、だって次々に入って出てゆくお客さんとの邂逅が、

超、、、楽しかったんですから。

ここから先は

4,733字 / 7画像

¥ 150

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?