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世界3と心身問題


 「世界3についての考察が心身問題に何らかの新しい解明をもたらすことができる、というのが本書で提起される主要な推測の一つである。三つの論証を簡単に述べてみよう。
 第一の論証は次のようである。
(1)世界3の対象は抽象的である(物理的な力よりもいっそう抽象的である)が、それにもかかわらず実在的である。なぜなら、それらは世界1を変革する強力な手段なのである。(私はこのことが世界3の対象を実在的と呼ぶ唯一の理由であるとも、またそれらは手段以外の何物でもないとは思わない。)
(2)世界3の対象は人間がそれらの製作者として介在することを通してのみ世界1に影響を及ぼす。とりわけ、世界3の対象が把握されるということを通して世界1に影響を及ぼす。そして、把握とは、世界2の過程、または心的過程であり、より正確には世界2と世界3が相互作用する過程である。
(3)したがって、われわれは世界3の対象と世界2の過程がともに実在的であることを認めねばならない――たとえ唯物論の偉大な伝統への尊敬から、これを認めることを好まなくともである。」
(カール・ポパー(1902-1994)『自我と脳』第1部、P2章 世界1・2・3、15――世界3と心身問題(上)p.79、思索社(1986)、西脇与作・沢田允茂(訳))

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