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世界中古童話堂32話早苗とカレン


 冬の金曜日朝、ここ東京の住宅街のとある一軒家玄関からサラサラした黒髪のきゃしゃな女の子が出てきた。
 彼女は、歳に合わないキャメル色のチェスターコートを着てそんなに高くないヒールの赤い靴を履いて軽やかに歩き出した時刻は午前10時、カレンになった早苗は産まれてはじめて仮病で学校も塾も休むことにした。

 早苗は昨日の夜、原宿の美容室を予約した。
今までは、小学校の時から通ってた最寄りの駅の美容室以外は行った事がない早苗だった…。

 `足の裏がはずむような感覚!歩くだけで楽しいんだ! 私、いま生きてる'
       …もう、カレンだ。

 駐車場の車のガラス・電車のトイレの鏡・車内の窓・太陽の日差し・街並ぶ、ショーウィンドウ…

…彼女は自分を写してくれる全てのものに目を離せなかった、
     …ほら、カレン〜!


 サイズが合う服が無くて、、お母さんの服を着ているカレンは、まずSNSでみた裏原の可愛い洋服屋に入った。
 おしゃれな女の店員さんに近づいたカレンは、

 「あの、この靴に合う洋服を選んでほしいですが…
  えっと、明日美術館に行くとき着るので…」
頭の中で何回も繰り返して練習したセリフを言った。

 大きい紙袋を持って堂々と出て来る彼女は満足した顔をしてる、汗をかかずに店員さんとまともなお話が出来たのはじめてだ!
       …笑笑、完全なるカレン。

 次は、難関…


若いお兄ちゃんとのおしゃべりとスキンシップを伴うどころ!
 緊張気味で美容室に入ったカレンは案内された席についた。手が震えた、、
 カレンは勇気を絞って、ゆっくり目の前にある大きい鏡を見つめた、あー 可愛らしい女の子がやや硬い表情でこっちを真っ直ぐに見てる、

     `わたしだ'

なにがどうあれ、あれは私。胸を張って肩の力を抜いたカレンは笑顔を見せてみた。

 それから私たちのカレンは流行りのショートヘアになって出てきた… 早苗に戻ったときが心配だが… まるで別人になったようで、美容師のお兄ちゃんは、めっちゃいい感じ!ショートがに合う顔ですね!よりモテると思うよ、とか言ってくれた…。
 カレンは、本気の褒め言葉って伝わるんだ…とまた新たな感覚に目覚めた気がした…。


  `家に帰ろ…早めに寝なきゃ、、'原宿駅のトイレでカレンが靴を抜いて持ってきた灰色のスニーカーに履き替えたら、一気に体は元に戻り…
 着ていたお母さんのコートの腕の方から糸が切れる音がした、ぷちっぷちっ!

 `あ、やばい、、帰りのことを考えなかった、、'

早苗はしょうがなく、大きい体を穴が空いたコートで包まって惨めな気持ちのままお家に帰ってきた…。

 約4〜5時間ぐらい靴を履いてた早苗は今日、気を張り過ぎたのか、夜9時頃に疲れた心身共にベッドに入った。



 一方、世界中古童話堂では早苗が赤い靴を持って店から出た後からマリンが長期態勢に入るための場所を作っていた…、

 くつろげるソファーがあるリビングに、
モニター代わりのキルアを置いといて、暖かいブランケットとボンボンショコラ、焼きリンゴとホットワインを小さなおぜんさんに支度させたり…

 その様子は、シーズン8まである海外ドラマを正月休みで全部見ようとする人とまったく変わらない…。

小さな御膳さん

 「キルア、今日のハイライトが始まるぞー!
 ほら見てー! 早苗が夜空で綺麗な踊りっ子になっているよ!」酔ってるようなマリンを見てキルアは

「マリン様、飲み過ぎです…今日でもう3本目ですよ!」って言いながらも、しっかり夜空を写してるキルアにマリンは

「そうか、キルアは見れないのか?角度が合わないのか?」とありえない冗談をした、

 キルアからすると、

`澄んだ夜空と赤い靴を履いた大きい半透明の女の子はとてもアンバランスで見ものではないなぁ…'

 `しかも、踊りが始まって10分も経たず、早苗の魂は悲鳴をあげてるようにみえ、赤靴に連れ回されていた、これがずっと続くのか…。'

そのとき、ソファーで横になっていたマリンからいびき音が聞こえた、、キルアは

 「はぁー おやすみなさい」と言い画面を一旦消した、
 
     「残り11時間か…」


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