ホモデウス上巻要約(冒頭•第一部)

第1章 人類が新たに取り組むべきこと

今までの課題:飢餓・疫病・戦争
今後の課題:どのように身を処すればいいのか

今までの課題の整理
・生物学的貧困線
⇨セーフティーネットによりかつてとは比べものにはならないほど回復し、
現在では過食による死亡が遙かに上回っている
2014年 過食の人21億人、栄養不足の人8億5000万人

・見えない大軍団
中世ヨーロッパの黒死病
天然痘
インフルエンザ
はしか
小児病
⇨二十世紀の間に人口増加と交通手段の進歩により感染症
にかかりやすくなった
⇨しかし、過去数十年間に予防接種や抗生物質、衛生状態の向上
医療のインフラなどの発達により感染症の発生数の劇的減少、子供
が成人までに死ぬ率も下がった(先進国では1パーセントをきっている)
⇨新しい抗生物質「テイクソバクチン」
⇨血流の中を進んで病気をみつけ病原体やがん細胞を殺すナノロボットなどが今後現れるかもしれない

・ジャングルの法則を打破する
ジャングルの法則:たとえ2つの国家が平和に共存していても戦争は
常に1つの選択肢として残っていた
⇨二十世紀後半にこの法則は打破された
⇨全世界の死亡率:暴力に起因するものは1%、自殺はこれより少し多い、
糖尿病はその2倍以上
⇨核兵器のお陰で戦争を前提に考える人は少なくなった
また、世界経済がものを基盤とする経済から知識を基盤とする経済へと変容した
⇨戦争は中東や中央アフリカといった物を基盤とする経済的に相変わらず依存する地域に限られていった

核爆弾からロジックボム(悪意のあるソフトウェアで遠隔操作される)へ
チェーホフの法則(ある武器は後に使いたくなる)もジャングルの法則も破ることが
できるようになった

テロはそれ自体よりそれが与えるインパクトのほうが脅威である

飢餓・疫病・戦争に取って代わる課題は何か?
⇨人類と地球全体を私たち自身に力に固有rt
の危険から守ること
⇨これが賢明な身の処し方であろうが、人類はさらなる渇望から目標を立てる
E.g. 不死、幸福、新性(人間を神にアップグレードしホモサピエンスをホモデウスに変えることをのぞむ)

宗教は死を神聖視していたが、現代の科学と文化は死は解決すべき対象であり、
解決すべき技術的な問題であるとみなしている

芸術的創造性や政治的熱意や宗教的敬虔さの多くは死への恐れに煽られている

人間はあの世の存在を疑っているために不死ばかりではなくこの世での幸福も追求
しないではいられない

以前の医療制度や教育制度、福祉制度の目的はすべて国民を幸せにすることではなく、
国を強くすることだった

1776年アメリカの独立宣言で「幸福追求権」という言葉にも現れているとおり、
国民一人一人の幸福を国家の責任にしなかった

しかし過去数十年間は、さまざまな巨大な制度は国民の幸福と健全な生活のために
尽くされるべきだと考えるひとが増えてきた

快楽の心理的なものと生物学的なもの
生物学的なもののなかでも競争から得られる幸福度は短く強い
もしかしたら興奮と落ち着きをうまく組み合わせることがベストかもしれないが
これに成功しているひとは少ない
⇨人間の生化学的作用を操作する必要がある

ブッダの幸福感と生化学的な見方の共通点:快感は沸き起こったときと同様に消えてしまい、
人々は実際に快感を経験する事なくそれを渇望しているかぎり満足しないままになる

今後は生化学的な立場に立ち、ホモ・サピエンスの生化学的作用を変え永続的な快楽を楽しめるように
作り直していくことが必須になってくると予想される

人間を神へとアップグレードするための3つの道
1 生物工学
自然選択だけでなく、意図的に遺伝子コードを書き換え、脳の回路を
配線し直し、生化学的バランスを整え、完全に新しい手足を生えさせたりする

2 サイボーグ工学
最近猿たちが体とはつながっていないバイオニックの手足を脳にうめこまれた
電極を通して制御することを学習した
有機的な脳が指令統制センサーであり続けるという前提に立つ

3 非有機的な生物を生み出すこと
有機的な部分を全てなくし、完全に非有機的な生物を作りだす
神経ネットワークは知的ソフトウェアに取って代わられ、ソフトウェアは
有機科学の制約を免れ、仮想世界と現実世界の両方を動き回れる
⇨地球を抜け出せる可能性が高い

⇨ホモ・サピエンスはホモデウスが何を考えるかわからない
私たちが自分の体と心を作り直す能力をほしがっているのはなによりも
老化と死と悲惨な状態を免れるためだが、一旦それを手に入れてしまえば
私たちがそれほどの能力を利用してほかになにをやりかねないか知れたものではない
⇨人類の新たな課題リストは神性を獲得すること
最近猿たちが体とはつながっていないバイオニックの手足を脳にうめこまれた
電極を通して制御することを学習した

知識のパラドックス
不死と至福と神性を目指すのは個人として行われることではなく、人類が集団としてすること
⇨歴史的予測

行動を変えることにつながる知識量が増えれば増えるほど現在を理解し、未来を予想する私たちの
能力は低下する
歴史学者が過去を研究するのは過去を繰り返すためではなく、過去から解放されるため
歴史を学ぶ目的は、私たちを抑える過去の手から乗り越えること:
私たちはあちらからこちらへ顔を向け、祖先には想像できなかった可能性や祖先が
私たちには想像して欲しくなかった可能性に気づき始めることができる
私たちをここまで導いてきた偶然の出来事の連鎖を目にすれば、自分が抱いている考えや夢がどのように形
を取ってきたかに気づき、違う考えや夢を抱けるようになる
歴史を学んでも何を選ぶべきかわからないだろうが、少なくとも選択肢は増える

第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する

第2章 人新世

狩猟採集民族は自分を自然の一部とみなすアニミズムを信奉していたが、これを
聖書が拒絶したため、人間は動物を劣ったものであると自動で見なすようになった
多くのアニミズムの文化では、人間は動物の子孫だと信じられている
現代の西洋人は自分たちが爬虫類から進化したと考えている
⇨私たち全員の脳は爬虫類の脳を核として構築されており、体の構造は
事実上、爬虫類の体の修正版である
⇨アニミズムの信奉者が人間も動物の異種にすぎないと考えていたのに対して、
聖書によれば、人間は無類の被造物

動物の主観は石器時代から変わっていないが、それを人間に無視され続けられている:家畜の増加
妊娠ブタ用クレートに閉じ込められたメスブタはたいてい激しい欲求不満(周囲を探検したり他のブタと
接触したり自分の子供と絆を結んだりしたい)と極端な絶望を交互に見せる
⇨何千年も前に形作られた欲求は現在それが生存と繁殖にもう必要ない場合にさえ、主観的に感じ続けられる

<生き物はアルゴリズム>
情動は生化学的なアルゴリズムで全ての哺乳類の生存と繁殖に不可欠
人間を制御するアルゴリズムは、感覚や情動や思考によって機能する
このアルゴリズム(例:ライオンがいるところでバナナを取るヒヒの動き)は
自然選択による絶え間ない品質管理を受ける
⇨ヒヒの体全体が計算機
農耕民族は自分たちのしていることを有心論の宗教の名において正当化した
有心論の宗教は神だけでなく人間も神聖視する
2点の特徴互いに矛盾しない関係性

狩猟採集民族から農耕民族へ
自然に対して人間がコントロールするという考え方が強まる
⇨農業革命は経済革命であると同時に宗教革命でもあった
:新しい種類の経済的関係が動物の残酷な利用を正当化する新しい種類の
宗教的信念とともに出現した

第3章 人間の輝き

人間には不滅の魂があるが、動物はただの儚い肉体に過ぎないという信念は
私たちの法律制度や政治制度や経済制度の大黒柱

意識的経験:感覚と欲望
感覚と情動の脳回路の多くは完全に無意識にデータを処理し、行動を起こすことができる
⇨空腹感や恐れ、愛情、忠誠心といった動物が持っていると私たちが見なす感覚と情動の一切の陰には
主観的経験ではなく無意識のアルゴリズムだけが潜んでいるのかもしれない
科学の通説:意識は脳内の電気化学反応によって生み出され、心的経験が何かしら不可欠なデータ処理機能を果たしている

なぜ主観的な経験をするようになったのか
⇨生物学者の単純な答え:空腹や恐れを感じなかったらわざわざウサギを追いかけたりライオンから逃げたり
しなかっただろうから主観的経験は生存に不可欠
⇨しかしニューロンや脳への信号を詳細に述べれば述べるほど心が余分に思えてくる
電気化学的反応だけで十分ではないか?恐れを感じる必要はあるのか?

⇨ただ外部の刺激に反応しているだけではなく、心主導によって多くの連鎖反応が始まるから
⇨しかしそもそも記憶や想像や思考とは何なのか?何十億というニューロンによって発せられる膨大な
数の電気信号ではないのか?心が主導するさいに何か物質的な動きはあるのだろうか?

現代科学の有力な仮説:
意識は現実のもので、重大な道徳的・政治的価値をもつかもしれないが、生物学的機能は何一つ果たさない
⇨意識は特定の脳の作用の生物学的には無用の副産物

同性愛者のチューリングによるチューリングテスト
:コンピュータか人間かどちらか判定するテスト
⇨チューリングによれば、重要なことは自分自身が本当はどういう人間なのかではなく、
他者に自分がどう思われているのか。コンピューターは将来1950年代の差別されていた時の同性愛者
のようになると言っている。コンピューターに現実に意識があるかどうかは関係ない
重要なのは人々がそれについてどう思うかだ

ホモ・サピエンスが他の動物に比べて優れていた能力
⇨柔軟に他人と協力する力

革命を起こすには数だけでは足りない
⇨革命は大抵、一般大衆ではなく運動家の小さなネットワークによって始まる

もし革命を起こしたければ、「どれだけの数の人が私に考えを支持しているか」ではなく、
「私の支持者のうちには、効果的に共同
できる者がどれだけいるか?」が重要

最後通牒ゲームが示すサピエンスのアルゴリズム
⇨サピエンスは冷徹な経済学の論理ではなく、温かい社会的論理
にしたがって行動する

共同主観が意味をもつのは周りの人も信じており、自身の人生に意味を与えてくれるから
⇨歴史を学ぶということは、ある時代の人々にとって人生で意味のあることが子孫
にはまったく無意味になることを理解すること

人間の虚構が遺伝子コードや電子コードに翻訳されるにつれて、共同主観的現実は客観的現実を飲み込み、
生物学は歴史学と一体化する
21世紀には虚構は気まぐれな小惑星や自然選択をも凌ぎ、地球上で最も強大なちからと
なりうる
⇨自分たちの将来を知るためにはゲノムを解読したら計算をおこなうだけではなく、
この世界に意味を与えている虚構を読み解くことも必要である

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