【擬人化】モンスターハンター/終焉、回帰、過去

「旦那!上物ですぜ!」
「ほう、これは?」
「世にも珍しい、龍の子!傷一つない娘です。今ならこの価格!」
「いいだろう。私が買う。いい奴隷になりそうだ」
「へい!まいど!」

わたしを初めて拾ったのは人間だったわ。
親の顔なんて知らないもの、毎日雑用に追われて失敗すれば殴られ怒鳴られる。それが続いたわ。
嫌じゃなかった。物心付く前から操られていたの。
あなたは、おかしいと笑うかしら。
わたしはお金で買える命。人間に何度も取引に持ち掛けられたわ。腕が折れるまで働いて、不満の捌け口にされて、子供も産まされたわ。人間は「珍しい龍の子」いつだって言っていた。
そこから、何も感じなくなった。痛みはないほうが、わたしみたいな臆病者にはいいのよ。
何度目か分からない取引を終えて、また違う人間に買われた。
その人間もいつも通り、わたしを道具だと言ってきたわ。
それでも金になるからと言われて、脅されて働いたわ。

身体が動かなくなってから捨てられた。
自分の年なんて知らない。知らなくていい。
人間と関わる事はあっても、深い関係にはならない。
今まで誰にも優しくされたことなんて無かった。必要ないと思っていた。

しばらく世界を渡り歩いて、一人のお年寄りに出会ったの。
「君は自由に生きていいんだ。辛く悲しい過去の傷を癒してくれる運命の仲間が現れるさ」
そう言ってくれた。不思議な感覚。今まで味わったことのないもの。
お年寄りは優しく?してくれた。
しばらくの間一緒に過ごした。誰も知らない所で。
でも、ある日「行かなければならない。呼ばれている」
お年寄りが、約束の地へ行くと言い残して去って行った。

それが、どうして。
身体が勝手に動き出して、お年寄りの後を追った。
人間に物珍しそうに傷つけられても、わたしの傷はすぐに治る。翼はちゃんと動いて、飛べた。
あのお年寄りを、守らなきゃ。
長い時間飛んで、海を越えた。
途中で、大きな壁が見えた。そこで動く小さな影は人間。
お年寄りを弩や大砲で攻撃しているのが見えたわ。
人間も、その先に行かれると困るのかしら。
とうとうお年寄りの背中に乗り上げて攻撃を始めた人間が目障りだから降りて叩き潰そうとしたけど、長い刀を持った鎧を着た人間に阻まれたわ。
結局壁は破壊され、お年寄りは進むことができた。
嬉しいとも何とも思わなかった。

あの時は辛い事を忘れたいって思ったけど、
今はその理由を思い出せない。わたしはどうして何も感じないのか。
それももう、覚えていないわ。

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